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第2章
03
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馬小屋から十分ほど川沿いの山道を登った一行の前に、小さな青い湖が現れた。
「これが魔力を帯びた泉ですか?」
「いや。この湖は普通の水だが、すぐ脇から湧き出している泉の水だけ魔力を帯びていて、精霊が住むと言われている」
ラウリが示した先、木々の間から、木の柵に囲まれているものが見えた。
精霊という存在のことは授業で教わった。
自然の中に棲み特別な力を持つ。
過去は人と関わることもあったが、今は人前に現れることはないと。
その精霊がいる泉だから特別な力があるのだろうか。
「それで柵に囲われているんですね」
「ああ。結界を張っていて王宮の魔術師以外は開けない」
ラウリの指示で、同行している魔術師たちが柵へ向かった。
差し出した杖が光ると、柵の扉部分に魔法陣が浮かび上がる。
ほどけるように魔法陣が形を崩しながら広がり消えると、ゆっくりと柵が開いた。
(わあ、魔法っぽい!)
リリヤがこの世界に召喚された時は、既に魔法陣は消えていたため実物を見るのは初めてだ。
「入るぞ」
ラウリに促されて柵の中に入る。
その泉は、大きな木の根に囲まれるようにあった。
リリヤの寝室にあるベッドほどの大きさだろうか、小さな泉だが、下から水が湧き出しているらしく水面に泡が浮かんでは消えている。
(確かに……何だか不思議な気配がする)
まるで神社の境内に入った時のような、気持ちが引き締まる感覚を覚えた。
魔術師が紙を取り出した。
広げたそこには魔法陣が描かれている。
紙を地面に置き、杖を当てると紙の中の魔法陣が光り、広がりながら地面にその魔法陣が写しとられた。
(なるほど。事前に紙に書いた魔法陣を用意しておくんだ)
「王太子殿下。この魔法陣の中へお立ち下さい」
リリヤが感心していると、ラウリが魔法陣へと入っていった。
「……この魔法陣は何をするためのものですか?」
「泉の力がどのような効果を及ぼすか分からないため、異変が起きても対処できるようにするものです」
リリヤの疑問にヘンリクが答えた。
「殿下にかけられた呪いは非常に強い、怨念とも言えるような負の感情に支配された、とても危険なものでしたから」
「怨念……」
「呪いをかけたイザベラ・キースキネンは王太子妃という立場にかなりの執着を持っていたようで……その執着心が呪いの失敗と、殿下への影響に繋がったとのことです」
「……怖いですね」
執着心はとても厄介だと、向こうの世界でも聞いたことがある。
妃の立場というのはどんな手を使っても手に入れたいものなのだろうか。
(でも……それで殿下を傷つけたら意味ないのに)
自分には理解できない、とリリヤは思った。
魔術師は泉へ向かうと、水差しで水を汲み取った。
それを手にして魔法陣へ戻る。
「これはどうすれば良い」
「少し口に含んで下さい。問題がなければそのまま全て飲んでいただければと」
ラウリが尋ねると、そう答えてもう一人の魔術師がグラスをラウリに手渡した。
グラスの中に水が注がれる。
ゆっくりとそれを口元に運ぶとラウリは少量を口に含んだ。
味わうように口中に水を広げる。
「……特に何も感じないな」
呟くと残りを飲み干した。
「――!」
ガクン、とラウリは崩れ落ちるように膝をついた。
「殿下!」
駆け寄ろうとしたヘンリクとリリヤは、思わずその足を止めた。
黒い霧のようなものがラウリを包み込んでいた。
「……これは……?」
「――おそらく〝呪い〟です」
魔術師が答えた。
