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10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】
コウヤがハーモニック大陸に戻らなかった理由とは?
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入学式終了後、私達は校舎内にある掲示板へと移動した。掲示板には大きな紙が貼られており、そこには入学者達全員の名前とクラスが記載されている。新入生のクラスは1組と2組の2つ、30名ずつに分けられており、私・リーラは1組、フレヤ・オーキスは2組となっている。今後、生徒達が私とフレヤに悩みを打ち明けることを考慮してのクラス分けだね。
私がリーラと共に1組に入ると、全ての視線が私に注がれた。
「皆さん、今日から宜しく願いしますね」
公爵令嬢であるため、気品溢れる笑顔で対応しましょう。
聖女とお近づきになれば、将来安泰だからなのか、皆が揃って私に自己紹介をしながら挨拶を交わしてくる。邪な気持ちを持つ人もいれば、純粋な気持ちで私とお友達になりたい子もいるようだ。一通り挨拶を終え、私はリーラと共に後方の窓際の席へと座る。
「シャーロット、振る舞い方が私達と全然違うよね」
「リーラ、その方がわかりやすいよ。私がその人に対して砕けた言い方に変化すれば、その分信頼された証ってことになるから」
「あ、それもそっか」
私がずっと砕けた言葉遣いをしていると、エルバラン家の品位を落とすことになってしまう。学校内にはラルフお兄様もいるから、大勢の人々がいる中では【公爵令嬢としての私】を見せる。
私達全員が落ち着きを取り戻す頃合いを見計らってなのか、コウヤ先生が教室に入ってきた。
「みんな、席に着いてくれ。入学式でも紹介したが、私はコウヤ・イチノイ。今回、1年1組の担任を受け持つことになった。皆、宜しく頼む。私の担当科目は【世界史】。今後、私の知りうる限りの3大陸の歴史を正しく教えていくつもりだ」
驚きだよ。
教員になるとは聞いていたけど、まさか私のクラスの担任に抜擢されるとは。
「今日は授業もないから、皆には自己紹介の挨拶をしてもらおう」
私の出番は、終盤か。
ここに来るまでの道程が、異様に長く感じる。
お兄様が入学する年、季節でいうと初春、私はハーモニック大陸へ転移した。
惑星ガーランドは地球よりも小さいものの、自転周期は24時間(1日)、公転周期は1年(360日)。1年は12ヶ月、全ての月が30日間ある。四季も存在しており、それぞれの季節が3ヶ月で区切られている。
惑星自体の構成が地球とかなり似ている。
多分、ガーランド様は地球を参考にして作ったのだろう。
ハーモニック大陸側も同じ季節であったため、ケルビウム山から始まった旅も快適だった。まあ、転移直後は極寒だったけどね。
……私が考え事をしているうちに、自己紹介がどんどん進んでいく。
フラマリオン学園の授業形態は大学と似ており、必須科目と選択科目に分類されている。学園の定期テストは、7月と12月と年度終わりの3月にある。1~4年生に関しては成績がどんなに悪かろうと留年しないため、皆も気楽に学生生活を過ごせる。
私にとっては学園に入学するまでの間、1つの関門が用意されていた。それは、リーラとオーキスに【負の遺産】や【ランダルキア大陸からの刺客】、そして【私の強さの
真実】を伝えること。
怖がられるか不安だったけど、どういうわけか2人はすんなりと納得してくれた。
理由を聞いたら……
「シャーロットだけ、私達の模擬戦でず~っと全勝だったでしょ。しかも、私達に余裕で勝ってる。というか、あなたが息切れしているところを見たことがありません」
リーラの言う通り、どんな特訓を積んでも息切れしません。
「そうそう、魔法の扱いにしても上手すぎる。騎士団の人達が君の魔法をお手本にする程だからね。精霊様から習っていたとはいえ、体力や技術面のことを考慮すると、【強さをかなり偽っているな】と僕もリーラも常々思っていたんだ」
オーキスにも丸わかりだったのね。
「本人は隠し通せていると思っているようだけど、王城内のほぼ全員が理解しているからね。私やオーキスだってシャーロットに本当のことを問いただしたかったけど、なんか理由ありそうだし黙っておいたの。王城の人達も、《転移先のハーモニック大陸の環境が彼女を強くさせたんだ》と思っているわ」
上手く隠し通せていると思っていたのは、私だけだった。
