254 / 277
10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】
不気味なノイズと機械音声
しおりを挟む
○○○ シャーロット視点
昨日来賓室にて、オトギさんがミーシャにヒュデル村で起きた事件の真相を伝えた。やはり、彼女にとって突拍子も無い内容ばかりのため、当初信じてもらえなかったが、私は事件の信憑性を高めるため、彼女に狂獣病の研究資料を見せることで、ようやく信じてもらえることができた。
ミーシャ自身がかなり苦しんだものの、《自分なりの答え》を導き出すことに成功する。夏休み中、オトギさんと2人で故郷への御墓参りに行く約束を取り付けたことで、彼女の抱える闇が完全に晴れたのだろう、とびきり可愛い笑顔を私達に見せてくれた。
王都で起きた全ての事件が解決した。
残すは、竜人族達の悩みのタネである【ハーゴンズパレス遺跡】についてだ。
……土曜日の授業も全て消化し食堂で昼食を食べ終わった頃、コウヤ先生が私とフレヤに、来客の報せを届けてくれた。周囲には私達以外にも、オーキス、リーラ、ミーシャ、アーバンがいたけど、《フレヤ誘拐事件の真実》を知っているのはオーキスとリーラのみのため、私達は詳しいことを言わないまま4人と別れた。
「【ハーゴンズパレス遺跡】、どんな遺跡なのかな? シャーロットはもう知っているのよね?」
「フェルボーニさんのデータに細かく記載されていたけど、遺跡の一部がダンジョン化されているわね。詳しくは、本人から聴きましょう。私も解析データと照らし合わせて、嘘でないのかを確認するから」
現時点で、【ハーゴンズパレス】遺跡に関わる解析データをフレヤ達に話していない。事前に全員に話してしまうと、コウヤ先生もオトギさんもフレヤも殆ど驚くことなく、ただ聞くだけの状態になってしまう。
これって話す側の立場で考えると、かなり不気味に感じると思う。相手からしたら、既に自分の心を覗かれているから、かなりの緊張を強いられるだろう。事前に解析データを話していないことを2人に伝えておけば、緊張感も少し薄れるし、話す気力も湧き上がるんじゃないかな?
私達が来賓室に行くと、既に人数分の飲み物が置かれており、フェルボーニさん、カビバラさん、オトギさんも寛いでいた。私達とコウヤ先生が3人の対面となるソファーに座る。メンバーは、この6人だけでいいよね。
フェルボーニさん達はすこし疲れているようだけど、比較的顔色も良い。
これなら話を円滑に進められそうだ。
「フェルボーニさん、カビバラさん、私は【ハーゴンズパレス】遺跡に関わる詳細な内容を解析データから確認していますが、全内容を3人に話していません。ですから、自らの口できちんと語って下さいね」
「あら、そうなの? でも、その方がこちらとしてもありがたいわね。お気遣い、感謝するわ。とりあえず、まずは私達の現状を伝えるわね」
現状か、私としても先にそっちを聞きたいかな。
「私とカビバラの誘拐作戦が失敗し、シャーロット様に見つかったことを集合場所で待機していたメンバー全員に伝えると、みんな……一斉に自害しようとしたわ」
「「自害!」」
私とフレヤがハモって大声を出してしまった。
「私達にとって、《シャーロット様に見つかる》ということは、自国の消滅を意味するのよ」
ええ~、私ってそれだけ恐れられているの?
「大丈夫、私が《安心して、フレヤ様がシャーロット様の怒りを鎮めてくれたわ》と報告したことで、自害を防ぐことができたの。ただ……」
ただ?
その続きは何だろうか?