「王太子殿下にかけられた呪いがまだ消えていなかったのでしょう。それが泉の魔力によって外へ引き出されたかと」
「泉の力は人間の魔力とは異なり、清浄な性質があるとの研究結果があります。呪いのような悪質な魔力とは相性が悪いと」
もう一人の魔術師が言った。
「このまま上手く呪いを全て王太子殿下から引き離すことができれば……」
(デトックスしているってこと……? でも大丈夫なのこれ……)
うずくまっているラウリの姿が見えなくなるくらい、黒い霧がどんどん濃くなっていく。
ラウリの状態はどうなっているのだろう。
見守るしかできないのがもどかしい。
「――これはおかしい」
魔術師たちは顔を見合わせた。
「この量は多すぎる」
黒い霧が渦巻き始めた。
まるで糸が絡むように、細い幾筋もの細い霧がラウルの身体を包み込む。
「何だ!」
「殿下!」
ヘンリクがラウリの側へ走り寄ろうとしたが、見えない壁のようなものに弾かれた。
『――ワタシ、ハ……キサキ、ナル、ノ』
霧の中から低い女性の声が聞こえた。
『ワタシ、ガ……オウヒ、ニ』
「何の声だ」
「オウヒ?」
リリヤは首を傾げた。
「まさか……イザベラ・キースキネンか?」
ヘンリクが呟いた。
『ナノ、ニ……コノ、オトコ……ワタシヲ、コバンダ』
黒い糸がラウリの身体を締め付けるように強く絡まる。
かすかに呻き声が聞こえた。
『クヤ、シイ』
「殿下!」
「どうにかならないんですか」
リリヤは魔術師たちを見た。
「――魔法陣が効いていないんです」
焦った表情で魔術師の一人が答えた。
「え?」
「呪いの力が強すぎて……」
(そんな……死んじゃう!)
これは前にいた世界で「怨霊」と呼ばれるものだろうか。
(どうすればいい? 怨霊……悪霊? 塩とか、聖水……? そうだ)
「あのっ。泉の水を殿下に沢山かけるのは⁉︎」
リリヤは魔術師たちに向いて言った。
「泉の水を?」
「悪質な呪いに効くんですよね?」
「――やってみよう」
魔術師は杖を振り上げた。
杖を回転させる動きに合わせて、泉から渦巻きながら水の柱が立ち上がりラウリへと降り注ぐ。
『ギャアア』
怒号のような悲鳴が上がった。
黒い糸が弾け散る。
「やったか⁉︎」
『ワ……タシ……オウ……』
散ったはずの影が再び集まると、ラウリに向かって行く。
「ダメ!」
リリヤは魔法陣の中へ飛び込むと、倒れているラウリに覆い被さった。
リリヤの身体が白く光る。
その光に共鳴するように、魔法陣も激しく光を放つ。
断末魔とはこういう声なのだろうか。
苦痛と憎しみ――それから悲しみと。
いくつもの感情が入り混じった悲鳴が耳を裂く。
ラウリにしがみつきながらリリヤは衝撃に耐えた。
やがて白い光が消えると共に黒い影も消え去っていた。
(消え、た……? 殿下は?)
横たわるラウリは意識がないようだった。
「見せて下さい」
魔術師がラウリを覗き込んだ。
もう一人が手首に触れる。
「――先ほどの黒い影がまだ体内にあるようです」
「もう一度泉の水を飲ませた方がいい」
「けれどこの状態でどうやって……」
「リリヤ嬢」
ヘンリクがグラスを差し出した。
「お願いいたします」
「え?」
「リリヤ嬢にしか出来ませんので」
(私が水を飲ませるって……まさか、口移し!?)
「え、あの」
「お願いいたします」
男性たちが真剣な顔でリリヤを見つめる。
(――ああもう!)
そんなこと出来ないと思ったが、人助けのためだ。
リリヤがグラスを受け取ると水が注がれた。
水を口に含むと、不思議な感覚が口内に広がる。
(……魔力?)
香りとも味とも異なる感覚に違和感を感じながらも、倒れているラウリに顔を近づける。
(――これは人工呼吸と一緒だから……!)
