転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護

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5話 辺境都市リリアム

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私は乗合馬車の中で、サーブルス王国と辺境都市リリアムについて、ベイツさんから詳しい説明を受ける。

サーブルス王国は、ライオン型の獣人さんが建国した国で、他にも犬や猫、狐といった様々なタイプの人たちがいて、人間族以上に精霊を崇拝している。そのせいか、私の乗る馬車の乗客たちも獣人さんばかりとあって、私の左肩に乗るルウリを見て、拝む人たちもいる。

ハミングバードは人語を話せる精霊の部類に入り、平原や街中などで見られることは皆無、滅多に遭遇する事のない精霊として有名で、別名《幸福を呼ぶ青い鳥》と呼ばれている。そんな精霊が私と仲良く話しているので、皆が歪な服を着ている私を見ても、警戒することなく、嫌な顔1つも見せず、私の事情を真摯に受け止めてくれた。そのおかげで、すぐに打ち解けることができた。

辺境都市リリアムについては、そんな乗客たちが私に優しく説明してくれた。

ダンジョンが稀に起こすとされている《ダンジョンフロー》、魔物が内部で沢山湧きすぎて、制御不能に陥った時、大勢の魔物がダンジョンの外へと漏れ出し、周辺の街や村を襲う現象を指しており、これまでの歴史から、10年間隔の周期で発生している。この被害を最小限に抑えるために建築されたのが、辺境都市リリアムだ。隣国リバイブルド王国との交易と戦争への警戒も兼ねて、都市の規模としてはかなり大きく、国防の要として現在も機能しているため、大勢の人々が暮らしており活気もある。

そう聞かされて、いざ都市の出入り口を超えて街中へ入ると、私の想像を超える程の活気で満ち溢れ、沢山の獣人さんたちが街中を闊歩しており、人間やドワーフ、エルフといった種族もちらほらいる。今後、私はこの国で暮らすわけだけど、何処に定住するかまでは決めてない。まずは、この街でルウリと一緒に、生活基盤を築いていこう。

「そういえば、私って無許可で国境を超えて都市に入っちゃいましたけど?」

これって犯罪なのでは? 本来なら、国境を超えた駅に停車して、列車のチケットと身分を証明するものを提示しないといけないはず。あの事故の影響で、私の手荷物、全部無くなったから証明できないよ。

「交信用型魔道具《タブレット》を経由して、俺から事情を聞いた冒険者ギルド職員が気を利かし、出入り口で検閲する警備員たちに、話を通してくれている。さっき、すんなりと通れただろ?」

「そういえば、乗客たちの手荷物チェックの時、何も言われませんでした」

ゴタゴタが起きないよう、ベイツさんとギルド職員さんが気を利かしてくれていたんだ。私が納得したところで、馬車が止まると、前方にいる馭者のサウロさんが馬から下りて、後方へ向かい、出入り口となる扉を開ける。

「ここは、平民や冒険者用の服を手掛けている有名なお店の前です。作りも丁寧で評判も上々なので、アヤナちゃんに服を購入してあげて下さい」

乗合馬車用の停留所ではなく、服屋の前に止まってくれたの!? 

「サウロさん、気を利かせてもらいすまない」

「何を仰る。あなたやハミングバードのルウリ様が周囲に気配を振りまいてくれたからこそ、魔物や盗賊などの襲撃もなく、快適にここまで来れたのです。乗客の皆も、納得済みですよ。彼女の身の上を考えたら、まずは衣服類をどうにかしないといけませんからね」

私のため!? サウロさんが言い終えると、他の乗客たちも気にかけてくれたのか、私に励ましの言葉を贈ってくれる。

「皆さん…ありがとうございます」
「みんな、ありがとう。それじゃあ、俺たちはここで下ろさせてもらうよ」
「馬車の旅、楽しかったよ。これは、僕からのお礼」

私たちが馬車から下りると、ルウリが魔法を使用したのか、馬車全体が淡い緑色の光で輝く。

「長時間の座りっぱなしだと、お尻も痛いし、疲労感も溜まっているからね。高位の回復魔法を使ったから、長年抱えていた古傷とかも完治させておいたよ」

サウロさんやお馬さん、乗客の方々が口を揃えて喜び、ルウリに御礼を言ってくる。私は喜ぶ皆さんに深く御礼を言って、皆と別れてから、服屋に繋がる扉を開ける。


○○○


ベイツさんのおかげで、服を新調できました。

今後、私はルウリと生活を共にする以上、自分1人で魔物を倒せるくらい強くならないといけない。そうなると、貴族の時のような上質な服なんて着られないし、ましてやスカートなんて履いていたら、自由に動けない。だから、私なりに動きやすい服を選んだ。

「アヤナ。本当に、その服でいいのか?」
「はい! 軽快に動けますし、制限ゼロです」
「だがな、それは13歳前後の女の子が着る服装か? 周囲の子供たちと、何か違うような気がするんだが?」

そういえば、私の求める服装を店員さんに言ったら、何故か不思議がられたし、中々納得できるものを選んでくれなかったので、自分で自分の求めるものを探し試着して、それに合わせた靴を選んでいき、気に入ったものを購入した。始めこそ、店員さんも怪訝な顔を浮かべていたけど、最終的に選んだものを着用すると、目を輝かせて私を褒めてくれた。その後、『新たなデザインに目覚めた!』と言って、30%も割引してくれたんだよね。

今の私のスタイルは、オープンショルダーで、トップスもお腹がちょうど隠れるくらいのサイズの服を着ていて、全体に薄い紋様もあって、首周りや袖口には、軽くフリルが付いていて、それなりにおしゃれだと思う。下は皺になりくく、履き心地抜群の半ズボン、勿論女の子用のものを履いている。

「ファッションって、そういうものですよ。店員の女性も褒めてくれたので、案外こういった服が、次の流行になるかもしれませんね」

「僕は似合っていると思う。首回りにリボンでも付ければ、君の可愛さがアップするよ」

「いいね、ルウリ! それ、私の好みにピッタリ! あとは、この長い髪を肩口くらいまでバッサリと切って終わりかな」

「おいおい、それは勿体ないだろ!」
「過去の自分との決別です」
「ベイツ、アヤナが求めているのだから、髪くらいいいじゃん」
「それが女の子のオシャレというものか?」

ベイツさんにも納得したもらったところで、私たちは床屋に行き、私の髪を整えてもらい、冒険者ギルドへと向かう。ここまで全部、ベイツさんのお金で購入しているから、生活基盤が整ったら、きちんとお金で返そう。こういうのに慣れたら、ダメな女の子になるって、前世のお母さんが言ってたもんね。
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