「フレヤ様は聖女ではなく海女であること、シャーロット様の転移魔法の件を教えると、『話が違うだろうが!? あのクソババア~~~~』と揃って、作戦考案者でもあるクソババ…コホン…【アルカナ女王】を呪ったわね」
ランダルキア大陸の聖女の名前は、【アルカナ】というのね。
この様子からして、アルカナ様の支持率は極めて低そうだ。
「できれば、あの女を【王】の座から引きずりおろして、新たな聖女を設けたいところなんだけど、それって【アルカナ様を殺す】ってことになるから誰も出来ないのよね」
フェルボーニさん、それって完全に謀反ですよ。
本来、絶対に言ってはいけない言葉ですよ。
「私達以外のメンバーは【作戦失敗】ということで、スカイドラゴンに乗って自国に戻っている最中よ。この後、私達はエルディア国王様とヘンデル教皇様に謁見して、お詫びをするつもり……なんだけど、どうお詫びすればいいのか、エルディア王国に喧嘩売ったも同然だし、戦争になったら100%負け確定だし……はあ~憂鬱だわ~」
フェルボーニさんが、盛大な溜息をついている。
見つかった時の対処も考えておこうよ。
「フェルボーニ様、俺っちは只の運び屋っす。ズフィールド聖王国と何の関係ないんすけど、俺も謁見するんっすか?」
「当たり前でしょうが! アンタがフレヤちゃんを誘拐したんだから、その方法を詳しく言いなさいよ!」
「誘拐といっても簡単っすよ! 餌…コホン…フレヤ様のゴミ出し日に罠をセットして釣れるのを待つだけっす」
この人、さり気なく【餌】と言ったよ。
フレヤもカチンときたのか、カビバラさんを少し睨んでいる。
このままだと、一悶着起こりそうだから話題を変えよう。
「お二人共、戦争の件については御心配無用です。今回の誘拐事件の真実については、現時点で王族の方々、教皇様、私の父エルバラン公爵に話しています。話し合いの結果、戦争を回避する方向性にまとまりました」
「本当なの!?」
「本当っすか!?」
私は静かに頷く。
「ここまでの時点で、世界最強レベルの人達が、国内に3人(私・コウヤ先生・トキワさん)控えています。今回、新たに【蒼青の悪魔】という二つ名で知られているオトギさんが加入しました。周辺諸国からみれば、《世界征服を企んでいるのでは?》と思われても仕方ありません。我々王国側は、そんな野心を微塵も抱えておりません。その事を知ってもらうため、国王陛下は周辺諸国に対し、今回起きた事件を包み隠さず話す予定です」
全員が単独で国を滅ぼせる力を持っている分、国王陛下やルルリア王妃様もかなり気を使っている。今頃、何処かの国と大型通信機で話し合っている頃かな?
「一般市民の方々には、【魔物騒動】に関しては小規模瘴気溜まりの爆発、【誘拐事件】に関しては盗賊共の仕業に見せかけておきました。今回の謁見、竜人族のフェルボーニさんとカビバラさんに関しては、ズフィールド聖王国からの使者として、国賓扱いでお出迎えしてくれる手筈となっています」
昨日、グローバル通信機で話し合いをしている最中、国王陛下の顔色が疲労のせいか、あまり優れなかった。後半あたりになって『早く引退したいよ~』という呟きがボソッと聞き取れた瞬間、ルルリア王妃様が自作のハリセンで陛下の頭をスパ~~ンと叩いていたのが、記憶に新しい。
「シャーロット様! フレヤ様を殺しかけた私達のことを国賓として迎えてくれるの!?」
「御礼は、フレヤとオトギさんに言ってください」
昨日、フレヤが通信機越しに『国賓として迎えてはどうでしょうか?』と、国王陛下やヘンデル教皇に進言したことで、その案が通ったんだよ。エルディア王国はアストレカ大陸の南部に位置しているため、殆どの国民が竜人族を見たことがない。この2人を春蘭祭のゲストとして迎えることで、ランダルキア大陸北方地方にあるとされるズフィールド聖王国と接点を持ち友好関係を築いていく。成功すれば、他の国々とも上手くやっていけるだろう。この説明なら、王都近辺で見慣れない種族を目撃し、《他にも何か起こるのでは?》と不安に思う人達も納得してくれる。
「フレヤ様、オトギちゃん……恩にきるわ。私達の持つハーゴンズパレス遺跡やランダルキア大陸の情報を教えるわ!」
これまでトキワさん経由でしか、ランダルキア大陸の情報を得ていないから私としても助かる。
「『ザザ…ソロッ…ザザ…タ』」
え?
