元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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《シャーロットが帝王となった場合のifルート》第2部 8歳〜アストレカ大陸編【ガーランド法王国

リーラのピンチ

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シャーロットが教会に行っている時、アッシュとトキワがガーランド法王国でやらかしている時と同じ時間軸でのリーラ視点となります。

○○○ リーラ視点

楽しい時間は、あっという間だな~。

魔鬼族の女性の取調べが終わって、その内容をエルサ様とお母様に話したら、お母様の顔色が変わった。領で起きている事件と関わっているかもしれないということで、別邸に戻った後、すぐにお父様のいる本邸に戻ってきた。あれから2日、私のいる海の街【ベルン】でも、同じ現象が起きているせいもあって、私は家の敷地から一歩も出ていない。やることといったら、ミスリルの屑を用いたミスリルへの再生訓練、伯爵令嬢の教育授業くらい……だよ。1日中室内に閉じこもるのも嫌だから、今は庭でミスリルの再生訓練に励んでいるけど、それでも何か物足りない。

あ~あ、シャーロットやオーキスに会いたいな~。

「リーラ様、雑念が混じっていますよ。シャーロット様やオーキスには会えません」
「ソニア、私の心が読めるの!」
今、考えていたことの返事が、メイドのソニアから返ってくるなんて!

「顔に出ています。リーラ様は感情を表に出しすぎです。訓練が必要ですね」

そ、そんなに…顔に出てた?
そういえばオーキスも、似たようなことを言っていた気がする。パーティー前、お母様も……

『貴族たるもの、迂闊に思っていることを顔に出してはいけません。親友でもあるシャーロットちゃん以外にも、多くの貴族達がいるわ。たとえ、自分より身分の低い者であっても、貴族という連中はより上を目指そうと画策している。リーラ自身が翻弄されないよう注意しなさい』

と言われた。シャーロットは聖女だし、今後も多くの相手に狙われる危険もあるから、親友でもある貴方が相手の思惑を悟れるよう、心を鍛えなさいとも言われたっけ。貴族って難しいな。でも、今は目の前で起きている事件をなんとかしないとダメだよね。

「ねえソニア、魔物襲撃事件、昨日何か進展はあったかな?」

海から突如現れた人と魔物の混成部隊、当初突然の襲撃で、この領都ベルンも混乱した。数が少ないこともあって、すぐに鎮圧されたけど、毎日時間に関係なく襲撃を繰り返してくるから、警戒を緩めることができない。お母様は、お父様から襲ってくる連中の特徴を聞くと、すぐにネクロマンサーの情報と撃退方法を教えた。

機密事項を教えることはいけないことだけど、襲ってくる連中が何度斬っても再生し復活してくることもあって教えちゃったみたい。

そして昨日の夜遅く、また海から襲撃者が達が13体現れた。シャーロットから教えてもらった通り、みんなが自分たちの武器に光属性を付与して、奴等に攻撃すると、ほぼ一撃で相手を仕留めることができた。この成果から、海から襲ってくる人も魔物も、【亡者】であることが断定された。でも、肝心のネクロマンサーが、まだ見つかっていない。

「シャーロット様のおかげもあって、解決の糸口は見つかりました。昨日現れた亡者の中でも、一部の人の亡者に関しては自我も比較的強く、好戦的ではなかったので、あえて討伐せず説得を試みました」

説得!? 
お父様は、『亡者達はF~Eランクくらいだ』と、言っていたけど?

「亡者って、話せるの?」

「自我の強い亡者達は、生前の記憶を強く残していました。話し合った結果、彼らは何者かの手により殺され、足に重しを付けられた状態で海に投棄されたそうです。犯人を知る者達は、その相手だけを殺すために動いていました。犯人を知らない者に関しては、どんな事件に巻き込まれていたのかを大凡知っていたため、知人に会いに行こうとしていました」

そっか~亡者達は、何か理不尽な理由で殺された可哀想な人達なんだ。

「今後、その人達はどうなるの?」


「ネクロマンサーについて知っていることを話してもらった後、亡者達にも協力してもらう予定です。報酬として、亡者達の関わった事件の真相究明となります」

大丈夫かな? ネクロマンサーに操られているのだから、自我の強い亡者も怒り狂ったりしないのかな? 

