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《シャーロットが帝王となった場合のifルート》第2部 8歳〜アストレカ大陸編【ガーランド法王国
シャーロット、ガーランド法王国を乗っ取ります
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鳥が、《ピョンピョン》、《ピョンピョン》と鳴いている。私はゆっくりと目を開け、布団を捲り、ベッドから出た。カーテンを開けると、清々しい程の快晴であるためか、心の中も穏やかだ。
「朝だ…天気も快晴だ。昨日の出来事が嘘のようだ」
昨日、神様の住む世界から王都の別邸へ戻され、私の意識が覚醒し目を開けると、そこは自室のベッドだった。私はすぐにリビングへと移動した。部屋に入ると、お父様達とお母様が私を見て、急に抱きついてきた。いきなりの行動で驚いたけど、私が突然消えた後の話を聞いて納得した。
とあるメッセージが、お父様、お母様、マリルのステータスに送られてきたのだ。
差出人は《神ミスラテル様》
【私の名は、神ミスラテル。あなた達の敬う神ガーランドは諸事情により、今日から約10年間、この惑星を離れます。ガーランドの代役として、私がこの惑星の管理を務めることになりましたが、私と精霊だけでは管理しきれない場合もあります。そこで、神の領域に踏み込んでいるシャーロットにも協力してもらおうと思い、今回私達の世界に呼び出したのです。現在、彼女には、こちらの事情を説明している段階ですから、別邸に戻るのは1、2時間後になるでしょう。彼女がそちらに帰還しても、ここでの出来事を話せません。あなた達も、この件を他者に言ってはいけませんよ。それと……シャーロットとマリルの制約に関しては、動きを制限するので破棄させてもらいます。お仕置きスキルだけは残しておきますね】
ミスラテル様は、ガーランド様が一時離脱することを私の両親に伝えたのだ。この内容なら、お父様やお母様が私を心配するのもわかる。《神ガーランド様がこの惑星を離れる》、二人にとって衝撃的内容だから、私の身を心配するよね。神の世界で起きた出来事を伝えられないけど、これまで通りの生活を送れることだけは、両親に言っておいた。
《神ガーランドが私に恋して暴走しちゃった》
《その所為で、神ガーランドは上司に激怒されて、惑星管理の仕事を外されちゃった》
《私と精霊が神ガーランドをお仕置きしちゃった》
う~ん、全部私が絡んでいる。こんな内容、口が裂けても両親に言えない。二人とも私の言葉を聞いて安心し、それ以上追求してこなかったから、私としても正直助かった。昨日の時点で、ガーランド様へのお仕置きも完了し、私の片付ける案件はガーランド法王国への対応のみとなる。ヒール魔法の隠蔽、200年前の戦争、隠れ魔人族の反乱、これら全ての原因がガーランド法王国にある。この件を片付ければ、アストレカ大陸内における魔人族への差別も、大きく緩和されるだろう。
ふふふ、今日…私がガーランド法王国へ赴き、法王に引導を渡してやる!
カムイと連動したことにより、法王国王都地上の座標位置も把握した。私自身が王都を知らないので、その位置へ転移できない。でも、障害物が何もない上空ならば、簡単にイメージできるから転移可能だ。私がこの国で何を行うのか、それもお父様達に伝え、納得してもらっている。
昨日、従魔達をアストレカ大陸全土に放った後、私はネルエルさんとベルナデッドさんを別邸に連れて行き、お父様とお母様に2人を紹介してから、ここまでの事情を全て説明した。そして、従魔達が亡者を殲滅した後に行われる最後の仕事、【ガーランド法王国の乗っ取り】を伝えたのだ。すると、お父様は……
「シャーロットの仲間達が、あの国を制圧した以上、獣人達も逆らえない。それに、シャーロット達があの国を乗っ取り、ガーランド法王国の政治体制をそのままに、役人達をフランジュ帝国のような多種族に任せる案は良いかもしれない」
お母様は…
「そうね。当面は法王が各国に事情を説明して、賠償などの責任をとってもらう形をとるけど、その間にシャーロットが全ての膿を取り除き、国を経営させるための人材を各国から要請し確保していく。法王や従魔達のおかげで、シャーロットの脅威も伝わっているだろうし、各国も真摯に対応してくれると思うわ」
そう、お父様もお母様も、私のお国乗っ取り案に賛成してくれた。ガーランド法王国自体、戦争や宗教を除いた国内の政治体制に、大きな問題はない。どんな政治をやろうとも、結局政治家が悪党ならば、法の隙を突き、悪さを働いてしまう。