あの時、フレヤも側にいたのだけど、横でクスクスと笑っていたよ。
大災厄については話していないけど、コウヤ先生の役割と負の遺産についてはきちんと説明しておいた。私もドール族しか知らない為、それだけを教えると、2人は神ガーランド様の所業に呆れてしまい、神に対する崇拝度を大きく減少させることになった。
コウヤ先生がトキワさんのグローバル通信機を経由して、今の状況をハーモニック大陸にいるクロイス女王に伝えているとはいえ、私からも全員に連絡を入れておいた。これにより、何かおかしな事が起これば即座に私の耳にも入ってくる。
ただ、肝心の【負の遺産】がどういったもなのかが、全くわからない。ミスラテル様自身も把握していないから、相手側が動くまで私達も対応できない。唯一の手掛かりは、コウヤ先生だ。
彼は人知れず、ランダルキア大陸内で負の遺産の一部と戦っていたのだ。先生と初めてお会いした王城執務室内にて、その話を先生自身から聞いた時、私はひどく驚いたよ。あの時、詳しい内容に関しては聞かされていないため、私は相手の素性を知らない。緊急性もないことから、入学式イベントの最後、自己紹介の挨拶が済んだ後に聞かされることになっている。
○○○
今日の行事が滞りなく終わったところで、私・フレヤ・オーキス・リーラの4人は来賓室へと移動した。本来、外部からの客人をもてなす部屋でもある為、部屋の内装は中々豪華だ。ソファーやテーブルにしても、上質な素材を使用している。防音性も高いけど、一応遮断魔法【サイレント】を使用しておこう。
「みんな、待たせてすまない。飲み物を持ってきたから、気楽に私の話を聞いてくれ」
コウヤ先生、来るのが少し遅いなと思っていたら、わざわざ冷たい飲み物を用意してくれていたんだ。それでは遠慮なく頂きましょう。
「オーキス、リーラ、君達はシャーロットから彼女の強さや、ランダルキア大陸からの刺客、負の遺産について軽く聞いているね?」
オーキスとリーラは、軽く頷く。
「はい。彼女の強さに関しては理解しています。今の僕達では足手纏いかもしれませんが、出来うる限りの手伝いをしたいと思っています」
「私も、オーキスと同じです。私自身は弱いですが、私とシャーロットのユニークスキルがあれば、敵も怒りに支配されないと思います」
「オーキスは称号【勇者】、リーラはユニークスキル【聖浄気】、今は弱いかもしれないが、鍛えれば強力なものとなる。特にオーキス、君は今後積極的に善行を積み重ねていき、勇者としての格を上げなければならない。しかし、負の遺産に関しては私自身も正体を掴みきれていない。君も、正体不明なものに必要以上に踏み込んではいけない。引き際を間違ってはいけないぞ」
1番危険なのはオーキスだよね。リーラの場合、完全に後方支援のサポートとなるから比較的安全圏にいれる。でも、オーキスは勇者である以上、焦って踏み込みすぎるかもしれない。
「はい!」
「それじゃあ、私の知る負の遺産についての説明に入ろう」
いよいよか。
コウヤ先生は何と戦っていたのかな?
「ハーモニック大陸の異変に関しては、私も感じ取っていた。だが、当時の私はそれ以上のものと戦っていた。相手の種族は【妖魔】だ」
「「「「妖魔?」」」」
「3000年以上前に滅んだとされる種族だ」
「「「「3000年以上前!?」」」」
遥か昔に滅んでいたとされる種族が、生き残っていたの!?
「当時も今も妖魔の生態は、魔物に近い。強さはSランク以上、性格も残忍で、他種族の存在を許さない」
いきなりの爆弾発言なんですけど~~~!
「ちょ…ちょっと待ってください! 質問したいことが一気に出来ました!」
オーキスと同じ意見だよ。
私達は一呼吸置いてから、疑問に思ったことを口にした。
【3000年以上前に滅んだとされる種族が、何故生存しているのか?】
そう、ここ重要だよ!
「魔鬼族の先祖鬼人族が妖魔を全て駆逐したと、ダンジョン最下層の石碑に記されていた。しかし、奴らは鬼人族と神の目を欺き、これまで生きてきた」
神の目を欺くって、そんなことが可能なの?
「妖魔達は生き残るべく、種族としてのプライドを全て捨て2つの方法を選択した。それが……冬眠・種族変更」
冬眠はわかるけど、種族変更って可能なの?
みんなも不思議に思い、首を傾げている。
「種族というものは、自分達で名付けるものだ。人間やエルフ、ドワーフも先祖の誰かが命名している。1種族全人口の8割以上から賛成を得られれば、変更も可能とされている」
生き残っている妖魔達が集まって、種族名を別の名称へと変更したの!?
