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《シャーロットが帝王となった場合のifルート》第2部 8歳〜アストレカ大陸編【ガーランド法王国
間章ー4 トキワ、怒り爆発!
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○○○ トキワ視点
さてと、誰もいないことだし、スミレメダルを頂こうか。
いや、ちょっと待て!?
シャーロットメダルを触った時、子供染みた悪口を散々言われてきた。まさかとは思うが、スミレの場合、大人としての悪口を言われるんじゃないのか?
……ありうる。
俺の心を抉るような何かをスミレの声で言われたら、俺は立ち直れないかもしれない。触るのなら、相当な覚悟を持たないと!
悪口を言われたとしても聞き流せ、聞き流せ、聞き流せ!
ここは王城、絶対に怒るな、怒るな、心を冷静に保つんだ!
よし、覚悟を決めた!
俺は、素手でスミレメダルを触った。さあ、何を言われる!
「トキワ……あなた浮気したわね?」
「は、何だって!?」
スミレが語りかけてきたのは、俺の浮気疑惑!?
「俺はスミレ一筋だ! 浮気なんて、絶対にしないぞ!」
「誤魔化してもダメよ。昨日の昼間、18歳くらいの可愛い獣人さんを口説いたわね?」
昨日の昼間? 18歳くらいの獣人?
あ、あれか!?
「違う、誤解だ! 男に絡まれていたから助けただけだ!」
あの時、俺は子供の遊具などが設置されている大広場を歩いていた。その広場の中央には、大きな噴水があった。その噴水付近で、1人の獣人の女が3人の獣人の男共に絡まれていたから、俺は彼女を助けたんだ。その後……
「へえ~そう。名前は《メルネット》さんだったかしら? スタイルも良くて、胸の大きい獣人さんだったわね~。あなたが3人の男共を軽くあしらった後、【ラルフェン】という喫茶店で、互いに楽しく話し合っていたわね~。別れ際、ホッペにキスまでされて、あなたはデレっとしていたわね。あなたなら、楽に回避できたはずよ? 遠く離れた地にいることがわかっていても、私はあなたと強く結ばれていると思っていた。まさか……浮気するだなんて……」
なんで、そこまで知っている!?
お礼をしたいと言われたから、飲み物を飲みながら軽く談笑しただけだ!
不意を突かれたこともあって、別れ際にキスされたが……まさか、これはカクさんの罠か!?
「言っておきますけど、罠じゃないわよ。2日前の段階で、カクさんが私の家に……」
《バン!》
「貴様~法王様を狙う暗殺者か!」
なんだ、突然入口のドアが開いたぞ!
あ……しまった!?
スミレの声に反応して、俺が大声を出したことで気づかれたのか!?
3人いや奥に1人……4人の獣人に見られたか。
というか、今はそれどころじゃねえ!
「スミレ、もう1回言ってくれ。【カクさんがスミレの家に】の後は何だ?」
「…………」
何故、何も言わない? まさか、もう30秒過ぎたのか!
「魔人族だと!? さては、城下の騒ぎは、貴様の仕業か! 王城への無断侵入! 加えて、法王様への暗殺を企てたとみなし、この場で捕縛する!」
ちい、3人の獣人が剣を抜き、俺に斬りかかってきた。が、俺にとって、そんな些細なことはどうでもいい。スミレに事情を説明しなければ……急いで残りのメダルを回収しないと!
「魔人族、逃げられんぞ、観念しろ!」
「さっきからゴチャゴチャうるせえんだよ! お前らのせいで、肝心な部分を聞き逃しただろうが~~~!!!」
続きが気になる!
こいつら3人を抹殺……はまずいから、気絶させる!
「何を言って…」
俺は、喚く1人の獣人の後頭部を右手で掴み、奴の顔面を床に陥没させた。獣人は、ピクピクと痙攣したまま、そこから這い出ることはなかった。
「「デラゴルト!」」
「おのれ~魔人族の分際で~~!」
正体がバレた以上、もう隠れて行動する意味もない。
こうなったら……こいつらを利用してやる!