だったら、これまでに抱え込んでいる秘密を全て暴露し、責任を取ってもらってから、今の王族貴族達を退場させればいい。貴族の場合、今の王族が罪の重さを判断し、【爵位のダウン】、【平民または奴隷行き】、最悪【死刑】となるだろう。そして王族の場合、貴族へランクダウンするだけだ。王族達は大罪を犯している。本来であれば、死刑にすべき存在だろう。しかし、この国の領土全てを知り尽くしているのも、王族だけなのだ。今後、伯爵位くらいの貴族へ降下させて、その知識を存分に利用させてもらおう。
くくく、緩い処分と思われるかもだけど、王族からしてみれば、平民からも貴族からも恨まれている以上、自分達家族以外は全て敵の状態から始まる。最悪、利用価値が無くなれば、誰かに暗殺される場合もある。彼らだって、自分達の置かれている状況を理解している。暗殺されるか、新興国の新たな貴族として認められるか、全ては法王達の行動次第だ。私は、一切助けない。この考えは、お父様やお母様にも伝えている。ただ…
「シャーロット……子供の思考ではないよ? 誰に教わったんだい?」
「本当にね~、誰に教わったのか知りたいわ~。その人に、きちんと挨拶しないといけないわね~。私達の大切な娘に何を教えたのかしらね~」
この時のお父様とお母様の顔が、物凄く怖かった。私自身の考えなんだけど、それを正直に言っちゃうと不味い気がして……
「お父様、お母様、私はジストニス王国で反乱軍に参加し、その中枢で色々と動きました。その際、アトカという少し人相の悪いダークエルフさんから、様々な事を学んだんです。彼の言葉には、非常に感銘を受けました」
全部、アトカさんから教わったことにした。
そのせいで……
「父としては、子供の成長を嬉しく思う。アトカという人に、御礼を言っておかないといけないね」
「母として嬉しいのだけど、私もアトカという人物に是非会って、色々と言っておきたいわ~」
二人の言葉に何処か棘を感じた。アトカさん、ごめんね。
お国乗っ取り案の中でも、お父様とお母様が一番疑問に思ったこと、それは新たに誕生する国の王に、誰を即位させるかだ。私は二人に、【ガーランド教エルディア支部のアドルフ教皇が適任です】と訴えた。
イザベルの件で招聘された際、アドルフ教皇は法王に、【ヒール系の隠蔽が露見された以上、全ての闇を明るみにすべきです】と言い放ったらしい。彼が、何処まで【国の闇】を把握しているのかはわからない。でも、その発言により法王の怒りを買ってしまい、消息不明となってしまった。
【教皇】は、アストレカ大陸の各国に一人ずつ存在する。ガーランド法王国では、法王の次に偉い地位となる。貴族に例えると、公爵位と同等だ。これまで法王に対し、ハッキリと明確に楯突いた教皇は、一人もいなかった。今回の騒動のおかげで、アドルフ教皇の評価は大きく上がっているはずだ。彼を国王に即位させても、文句を言う人は少ないと思う。各国の教皇達にとっては面白くないかもしれないけど、今後のアドルフ教皇の活躍次第で、彼を支持してくれる人も多くなってゆくだろう。
国王陛下が昨日の時点で、アドルフ様の居場所を法王に問いただすと言ってあるから、もう居場所も判明し、話し合いも終わっているはずだ。その際、私の起死回生策も伝えられているから、私が到着する頃には、アドルフ様も全ての事情を把握しているだろう。国王陛下やお父様達も私の案を認めてくれたし、彼には新興国の国王になってもらいたい。
隠れ魔人族達の意見をまだ聞いていないけど、ネルエルさんやベルナデッドさんはこの案を快く思ってくれた。魔人族達は隠れ住んでいたこともあって、この新たな国の中枢に関われないけど、戦争の真実が明るみとなった以上、差別意識も緩和され、今後王都を自由に歩き回れる。いずれは周辺国家にも、この情報が浸透していき、アストレカ大陸全土において、魔人族達が四種族と楽しく語り合える日もくるだろう。
ただ、一つだけ懸念事項がある。
あの国の人達は、私の従魔の怖さを知ったけど、私自身の怖さを知らない。現時点で、お国乗っ取り案を法王に伝えても、王族はともかく、貴族の中には私を舐めている奴等もいるはずだ。だから、私が直接乗り込んだ後、構造解析スキルをフルに利用して、私の怖さを王族貴族全員に味わせる。
【この聖女と従魔を敵に回してはいけない】という思いを心の奥底にまで染み込ませてやる。この方法だけは、反対される可能性大だから、国王陛下にもお父様達にも言ってない。
今日は記念すべき1日となるね。
ネルエルさん、ベルナデッドさんを連れて、ガーランド法王国へ出発だ!!