「シャーロット、今何か聞こえなかった?」
フレヤにも聞こえたんだ。
「うん。ノイズと変な音声が聞こえたような?」
「『ザザザ…イブンシ…スベテ…ミツケタ…ケイカク…ジッコウニウツス…リュウジンゾク…カンシャ』」
異分子? 計画? 急に聞こえてきたのは、ノイズ混じりの機械的な音声だ。
これは何なの? 全然、気配を感じ取れない。
コウヤ先生もオトギさんも、私と同じで一気に警戒態勢をとる。
「は!? 私達に感謝ってどういうこと?」
「お前、誰っすか!? 出てこいっす! お前の声に、聞き覚えはないっす!」
うん、2人の言ってることは真実だ。
皆を不安にさせてはいけない!
「大丈夫、お2人が我々を騙していないことは、解析データからわかっています。声の主さん、あなたは何者ですか? 姿を見せてください」
「『ワタシニ…ナマエ…ナイ…デモ…ニンム…アル…』」
任務?
どういうこと?
声だけが聞こえるのに、存在を微塵も感じ取れない。
何処にいるの?
「え!? 光が!」
突然、部屋中央の1点が光り出し、光量がどんどん強くなっていく。
「イブンシタチト……ソノタ……ワレノリョウイキ……【ハーゴンズパレス】…二…ショウタイスル……ワレノリョウイキデハ……オマエタチノチカラムコウ……テンイヲカイシスル」
「「「「「「え!?」」」」」」
もう、目を開けていられない!
○○○
空気が変わった?
それに、湿度もさっきと違う。
まさか、私達全員は本当に何処かへ【転移】されたの?
うう、光のせいで、目がまだ見えない。
「目が見えないよ~。何かおかしいよ~~~、兄様~~何処~~兄様~~」
うん?
なんか聞き覚えのある声が聞こえたよね?
「ねえ、あなたの名前は何て言うの?」
「うひゃあ! 近くで女性の声がした! あれ? 今の声……まさかシャーロット様?」
私を知っているの? この声…喋り方…まさか……
「あなた……ネルマ?」
「あ、そうです! 目が見えません。何処にいるんですか?」
「ごめん、私も突然現れた光のせいで、目が見えないの」
どういうこと?
何故、ネルマがここにいるの?
……5分程経過すると、やっと目が見えるようになってきた。
「やっぱり、シャーロット様だ~~~!」
「ネルマ!?」
ネルマが半泣きで、私に抱きついてきた。
どうなっているの?
彼女は、クディッチス家にいるはず。
ここは……薄暗い部屋…よね?
「どうして、あなたがここにいるの?」
「その質問、私がしたいです。突然、私の部屋が光ったと思って、目を開けたらここにいました」
「……私と似ているわ」
あの声……《異分子》と《その他》を自分の領域へ転移させると言っていた。
「あ、窓があります! 開けてみますね!」
「あ、こら、ちょっと!」
「うわ~~~綺麗~~~」
ネルマがカーテンを開け放ち、窓を全開にすると、一筋の風が流れ込んできた。私がネルマのもとへ向かい窓の外を眺めると、そこには……広大な敷地が広がっていた。敷地境界線には、万里の長城のような大きな城壁が設置されており、外へと通じる門らしきものは見当たらない。
敷地内には建物がいくつかあり、私達のいる場所は下を見た限り判断すると、3階建の建物の2階の角部屋となっている。
私達の身に、何が起きたの?
みんなは、何処にいるの?