「2人がかりでいくぞ!」
「おう!」
この2人のいかつい背の高い獣人共は、俺の話を聞く気はないようだ。後方に控える男の獣人を利用するか。豪華な服を着ているから、おそらく高位の者だな。
「お前らに、用はない! 床に這いつくばって寝ていろ!」
さっきの獣人と同じく、俺は2人の顔面を床に埋没させた。これで、奴と話せる。獣人だから、歳がわかりにくいものの60歳程か? 妙に威厳と風格があるな。まさか、この国の王か?
「馬鹿な……護衛騎士3人がいとも簡単に……」
「お前……まさか法王か?」
「隠密部隊、何をしている! 私の部屋に侵入者だ!」
真贋で確認したが、本物の法王で間違いない。
「残念だったな。お前を守護する奴等は、天井でお寝んねしているよ。法王が現れたのら、俺としても好都合だ」
王を守護すべき者は、誰1人いない。自分の危機的状況に気づいても、プライドのせいか、恐怖を表に出していない。
「貴様が魔人族ならば、何故……私を殺さない? 絶好の機会だぞ?」
ほう、強者でもある俺を目の前にしても、冷静に対処している。さすがは、法王といったところか。他の騎士連中がここに到着するまで、俺の目的を聞き出し、時間を稼ぐつもりか? 1対1の状況、俺にとっても好都合だ。
「俺の目的は、王城内に散らばるこのメダルを探すことにある。法王の命をとるつもりはない」
俺は、さっき拾ったスミレメダルを法王に見せた。
「そんなメダル欲しさに、魔人族がこの城に侵入か……信用できんな」
この言葉だけで、俺を信用していたら、お前は相当の馬鹿だよ。しばらく、俺の話に付き合ってもらうぞ。
「アンタの国も終わりだな。隠蔽されていたヒール系魔法が露見されたことで、情勢は極めて不安定にある。じきに、周辺国家が攻め込んでくるぞ?」
奴の表情に、若干の怯えがあるものの、俺に対し明らかに敵意を向けている。そうだ、それでいい。
「我ら獣人を舐めるなよ。この程度の内乱で、国は崩れん。各国の教会連中は我々を裏切ったが、内乱を平定させ、全てが落ち着いてから、また従属させればいい。他国も、ここに攻めては来れん。ここは、【ガーランド法王国】なのだから」
なるほど、【ガーランド法王国】ね。その名前で、これまでの聖女達を管理下に置き、ヒール系魔法を隠蔽し、聖女だけに使わせていたのか。建国以降、こいつら獣人は神ガーランドに護られていると思っているのか。
「くく、あははははは」
俺が大笑いしたせいか、奴は憎々しげに俺を睨んでいる。
「何がおかしい? ここは、ガーランド様がお認めになった国だ。他国がここを攻めれば、神罰が下るぞ」
シャーロットから、神ガーランドの…悪…性格を散々聞いている。
あの神はこの国に対して、一切の興味を抱いていない。
「はは、おめでたい連中だ。断言してやる! この国は、神ガーランドに護られてなどいない!」
「世迷言を……魔人族の分際で、我が国を愚弄するか!!!」
この言い様、法王は本気で神ガーランドに護られていると思い込んでいる。
待てよ!? まさか、200年前の戦争は……
「クク、お前達の思い込みは、相当だな。この国が神ガーランドに護られているのなら、200年前の戦争、ハーモニック大陸に攻め込んできた貴様らは何故負けた? 加護があるのなら、負けないだろ?」
「く…それは…」
その言葉と狼狽え方で、自分達がハーモニック大陸に攻め込んだことを認めたようなものだな。
「何を言っている!? 魔人族がここへ攻め込んできて、我々が勝利したのだ!」
自分の失言に気づいたのか、慌てて修正したか。
「この国に、神の加護はない! 仮にあったとしても、お前達は見離されたんだよ。その証拠が、今の王都の状況だ」