○○○
ここはエルディア王国王城、国王専用執務室、私はマリル、ネルエルさん、ベルナデッドさんを引き連れて、ガーランド法王国に赴くべく、国王陛下へ出発の挨拶に伺った。事前に謁見のアポイントをとっていたからか、陛下だけでなく、ルルリア王妃様やヘンデル枢機卿もいた。
「シャーロット、我が国の臣下達には、これから行われる作業のことを伝えてある。全員が神妙な雰囲気となり、合掌ポーズをとっていた。昨日の従魔達を見たこともあって、君の強さの片鱗を感じたのかもしれん」
昨日、Aランク以上の従魔達が勢揃いしていたもんね。しかも、従魔達は私の指摘に対し、若干怯えていたから、臣下の人達も下手に逆らえないと思ったのだろう。それで、ガーランド法王国の王族達に向けて、合掌したのかな?
「ガーランド法王国の法王にも、聖女が今日の朝のうちに、そちらに到着する旨を伝えてある。そして、何を言い渡されるのかも伝えている。法王としては、王族全員が死刑にならないことを聞いて、ホッとしたようだ。我が国の教皇アドルフは、王城地下に幽閉されていたが、即に解放されており、国賓用の客室に移されている」
アドルフ教皇、王城地下に幽閉されていたんだ。既に王城内にいるのなら、何が起きたのかも伝わっているよね。そして、私が何をするのかも、法王から聞いているでしょ。
「準備がほぼ整っているようですね。まずは王族に会いに行き、今後のことについて説明します。その後、隠れ魔人族の長のもとへ訪れ、彼女を回復させます。ああ、それと国王陛下とヘンデル様には、この簡易神具【グローバル通信機】を1台ずつ渡しておきます」
グローバル通信機、見た目は6インチのスマートフォンだ。これを持っている人達は、いつでも何処でも私と連絡をとることができる。原理を含めて、機能をみんなに説明すると……
「この小さな長方形の魔導具の画面に、ヘンデル、シャーロット、ジークが描かれているが、これに触れれば、皆と連絡をとれるのか?」
スマートフォンと言っても、機能は通話のみ。わかりやすくするため、スマホの持ち主だけが、画面上に顔だけ現れるよう設定してある。個人を決める電話番号のようなものはいらない。
「はい。お父様にも、1台渡しています。画面上にあるお父様の顔に触れれば、お父様とも連絡がとれます。また、この簡易神具を私から手渡されると、最初に触った人が持ち主として登録されます。盗難にあっても、持ち主から一定距離離れた瞬間、手元に戻る仕組みとなっています」
「シャーロットちゃん、私には?」
ルルリア王妃様が、物凄く欲しそうな顔をしている。
「ありません。これは魔導具ではなく、簡易神具です。神の力で製作しているので、現在の私の神力では、台数を多く作れません」
うわあ~、あからさまにガッカリしている。
「台数も少ないので、私と大きく繋がりのある人物にしか渡せません。いずれ、ハーモニック大陸にいるクロイス女王にも渡しますので、彼女が通信機を持った時点で、彼女の顔が画面上に現れます」
「なに!? それでは、アストレカ大陸にいる私からハーモニック大陸にいるクロイス女王へも繋がるのか?」
いずれは、メールも付けたいと思っている。今は、通話だけで十分だ。
「はい、繋がります。魔人族達の対処が落ち着いたら、連絡してみるのもアリかもしれません」
トップ同士の会談は、まだまだ先の話だけど、まずは私的な電話だけで、話を進めていった方が、互いの為にもなるよね。この電話機能には、ちょっとしたサプライズも組み込んでいるから、初めて使用した時、驚くことになる。
「ガーランド法王国に到着次第、トキワさんとアッシュさんにも渡しておきます。トキワさんに関しては、顔だけでも知っておいた方がいいです」
そこは、全員が頷いてくれた。
「マリル、君はエルバラン公爵家別邸にて待機だ。ガーランド法王国には、3人だけで行ってもらう。最早、君の護衛も必要ないだろう」
国王陛下の案に賛成だ。ガーランド法王国の王族達は私の強さを認識している。まだ、完全解決していない以上、英雄でもあるマリルは、ここに残った方がいい。
「わかりました。シャーロット様、御武運を祈ります」
私は、静かに頷いた。
「それでは、今から私達3人は、ガーランド法王国王都に旅立たせてもらいます。話が落ち着いた頃、グローバル通信機を用いて通信しますので、陛下は必ず通信機を身につけておいて下さい。通信があれば、音で知らせてくれます」
私は国王陛下達から許可を貰い、執務室から一気に王都ガーランド上空50mへと転移した。
