元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】

妖魔族の対処

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負の遺産の1つは、【妖魔族の復活】だった。話を聞く限り、以前の妖魔族は《自分達こそがこの惑星の支配者》という強い支配欲を持っており、残忍でプライドも高く、それ以外をゴミと思っている。鬼人族が妖魔族を絶滅寸前まで追い詰めたものの、彼らはプライドよりも生存を優先させ、【妖魔族】改め【小石族】と種族変更し、自分達の存在を希薄化させることで、全ての者達を欺き冬眠に成功した。

そして、コウヤ先生はこんな凶悪な奴等と戦っていた。いくつか疑問もあるのだけど、オーキスがそのうちの1つを口にしてくれた。

「コウヤ先生、ランダルキア大陸内において、協力者はいなかったのですか?」

戦闘においては、コウヤ先生1人で対処可能かもしれないけど、各地に散らばる妖魔族をどうやって発見したのかが不思議に思う。

「勿論、協力者はいるさ。私の妻と2人の子供達だ」
「「「「は!?」」」」

王城での会談で、家族と共に行動していると聞いてはいたけど、家族全員が協力者なの!

「ハーモニック大陸にいた頃から、私がトキワと共に、妻と子供達を鍛え続けてきた。妻はSランク、13歳の長男がAランク、10歳の長女がBランクの力量だ。3人には、
各自の特性に合わせたスキルと魔法を教えている。3人の仕事は【情報収集】、これまで多くの街に溶け込ませることで、表と裏全ての情報を網羅させてきた。現在、ランダルキア大陸の情報や負の遺産関係につては、家族に任せている」

13歳の長男がAランク、10歳の長女がBランク、一家揃って戦闘家族じゃん!
同年代の女の子に至っては、オーキスよりも強いし!

「トキワさんは、妖魔族の存在を石碑などで知っていますよね? どうして、連れて行かなかったのですか?」

私が疑問に思った事を口にすると、コウヤ先生は優しく答えを教えてくれた。

「保険だよ」
「「「「保険?」」」」
どういうこと?

「私がいなくなった後、ジストニス王国内で突発的な事件が起こるかもしれない。Sランク以上の怪物が現れた場合、私やトキワがいなければ誰も対処できないだろう。それにあの時点において、トキワは恋人のスミレと出会って間も無い時期だった。【鬼神変化】スキルを完全に使いこなすためにも、私はあえて事情を話さず別れたんだ」

そういった事情が絡んでいるのなら、言わなくて正解だったかもしれない。トキワさんは戦闘狂だから、コウヤさんの使命を知ってしまうと、どちらをとるか苦しんだだろう。

「アストレカ大陸内でトキワと再会し全ての事情を話した時、少し怒っていたかな」

コウヤ先生が優しく微笑む。

まあ、それは仕方ないよね。トキワさんだってスミレさんと別れたくないから、コウヤ先生の気持ちもわかるはずだ。

とりあえず、コウヤ先生と妖魔との出会い、協力者についてはわかったけど、肝心なのは妖魔との戦闘だ。Sランクを超える戦闘が発生した場合、私の魔力感知であればその余波を感じ取れる。でも、これまでそういった巨大魔力は感知されていない。

「コウヤ先生、Sランク以上の者達が激突すれば、ランダルキア大陸の各国家にも気づかれるはずです。でも、アストレカやハーモニック大陸の国々において、そういった脅威は現状報告されていません。それに、私自身もそんな凶悪な存在を感知できません。何か理由があるんですか?」

どんな答えが用意されているのだろうか?

「答えは簡単さ。奴等は【小石族】と名乗り、小石のような存在となって3000年以上も眠り続けた。それによって、【奴等の存在自体が希薄化する】という種族特性が生まれてしまった。そこに【認識阻害】スキルの力が上乗せされ、奴等からは魔力や殺気といったものを殆ど感じ取れなくなっている。しかも戦闘に陥ると、種族特性が対戦相手にも一部影響し、魔力を感じ取れなくなってしまう。街から近い場所でない限り、私と妖魔が交戦しても誰1人気づかない」

なんて厄介な特性を持っているんだ。
それじゃあ、私も気づけるわけないよ!

【存在の希薄化】、ガーランド様のシステムにも影響を与え察知されにくくなっているんだ。

「私は家族と共に旅を続け、これまでに36体の妖魔族を討伐している」

存在を希薄化させた妖魔族を見つけるだけでも困難だよ。家族総出となって、街に潜んでいる情報を網羅し、36体もの妖魔族を倒してきたんだ。

「ハーモニック大陸で偶然遭遇したことで、妖魔の身体から微かに漏れ出る独特な瘴気を知り得た。この経験がなければ、私達も奴等を発見できなかっただろう。これまで出会った全ての妖魔族は、3000年以上眠り続けたせいもあって弱体化していた。本来の力を取り戻していたら、私も殺されていたかもな」

コウヤ先生にここまで言わせるなんて……本来の力ってどれ程のものだろうか? 妖魔族達の今後の行動も気になる。

「奴等は弱体化していることもあって、魔法やスキルも一部使用不可となっている。それ故、これまで目立った行動をとっていない。遭遇した場所も、全て山林や洞窟などといった人の出歩かない場所だった。おそらく、全盛期の力を取り戻すまで、人目を避けてひっそりと静かに暮らすつもりだ。奴等の最終目的は、【全盛期以上の力を身につけて神を抹殺し、支配者として君臨すること!】」

妖魔族は、神の存在に気づいていたんだ。

コウヤさんがいなければ、種族特性の影響でガーランド様や私も探知できなかっただろう。彼は淡々と妖魔族のことを話してくれるけど、これらの情報を引き出すだけで数年の月日を要したんじゃないかな?