おお~おお~法王の顔が、怒りでみるみるうちに真っ赤になってゆく。
「煩い! この国は滅びん! 我々獣人は、神ガーランド様に試されているだけだ! お前達魔人族は、我々の下で、無様に這いつくばっていればいいのだ!!! 能力値の限界が我々よりも上なだけで、貴様らは皆弱い。護衛騎士を倒す程の腕はあるようだが、その程度の……」
今の言い方から察すると、獣人共は魔人族を奴隷として扱っているのか。魔人族が弱いとされているのは、ダンジョンに行けない程の相当過酷な環境下で生き抜いているからだろう。いくら能力限界値が500であっても、ダンジョンなどで魔物を倒さないと、レベルや能力数値も大きく上がらない。つうか、獣人達が、奴隷と化した魔人族達の能力数値を管理していると考えた方がいい。
ここに来るまで、俺はずっと魔法【真贋】を使用し続けていた。そのおかげで、人間に化けている魔人族を何人か発見できた。外の【亡者騒動】はどう考えても、獣人達の管理下から逃れた魔人族の仕業だ。連中の目的は、奴隷の解放と国の消滅か。こんな大騒動を起こしているのだから、奴等はこの国に神の加護などないことを理解している。
200年前の戦争以降、奴隷扱いを受けていれば、そりゃあ恨みも蓄積するわな。恨みの深さを考慮すると、あの程度の亡者だけで終わらせるはずがない。おそらく切り札として、Aランクかそれ以上の強化型亡者を用意しているはずだ。
ただ、勝敗がどちらに転ぼうとも、このまま進むと、この国は滅びるだろう。
存続の可能性のある方法を勧めておくか。
「法王、お前に1つ忠告しておく。この大陸には、神の加護を受けた本物の化物がいる。そいつがここに到着すれば、全てが無となる。反乱を起こしている魔人族も、お前達も絶対に敵うことはない。このまま時が進めば、この国は確実に滅びを迎える。最悪な滅び方をする前に、200年前の戦争の真実を各国に明かせ! 俺の忠告に従えば、もしかしたら国が存続するかもしれないぞ」
十中八九、法王は俺の忠告を聞き入れないだろう。
「本物の化物? 我が国が滅びを迎える? そんな世迷言など信じられるものかよ。 魔人族がこの大陸を支配するため、我々に戦争を仕掛けてきた。これが真実だ! 魔人族の反乱など、すぐに鎮圧させてくれる! 獣人を舐めるなよ! 貴様が何者かなど、最早どうでもいいわ! 配下の騎士達が異変を察知して、続々とここに向かっている。もう逃げられんぞ! 護衛騎士は敗れたが、如何に貴様でも大勢の獣人達を相手にできまい!」
やはり……聞く耳を持たないか。これが最後の警告だ。
「法王、もう1度言おう。今すぐに、全ての真実を白日のもとに晒せ!」
「くどい! 先程言った言葉が真実だ!」
穏便に済ませることは無理そうだな。ここへ向かってくる獣人全てを葬ることは容易い。しかし、俺が獣人達を葬り、この国を滅したら、シャーロットが黙っていない。
さて、どう対処する? 俺の威圧で、王都にいる奴等全員を黙らせてから、王城のスミレメダルを全て頂くのが妥当な手段か?
「そうそう、貴様の言っていたメダルというのはコレか?」
あれは、スミレ…いやシャーロットメダルか!?
ち、目の前すぎて、完全に見落とした!
「俺の目的の物ではないが、それを貰えないか?」
「ふん、こんな子供のオモチャが欲しいのなら、いくらでもくれてやる!」
法王が俺に向け、シャーロットメダルを右手親指で弾いた。俺がメダルを受け取ると……
「トキワさん、がっかりです。スミレさんという恋人がいながら、獣人の女性と浮気だなんて」
「だから、してねえよ!」
この険悪な状況の中、シャーロットから俺への浮気発言かよ!