「間違いなく、ここはガーランド法王国王都ね。広大な大陸の南に位置するエルディア王国から大陸最北端に位置するガーランド法王国に転移するなんて…」
ベルナデットさんが言うのだから、ここがガーランド法王国になるのか。気候的にはエルディア王国よりも、少し暑く湿気の多い環境かな。下には半壊した王城と王都があり、国の首都だけあって、かなり広い。建築様式も、エルディア王国とかなり違う。
「シャーロット、ベルナデットさん、王都の様子が何処かおかしいわ。全体が、ピリピリと強い緊張感に覆われているような?」
ネルエルさんの言う緊張感の正体は、【怒り】かな。王都にいる人々は、王族達に対し怒っている。全ての真相を知ったのだから、当然だ。アッシュさんのおかげで、この膠着状態が続いている。私が登場することで、その状態から解き放ってあげよう。
私達は王城から程近い茂みに着地し、王城入口へと向かった。おそらく、本来は立派な城壁が王城を覆い、外部からの侵入者を防いでいたのだろうけど、見事に右半分が半壊している。王城も右側1/3程が崩れている。
「あ…あ…ああ! あなた様は聖女シャーロット様でしょうか!?」
正門入口付近まで行くと、猫型獣人の男性警備兵が私に気づき、こちらに近づいてきた。獣人の場合、人にもよるけど、年齢まではわかりにくい。この人は声の感じらかして、20代前半かな。
「はい。シャーロット・エルバランです。エルディア国王陛下からの…」
「大丈夫でございます! シャー…メダルに刻まれた御顔と、あなた様の御顔が一致しています。今すぐに、あの馬鹿法王とトキワ様にお伝えしてきます! あ、お2人の魔鬼族様方も、少々お待ちください」
「「魔鬼族様!?」」
警備兵は、あっという間に王城内へと走っていった。
「ちょっと…なんなのよ、魔鬼族様って…随分と扱いが違うわね」
「ええ、以前なら魔人族を見ても、軽蔑しきった目で愚弄していたのに。それに馬鹿法王って……」
ベルナデットさんもネルエルさんも、扱いの差に驚いている。男性獣人の発言から考えて、王族の権威は既に地に堕ちているね。トキワさん、王城内で相当暴れたんだ。
五分もしないうちに、王城内から次から次へと獣人達が溢れ出てきた。こんな多くの獣人を見るのは、生まれて初めてだ。犬、猫、狐、狸など、色んなタイプの獣人がいる。でも、彼らの様子がおかしい。全員がこちらに向かってくるのだけど、綺麗に二手に分かれていき、最終的に、獣人の壁が両端に出来上がり、正門から王城入口まで真っ直ぐに続く道が完成した。獣人達の身長が180センチ近くあるせいで、私の視点から見れば、何処か怖い。
「「「聖女様方、ようこそいらっしゃいました! トキワ様がお待ちしております!」」」
ええ~~!?
練習していたのか、全員が一斉に叫んだ!
そして、そこはトキワ様ではなく、法王様でしょ!?
もう完全に、トキワさんが支配者になっているよ!!
ネルエルさんもベルナデットさんも、この異様な雰囲気に呑まれたのか、言葉を失っている。
あ、王城入口に、カムイとトキワさんとアッシュさんが現れた。アッシュさんの側には、やや薄汚い平民服を着た12歳くらいの魔鬼族の女の子がいる。カムイから詳しく聞いた限りだと、浮気相手とかではなく、この女性を経由することで、隠れ魔人族達と繋がりを持てたらしい。マデリンという名前だったよね。
そして、トキワさんの側にいるのが王族達かな?
……うん、間違いなく王族だ。
ただ、全員が畏まっているせいか、トキワさんよりも小さく見える。この雰囲気、昨日のガーランド様と同じだ。既にお仕置きが執行済みだから、私に対し、逆らう気持ちが微塵もない。それどころか、王族達は獣人達から完全に見離されている。
正直、入りづらい。ここを通らないといけないの?
トキワさんがそれを察知したのか、【こっちに来い】と手招きしている。
アッシュさんは、苦笑いだ。
「……お2人とも行きましょう」
「獣人達には、プライドというものがないのかしら? 聖女様はともかく、私達に対してまで、敬意を払っているわよ」
「ベルナデットさん、文句はトキワさんに言ってください。奥にいる彼が、そのプライドを完膚無きまでに、ズタズタに壊したのです」
両脇にいる獣人達の中に、怒りを灯している人はいない。明らかに、私達の登場に喜びを抱えている。
「はあ~、聖女様のお仲間も、常識から逸脱した人物ってことね」
それは、トキワさんだけです!!