でも、その程度のことでガーランド様の目を欺けるの?
「その新たな種族名が………【小石】」
え?
私の耳がおかしくなったのかな?
小石って聞こえたけど?
「あの…先生…今なんて?」
リーラも私と同じことを思ったのか、先生に聞き返してくれた。
「……小石。《自分達は戦いに敗れ、道端に転がる小石のような脆弱な存在となりました》という意味で命名したそうだ」
そんな種族名に変更するとは!
8割以上の妖魔達が賛成したのだから、確かに【誇りを捨てた】と言っても過言ではない。そこまで鬼人族に追い詰めらていたのか。
「種族変更したと同時に、認識阻害スキルで自分達の存在を限りなく低下させ、地面の中に潜り長期間の眠りについた。妖魔の冬眠は、【仮死状態】を意味する」
そうか!
ガーランド様はいい加減な神だ。
鬼人族によって個体数を大きく減らされ、誇りをズタズタにされた妖魔族の種族名が【小石】となり、全員【仮死状態】となれば、爆笑して絶滅したと思い込み、彼らの存在を見落とすかもしれない。妖魔達も神の存在に気づいていたのかはわからないけど、誇りを捨てた行為により生き延びることができたんだ。
「8年前、ハーモニック大陸ジストニス王国に眠っている妖魔1体が目覚め、偶然私が潜伏しているところを発見した。見たこともない種族であったため、問い質したら当初小声で【小石族】と名乗っていた」
そりゃあ、恥ずかしいから小声にもなるよ。
「後に妖魔族と言い直し、私に戦いを挑んできた。戦闘中、奴がペラペラと話してくれたこともあって、妖魔族について色々とわかった。殆どの妖魔達はランダルキア大陸で冬眠しているらしく、既に目覚め始めている。私と遭遇した妖魔は目覚めたばかりでかなり弱っていたものの、Aランク下位の力を有していた。私は奴を討伐後、妖魔族に対して脅威を感じ取ったことから転移魔法を習得した後、ランダルキア大陸へと移動し、これまで奴等と戦ってきた」
……負の遺産に認定されるわけだよ。
コウヤ先生は、そんな凶悪な妖魔達と1人で戦っていたんだ。妖魔族の脅威度を考慮したら、ハーモニック大陸に戻ってこれるはずがない。でも、いくつか疑問が残る。
・冬眠から目覚めた後、何故ガーランド様に発見されなかったのか?
・私自身、全くその力をこれまで感知できなかった。その理由は?
コウヤ先生から、もっと妖魔族について教わろう。
私がリーラと共に1組に入ると、全ての視線が私に注がれた。
「皆さん、今日から宜しく願いしますね」
公爵令嬢であるため、気品溢れる笑顔で対応しましょう。
聖女とお近づきになれば、将来安泰だからなのか、皆が揃って私に自己紹介をしながら挨拶を交わしてくる。邪な気持ちを持つ人もいれば、純粋な気持ちで私とお友達になりたい子もいるようだ。一通り挨拶を終え、私はリーラと共に後方の窓際の席へと座る。
「シャーロット、振る舞い方が私達と全然違うよね」
「リーラ、その方がわかりやすいよ。私がその人に対して砕けた言い方に変化すれば、その分信頼された証ってことになるから」
「あ、それもそっか」
私がずっと砕けた言葉遣いをしていると、エルバラン家の品位を落とすことになってしまう。学校内にはラルフお兄様もいるから、大勢の人々がいる中では【公爵令嬢としての私】を見せる。
私達全員が落ち着きを取り戻す頃合いを見計らってなのか、コウヤ先生が教室に入ってきた。
「みんな、席に着いてくれ。入学式でも紹介したが、私はコウヤ・イチノイ。今回、1年1組の担任を受け持つことになった。皆、宜しく頼む。私の担当科目は【世界史】。今後、私の知りうる限りの3大陸の歴史を正しく教えていくつもりだ」
驚きだよ。
教員になるとは聞いていたけど、まさか私のクラスの担任に抜擢されるとは。
「今日は授業もないから、皆には自己紹介の挨拶をしてもらおう」
私の出番は、終盤か。
ここに来るまでの道程が、異様に長く感じる。
お兄様が入学する年、季節でいうと初春、私はハーモニック大陸へ転移した。
惑星ガーランドは地球よりも小さいものの、自転周期は24時間(1日)、公転周期は1年(360日)。1年は12ヶ月、全ての月が30日間ある。四季も存在しており、それぞれの季節が3ヶ月で区切られている。
惑星自体の構成が地球とかなり似ている。
多分、ガーランド様は地球を参考にして作ったのだろう。
ハーモニック大陸側も同じ季節であったため、ケルビウム山から始まった旅も快適だった。まあ、転移直後は極寒だったけどね。
……私が考え事をしているうちに、自己紹介がどんどん進んでいく。