「私が簡易神具を使い、トキワさんの浮気を一部始終見ていました。女性を助けたところまでは良いのですが、その後がいけない。喫茶店での楽しい一時の最後の別れ際のキス、トキワさん自身も心が、ほんの少し揺らいでいましたね。完全な浮気と判断します」
お前がスミレに告げ口したのか! キスされた直後、彼女から付き合ってくれと告白されたが、俺はきっぱりと断った。なんで、そこを言わない!
「キスされた直後、お父様からの呼び出しで、その後のことはわかりません。苦渋の決断の末、私は簡易神具でスミレさんを探し出し会いに行きました。そして、あの時の光景を彼女に見せました。スミレさんは笑顔で私を褒めてくれました。私って偉いでしょ?」
おい~~~、1番肝心なところが抜けているだろうが~~~~~~!!!
何処が偉いんだよ!
なんてお節介なことをしてくれたんだ!
シャーロットがこの場にいたら、絶対お仕置きしてやるんだが!
《ピコン》
《トキワは、シャーロット用お仕置きスキル【グリグリL v1】を習得しました》
《スミレは、トキワ用お仕置きスキル【グリグリLv10】【顔面鷲掴みグリグリLv3】を習得しました。副次効果により、スミレの攻撃力が251から351へ、魔力量が326から426へとUPします。顔面鷲掴みグリグリの効果に関しては、再会した時のお楽しみ(^o^)》
ちょっと待てい!
【シャーロット用】は別にいいが、【トキワ用】というのは何だよ!?
俺が何をした!? あれは浮気じゃないぞ!?
しかも、俺だけ強烈になってないか?
スミレが強くなったのはいいとして、なんか理不尽だぞ!?
納得いかん!
「おいシャーロット、誤解を解いてくれ! 簡易神具を使えば、その後の光景も見れるだろ? あれは、浮気じゃない!」
「……」
「ここで時間切れかよ!」
くそったれが~~~、怒りが俺の心にどんどん蓄積していく!
「もう……茶番はいいか?」
法王は法王で、俺のことを残念な大人だと感じ取ったのか、明らかに引いてやがる!
「茶番じゃねえ! こっちは真剣なんだよ!」
一応、法王には、俺の事情を話しておくか。
「お前の欲しがっているメダルというのは、こっちの方か?」
それは!?
間違いなくスミレメダルだ!
「それだ! 其奴を俺に寄越せ! 今すぐ、誤解を解いておきたい!」
「訳のわからんことを……断る。このメダルが、余程大事と見える。この城に侵入してきたことを後悔させてやろう。貴様も、このメダルと同じ運命を辿るがいい」
「おい、止めろ!」
俺が反応する前に、奴はメダルを静かに床へと落とし、右足で踏み砕いた。砕かれたメダルを見ると、スミレの顔が4つに破壊されている。俺のスミレ(メダル)が…スミレ(メダル)が…スミレ(メダル)が破壊された……
くそったれ~~~!!!!!
シャーロットのせいで、スミレに誤解されるわ……法王の野郎は……あろうことか、スミレ(メダル)を砕きやがった!
許さん、許さんぞ!!!!
「貴様……俺のスミレ(メダル)を砕いたな」
《ブチ》
シャーロットの事情を第一に考えて行動していたが、もうどうでもいい!
威圧で瞬時に奴等を黙らせる?
冗談じゃない!
「許さん、許さんぞ! お前ら獣人共には、死よりも深く恐ろしい痛みを未来永劫与えてやる!」
もう200年前の真実など知るか!
こいつら獣人には、真の恐怖と絶望を味わせてやる!
○○○作者からの一言
トキワとメダルとの会話……全部、カクさんの罠です。
シャーロットとスミレは、何も知りません。
本日お昼12時に、漫画版【元構造解析研究者の異世界冒険譚】第5話がUPされる予定です。
小説の次回更新予定日は、10/23(火)となります。
さてと、誰もいないことだし、スミレメダルを頂こうか。
いや、ちょっと待て!?