私達は、ゆっくりと歩を進め、獣人ロードに足を踏み入れた。ここからは、一応戦闘態勢に入っておこう。これからこの国を乗っ取る話をするのだから、子供だからといって、舐められてはいけない。
○○○作者からの一言
次回更新予定日は、12/11(火)10時40分です。
「朝だ…天気も快晴だ。昨日の出来事が嘘のようだ」
昨日、神様の住む世界から王都の別邸へ戻され、私の意識が覚醒し目を開けると、そこは自室のベッドだった。私はすぐにリビングへと移動した。部屋に入ると、お父様達とお母様が私を見て、急に抱きついてきた。いきなりの行動で驚いたけど、私が突然消えた後の話を聞いて納得した。
とあるメッセージが、お父様、お母様、マリルのステータスに送られてきたのだ。
差出人は《神ミスラテル様》
【私の名は、神ミスラテル。あなた達の敬う神ガーランドは諸事情により、今日から約10年間、この惑星を離れます。ガーランドの代役として、私がこの惑星の管理を務めることになりましたが、私と精霊だけでは管理しきれない場合もあります。そこで、神の領域に踏み込んでいるシャーロットにも協力してもらおうと思い、今回私達の世界に呼び出したのです。現在、彼女には、こちらの事情を説明している段階ですから、別邸に戻るのは1、2時間後になるでしょう。彼女がそちらに帰還しても、ここでの出来事を話せません。あなた達も、この件を他者に言ってはいけませんよ。それと……シャーロットとマリルの制約に関しては、動きを制限するので破棄させてもらいます。お仕置きスキルだけは残しておきますね】
ミスラテル様は、ガーランド様が一時離脱することを私の両親に伝えたのだ。この内容なら、お父様やお母様が私を心配するのもわかる。《神ガーランド様がこの惑星を離れる》、二人にとって衝撃的内容だから、私の身を心配するよね。神の世界で起きた出来事を伝えられないけど、これまで通りの生活を送れることだけは、両親に言っておいた。
《神ガーランドが私に恋して暴走しちゃった》
《その所為で、神ガーランドは上司に激怒されて、惑星管理の仕事を外されちゃった》
《私と精霊が神ガーランドをお仕置きしちゃった》
う~ん、全部私が絡んでいる。こんな内容、口が裂けても両親に言えない。二人とも私の言葉を聞いて安心し、それ以上追求してこなかったから、私としても正直助かった。昨日の時点で、ガーランド様へのお仕置きも完了し、私の片付ける案件はガーランド法王国への対応のみとなる。ヒール魔法の隠蔽、200年前の戦争、隠れ魔人族の反乱、これら全ての原因がガーランド法王国にある。この件を片付ければ、アストレカ大陸内における魔人族への差別も、大きく緩和されるだろう。
ふふふ、今日…私がガーランド法王国へ赴き、法王に引導を渡してやる!
カムイと連動したことにより、法王国王都地上の座標位置も把握した。私自身が王都を知らないので、その位置へ転移できない。でも、障害物が何もない上空ならば、簡単にイメージできるから転移可能だ。私がこの国で何を行うのか、それもお父様達に伝え、納得してもらっている。
昨日、従魔達をアストレカ大陸全土に放った後、私はネルエルさんとベルナデッドさんを別邸に連れて行き、お父様とお母様に2人を紹介してから、ここまでの事情を全て説明した。そして、従魔達が亡者を殲滅した後に行われる最後の仕事、【ガーランド法王国の乗っ取り】を伝えたのだ。すると、お父様は……
「シャーロットの仲間達が、あの国を制圧した以上、獣人達も逆らえない。それに、シャーロット達があの国を乗っ取り、ガーランド法王国の政治体制をそのままに、役人達をフランジュ帝国のような多種族に任せる案は良いかもしれない」
お母様は…
「そうね。当面は法王が各国に事情を説明して、賠償などの責任をとってもらう形をとるけど、その間にシャーロットが全ての膿を取り除き、国を経営させるための人材を各国から要請し確保していく。法王や従魔達のおかげで、シャーロットの脅威も伝わっているだろうし、各国も真摯に対応してくれると思うわ」
そう、お父様もお母様も、私のお国乗っ取り案に賛成してくれた。ガーランド法王国自体、戦争や宗教を除いた国内の政治体制に、大きな問題はない。どんな政治をやろうとも、結局政治家が悪党ならば、法の隙を突き、悪さを働いてしまう。