顎に手をそえて、ラウリの口を開けると自分の口で塞ぎ、水を注ぎ込んだ。
ラウリの喉が動く。
その身体が白い光に包まれる。
(優しくて……温かい感じがする)
光が消えるとゆっくりと、青い両目が見開かれた。
「殿下! お身体は」
ヘンリクがラウリの傍に膝をついた。
「……ああ。大丈夫だ」
ヘンリクに支えられながらラウリは起き上がった。
それから周囲を見回し目を瞬かせる。
「殿下?」
「――両目が見える」
ラウリは長い前髪をかき上げた。
「本当ですか!」
「呪いが解けたのか!?」
魔術師たちが声を上げた。
「良かった……」
ヘンリクは安堵の息を吐いた。
「魔力の方はいかがですか」
ラウリは手元に視線を落とすと、手のひらを見つめた。
「――感じられないな」
しばらくしてラウリは言った。
「そうですか……」
「今回は呪いが消えたことと目が見えるようになったことで、十分な成果だと思います」
残念そうな顔を見せたヘンリクに魔術師が言った。
「そうだな。両目が見えることがこんなに楽だったとは気づかなかった」
ラウリは小さく笑った。
「今日はこれで戻りましょう。お身体が濡れているので冷えてしまいます」
「そういえば、何故こんなに濡れているのだ?」
不思議そうにラウリは自分の身体を見渡した。
「呪いの力が強すぎたので、泉の水をかけたのです」
(良かった……覚えてないんだ)
リリヤはホッとした。
緊急辞退とはいえ、水を口移しで飲ませたなど恥ずかしい。
(あれはキスにはノーカンだ……よね……)
くらりと目の前が暗くなる。
「リリヤ!」
倒れようとしたリリヤの身体をラウリが抱き止めた。
「どうした!」
「……魔力を使いすぎたのかもしれません」
「どういうことだ」
ラウリは魔術師を振り返った。
「泉の力でも抑えきれなかった呪いを、最後はリリヤ様が弾いたのです」
「杖を使わずあれほどの魔力を放ったのですから。いくら魔力が豊富とはいえかなり体力も消耗したかと」
「そうか。――それについては戻ってから詳しく聞こう」
リリヤを抱き上げるとラウリは一同を見渡した。
「これが魔力を帯びた泉ですか?」
「いや。この湖は普通の水だが、すぐ脇から湧き出している泉の水だけ魔力を帯びていて、精霊が住むと言われている」
ラウリが示した先、木々の間から、木の柵に囲まれているものが見えた。
精霊という存在のことは授業で教わった。
自然の中に棲み特別な力を持つ。
過去は人と関わることもあったが、今は人前に現れることはないと。
その精霊がいる泉だから特別な力があるのだろうか。
「それで柵に囲われているんですね」
「ああ。結界を張っていて王宮の魔術師以外は開けない」
ラウリの指示で、同行している魔術師たちが柵へ向かった。
差し出した杖が光ると、柵の扉部分に魔法陣が浮かび上がる。
ほどけるように魔法陣が形を崩しながら広がり消えると、ゆっくりと柵が開いた。
(わあ、魔法っぽい!)