シャーロットメダルを触った時、子供染みた悪口を散々言われてきた。まさかとは思うが、スミレの場合、大人としての悪口を言われるんじゃないのか?
……ありうる。
俺の心を抉るような何かをスミレの声で言われたら、俺は立ち直れないかもしれない。触るのなら、相当な覚悟を持たないと!
悪口を言われたとしても聞き流せ、聞き流せ、聞き流せ!
ここは王城、絶対に怒るな、怒るな、心を冷静に保つんだ!
よし、覚悟を決めた!
俺は、素手でスミレメダルを触った。さあ、何を言われる!
「トキワ……あなた浮気したわね?」
「は、何だって!?」
スミレが語りかけてきたのは、俺の浮気疑惑!?
「俺はスミレ一筋だ! 浮気なんて、絶対にしないぞ!」
「誤魔化してもダメよ。昨日の昼間、18歳くらいの可愛い獣人さんを口説いたわね?」
昨日の昼間? 18歳くらいの獣人?
あ、あれか!?
「違う、誤解だ! 男に絡まれていたから助けただけだ!」
あの時、俺は子供の遊具などが設置されている大広場を歩いていた。その広場の中央には、大きな噴水があった。その噴水付近で、1人の獣人の女が3人の獣人の男共に絡まれていたから、俺は彼女を助けたんだ。その後……
「へえ~そう。名前は《メルネット》さんだったかしら? スタイルも良くて、胸の大きい獣人さんだったわね~。あなたが3人の男共を軽くあしらった後、【ラルフェン】という喫茶店で、互いに楽しく話し合っていたわね~。別れ際、ホッペにキスまでされて、あなたはデレっとしていたわね。あなたなら、楽に回避できたはずよ? 遠く離れた地にいることがわかっていても、私はあなたと強く結ばれていると思っていた。まさか……浮気するだなんて……」
なんで、そこまで知っている!?
お礼をしたいと言われたから、飲み物を飲みながら軽く談笑しただけだ!
不意を突かれたこともあって、別れ際にキスされたが……まさか、これはカクさんの罠か!?
「言っておきますけど、罠じゃないわよ。2日前の段階で、カクさんが私の家に……」
《バン!》
「貴様~法王様を狙う暗殺者か!」
なんだ、突然入口のドアが開いたぞ!
あ……しまった!?
スミレの声に反応して、俺が大声を出したことで気づかれたのか!?
3人いや奥に1人……4人の獣人に見られたか。
というか、今はそれどころじゃねえ!
「スミレ、もう1回言ってくれ。【カクさんがスミレの家に】の後は何だ?」
「…………」
何故、何も言わない? まさか、もう30秒過ぎたのか!
「魔人族だと!? さては、城下の騒ぎは、貴様の仕業か! 王城への無断侵入! 加えて、法王様への暗殺を企てたとみなし、この場で捕縛する!」
ちい、3人の獣人が剣を抜き、俺に斬りかかってきた。が、俺にとって、そんな些細なことはどうでもいい。スミレに事情を説明しなければ……急いで残りのメダルを回収しないと!
「魔人族、逃げられんぞ、観念しろ!」
「さっきからゴチャゴチャうるせえんだよ! お前らのせいで、肝心な部分を聞き逃しただろうが~~~!!!」
続きが気になる!
こいつら3人を抹殺……はまずいから、気絶させる!
「何を言って…」
俺は、喚く1人の獣人の後頭部を右手で掴み、奴の顔面を床に陥没させた。獣人は、ピクピクと痙攣したまま、そこから這い出ることはなかった。
「「デラゴルト!」」
「おのれ~魔人族の分際で~~!」
正体がバレた以上、もう隠れて行動する意味もない。
こうなったら……こいつらを利用してやる!