だったら、これまでに抱え込んでいる秘密を全て暴露し、責任を取ってもらってから、今の王族貴族達を退場させればいい。貴族の場合、今の王族が罪の重さを判断し、【爵位のダウン】、【平民または奴隷行き】、最悪【死刑】となるだろう。そして王族の場合、貴族へランクダウンするだけだ。王族達は大罪を犯している。本来であれば、死刑にすべき存在だろう。しかし、この国の領土全てを知り尽くしているのも、王族だけなのだ。今後、伯爵位くらいの貴族へ降下させて、その知識を存分に利用させてもらおう。
くくく、緩い処分と思われるかもだけど、王族からしてみれば、平民からも貴族からも恨まれている以上、自分達家族以外は全て敵の状態から始まる。最悪、利用価値が無くなれば、誰かに暗殺される場合もある。彼らだって、自分達の置かれている状況を理解している。暗殺されるか、新興国の新たな貴族として認められるか、全ては法王達の行動次第だ。私は、一切助けない。この考えは、お父様やお母様にも伝えている。ただ…
「シャーロット……子供の思考ではないよ? 誰に教わったんだい?」
「本当にね~、誰に教わったのか知りたいわ~。その人に、きちんと挨拶しないといけないわね~。私達の大切な娘に何を教えたのかしらね~」
この時のお父様とお母様の顔が、物凄く怖かった。私自身の考えなんだけど、それを正直に言っちゃうと不味い気がして……
「お父様、お母様、私はジストニス王国で反乱軍に参加し、その中枢で色々と動きました。その際、アトカという少し人相の悪いダークエルフさんから、様々な事を学んだんです。彼の言葉には、非常に感銘を受けました」
全部、アトカさんから教わったことにした。
そのせいで……
「父としては、子供の成長を嬉しく思う。アトカという人に、御礼を言っておかないといけないね」
「母として嬉しいのだけど、私もアトカという人物に是非会って、色々と言っておきたいわ~」
二人の言葉に何処か棘を感じた。アトカさん、ごめんね。
お国乗っ取り案の中でも、お父様とお母様が一番疑問に思ったこと、それは新たに誕生する国の王に、誰を即位させるかだ。私は二人に、【ガーランド教エルディア支部のアドルフ教皇が適任です】と訴えた。
イザベルの件で招聘された際、アドルフ教皇は法王に、【ヒール系の隠蔽が露見された以上、全ての闇を明るみにすべきです】と言い放ったらしい。彼が、何処まで【国の闇】を把握しているのかはわからない。でも、その発言により法王の怒りを買ってしまい、消息不明となってしまった。
【教皇】は、アストレカ大陸の各国に一人ずつ存在する。ガーランド法王国では、法王の次に偉い地位となる。貴族に例えると、公爵位と同等だ。これまで法王に対し、ハッキリと明確に楯突いた教皇は、一人もいなかった。今回の騒動のおかげで、アドルフ教皇の評価は大きく上がっているはずだ。彼を国王に即位させても、文句を言う人は少ないと思う。各国の教皇達にとっては面白くないかもしれないけど、今後のアドルフ教皇の活躍次第で、彼を支持してくれる人も多くなってゆくだろう。
国王陛下が昨日の時点で、アドルフ様の居場所を法王に問いただすと言ってあるから、もう居場所も判明し、話し合いも終わっているはずだ。その際、私の起死回生策も伝えられているから、私が到着する頃には、アドルフ様も全ての事情を把握しているだろう。国王陛下やお父様達も私の案を認めてくれたし、彼には新興国の国王になってもらいたい。
隠れ魔人族達の意見をまだ聞いていないけど、ネルエルさんやベルナデッドさんはこの案を快く思ってくれた。魔人族達は隠れ住んでいたこともあって、この新たな国の中枢に関われないけど、戦争の真実が明るみとなった以上、差別意識も緩和され、今後王都を自由に歩き回れる。いずれは周辺国家にも、この情報が浸透していき、アストレカ大陸全土において、魔人族達が四種族と楽しく語り合える日もくるだろう。
ただ、一つだけ懸念事項がある。
あの国の人達は、私の従魔の怖さを知ったけど、私自身の怖さを知らない。現時点で、お国乗っ取り案を法王に伝えても、王族はともかく、貴族の中には私を舐めている奴等もいるはずだ。だから、私が直接乗り込んだ後、構造解析スキルをフルに利用して、私の怖さを王族貴族全員に味わせる。
【この聖女と従魔を敵に回してはいけない】という思いを心の奥底にまで染み込ませてやる。この方法だけは、反対される可能性大だから、国王陛下にもお父様達にも言ってない。
今日は記念すべき1日となるね。
ネルエルさん、ベルナデッドさんを連れて、ガーランド法王国へ出発だ!!