フラマリオン学園の授業形態は大学と似ており、必須科目と選択科目に分類されている。学園の定期テストは、7月と12月と年度終わりの3月にある。1~4年生に関しては成績がどんなに悪かろうと留年しないため、皆も気楽に学生生活を過ごせる。
私にとっては学園に入学するまでの間、1つの関門が用意されていた。それは、リーラとオーキスに【負の遺産】や【ランダルキア大陸からの刺客】、そして【私の強さの
真実】を伝えること。
怖がられるか不安だったけど、どういうわけか2人はすんなりと納得してくれた。
理由を聞いたら……
「シャーロットだけ、私達の模擬戦でず~っと全勝だったでしょ。しかも、私達に余裕で勝ってる。というか、あなたが息切れしているところを見たことがありません」
リーラの言う通り、どんな特訓を積んでも息切れしません。
「そうそう、魔法の扱いにしても上手すぎる。騎士団の人達が君の魔法をお手本にする程だからね。精霊様から習っていたとはいえ、体力や技術面のことを考慮すると、【強さをかなり偽っているな】と僕もリーラも常々思っていたんだ」
オーキスにも丸わかりだったのね。
「本人は隠し通せていると思っているようだけど、王城内のほぼ全員が理解しているからね。私やオーキスだってシャーロットに本当のことを問いただしたかったけど、なんか理由ありそうだし黙っておいたの。王城の人達も、《転移先のハーモニック大陸の環境が彼女を強くさせたんだ》と思っているわ」
上手く隠し通せていると思っていたのは、私だけだった。
あの時、フレヤも側にいたのだけど、横でクスクスと笑っていたよ。
大災厄については話していないけど、コウヤ先生の役割と負の遺産についてはきちんと説明しておいた。私もドール族しか知らない為、それだけを教えると、2人は神ガーランド様の所業に呆れてしまい、神に対する崇拝度を大きく減少させることになった。
コウヤ先生がトキワさんのグローバル通信機を経由して、今の状況をハーモニック大陸にいるクロイス女王に伝えているとはいえ、私からも全員に連絡を入れておいた。これにより、何かおかしな事が起これば即座に私の耳にも入ってくる。
ただ、肝心の【負の遺産】がどういったもなのかが、全くわからない。ミスラテル様自身も把握していないから、相手側が動くまで私達も対応できない。唯一の手掛かりは、コウヤ先生だ。
彼は人知れず、ランダルキア大陸内で負の遺産の一部と戦っていたのだ。先生と初めてお会いした王城執務室内にて、その話を先生自身から聞いた時、私はひどく驚いたよ。あの時、詳しい内容に関しては聞かされていないため、私は相手の素性を知らない。緊急性もないことから、入学式イベントの最後、自己紹介の挨拶が済んだ後に聞かされることになっている。
○○○
今日の行事が滞りなく終わったところで、私・フレヤ・オーキス・リーラの4人は来賓室へと移動した。本来、外部からの客人をもてなす部屋でもある為、部屋の内装は中々豪華だ。ソファーやテーブルにしても、上質な素材を使用している。防音性も高いけど、一応遮断魔法【サイレント】を使用しておこう。
「みんな、待たせてすまない。飲み物を持ってきたから、気楽に私の話を聞いてくれ」
コウヤ先生、来るのが少し遅いなと思っていたら、わざわざ冷たい飲み物を用意してくれていたんだ。それでは遠慮なく頂きましょう。
「オーキス、リーラ、君達はシャーロットから彼女の強さや、ランダルキア大陸からの刺客、負の遺産について軽く聞いているね?」
オーキスとリーラは、軽く頷く。
「はい。彼女の強さに関しては理解しています。今の僕達では足手纏いかもしれませんが、出来うる限りの手伝いをしたいと思っています」
「私も、オーキスと同じです。私自身は弱いですが、私とシャーロットのユニークスキルがあれば、敵も怒りに支配されないと思います」
「オーキスは称号【勇者】、リーラはユニークスキル【聖浄気】、今は弱いかもしれないが、鍛えれば強力なものとなる。特にオーキス、君は今後積極的に善行を積み重ねていき、勇者としての格を上げなければならない。しかし、負の遺産に関しては私自身も正体を掴みきれていない。君も、正体不明なものに必要以上に踏み込んではいけない。引き際を間違ってはいけないぞ」
1番危険なのはオーキスだよね。リーラの場合、完全に後方支援のサポートとなるから比較的安全圏にいれる。でも、オーキスは勇者である以上、焦って踏み込みすぎるかもしれない。
「はい!」
「それじゃあ、私の知る負の遺産についての説明に入ろう」
いよいよか。
コウヤ先生は何と戦っていたのかな?