「2人がかりでいくぞ!」
「おう!」
この2人のいかつい背の高い獣人共は、俺の話を聞く気はないようだ。後方に控える男の獣人を利用するか。豪華な服を着ているから、おそらく高位の者だな。
「お前らに、用はない! 床に這いつくばって寝ていろ!」
さっきの獣人と同じく、俺は2人の顔面を床に埋没させた。これで、奴と話せる。獣人だから、歳がわかりにくいものの60歳程か? 妙に威厳と風格があるな。まさか、この国の王か?
「馬鹿な……護衛騎士3人がいとも簡単に……」
「お前……まさか法王か?」
「隠密部隊、何をしている! 私の部屋に侵入者だ!」
真贋で確認したが、本物の法王で間違いない。
「残念だったな。お前を守護する奴等は、天井でお寝んねしているよ。法王が現れたのら、俺としても好都合だ」
王を守護すべき者は、誰1人いない。自分の危機的状況に気づいても、プライドのせいか、恐怖を表に出していない。
「貴様が魔人族ならば、何故……私を殺さない? 絶好の機会だぞ?」
ほう、強者でもある俺を目の前にしても、冷静に対処している。さすがは、法王といったところか。他の騎士連中がここに到着するまで、俺の目的を聞き出し、時間を稼ぐつもりか? 1対1の状況、俺にとっても好都合だ。
「俺の目的は、王城内に散らばるこのメダルを探すことにある。法王の命をとるつもりはない」
俺は、さっき拾ったスミレメダルを法王に見せた。
「そんなメダル欲しさに、魔人族がこの城に侵入か……信用できんな」
この言葉だけで、俺を信用していたら、お前は相当の馬鹿だよ。しばらく、俺の話に付き合ってもらうぞ。
「アンタの国も終わりだな。隠蔽されていたヒール系魔法が露見されたことで、情勢は極めて不安定にある。じきに、周辺国家が攻め込んでくるぞ?」
奴の表情に、若干の怯えがあるものの、俺に対し明らかに敵意を向けている。そうだ、それでいい。
「我ら獣人を舐めるなよ。この程度の内乱で、国は崩れん。各国の教会連中は我々を裏切ったが、内乱を平定させ、全てが落ち着いてから、また従属させればいい。他国も、ここに攻めては来れん。ここは、【ガーランド法王国】なのだから」
なるほど、【ガーランド法王国】ね。その名前で、これまでの聖女達を管理下に置き、ヒール系魔法を隠蔽し、聖女だけに使わせていたのか。建国以降、こいつら獣人は神ガーランドに護られていると思っているのか。
「くく、あははははは」
俺が大笑いしたせいか、奴は憎々しげに俺を睨んでいる。
「何がおかしい? ここは、ガーランド様がお認めになった国だ。他国がここを攻めれば、神罰が下るぞ」
シャーロットから、神ガーランドの…悪…性格を散々聞いている。
あの神はこの国に対して、一切の興味を抱いていない。
「はは、おめでたい連中だ。断言してやる! この国は、神ガーランドに護られてなどいない!」
「世迷言を……魔人族の分際で、我が国を愚弄するか!!!」
この言い様、法王は本気で神ガーランドに護られていると思い込んでいる。
待てよ!? まさか、200年前の戦争は……
「クク、お前達の思い込みは、相当だな。この国が神ガーランドに護られているのなら、200年前の戦争、ハーモニック大陸に攻め込んできた貴様らは何故負けた? 加護があるのなら、負けないだろ?」
「く…それは…」
その言葉と狼狽え方で、自分達がハーモニック大陸に攻め込んだことを認めたようなものだな。
「何を言っている!? 魔人族がここへ攻め込んできて、我々が勝利したのだ!」
自分の失言に気づいたのか、慌てて修正したか。
「この国に、神の加護はない! 仮にあったとしても、お前達は見離されたんだよ。その証拠が、今の王都の状況だ」