○○○
ここはエルディア王国王城、国王専用執務室、私はマリル、ネルエルさん、ベルナデッドさんを引き連れて、ガーランド法王国に赴くべく、国王陛下へ出発の挨拶に伺った。事前に謁見のアポイントをとっていたからか、陛下だけでなく、ルルリア王妃様やヘンデル枢機卿もいた。
「シャーロット、我が国の臣下達には、これから行われる作業のことを伝えてある。全員が神妙な雰囲気となり、合掌ポーズをとっていた。昨日の従魔達を見たこともあって、君の強さの片鱗を感じたのかもしれん」
昨日、Aランク以上の従魔達が勢揃いしていたもんね。しかも、従魔達は私の指摘に対し、若干怯えていたから、臣下の人達も下手に逆らえないと思ったのだろう。それで、ガーランド法王国の王族達に向けて、合掌したのかな?
「ガーランド法王国の法王にも、聖女が今日の朝のうちに、そちらに到着する旨を伝えてある。そして、何を言い渡されるのかも伝えている。法王としては、王族全員が死刑にならないことを聞いて、ホッとしたようだ。我が国の教皇アドルフは、王城地下に幽閉されていたが、即に解放されており、国賓用の客室に移されている」
アドルフ教皇、王城地下に幽閉されていたんだ。既に王城内にいるのなら、何が起きたのかも伝わっているよね。そして、私が何をするのかも、法王から聞いているでしょ。
「準備がほぼ整っているようですね。まずは王族に会いに行き、今後のことについて説明します。その後、隠れ魔人族の長のもとへ訪れ、彼女を回復させます。ああ、それと国王陛下とヘンデル様には、この簡易神具【グローバル通信機】を1台ずつ渡しておきます」
グローバル通信機、見た目は6インチのスマートフォンだ。これを持っている人達は、いつでも何処でも私と連絡をとることができる。原理を含めて、機能をみんなに説明すると……
「この小さな長方形の魔導具の画面に、ヘンデル、シャーロット、ジークが描かれているが、これに触れれば、皆と連絡をとれるのか?」
スマートフォンと言っても、機能は通話のみ。わかりやすくするため、スマホの持ち主だけが、画面上に顔だけ現れるよう設定してある。個人を決める電話番号のようなものはいらない。
「はい。お父様にも、1台渡しています。画面上にあるお父様の顔に触れれば、お父様とも連絡がとれます。また、この簡易神具を私から手渡されると、最初に触った人が持ち主として登録されます。盗難にあっても、持ち主から一定距離離れた瞬間、手元に戻る仕組みとなっています」
「シャーロットちゃん、私には?」
ルルリア王妃様が、物凄く欲しそうな顔をしている。
「ありません。これは魔導具ではなく、簡易神具です。神の力で製作しているので、現在の私の神力では、台数を多く作れません」
うわあ~、あからさまにガッカリしている。
「台数も少ないので、私と大きく繋がりのある人物にしか渡せません。いずれ、ハーモニック大陸にいるクロイス女王にも渡しますので、彼女が通信機を持った時点で、彼女の顔が画面上に現れます」
「なに!? それでは、アストレカ大陸にいる私からハーモニック大陸にいるクロイス女王へも繋がるのか?」
いずれは、メールも付けたいと思っている。今は、通話だけで十分だ。
「はい、繋がります。魔人族達の対処が落ち着いたら、連絡してみるのもアリかもしれません」
トップ同士の会談は、まだまだ先の話だけど、まずは私的な電話だけで、話を進めていった方が、互いの為にもなるよね。この電話機能には、ちょっとしたサプライズも組み込んでいるから、初めて使用した時、驚くことになる。
「ガーランド法王国に到着次第、トキワさんとアッシュさんにも渡しておきます。トキワさんに関しては、顔だけでも知っておいた方がいいです」
そこは、全員が頷いてくれた。
「マリル、君はエルバラン公爵家別邸にて待機だ。ガーランド法王国には、3人だけで行ってもらう。最早、君の護衛も必要ないだろう」
国王陛下の案に賛成だ。ガーランド法王国の王族達は私の強さを認識している。まだ、完全解決していない以上、英雄でもあるマリルは、ここに残った方がいい。
「わかりました。シャーロット様、御武運を祈ります」
私は、静かに頷いた。
「それでは、今から私達3人は、ガーランド法王国王都に旅立たせてもらいます。話が落ち着いた頃、グローバル通信機を用いて通信しますので、陛下は必ず通信機を身につけておいて下さい。通信があれば、音で知らせてくれます」
私は国王陛下達から許可を貰い、執務室から一気に王都ガーランド上空50mへと転移した。
「間違いなく、ここはガーランド法王国王都ね。広大な大陸の南に位置するエルディア王国から大陸最北端に位置するガーランド法王国に転移するなんて…」
