僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護

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第1章 誘拐騒動ともふもふとの出会い

11話 麓は麓でも

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あの男性は腹痛に我慢しながら、必死に3分割にされた剣を拾ってる。

「馬鹿野郎、折れた剣なんてほっとけ!!」
「いいや、拾うね。こいつは、俺の命の次に大事なものなんだ!!」

他の人たちに比べて、あの人だけ危機感が薄いような?
結局、全部拾って、バッグの中に入れた。

「お前ら~~~ここは奴らとの集合地点に比較的近い。魔法発動後、単独行動のまま山を下りて合流地点へ行け。先に到着した者は、奴らに事情を説明して撤退させろ~~【ストームトルネード】」

敵の男が最後に何かを叫ぶと、急に突風が吹く。

「うわああ~~~」
「きゃああ~~~~~」

凄い突風だ!! 僕たちを覆う壁が壊された影響で、このままだと飛ばされる!! 僕は必死になって、マグナリアのいた牢屋を掴む。

「リリアナ~~~」
「アキト~~~」

彼女が飛ばされそうになったけど、必死に左手で掴み、身体を抱きしめる。牢屋が重いせいなのか、殆ど動かないので、僕たちは突風に耐えることに成功する。僕とリリアナがゆっくりと立ち上がると、悪人たちは突風を利用して逃げたようで、周囲には、赤と茶色の跡が点々と付いていて、少し異臭もする。

「誰もいな…大きい。あれって、まさか白虎族?」

僕もリリアナの見ている方向へ目を向けると、そこには体長7メートルくらいの大きなホワイトタイガーがいた。

「これが幻惑? 凄いや!! 本物にしか見えない」

僕とリリアナが眺めていると、巨大なホワイトタイガーが突然音もなく消えていき、小さなマグナリアだけがポツンと残っていた。

「マグナリア!!」「マグナリア様!!」

僕たちが慌てて駆けつけると、彼女は何故か大口を開けて驚いている。

「マグナリア、どうしたの?」
「先程から、様子がおかしいですよ?」

何かに驚いているように見えるけど?

「あ…いや…なんでもない。それより、奴らの動きが急に鈍くなったけど、アキトが何かしたの?」

なんか様子が変だけど、これで僕らも助かったのだからいいか。

「うん。奴らの腸内環境の品質を劣悪にしたんだ」
「なるほど、だから腹を押さえて。ということは、この異臭の正体は…」

「多分…」

僕がそれを口にしようとすると、リリアナが慌てて遮ってくる。

「そ、それよりも、私たちは奴らと反対方向の検問所へ逃げましょう」

「お薦め出来ない。別の仲間が、検問所に潜伏しているかもしれない」

「そ、それなら奴らに見つからないよう、麓へ行きましょう」
「それが無難」

今頃、辺境伯様だって誘拐の件で、あちこちに警備網を張っているだろうから、危険だけど、奴らと鉢合わせしないよう、警備の騎士様たちと合流しよう。いつまでも、この異臭の中に留まりたくない。

「見つからないよう注意して、慎重に進みましょう」

山のどの位置にいるのか不明だけど、道を下っていけば、いずれは麓に辿り着く。

「待て」
「マグナリア?」「マグナリア様?」

早くここから去りたいのに、何故止めるの?

「何も持たず、山を下りるのは自殺行為。周囲に散らばった荷物類から、お金や飲み物、食べ物を持てるだけ持っていくべき」

凄い正論だけど、リリアナは露骨に嫌そうな顔をする。多分、僕も似たような顔をしていると思う。だって、一刻も早くここを離れたいから。

「2人の気持ちもわかるけど、飢えと渇きを防ぐため、ここは我慢」

「リリアナ、迷っている時間はないよ。ここを離れたいから、即実行に移そう」
「う、そ、そうね」

山登り…じゃなくて、山下りは僕も初めてだし、その助言に従おう。

周囲に散らばっていたのは、水の入った水筒が3つ、袋に入っている非常用の干し肉が5枚、銀貨5枚、鉄貨が1枚、銅貨が8枚、合計5518ゴルドのお金もあった。僕が水筒2つと、リリアナが水筒1つと皮袋に入った干し肉を持ち、この異臭の放つ場所から離れるため歩き出す。


○○○


今、僕たちは峠道近くの茂みの中にいる。ここは国同士を繋ぐ道でもあるので、多くの商人や冒険者たちが行き来しているとリリアナから聞いたけど、ここから見る限り、さっきの騒動の影響で誰もおらず、閑散としている。道を辿れば、いずれ出会う可能性もあるけど、さっきの人たちが変装している場合もありうるので、道には出ない。

「このまま茂みを道なりに進みつつ、標識が途中にあれば、道に出て確認しよう」
「うん」「はい」

僕たちは休憩を挟みつつ、悪人たちに見つからないよう歩き続けると、体感的に2時間くらい経過した時に、ようやく2つの別れ道を発見し、その分岐点となる位置に看板を見つけたので、一旦茂みから出る。

《ノアニーレ村まで3キロ》
《第二国境検問所まで20キロ》

「ここは、3キロ先の村へ行くべきかな?」

リリアナからの返事がないので振り向くと、何か考え事をしている。

「どうしたの?」
「辺境伯領に、ノアニーレって村があったかなと思って」
「村だって相当数あるから、覚えてないだけなんじゃあ?」

そう言うと、彼女は怒ったのか、ムッとした顔になる。

「あのね、私はこう見えても辺境伯令嬢なの。この領地の勉強だってやり始めているし、領内にある街や村の名称を真っ先に覚えたんだから!!」

「凄!! 街や村って合わせると、かなりの数があるでしょ?」

「ふふん、貴族令嬢なんだから、当然全部覚えたわよ」

貴族令嬢って、どんな教育を受けているのだろう?
暗記するだけでも、大変な作業だと思うけど?

「お前たち、まずは村へ行こう。あと2時間程で、陽も暮れる。できれば、暗くなる前に着いておきたい」

「あ、そうですね」
「うん、わかった」

今は、何処でもいいから休める場所を探そう。
正直、もうクタクタだもん。

そこから歩き続けると、悪党たちに接触することなく麓に到着できたけど、警戒する騎士が道沿いに誰もいなかったので、少しがっかりした。ここから先は、身を隠せる場所もないので、覚悟を決めて街道を歩いていく。すれ違う人々には軽く会釈を交わしていき、体力の限界が来る寸前で、僕たちはようやく村の入口に到着した。

「やっと到着した~~~」
「もう、歩けないわ」

到着した途端、倒れ込んだから、村人の男性が心配してこっちに来てくれた。

「坊主に嬢ちゃん、大丈夫か?」
「はい…なんとか。ここって、ノアニーレ村ですか?」
「ああ、ここはソマルトリア王国イグナース山麓に位置する村ノアニーレだ」

「「え!?」」

僕もリリアナも、素っ頓狂な声をあげてしまう。
ここ隣国なの!? いつ、国境を越えたの? 

そういえば、お父さんが辺境伯領から見える山を越えたら、隣国ソマルトリアになるって言ってた。

ここって、麓は麓でも、反対側に位置する山の麓だったの!?
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