弱体化しているからこそ、コウヤ先生1人だけで対応できたんだ。時間が経過する程強くなっていくから、先生も今のうちに叩いておくべきと判断してハーモニック大陸に戻らなかったのか。

「妖魔族の目的達成は不可能じゃないでしょうか? 彼らの脅威となる存在は、コウヤ先生1人じゃありません。こちらには、シャーロットがいます!」

オーキス、嬉しい事を言ってくれるね。

「その通りだ。ただ、奴等は自分達にとって脅威となる存在に、既に気づいている」

神の存在に気づける手段を持っているのなら、世界中にいる自分達にとって脅威となりえる存在にも容易に気づけるよね。おそらく、トキワさんやリリヤさんの存在も察知しているんじゃないかな。そうなると、妖魔族は生き残るための策を行使していると思うけど……

「妖魔族は我々と同じ寿命だ。それ故、今の世代では【目的達成不可】と強く理解したことで、奴等は守りに徹し、自分達の仲間を一刻も早く見つけ出し、子孫を増やそうとしている。おそらく、我々が死んでから活動を本格化させるつもりだろう」

妖魔族は、大災厄【瘴気王】以上の存在だ。未来を見通せなくなった原因は、厄浄禍津金剛の影響だけでなく、負の遺産の存在が大きく関係しているかもしれない。

自分達が弱体化している以上、下手に動けば私やコウヤさんに察知されると理解して守りに徹したことを考えると知能も高い。特殊な種族特性を持っている以上、通常であれば発見も困難だろう。

でも、妖魔族達は致命的ミスを1つ犯している。

神ガーランド様の存在を知覚認識しているのは、貴方達だけじゃない。私に至っては、神と出会い友好関係を築いている。現在、ガーランド様は不在だけど、あと8年程で帰ってくるから、帰還後相談していけば十分対処可能だ。相手も仲間を探し、山奥で子作りに専念してくれるのなら脅威度も低い。


だったら、私のとるべき行動は……


「妖魔族に関しては……【放置する】の一択ですね」
「「え!?」」
私の選択に、オーキスとコウヤ先生は納得しているものの、リーラとフレヤの2人は不服のようで一斉に立ち上がる。

「シャーロット、どうしてよ! そんな悪い奴等、あなたの力で叩きのめせばいい!」
「私も、そう思います。シャーロットの力は強大ですから、危険因子は早めに葬るべきかと」

2人の反対意見を真っ向から諭したのは、オーキスだ。

「リーラ、フレヤ、その判断は早計だ。脅威は、負の遺産だけじゃない。ランダルキア大陸のいずれかの国が、シャーロットとフレヤを狙っていることを忘れちゃダメだ。妖魔族に関しては弱体化しているし、どんな種族なのかもコウヤ先生のおかげでわかった。正体が判明しているからこそ、逆に安心なんだよ。種族名を【小石族】に変更する程、奴等は生存する道を選んだ。守りに徹しているのなら、今の段階で何か行動を起こす危険性も低いと思う」

オーキスも、私と同じ考えに至っているんだ。

「オーキス、偉いぞ。君の意見は正しい。アストレカ大陸の亡者事件もあって、奴等の活動は完全に鎮まっている。神ガーランド様帰還後に判断を仰ぎ、対処を始めても問題ない。今は、【ランダルキア大陸の刺客】や【妖魔族以外の負の遺産】に専念すべきだろう」

問題は、そこだよね。現在、これといって有力な情報がない。私の切り札を使って、負の遺産を捜索する手段もあるけど、ガーランド様が関わっているのだから発見できないかもしれない。

「はい、先生! 何か手掛かりはあるんですか?」
「国王陛下や私達も探っているが、手掛かりはない」
「ええ~」
コウヤ先生は、リーラの質問をぶった切ったよ。
そんなハッキリ言われると思っていなかったのか、彼女も困惑している。

「現状、フレヤは自分自身、シャーロットは家族や友達に気をつけるべきだろう」

私は自分で対処できるけど、フレヤの力量は魔法使いとしてAランク、接近戦に持ち込まれれば危険だ。でも……

「先生、大丈夫です。聖女代理として海の魔物【サーペントドラゴン】の鎮圧を行なった際、その魔物自身と主従契約を結びました。今も小型化して隠れていますけど、常に私の側で護衛しています。ほら出てきて」

サーペントドラゴンがフレヤの右肩付近に現れ、私達にお辞儀する。

「私、サーペントドラゴンのムックよ。どうぞ、宜しく」

この子は見た感じ、黒の海蛇だね。声は男性だけど、口調が女性っぽいのが特徴だ。あの時、殴り過ぎたせいか、未だに私を見てビクビクするんだよね。

「サーペントドラゴンか。今のフレヤの力量で、契約できるなんて凄いじゃないか」
「そうよ! 私の主人は凄いんだから! 称号【海女】のおかげで、私の陸の活動時間も大幅に増えているもの! そこにシャーロット様の力が加われば、ず~~~っと陸にいられるのよ!」

称号【海女】、私が編集したものだけど、海の魔物と非常に相性が良い。陸上におけるサーペントドラゴンの活動時間は精々1時間程だ。でも、称号と身体への水属性付与による相乗効果で、彼女を中心とする20m圏内であれば、1回の召喚につき1日6時間活動可能となっている。

「サーペントドラゴンが彼女を護衛しているのなら、私も安心だ。しかし、相手が負の遺産である以上、皆呉々も気を抜かないように」

「「「「はい」」」」

妖魔族に関しては、コウヤ先生のおかげもあって問題ない。
気をつけるべきは、【ランダルキア大陸からの刺客】と【妖魔族以外の負の遺産】だ。
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