ベルナデットさんが言うのだから、ここがガーランド法王国になるのか。気候的にはエルディア王国よりも、少し暑く湿気の多い環境かな。下には半壊した王城と王都があり、国の首都だけあって、かなり広い。建築様式も、エルディア王国とかなり違う。
「シャーロット、ベルナデットさん、王都の様子が何処かおかしいわ。全体が、ピリピリと強い緊張感に覆われているような?」
ネルエルさんの言う緊張感の正体は、【怒り】かな。王都にいる人々は、王族達に対し怒っている。全ての真相を知ったのだから、当然だ。アッシュさんのおかげで、この膠着状態が続いている。私が登場することで、その状態から解き放ってあげよう。
私達は王城から程近い茂みに着地し、王城入口へと向かった。おそらく、本来は立派な城壁が王城を覆い、外部からの侵入者を防いでいたのだろうけど、見事に右半分が半壊している。王城も右側1/3程が崩れている。
「あ…あ…ああ! あなた様は聖女シャーロット様でしょうか!?」
正門入口付近まで行くと、猫型獣人の男性警備兵が私に気づき、こちらに近づいてきた。獣人の場合、人にもよるけど、年齢まではわかりにくい。この人は声の感じらかして、20代前半かな。
「はい。シャーロット・エルバランです。エルディア国王陛下からの…」
「大丈夫でございます! シャー…メダルに刻まれた御顔と、あなた様の御顔が一致しています。今すぐに、あの馬鹿法王とトキワ様にお伝えしてきます! あ、お2人の魔鬼族様方も、少々お待ちください」
「「魔鬼族様!?」」
警備兵は、あっという間に王城内へと走っていった。
「ちょっと…なんなのよ、魔鬼族様って…随分と扱いが違うわね」
「ええ、以前なら魔人族を見ても、軽蔑しきった目で愚弄していたのに。それに馬鹿法王って……」
ベルナデットさんもネルエルさんも、扱いの差に驚いている。男性獣人の発言から考えて、王族の権威は既に地に堕ちているね。トキワさん、王城内で相当暴れたんだ。
五分もしないうちに、王城内から次から次へと獣人達が溢れ出てきた。こんな多くの獣人を見るのは、生まれて初めてだ。犬、猫、狐、狸など、色んなタイプの獣人がいる。でも、彼らの様子がおかしい。全員がこちらに向かってくるのだけど、綺麗に二手に分かれていき、最終的に、獣人の壁が両端に出来上がり、正門から王城入口まで真っ直ぐに続く道が完成した。獣人達の身長が180センチ近くあるせいで、私の視点から見れば、何処か怖い。
「「「聖女様方、ようこそいらっしゃいました! トキワ様がお待ちしております!」」」
ええ~~!?
練習していたのか、全員が一斉に叫んだ!
そして、そこはトキワ様ではなく、法王様でしょ!?
もう完全に、トキワさんが支配者になっているよ!!
ネルエルさんもベルナデットさんも、この異様な雰囲気に呑まれたのか、言葉を失っている。
あ、王城入口に、カムイとトキワさんとアッシュさんが現れた。アッシュさんの側には、やや薄汚い平民服を着た12歳くらいの魔鬼族の女の子がいる。カムイから詳しく聞いた限りだと、浮気相手とかではなく、この女性を経由することで、隠れ魔人族達と繋がりを持てたらしい。マデリンという名前だったよね。
そして、トキワさんの側にいるのが王族達かな?
……うん、間違いなく王族だ。
ただ、全員が畏まっているせいか、トキワさんよりも小さく見える。この雰囲気、昨日のガーランド様と同じだ。既にお仕置きが執行済みだから、私に対し、逆らう気持ちが微塵もない。それどころか、王族達は獣人達から完全に見離されている。
正直、入りづらい。ここを通らないといけないの?
トキワさんがそれを察知したのか、【こっちに来い】と手招きしている。
アッシュさんは、苦笑いだ。
「……お2人とも行きましょう」
「獣人達には、プライドというものがないのかしら? 聖女様はともかく、私達に対してまで、敬意を払っているわよ」
「ベルナデットさん、文句はトキワさんに言ってください。奥にいる彼が、そのプライドを完膚無きまでに、ズタズタに壊したのです」
両脇にいる獣人達の中に、怒りを灯している人はいない。明らかに、私達の登場に喜びを抱えている。
「はあ~、聖女様のお仲間も、常識から逸脱した人物ってことね」
それは、トキワさんだけです!!
私達は、ゆっくりと歩を進め、獣人ロードに足を踏み入れた。ここからは、一応戦闘態勢に入っておこう。これからこの国を乗っ取る話をするのだから、子供だからといって、舐められてはいけない。
○○○作者からの一言
次回更新予定日は、12/11(火)10時40分です。
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