僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護

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最終章 アキト、隣接する2つの辺境伯領の架け橋となる

29話 アキトの女装とシェリルの勇気

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昨日は、大変だった。

辺境伯一家と使用人たちが、シェリルの変化に驚き、皆が進んで僕の女装に協力してくれたんだ。嬉しいことなんだけど、僕はずっと貴族令嬢の服やドレスを着せられ、正体がバレないよう違和感のないカツラを探すわで、大忙しだった。

そして今日、出かける前になって、昨日の成果が披露された。

「アキト、可愛い!」

シェリルは目を輝かせて僕を褒めるけど、なんか複雑な気分。今の自分は、銀髪のカツラをかぶっていて、貴族令嬢の服装だからスカートを履いているせいで、足の中がす~す~する。

「アレク様、おかしくないですか?」

こういう時って、同じ男の子の意見を聞いた方がいいよね。アレク様は10歳だし、きちんとした意見を言ってくれそう。僕がアレク様を見ると、何故か顔を赤くして目を逸らす。

「可愛い…と思う。まさか、ここまで似合うとは……僕や父上が女装しても、こうはならない」
「何を言っているの! お兄様はともかく、お父様が女装したら、気持ち悪いだけよ!」

何気に自分の父親を傷つけているのだけど、シェリルは気づいていない。少し離れた位置にいるアーサム様は相当応えたのか、軽く泣いていて、ミランダ様に慰められている。

「本当に可愛いわ。多分、私たちと同年代の令息たちは、あなたに惚れるんじゃない? アレク様、惚れたらダメですよ」

「惚れないよ!」

リリアナに言われて、アレク様は咄嗟に叫んでいる。
僕としても、惚れられると困る。

「ケイナ、3人の護衛を頼んだぞ」
「ナンパする連中がいたら、半殺しにしなさい」

アーサム様は普通の言葉なのに、ミランダ様だけが変なことを言っている。

「ミランダ、流石にそれはないだろ」
「あなたは甘いのよ。世の中には、そういった連中もいるの!」

そんな人が、本当にいるの?

「旦那様、奥様、6歳前後の子供達を見て、本気でナンパするような不届き者がいたら、成敗しますのでご安心を」

「頼んだわね」

昨日行ってわかったけど、レンヤさんの家まで徒歩20分の道のりだ。短い距離だけど、先行きが不安になってきた。

馬車で言った方がいいかな?


○○○


結局、徒歩でレンヤさんの家へ向かっているけど、なんか視線を感じる。でも、多くの人たちの視線が僕じゃなく、シェリルに向けられていて、全てが温かい。全員、彼女の事情を知っているから見守ってくれているんだ。敷地内を出る時は、シェリル自身も怖がっていたけど、意を決して歩を進めていき、温かな視線に気づいたことで、自分が守られていると気づき、目的地に到着する頃には、身体も震えもなくなっていた。それを見た僕もケイナさんもリリアナも、喜びを隠すことなく、笑顔でシェリルを誉めていた。

「前々から出ようと思っていたけど、勇気が出なかった。アキトのおかげで、私は外に出られる用になったの。もう、大丈夫」

僕は何もしていない。みんなが、シェリルのペースに合わせて、じっと見守っていたからこそ、立ち直れたんじゃないかな。

皆が落ち着いたところで、レンヤさんの工房へと入ると、そこにはレンヤさんと1人の綺麗な女性がいた。髪を後ろに束ねていて、凛としていてカッコいい人だ。多分、この人がミオンさんだ。