「リーラ様、何を仰りたいのか顔に出ていますよ。【自我が強い】ということは、それだけ【負の怨念が強い】ことを意味します。ネクロマンサーによって、ある程度操られているでしょうが、自我が強い分、ネクロマンサーの命令にもある程度背くことが可能です。ただ、そういった亡者は極一部のため、冒険者達も判別に手間取っているようですね」

ネクロマンサーは、何をやろうとしているのかな? エルディア王国だけでなく、アストレカ大陸全土を亡者で溢れさせようとしているのかな?

「お嬢様、事件発生から今日で6日目となります。集められた情報によると、【気配遮断】のスキルレベルが異様に高い者が、亡者達の中に紛れているそうです。これは、力量に合っていません。おそらくネクロマンサーが、強化したものと考えられます。亡者達が、海から離れているこの場所まで、到達するかもしれません。事件解決までは、屋敷の敷地からも勝手に出てはいけませんよ」

気配遮断だけを強化? 全部、一気に強化できないのかな? 1つの項目を強化するだけで、かなりの魔力を必要とするのだろうか? 

……なんか、怖い。

屋敷の中に避難しようかな。私の周囲には、ソニアだけでなく、警護してくれる冒険者もいるし大丈夫だと思うけど、何か不安だよ。

「あの者達……」
「え? ソニア、どうかしたの?」

ソニアが見ている方向を見ると、正門から少し離れたところに、3人の人間がいた。

「ねえソニア、正門から離れたところにいる3人、こっちを見てない?」
「ええ、確かに……リーラ様を見ていますね」
「え、私!?」

遠すぎて、誰かわからないけど、大人の男性かな?

「あ、こっちに走ってきた!」
「お嬢様、御安心を。警備レベルを上げていますので、ここまで到達できません」

3人組が敷地内に侵入してきた!

「あれ? 消えた? どこに行ったの? 警備の人が魔法で倒したの?」

見間違い? 確かに3人組が敷地内に入ったところを、この目で見たんだけどな? 

「いえ…こちら側はまだ何もしていません。至急、先程の消えた3人について調査します。お嬢様、一旦屋敷のお部屋に戻りましょう。何か、嫌な予感がします」

あのソニアが動揺している。ソニアは子供の頃から、あらゆる武術、体術、暗殺術、メイド術などを習い、人間の能力限界も超えてるって、お父様が言ってた。そのソニアが…

「お嬢様、行きますよ!」
「え…あ…うん!」

この街で、何が起こっているんだろう? さっきの3人組は、私を狙っていた? なんだろう、この感覚は? 身体が震えてる。もし、誰もいない状態で、あの3人に襲われたら、私は殺されていたのかな? 

そうか……私は怖いんだ。

今まで、人や魔物に襲われたことがないからわからなかった。シャーロットも魔人族と出会うまで、ずっと1人でケルビウム大森林を彷徨っていたんだよね。怖くなかったのかな? 私とソニアは屋敷の中に入って、さっき起きた出来事をリビングにいるお母様に話した。お父様は、ベルンの街にある冒険者ギルドに行っているから、すぐには伝えられない。

「なんですって! 侵入者が消えた!」

「はい。私も警備の冒険者達も何もしていません。敷地内に入った瞬間、忽然と消えました。現在のところ、3人組の魔力も気配も感じられません。今、冒険者達が調査しているはずです」

あの3人組も亡者だよね? 突然消えた理由はわからないけど、3人組は街の警備を潜り抜け、この屋敷に到達できた。もしかしたら、他にもいるかもしれない。

「まず間違いなく、その3人組は海から現れた亡者でしょうね。警備を掻い潜り、ここまで来れるということは、気配遮断のレベルが強化されているわね」

「奥様、3人組が消えた原因に心当たりがあります」

ソニアがお母様と小声で話し合っている。あれだけの出来事で、もう心当たりがあるの? やっぱり、ソニアって凄い!

「なるほど、その可能性が高いわね」

「私の仮設通りであれば、先程の3人組と同格程度の者であれば、敷地内に侵入できても、この屋敷にまで到達できないと思われます」

ソニアの言う仮説って何かな?

「次、侵入者が現れたら、試す必要があるわね」

お母様、試すって!?
侵入者を敷地内に入れるの!!