○○○作者からの一言
読者の皆様、本作品を読んで頂き誠にありがとございます。
【旅芸人編】、これにて終了です。
唐突な場面転換となりましたが、このまま次章【ハーゴンズパレス】編に移ります。
ただ、私の転職に伴い、本業の仕事が8月中旬から大きく変更することになりました。
この仕事に慣れるためにも、しばらくの間更新を停止させて頂きます。
9月中旬か10月初旬頃には再開させたいと思っています。
長期間の停止となりますが、今後ともよろしくお願い致します。
犬社護
昨日来賓室にて、オトギさんがミーシャにヒュデル村で起きた事件の真相を伝えた。やはり、彼女にとって突拍子も無い内容ばかりのため、当初信じてもらえなかったが、私は事件の信憑性を高めるため、彼女に狂獣病の研究資料を見せることで、ようやく信じてもらえることができた。
ミーシャ自身がかなり苦しんだものの、《自分なりの答え》を導き出すことに成功する。夏休み中、オトギさんと2人で故郷への御墓参りに行く約束を取り付けたことで、彼女の抱える闇が完全に晴れたのだろう、とびきり可愛い笑顔を私達に見せてくれた。
王都で起きた全ての事件が解決した。
残すは、竜人族達の悩みのタネである【ハーゴンズパレス遺跡】についてだ。
……土曜日の授業も全て消化し食堂で昼食を食べ終わった頃、コウヤ先生が私とフレヤに、来客の報せを届けてくれた。周囲には私達以外にも、オーキス、リーラ、ミーシャ、アーバンがいたけど、《フレヤ誘拐事件の真実》を知っているのはオーキスとリーラのみのため、私達は詳しいことを言わないまま4人と別れた。
「【ハーゴンズパレス遺跡】、どんな遺跡なのかな? シャーロットはもう知っているのよね?」
「フェルボーニさんのデータに細かく記載されていたけど、遺跡の一部がダンジョン化されているわね。詳しくは、本人から聴きましょう。私も解析データと照らし合わせて、嘘でないのかを確認するから」
現時点で、【ハーゴンズパレス】遺跡に関わる解析データをフレヤ達に話していない。事前に全員に話してしまうと、コウヤ先生もオトギさんもフレヤも殆ど驚くことなく、ただ聞くだけの状態になってしまう。
これって話す側の立場で考えると、かなり不気味に感じると思う。相手からしたら、既に自分の心を覗かれているから、かなりの緊張を強いられるだろう。事前に解析データを話していないことを2人に伝えておけば、緊張感も少し薄れるし、話す気力も湧き上がるんじゃないかな?
私達が来賓室に行くと、既に人数分の飲み物が置かれており、フェルボーニさん、カビバラさん、オトギさんも寛いでいた。私達とコウヤ先生が3人の対面となるソファーに座る。メンバーは、この6人だけでいいよね。
フェルボーニさん達はすこし疲れているようだけど、比較的顔色も良い。
これなら話を円滑に進められそうだ。
「フェルボーニさん、カビバラさん、私は【ハーゴンズパレス】遺跡に関わる詳細な内容を解析データから確認していますが、全内容を3人に話していません。ですから、自らの口できちんと語って下さいね」
「あら、そうなの? でも、その方がこちらとしてもありがたいわね。お気遣い、感謝するわ。とりあえず、まずは私達の現状を伝えるわね」
現状か、私としても先にそっちを聞きたいかな。
「私とカビバラの誘拐作戦が失敗し、シャーロット様に見つかったことを集合場所で待機していたメンバー全員に伝えると、みんな……一斉に自害しようとしたわ」
「「自害!」」
私とフレヤがハモって大声を出してしまった。
「私達にとって、《シャーロット様に見つかる》ということは、自国の消滅を意味するのよ」
ええ~、私ってそれだけ恐れられているの?
「大丈夫、私が《安心して、フレヤ様がシャーロット様の怒りを鎮めてくれたわ》と報告したことで、自害を防ぐことができたの。ただ……」
ただ?
その続きは何だろうか?