「ようこそ、可愛いお客様方。ミランダ様から、可愛い女の子たちが訪問することを事前に伺っています。あら? ケイナさん、アキトくんという男の子は?」

う、ミランダ様、僕のことを言ってないな。

「あの…僕が」
「「アキト、言葉」」

う、2人からの圧力が凄い。
女装している時は、女言葉を使うようにと言われているんだ。

「わ…私がアキトです。訳あって、女装しています」
「え、あなた、男の子なの! 凄いわ、何処から見ても可愛い女の子に見える!」

レンヤさんは僕の女装の意図を察してくれたのか、同情の目を向けてくれた。

「まあ、女装させて、一緒に出席させるのが無難か。シェリル様も、その方が心強いだろう。今回は、アキトの女装をより完璧に仕上げるための練習か」

「はい」

僕は、その女の子の口調と礼儀に苦戦している。大人との会話だと敬語で誤魔化せるけど、同年代同士の会話となると、どうしても上手くいかない。

「アキトも大変だな。まあ、そっちはいい。とりあえず、ステンレスに似た合金を、ミオンの錬金系スキル[合成][錬成][精錬]などを使い、7種類製作した。鑑定系スキルで、それぞれの評価を得ているが、どれも文章ばかりで、錆にどの程度強くなっているのか具体性に欠ける内容で、昨日言ったアキトの示した星の評価は、品質管理だけに使用される専用の評価だとわかった。まずは、これらの星の合計数を評価して、どれが優れているのかを教えてほしい」

「わかりました」

昨日の今日で、7種類も合金を作ったんだ。7つ全てを分析すると、鉄に加える金属が異なるせいで、評価数に差があった。最低が星7つ最高が24だ。最高評価の合金には、鉄を主体にして、そこに炭素、ミスリルといった僕の知るものや聞いたことのない金属名とかも入っている。僕は星の評価数に合わせて、星を並べていく。

「一番左に置いた合金が、評価値の高いもの、一番右に置いたものが最低評価の合金です。右から3番目までの合金は、鉄よりも耐食性や強度も弱くなっています。ぼ…私としては、左から2番目の合金を採用して、より強靭な品質に変化させたいです」

「ほう、最上位を蹴るのは何故だ?」

レンヤさんの目の色が変わった。

「高価だからです。最上位に利用されているミスリル、オリハルコンという金属が合金の価値を上げていて、仮にこれで台所を製作しても、高価なせいで誰も買わないと思います。そういった意味で、2番目の合金は、金属のバランスが丁度いいんです。耐食性・強度・靱性は、1番目より劣りますけど、鉄よりも遥かに優れています」

全員が黙ったまま僕を見ているけど、なんか説明を間違えたかな? 前世の記憶のおかげで、ミスリルやオリハルコンの価値とその貴重性を知っていたから発言したけど。

「この子、凄いわ。分析能力も、私以上よ!」

「ミオンの鑑定だと、詳細にわかったのは硬度だけで、それ以外の性質は具体性に欠けていた。アキトの選んだ合金は、その鑑定結果から性能を予想し、俺とミオンが金属の比率をある程度計算した上で、最後に配合したものだ。いいね、概ね予想通りだ。この合金をアキトに最適化してもらい、実際に何か製作してみるか」

レンヤさんとミオンさん、たった1日でステンレスに似た合金を作ったんだ。僕が凄いというより、自分たちの感性だけで作り上げるレンヤさんとミオンさんが凄いと思う。

「ええ、そうね。でも、まずはシェリル様に似合う可愛いメガネ製作よ」
「おっと、そうだな。アーサム様から貴族に相応しい一品を作れと言われているから、腕がなるぜ」

「私の眼鏡? どういうことですか?」

「そうか、秘密だったな。まあ、ここまで連れて来たのだから明かしてもいいか。アキトはな、シェリル様は可愛いのに、眼鏡のフレームが全てを台無しにしているといい、自分がシェリル様に似合う眼鏡のフレームを製作すると俺に訴えたんだよ」

ここで、それを暴露するの?
なんだか、恥ずかしいな。

「それじゃあ、その合金は…私の眼鏡のために?」

「その通り。合金の話を聞いた時は驚いたが、実際にこうやって作れたんだから大したもんだ。この成功を糧に、眼鏡のフレームの素材となる新たな合金を作り出す。合金の主体となるものはミスリル、そこに魔力伸縮性に富んだ金属を合わせればいい。候補となる金属を用意して、今回のように合金を作り出し、そこからアキトに最適化してもらえば、フレームの製作も可能となる。シェリル様、いい友達を持ったな。大切にしろよ」

レンヤさん、その先のことをもう考えてくれていたんだ。流石に、5日後のパーティーまでに製作可能かはわからないけど、希望が見えてきたよ。僕が元気づけようとシェリルを見ると、彼女の顔は真っ赤になっていた。
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