おお~おお~法王の顔が、怒りでみるみるうちに真っ赤になってゆく。
「煩い! この国は滅びん! 我々獣人は、神ガーランド様に試されているだけだ! お前達魔人族は、我々の下で、無様に這いつくばっていればいいのだ!!! 能力値の限界が我々よりも上なだけで、貴様らは皆弱い。護衛騎士を倒す程の腕はあるようだが、その程度の……」
今の言い方から察すると、獣人共は魔人族を奴隷として扱っているのか。魔人族が弱いとされているのは、ダンジョンに行けない程の相当過酷な環境下で生き抜いているからだろう。いくら能力限界値が500であっても、ダンジョンなどで魔物を倒さないと、レベルや能力数値も大きく上がらない。つうか、獣人達が、奴隷と化した魔人族達の能力数値を管理していると考えた方がいい。
ここに来るまで、俺はずっと魔法【真贋】を使用し続けていた。そのおかげで、人間に化けている魔人族を何人か発見できた。外の【亡者騒動】はどう考えても、獣人達の管理下から逃れた魔人族の仕業だ。連中の目的は、奴隷の解放と国の消滅か。こんな大騒動を起こしているのだから、奴等はこの国に神の加護などないことを理解している。
200年前の戦争以降、奴隷扱いを受けていれば、そりゃあ恨みも蓄積するわな。恨みの深さを考慮すると、あの程度の亡者だけで終わらせるはずがない。おそらく切り札として、Aランクかそれ以上の強化型亡者を用意しているはずだ。
ただ、勝敗がどちらに転ぼうとも、このまま進むと、この国は滅びるだろう。
存続の可能性のある方法を勧めておくか。
「法王、お前に1つ忠告しておく。この大陸には、神の加護を受けた本物の化物がいる。そいつがここに到着すれば、全てが無となる。反乱を起こしている魔人族も、お前達も絶対に敵うことはない。このまま時が進めば、この国は確実に滅びを迎える。最悪な滅び方をする前に、200年前の戦争の真実を各国に明かせ! 俺の忠告に従えば、もしかしたら国が存続するかもしれないぞ」
十中八九、法王は俺の忠告を聞き入れないだろう。
「本物の化物? 我が国が滅びを迎える? そんな世迷言など信じられるものかよ。 魔人族がこの大陸を支配するため、我々に戦争を仕掛けてきた。これが真実だ! 魔人族の反乱など、すぐに鎮圧させてくれる! 獣人を舐めるなよ! 貴様が何者かなど、最早どうでもいいわ! 配下の騎士達が異変を察知して、続々とここに向かっている。もう逃げられんぞ! 護衛騎士は敗れたが、如何に貴様でも大勢の獣人達を相手にできまい!」
やはり……聞く耳を持たないか。これが最後の警告だ。
「法王、もう1度言おう。今すぐに、全ての真実を白日のもとに晒せ!」
「くどい! 先程言った言葉が真実だ!」
穏便に済ませることは無理そうだな。ここへ向かってくる獣人全てを葬ることは容易い。しかし、俺が獣人達を葬り、この国を滅したら、シャーロットが黙っていない。
さて、どう対処する? 俺の威圧で、王都にいる奴等全員を黙らせてから、王城のスミレメダルを全て頂くのが妥当な手段か?
「そうそう、貴様の言っていたメダルというのはコレか?」
あれは、スミレ…いやシャーロットメダルか!?
ち、目の前すぎて、完全に見落とした!
「俺の目的の物ではないが、それを貰えないか?」
「ふん、こんな子供のオモチャが欲しいのなら、いくらでもくれてやる!」
法王が俺に向け、シャーロットメダルを右手親指で弾いた。俺がメダルを受け取ると……
「トキワさん、がっかりです。スミレさんという恋人がいながら、獣人の女性と浮気だなんて」
「だから、してねえよ!」
この険悪な状況の中、シャーロットから俺への浮気発言かよ!