リリヤがこの世界に召喚された時は、既に魔法陣は消えていたため実物を見るのは初めてだ。
「入るぞ」
ラウリに促されて柵の中に入る。
その泉は、大きな木の根に囲まれるようにあった。
リリヤの寝室にあるベッドほどの大きさだろうか、小さな泉だが、下から水が湧き出しているらしく水面に泡が浮かんでは消えている。
(確かに……何だか不思議な気配がする)
まるで神社の境内に入った時のような、気持ちが引き締まる感覚を覚えた。
魔術師が紙を取り出した。
広げたそこには魔法陣が描かれている。
紙を地面に置き、杖を当てると紙の中の魔法陣が光り、広がりながら地面にその魔法陣が写しとられた。
(なるほど。事前に紙に書いた魔法陣を用意しておくんだ)
「王太子殿下。この魔法陣の中へお立ち下さい」
リリヤが感心していると、ラウリが魔法陣へと入っていった。
「……この魔法陣は何をするためのものですか?」
「泉の力がどのような効果を及ぼすか分からないため、異変が起きても対処できるようにするものです」
リリヤの疑問にヘンリクが答えた。
「殿下にかけられた呪いは非常に強い、怨念とも言えるような負の感情に支配された、とても危険なものでしたから」
「怨念……」
「呪いをかけたイザベラ・キースキネンは王太子妃という立場にかなりの執着を持っていたようで……その執着心が呪いの失敗と、殿下への影響に繋がったとのことです」
「……怖いですね」
執着心はとても厄介だと、向こうの世界でも聞いたことがある。
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(でも……それで殿下を傷つけたら意味ないのに)
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魔術師は泉へ向かうと、水差しで水を汲み取った。
それを手にして魔法陣へ戻る。
「これはどうすれば良い」
「少し口に含んで下さい。問題がなければそのまま全て飲んでいただければと」
ラウリが尋ねると、そう答えてもう一人の魔術師がグラスをラウリに手渡した。
グラスの中に水が注がれる。
ゆっくりとそれを口元に運ぶとラウリは少量を口に含んだ。
味わうように口中に水を広げる。
「……特に何も感じないな」
呟くと残りを飲み干した。
「――!」
ガクン、とラウリは崩れ落ちるように膝をついた。
「殿下!」
駆け寄ろうとしたヘンリクとリリヤは、思わずその足を止めた。
黒い霧のようなものがラウリを包み込んでいた。
「……これは……?」
「――おそらく〝呪い〟です」
魔術師が答えた。
「王太子殿下にかけられた呪いがまだ消えていなかったのでしょう。それが泉の魔力によって外へ引き出されたかと」
「泉の力は人間の魔力とは異なり、清浄な性質があるとの研究結果があります。呪いのような悪質な魔力とは相性が悪いと」
もう一人の魔術師が言った。
「このまま上手く呪いを全て王太子殿下から引き離すことができれば……」
(デトックスしているってこと……? でも大丈夫なのこれ……)
うずくまっているラウリの姿が見えなくなるくらい、黒い霧がどんどん濃くなっていく。
ラウリの状態はどうなっているのだろう。
見守るしかできないのがもどかしい。
「――これはおかしい」
魔術師たちは顔を見合わせた。
「この量は多すぎる」
黒い霧が渦巻き始めた。
まるで糸が絡むように、細い幾筋もの細い霧がラウルの身体を包み込む。
「何だ!」
「殿下!」
ヘンリクがラウリの側へ走り寄ろうとしたが、見えない壁のようなものに弾かれた。
『――ワタシ、ハ……キサキ、ナル、ノ』
霧の中から低い女性の声が聞こえた。
『ワタシ、ガ……オウヒ、ニ』
「何の声だ」
「オウヒ?」
リリヤは首を傾げた。
「まさか……イザベラ・キースキネンか?」
ヘンリクが呟いた。
『ナノ、ニ……コノ、オトコ……ワタシヲ、コバンダ』
黒い糸がラウリの身体を締め付けるように強く絡まる。
かすかに呻き声が聞こえた。
『クヤ、シイ』
「殿下!」
「どうにかならないんですか」
リリヤは魔術師たちを見た。
「――魔法陣が効いていないんです」
焦った表情で魔術師の一人が答えた。
「え?」
「呪いの力が強すぎて……」
(そんな……死んじゃう!)