「リーラ、亡者達が警備を掻い潜り、ここまで到達できる以上、敷地内といえど安心できないわ。今後、あなたは屋敷から1歩も出てはダメ。軽い軟禁状態になってしまうけど、自分の部屋でじっとしていなさい」

私も、お母様のお手伝いをしたい。でも、足手まといにはなりたくない。
今は、お母様の言う通りにしよう。

「はい…わかりました」

私はソニアに連れられ、自分の部屋に入った。ソニアも屋敷周辺を警戒するため、一旦外に出ていった。裏に、ネクロマンサーが潜んでいるなら、目的は何かな? この街で…マクレン領の海で、何を起こそうとしているのかな?

……怖いよ。

「リーラ、安心して。私がいるわ」
「光の精霊様!」

1人だと心細いけど、精霊様がいるなら安心だ。
心がポカポカする。

「シャーロットの帰還するタイミングが、こっちと合っていて良かったわ。詳しく言えないけど、これから色々と起こるわよ~」

私は不安しかないのに、なんで楽しそうなの? 精霊様はガーランド様と通じているから、何でも知っている。その分、何か事件が起こった時、多少のヒントを与えてくれるけど、基本誰の味方にもならない。それでも、精霊様がいるだけで、私の心が温かい。

「ほらほら、考えごともいいけど、外を見なさいな」

外?

「あ、誰かが敷地内に入ってきた!」

今度の侵入者は2人だ。警備の冒険者さんとの距離が近いから、余裕で対処できるよね。でも、侵入者2人組の足取りがおかしい。屋敷に近づけば近づくほど、足取りが重くなって立ち止まった? その隙に、冒険者さん達が2人組を……

「あ、消えた!?」

冒険者の人達が慌てて消えた2人組のところへ行って、何かを持ち上げた。あれは、ボロボロの服だ。消えたのは侵入者の身体だけで、衣類は残るんだ。ソニアとお母様も駆け寄って、色々話し合ってる。

「え? みんなが私を見た? なんで?」
「マーサも気づいているようね。詳しくはマーサから聞きなさいな」

う~ん、気になる。私を見たってことは、消えた原因は私にあるのかな? お母様とソニアが屋敷に入ってきた。私を見ていたから、ここに来るのかな?あ、思った通り、ドアのノックが……

「リーラ、入るわよ」
「うん、さっきの見てたよ。お母様、あれって私の仕業なの?」

「そうよ。あなたのユニークスキル【聖浄気】、その力が働いたことで、侵入者達の負の怨念が浄化され、身体も灰になってしまったのよ」

シャーロットが構造編集してくれた聖浄気、光の上位に位置する聖属性の魔力粒子を吸い込むことで、状態異常を回復させたり、悪感情を大幅に軽減させる効果があるはず。あれって、亡者にも効果があるんだ。

「お母様、侵入者達は私の聖属性の粒子を吸い込んだから?」

光の精霊様から、魔法属性のことを習った。ステータスに表記される魔法適正は、9つの基本属性のみだけど、光と闇だけには上位の属性があると言っていた。確か……【聖】と【邪】だったかな? この2つは、選ばれた者にしか備わらないとも習った。私の場合、シャーロットの構造編集で、特別に備わったんだ。

「そうよ。ネクロマンサーは闇魔法【リスポーン】で、死体に残る負の残留思念を強く呼び起こし、それをエネルギー源とすることで、死者を復活させることができる。しかも、自我に目覚めた死者を、自在に操作することもできる。リーラは、その根源となる【負の残留思念】を浄化させることができるのよ」

「それじゃあ、私が海に行けば、事件を解決できるの?」

「それはダメよ! まだ、あなたのレベルが低すぎて、効果範囲も狭い。これまでの侵入者達は、然程恨みを抱いていなかったから、離れた距離でも浄化できたの。でも、人に討伐されている魔物亡者は、人に対し強く恨みを抱いている。今のリーラのレベルだと、相当接近しないと討伐できるほどの浄化効果を発揮しないわ。それに、自分の娘を囮にするだなんて、絶対嫌よ」

私のステータスレベルは3、ユニークスキル【聖浄気】は、レベルが高いほど、強い効果を発揮する。今の私だと、この屋敷の敷地内が効果範囲となるんだ。でも、私から離れるほど、浄化の効果が薄れていく。今の時点で、【聖浄気】の真の力を発揮させるには、私に直接触れるしかない。

そんな危険行為、今の私には……出来ない。
それでも、みんなの役に立ちたい!