「私が簡易神具を使い、トキワさんの浮気を一部始終見ていました。女性を助けたところまでは良いのですが、その後がいけない。喫茶店での楽しい一時の最後の別れ際のキス、トキワさん自身も心が、ほんの少し揺らいでいましたね。完全な浮気と判断します」
お前がスミレに告げ口したのか! キスされた直後、彼女から付き合ってくれと告白されたが、俺はきっぱりと断った。なんで、そこを言わない!
「キスされた直後、お父様からの呼び出しで、その後のことはわかりません。苦渋の決断の末、私は簡易神具でスミレさんを探し出し会いに行きました。そして、あの時の光景を彼女に見せました。スミレさんは笑顔で私を褒めてくれました。私って偉いでしょ?」
おい~~~、1番肝心なところが抜けているだろうが~~~~~~!!!
何処が偉いんだよ!
なんてお節介なことをしてくれたんだ!
シャーロットがこの場にいたら、絶対お仕置きしてやるんだが!
《ピコン》
《トキワは、シャーロット用お仕置きスキル【グリグリL v1】を習得しました》
《スミレは、トキワ用お仕置きスキル【グリグリLv10】【顔面鷲掴みグリグリLv3】を習得しました。副次効果により、スミレの攻撃力が251から351へ、魔力量が326から426へとUPします。顔面鷲掴みグリグリの効果に関しては、再会した時のお楽しみ(^o^)》
ちょっと待てい!
【シャーロット用】は別にいいが、【トキワ用】というのは何だよ!?
俺が何をした!? あれは浮気じゃないぞ!?
しかも、俺だけ強烈になってないか?
スミレが強くなったのはいいとして、なんか理不尽だぞ!?
納得いかん!
「おいシャーロット、誤解を解いてくれ! 簡易神具を使えば、その後の光景も見れるだろ? あれは、浮気じゃない!」
「……」
「ここで時間切れかよ!」
くそったれが~~~、怒りが俺の心にどんどん蓄積していく!
「もう……茶番はいいか?」
法王は法王で、俺のことを残念な大人だと感じ取ったのか、明らかに引いてやがる!
「茶番じゃねえ! こっちは真剣なんだよ!」
一応、法王には、俺の事情を話しておくか。
「お前の欲しがっているメダルというのは、こっちの方か?」
それは!?
間違いなくスミレメダルだ!
「それだ! 其奴を俺に寄越せ! 今すぐ、誤解を解いておきたい!」
「訳のわからんことを……断る。このメダルが、余程大事と見える。この城に侵入してきたことを後悔させてやろう。貴様も、このメダルと同じ運命を辿るがいい」
「おい、止めろ!」
俺が反応する前に、奴はメダルを静かに床へと落とし、右足で踏み砕いた。砕かれたメダルを見ると、スミレの顔が4つに破壊されている。俺のスミレ(メダル)が…スミレ(メダル)が…スミレ(メダル)が破壊された……
くそったれ~~~!!!!!
シャーロットのせいで、スミレに誤解されるわ……法王の野郎は……あろうことか、スミレ(メダル)を砕きやがった!
許さん、許さんぞ!!!!
「貴様……俺のスミレ(メダル)を砕いたな」
《ブチ》
シャーロットの事情を第一に考えて行動していたが、もうどうでもいい!
威圧で瞬時に奴等を黙らせる?
冗談じゃない!
「許さん、許さんぞ! お前ら獣人共には、死よりも深く恐ろしい痛みを未来永劫与えてやる!」
もう200年前の真実など知るか!
こいつら獣人には、真の恐怖と絶望を味わせてやる!
○○○作者からの一言
トキワとメダルとの会話……全部、カクさんの罠です。
シャーロットとスミレは、何も知りません。
本日お昼12時に、漫画版【元構造解析研究者の異世界冒険譚】第5話がUPされる予定です。
小説の次回更新予定日は、10/23(火)となります。
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