これは前にいた世界で「怨霊」と呼ばれるものだろうか。
(どうすればいい? 怨霊……悪霊? 塩とか、聖水……? そうだ)
「あのっ。泉の水を殿下に沢山かけるのは⁉︎」
リリヤは魔術師たちに向いて言った。
「泉の水を?」
「悪質な呪いに効くんですよね?」
「――やってみよう」
魔術師は杖を振り上げた。
杖を回転させる動きに合わせて、泉から渦巻きながら水の柱が立ち上がりラウリへと降り注ぐ。
『ギャアア』
怒号のような悲鳴が上がった。
黒い糸が弾け散る。
「やったか⁉︎」
『ワ……タシ……オウ……』
散ったはずの影が再び集まると、ラウリに向かって行く。
「ダメ!」
リリヤは魔法陣の中へ飛び込むと、倒れているラウリに覆い被さった。
リリヤの身体が白く光る。
その光に共鳴するように、魔法陣も激しく光を放つ。
断末魔とはこういう声なのだろうか。
苦痛と憎しみ――それから悲しみと。
いくつもの感情が入り混じった悲鳴が耳を裂く。
ラウリにしがみつきながらリリヤは衝撃に耐えた。
やがて白い光が消えると共に黒い影も消え去っていた。
(消え、た……? 殿下は?)
横たわるラウリは意識がないようだった。
「見せて下さい」
魔術師がラウリを覗き込んだ。
もう一人が手首に触れる。
「――先ほどの黒い影がまだ体内にあるようです」
「もう一度泉の水を飲ませた方がいい」
「けれどこの状態でどうやって……」
「リリヤ嬢」
ヘンリクがグラスを差し出した。
「お願いいたします」
「え?」
「リリヤ嬢にしか出来ませんので」
(私が水を飲ませるって……まさか、口移し!?)
「え、あの」
「お願いいたします」
男性たちが真剣な顔でリリヤを見つめる。
(――ああもう!)
そんなこと出来ないと思ったが、人助けのためだ。
リリヤがグラスを受け取ると水が注がれた。
水を口に含むと、不思議な感覚が口内に広がる。
(……魔力?)
香りとも味とも異なる感覚に違和感を感じながらも、倒れているラウリに顔を近づける。
(――これは人工呼吸と一緒だから……!)
顎に手をそえて、ラウリの口を開けると自分の口で塞ぎ、水を注ぎ込んだ。
ラウリの喉が動く。
その身体が白い光に包まれる。
(優しくて……温かい感じがする)
光が消えるとゆっくりと、青い両目が見開かれた。
「殿下! お身体は」
ヘンリクがラウリの傍に膝をついた。
「……ああ。大丈夫だ」
ヘンリクに支えられながらラウリは起き上がった。
それから周囲を見回し目を瞬かせる。
「殿下?」
「――両目が見える」
ラウリは長い前髪をかき上げた。
「本当ですか!」
「呪いが解けたのか!?」
魔術師たちが声を上げた。
「良かった……」
ヘンリクは安堵の息を吐いた。
「魔力の方はいかがですか」
ラウリは手元に視線を落とすと、手のひらを見つめた。
「――感じられないな」
しばらくしてラウリは言った。
「そうですか……」
「今回は呪いが消えたことと目が見えるようになったことで、十分な成果だと思います」
残念そうな顔を見せたヘンリクに魔術師が言った。
「そうだな。両目が見えることがこんなに楽だったとは気づかなかった」
ラウリは小さく笑った。
「今日はこれで戻りましょう。お身体が濡れているので冷えてしまいます」
「そういえば、何故こんなに濡れているのだ?」
不思議そうにラウリは自分の身体を見渡した。
「呪いの力が強すぎたので、泉の水をかけたのです」
(良かった……覚えてないんだ)
リリヤはホッとした。
緊急辞退とはいえ、水を口移しで飲ませたなど恥ずかしい。
(あれはキスにはノーカンだ……よね……)
くらりと目の前が暗くなる。
「リリヤ!」
倒れようとしたリリヤの身体をラウリが抱き止めた。
「どうした!」
「……魔力を使いすぎたのかもしれません」
「どういうことだ」
ラウリは魔術師を振り返った。
「泉の力でも抑えきれなかった呪いを、最後はリリヤ様が弾いたのです」
「杖を使わずあれほどの魔力を放ったのですから。いくら魔力が豊富とはいえかなり体力も消耗したかと」
「そうか。――それについては戻ってから詳しく聞こう」
リリヤを抱き上げるとラウリは一同を見渡した。
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