「お母様、真正面から行くのは自殺行為でも、海沿いの何処かに身を潜んでいれば、少しぐらい……」

「今はダメ。ネクロマンサーが何処に潜んでいるのかもわからない。死者を操っている以上、奴等もここでの出来事に気づいているかもしれない。幸い、海から出現する亡者の数も少ないから、まだベルンの街の冒険者や騎士だけで対処できる。リーラは、私達にとって切り札のような存在だから、今は屋敷内にいなさい。必要な時が来たら、必ず手伝ってもらうわ」

私の存在は切り札……いきなり私が海に行っても足手まといだし、最悪の場合殺される。私の力を最大限に利用できるタイミングまで、私は相手に見つかってはいけない。

「うん、わかった。必要な時が来たら言ってね」

お母様もソニアも、私の頭を撫でてくれた。

「お母様、ネクロマンサーが犯人だから、街の何処かに潜んでいるよね? これから捜索するの?」

「ハロルドが戻り次第、この情報を伝えて捜索に入るわ。自我の強い亡者達の中に、ネクロマンサーの情報を持っている者はいなかった。現状、どんな人物なのか、全く不明である以上、かなり難航するかもしれないわね」

人に化けている魔人族、どんな人に化けているのかもわからない。そんな簡単に見つかるはずがない。せめて、シャーロットやマリルさんの持つ魔法【真贋】があれば……お父様、大丈夫かな?


○○○


あれから、合計4人の侵入者が屋敷の敷地内に侵入した。彼らは、何故ここに来るのかな? リスポーンで復活させた亡者達全員が、何らかの負の感情を宿しているんだよね。しかも、海から現れているということは、全員が海難事故で亡くなり、その身体は海の底を漂っていた。ネクロマンサーは、どうやってか知らないけど、彼らの死体を見つけ出して復活させたんだ。

そうなると、屋敷の敷地内に侵入した亡者達は誰を恨んでいたのかな? 亡くなった時期がわからないけど、お父様? それとも、2年前病気で亡くなったお祖父様とお祖母様かな?

「うわ~、これは不味い。あいつが、もうここを嗅ぎつけたんだ。リーラ、もしかしたら誰かが死ぬかもしれないわ。あなた自身も生き残れるよう必死に考えて、行動に移しなさい。私は関わっちゃいけないから、一旦ここを離れるわね。一応、生き残るためのヒントをあげる。あなた自身が、既に答えを考えているわよ」

死ぬ!?

「ちょっと精霊様、それって……もういない」

あいつって誰? また、侵入者? 私は慌てて、自室の窓から外を覗いた。屋敷の正門付近に、誰かいる。ゆっくりと、こっちに近づいて来てる。でも、今までの侵入者達と明らかに、足取りが違う。その人は私の力に屈さず、屋敷を目指してる。あ、金髪で目つきの鋭い人間の女性だ。遠いから、年齢まではわからないや。動き易い軽やかな服を着てる。ここには、5人の冒険者もいるし、ソニアだっている。みんなが負けるはずがない!

1人の男性冒険者さん達が駆け寄って、女性を問い詰めようと……

「え、嘘!」

問い詰めようとした瞬間、問答無用で冒険者さんの顔を殴って、一撃で気絶させた。あ、他の警備の人達が剣を抜いて走り出した。窓を開けても、あの人達の声が殆ど聞こえない。ああ、聴力拡大のスキルがあれば……

「邪魔をするな!」

あ、体術だけで、警備の冒険者さん全員を気絶させた!?
ひ! 私と、目が合った瞬間、女の人がニマッと笑って、何か呟いた。
あ…ああ、どんどん屋敷に近づいてきてる。

「下がりなさい! あなたは、亡者ではありませんね。何者ですか!?」

この声はソニアだ! 
窓から身を少しだけ身を乗り出すと、両手に2つの短剣を装備したソニアが、屋敷入口にいた。

「へえ~、人間の中にも、少しはマシな奴がいるのね。この付近にいた亡者達が完全消失したから、何があるのかと思い訪れたのだけど、まさかの掘り出し物を見つけたわ。私は2階にいるお嬢ちゃんに会いに来たのよ。ねえ、会わせてくれない?」

私!? まさか……聖浄気に気づいたの!?