「フレヤ様は聖女ではなく海女であること、シャーロット様の転移魔法の件を教えると、『話が違うだろうが!? あのクソババア~~~~』と揃って、作戦考案者でもあるクソババ…コホン…【アルカナ女王】を呪ったわね」
ランダルキア大陸の聖女の名前は、【アルカナ】というのね。
この様子からして、アルカナ様の支持率は極めて低そうだ。
「できれば、あの女を【王】の座から引きずりおろして、新たな聖女を設けたいところなんだけど、それって【アルカナ様を殺す】ってことになるから誰も出来ないのよね」
フェルボーニさん、それって完全に謀反ですよ。
本来、絶対に言ってはいけない言葉ですよ。
「私達以外のメンバーは【作戦失敗】ということで、スカイドラゴンに乗って自国に戻っている最中よ。この後、私達はエルディア国王様とヘンデル教皇様に謁見して、お詫びをするつもり……なんだけど、どうお詫びすればいいのか、エルディア王国に喧嘩売ったも同然だし、戦争になったら100%負け確定だし……はあ~憂鬱だわ~」
フェルボーニさんが、盛大な溜息をついている。
見つかった時の対処も考えておこうよ。
「フェルボーニ様、俺っちは只の運び屋っす。ズフィールド聖王国と何の関係ないんすけど、俺も謁見するんっすか?」
「当たり前でしょうが! アンタがフレヤちゃんを誘拐したんだから、その方法を詳しく言いなさいよ!」
「誘拐といっても簡単っすよ! 餌…コホン…フレヤ様のゴミ出し日に罠をセットして釣れるのを待つだけっす」
この人、さり気なく【餌】と言ったよ。
フレヤもカチンときたのか、カビバラさんを少し睨んでいる。
このままだと、一悶着起こりそうだから話題を変えよう。
「お二人共、戦争の件については御心配無用です。今回の誘拐事件の真実については、現時点で王族の方々、教皇様、私の父エルバラン公爵に話しています。話し合いの結果、戦争を回避する方向性にまとまりました」
「本当なの!?」
「本当っすか!?」
私は静かに頷く。
「ここまでの時点で、世界最強レベルの人達が、国内に3人(私・コウヤ先生・トキワさん)控えています。今回、新たに【蒼青の悪魔】という二つ名で知られているオトギさんが加入しました。周辺諸国からみれば、《世界征服を企んでいるのでは?》と思われても仕方ありません。我々王国側は、そんな野心を微塵も抱えておりません。その事を知ってもらうため、国王陛下は周辺諸国に対し、今回起きた事件を包み隠さず話す予定です」
全員が単独で国を滅ぼせる力を持っている分、国王陛下やルルリア王妃様もかなり気を使っている。今頃、何処かの国と大型通信機で話し合っている頃かな?
「一般市民の方々には、【魔物騒動】に関しては小規模瘴気溜まりの爆発、【誘拐事件】に関しては盗賊共の仕業に見せかけておきました。今回の謁見、竜人族のフェルボーニさんとカビバラさんに関しては、ズフィールド聖王国からの使者として、国賓扱いでお出迎えしてくれる手筈となっています」
昨日、グローバル通信機で話し合いをしている最中、国王陛下の顔色が疲労のせいか、あまり優れなかった。後半あたりになって『早く引退したいよ~』という呟きがボソッと聞き取れた瞬間、ルルリア王妃様が自作のハリセンで陛下の頭をスパ~~ンと叩いていたのが、記憶に新しい。
「シャーロット様! フレヤ様を殺しかけた私達のことを国賓として迎えてくれるの!?」
「御礼は、フレヤとオトギさんに言ってください」
昨日、フレヤが通信機越しに『国賓として迎えてはどうでしょうか?』と、国王陛下やヘンデル教皇に進言したことで、その案が通ったんだよ。エルディア王国はアストレカ大陸の南部に位置しているため、殆どの国民が竜人族を見たことがない。この2人を春蘭祭のゲストとして迎えることで、ランダルキア大陸北方地方にあるとされるズフィールド聖王国と接点を持ち友好関係を築いていく。成功すれば、他の国々とも上手くやっていけるだろう。この説明なら、王都近辺で見慣れない種族を目撃し、《他にも何か起こるのでは?》と不安に思う人達も納得してくれる。
「フレヤ様、オトギちゃん……恩にきるわ。私達の持つハーゴンズパレス遺跡やランダルキア大陸の情報を教えるわ!」
これまでトキワさん経由でしか、ランダルキア大陸の情報を得ていないから私としても助かる。
「『ザザ…ソロッ…ザザ…タ』」
え?