「ハーモニック大陸の異変に関しては、私も感じ取っていた。だが、当時の私はそれ以上のものと戦っていた。相手の種族は【妖魔】だ」
「「「「妖魔?」」」」
「3000年以上前に滅んだとされる種族だ」
「「「「3000年以上前!?」」」」
遥か昔に滅んでいたとされる種族が、生き残っていたの!?
「当時も今も妖魔の生態は、魔物に近い。強さはSランク以上、性格も残忍で、他種族の存在を許さない」
いきなりの爆弾発言なんですけど~~~!
「ちょ…ちょっと待ってください! 質問したいことが一気に出来ました!」
オーキスと同じ意見だよ。
私達は一呼吸置いてから、疑問に思ったことを口にした。
【3000年以上前に滅んだとされる種族が、何故生存しているのか?】
そう、ここ重要だよ!
「魔鬼族の先祖鬼人族が妖魔を全て駆逐したと、ダンジョン最下層の石碑に記されていた。しかし、奴らは鬼人族と神の目を欺き、これまで生きてきた」
神の目を欺くって、そんなことが可能なの?
「妖魔達は生き残るべく、種族としてのプライドを全て捨て2つの方法を選択した。それが……冬眠・種族変更」
冬眠はわかるけど、種族変更って可能なの?
みんなも不思議に思い、首を傾げている。
「種族というものは、自分達で名付けるものだ。人間やエルフ、ドワーフも先祖の誰かが命名している。1種族全人口の8割以上から賛成を得られれば、変更も可能とされている」
生き残っている妖魔達が集まって、種族名を別の名称へと変更したの!?
でも、その程度のことでガーランド様の目を欺けるの?
「その新たな種族名が………【小石】」
え?
私の耳がおかしくなったのかな?
小石って聞こえたけど?
「あの…先生…今なんて?」
リーラも私と同じことを思ったのか、先生に聞き返してくれた。
「……小石。《自分達は戦いに敗れ、道端に転がる小石のような脆弱な存在となりました》という意味で命名したそうだ」
そんな種族名に変更するとは!
8割以上の妖魔達が賛成したのだから、確かに【誇りを捨てた】と言っても過言ではない。そこまで鬼人族に追い詰めらていたのか。
「種族変更したと同時に、認識阻害スキルで自分達の存在を限りなく低下させ、地面の中に潜り長期間の眠りについた。妖魔の冬眠は、【仮死状態】を意味する」
そうか!
ガーランド様はいい加減な神だ。
鬼人族によって個体数を大きく減らされ、誇りをズタズタにされた妖魔族の種族名が【小石】となり、全員【仮死状態】となれば、爆笑して絶滅したと思い込み、彼らの存在を見落とすかもしれない。妖魔達も神の存在に気づいていたのかはわからないけど、誇りを捨てた行為により生き延びることができたんだ。
「8年前、ハーモニック大陸ジストニス王国に眠っている妖魔1体が目覚め、偶然私が潜伏しているところを発見した。見たこともない種族であったため、問い質したら当初小声で【小石族】と名乗っていた」
そりゃあ、恥ずかしいから小声にもなるよ。
「後に妖魔族と言い直し、私に戦いを挑んできた。戦闘中、奴がペラペラと話してくれたこともあって、妖魔族について色々とわかった。殆どの妖魔達はランダルキア大陸で冬眠しているらしく、既に目覚め始めている。私と遭遇した妖魔は目覚めたばかりでかなり弱っていたものの、Aランク下位の力を有していた。私は奴を討伐後、妖魔族に対して脅威を感じ取ったことから転移魔法を習得した後、ランダルキア大陸へと移動し、これまで奴等と戦ってきた」
……負の遺産に認定されるわけだよ。
コウヤ先生は、そんな凶悪な妖魔達と1人で戦っていたんだ。妖魔族の脅威度を考慮したら、ハーモニック大陸に戻ってこれるはずがない。でも、いくつか疑問が残る。
・冬眠から目覚めた後、何故ガーランド様に発見されなかったのか?
・私自身、全くその力をこれまで感知できなかった。その理由は?
コウヤ先生から、もっと妖魔族について教わろう。
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