「その答えの先は…あなたもわかっているでしょう?」

ソニアの声が、いつもと違う。ピンと張り詰めたような怖い声だ。

「飼い主の命令に忠実に従うメイド…か。私と似ているわね。それなら、力づくで通らせてもらうわ。私達の力を完全無効化する存在が、人間側にいるなんてね」

あの人の力を無効化?
まさか、あの人がネクロマンサー!?

「でも、まだ力が弱い。ごめんなさいね。聖女のこともあって、エルディア王国にいる人達を極力殺さないよう命令されているんだけど、2階にいるお嬢ちゃんは別問題なの。その子だけは、殺すわ」

私…だけを殺す? 嫌だ…死にたくない。ソニア……

「お嬢様に手を出す輩は、私が許しません!」

ソニアが仕掛けた! 侵入者の女も、懐から短剣を取り出して、応戦した! う……動きが速すぎて、全然見えない。どっちが優勢なの? なんかあちこちから金属音が聞こえてくる。お願い…ソニア、勝って!

あ、見えた! ソニアのお腹に、侵入者の右拳が深々と刺さってる。ソニアが私を見て、何か言ったと思ったらそのまま崩れ落ちた。

「お嬢ちゃん、待っててね。今から行くわ」
「うわああぁぁぁ~~~」

どうしようどうしようどうしよう……あの女の狙いは、私だ。ここから逃げても、追ってくるよね。どうしたらいいの?

『リーラに手出しさせないわよ!』『お嬢に手を出すな!』
『お、お嬢様には、指1本触れさせない!』

『これは…想像以上に…まさか距離に依存している? 邪魔よ!』

お母様やメイド、ドワーフ達の声が聞こえたと思ったら、すぐに消えた。まさか……死……あ、私の部屋のドアが開いた。

「は~~い、リーラちゃん」
「ひ!」

どうする……どうすれば助かるの? 精霊様は、私自身が既に生き残る方法を考えていると言っていたけど……全然わからないよ!

「みんな…死んだの?」

「いいえ、殺していないわ。エルディア王国の人間を殺すつもりはないんだけど……あなたは別。悪く思わないでね。恨むのなら、そんなスキルか魔法を身につけた自分自身を恨みなさい。少し予定が狂ったけど、あなたを殺した後でアレを決行するわ」

ソニアと戦った後なのに、息一つ乱していない。それにこの人の目……本気だ。でも、どうしてかな? 屋敷に入る時に見た時と比べると、顔色が悪い。それを悟られまいと、必死で隠しているような気がする。逃げられない……どうしたらいいの?

「安心して。痛みを感じさせず、死なせて…あ…げ…る」

右手に持っている短剣をクルクルクルクル回転させてる。ネクロマンサーって、魔法使いでしょ? なんで、あんな戦闘ができるの?

「あ…あなた達の目的は何!?」
「この大地に混乱と混迷を」
混乱と混迷?

「あなたに近づけば近づくほど、私の中にある根源が抜けていくような感覚に陥る。いえ、実際に抜けているのかもしれない。私達の計画を成し遂げるには、あなたの存在は脅威なのよ。今の段階で、あなたを発見できたのは僥倖ね」

1歩1歩、私に近づいてくる。全員が気絶しているのなら、時間を稼げば……

「ふふふ、助けは来ないわよ。少なくとも、全員30分は動けないでしょうね。諦めなさい、あなただけは確実に死ぬわ」

た、助けて…シャーロット…オーキス。あ…ダメだ。人に頼っていたら、確実に死ぬだけだ。今、私自身が何か行動を起こさないと。私の持つ力の中で、あの女を撃退させる方法を探さないと……

「さあ、捕まえた」
「うがあ、は…はな…せ」

女の左手が、私の首をきつく握りしめた! 

「…ぐ…ダ~メ」

うああ、首が絞まって……私の身体が持ち上げられた。

「い…や…だ。死に…たく…ない。た…す…け…て」
「ぐ…こ…れは……早く殺した方が…良さそうね。リーラ…ちゃん、さよ~なら」

あ、力が抜けて…いく。
お母様…お父様…ソニア…シャーロット……オーキス………………




○○○

次回更新予定日は、11/2(金)10時40分です!
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