「シャーロット、今何か聞こえなかった?」
フレヤにも聞こえたんだ。
「うん。ノイズと変な音声が聞こえたような?」
「『ザザザ…イブンシ…スベテ…ミツケタ…ケイカク…ジッコウニウツス…リュウジンゾク…カンシャ』」
異分子? 計画? 急に聞こえてきたのは、ノイズ混じりの機械的な音声だ。
これは何なの? 全然、気配を感じ取れない。
コウヤ先生もオトギさんも、私と同じで一気に警戒態勢をとる。
「は!? 私達に感謝ってどういうこと?」
「お前、誰っすか!? 出てこいっす! お前の声に、聞き覚えはないっす!」
うん、2人の言ってることは真実だ。
皆を不安にさせてはいけない!
「大丈夫、お2人が我々を騙していないことは、解析データからわかっています。声の主さん、あなたは何者ですか? 姿を見せてください」
「『ワタシニ…ナマエ…ナイ…デモ…ニンム…アル…』」
任務?
どういうこと?
声だけが聞こえるのに、存在を微塵も感じ取れない。
何処にいるの?
「え!? 光が!」
突然、部屋中央の1点が光り出し、光量がどんどん強くなっていく。
「イブンシタチト……ソノタ……ワレノリョウイキ……【ハーゴンズパレス】…二…ショウタイスル……ワレノリョウイキデハ……オマエタチノチカラムコウ……テンイヲカイシスル」
「「「「「「え!?」」」」」」
もう、目を開けていられない!
○○○
空気が変わった?
それに、湿度もさっきと違う。
まさか、私達全員は本当に何処かへ【転移】されたの?
うう、光のせいで、目がまだ見えない。
「目が見えないよ~。何かおかしいよ~~~、兄様~~何処~~兄様~~」
うん?
なんか聞き覚えのある声が聞こえたよね?
「ねえ、あなたの名前は何て言うの?」
「うひゃあ! 近くで女性の声がした! あれ? 今の声……まさかシャーロット様?」
私を知っているの? この声…喋り方…まさか……
「あなた……ネルマ?」
「あ、そうです! 目が見えません。何処にいるんですか?」
「ごめん、私も突然現れた光のせいで、目が見えないの」
どういうこと?
何故、ネルマがここにいるの?
……5分程経過すると、やっと目が見えるようになってきた。
「やっぱり、シャーロット様だ~~~!」
「ネルマ!?」
ネルマが半泣きで、私に抱きついてきた。
どうなっているの?
彼女は、クディッチス家にいるはず。
ここは……薄暗い部屋…よね?
「どうして、あなたがここにいるの?」
「その質問、私がしたいです。突然、私の部屋が光ったと思って、目を開けたらここにいました」
「……私と似ているわ」
あの声……《異分子》と《その他》を自分の領域へ転移させると言っていた。
「あ、窓があります! 開けてみますね!」
「あ、こら、ちょっと!」
「うわ~~~綺麗~~~」
ネルマがカーテンを開け放ち、窓を全開にすると、一筋の風が流れ込んできた。私がネルマのもとへ向かい窓の外を眺めると、そこには……広大な敷地が広がっていた。敷地境界線には、万里の長城のような大きな城壁が設置されており、外へと通じる門らしきものは見当たらない。
敷地内には建物がいくつかあり、私達のいる場所は下を見た限り判断すると、3階建の建物の2階の角部屋となっている。
私達の身に、何が起きたの?
みんなは、何処にいるの?
○○○作者からの一言
読者の皆様、本作品を読んで頂き誠にありがとございます。
【旅芸人編】、これにて終了です。
唐突な場面転換となりましたが、このまま次章【ハーゴンズパレス】編に移ります。
ただ、私の転職に伴い、本業の仕事が8月中旬から大きく変更することになりました。
この仕事に慣れるためにも、しばらくの間更新を停止させて頂きます。
9月中旬か10月初旬頃には再開させたいと思っています。
長期間の停止となりますが、今後ともよろしくお願い致します。
犬社護
20
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。