転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護

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17話 フリードの身に、何が起きたの?

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『嘘を言うんじゃありません! 聖女でない限り、魂に癒しなど与えられません!』
「それが癒せる方法があるんだよね、ミャアミャアと可愛く鳴くフリードちゃん」
『ルウリ!? 貴様は、私に喧嘩を売っているのですか!』

フリードちゃんの見た目と言葉遣いとのギャップが凄い。ミャアミャアと怒っているのはわかるけど、小さな黒猫のせいで、見ていてほのぼのとする。

「僕、嘘は言ってないよ。実際、可愛いからフリードちゃん」
『貴様は2度も!! この私に、可愛いと言うな!』

う~ん、鳥が人の共通語で、猫が猫語で会話しているのに、喧嘩が成立している。実に、奇妙な雰囲気です。

「お前ら、いい加減にしろ! 話が進まん!」

ベイツさんが少し大きな威圧感ある声で、ルウリとフリードも口を閉じる。ちゃん付けしていたけど、あの会話から察するに、どう考えても私より歳上だ。流石に、失礼だよね。

「ごめんよ、ベイツ。フリード、弱体化したようだけど、スキルは何が残っているの?」

『弱体化…このステータスの軟弱さは…スキルも《分析》のみだと…』

自分のステータスを見て悔しがるフリード、私から見れば、子猫が悔しがっているように見えるだけのせいで、つい抱きしめたくなってしまう。

「分析か、丁度いい。それでアヤナのステータスを覗くといい。僕の言い分が正しいとわかるから」

『それもそうですね。アヤナ、覗かせてもらいますよ』
「え…うん」

わざわざ、私に許可を求めて来るなんて…律儀な猫だ。
フリードが、私をじっと見つめてくる。

『なるほど、称号に転生者と帰還者がありますね。神の試練を乗り越えし者にのみ贈られる特典で、私の魂を治癒させたということですか』

なんか、私のステータスを覗いたことで納得したようだけど、称号や特典を知っても少し驚いた程度のせいで、私の方がその反応で驚いているんですけど。

『納得しました。まさか、最弱レベルの人間に、この私が助けられるとは。不本意ですが、窮地を救って頂いたのも事実。アヤナ、私を救って頂き、ありがとうございます』

なんか、御礼の中に悪口も入っているんですけど? 
これが、フリードなりの御礼ってこと?

「う、うん、それは良いんだけど…」
『なんです?』

喋り方と容姿に、違和感ありまくりだよ。

これが大人の黒猫だったら、まだわかるのだけど、生後数ヶ月程度の子猫で、この喋り方は異様すぎる。

それに、フリードは猫になった自覚はあるようだけど、子猫になった自分に気づいていないのでは?

「はい、手鏡。これで今の容姿を確認して」
『おや、さすがは女の子ですね。気配り、ありがとうございま……』

私が床に座って、フリードの視線に合わせた位置に手鏡を移動させ、鏡で自身の姿を認識した途端、身体を震わせ微動だにしない。

やっぱり、気づいてなかったんだ。

「フリードちゃん、僕が可愛いと言った意味がわかったかな?」
『なんじゃ、こりゃあ~~~~~』

子猫のミャア~~~という大声が、部屋中に響き渡る。
こういう場合、どういったリアクションをとるのが正解なんでしょう?


○○○


フリードは自分の今の姿を知ったことで、完全に落ち込んでいる。

『この私が…子猫になるまで弱体化するなんて…猫又になって142年、今までの経験値がほぼ消えてしまうとは…』

魂が傷ついて、経験値が外に漏れ出したせいで、強さが大幅ダウン。尻尾7本もあった猫又が生後数ヶ月の子猫まで変化すれば、落ち込んで当然かもしれない。一応、尻尾は3本あるから、種族的には猫又なのかな。

「アヤナ。俺からはミャアミャアとしか聞こえんのだが…まあ、あの落ち込みぶりを見れば、どんな返答だったのか想像つく。とりあえず、ああなった原因を詳しく聞いてくれないか?」

「あ、そうですよね」

ベイツさんだけでなく、そこは私も気になる。

「ねえフリード。弱体化した原因は、契約を無理矢理引き千切られたと言ってたけど、詳しく聞いても?」

『まあ、良いでしょう。私を助けてくれたのですから、全てをお話ししましょう』

フリードは真剣な顔で、自分に起きた事を話してくれた。

彼はランクAの著名な法術師と従魔契約を結んでおり、今から5年前にこの国へ入国した。そこで数々の依頼をこなし、国からの信頼も得たことでランクSへと昇格、順風満帆な生活を築けていたけど、事態が大きく動き出したのは2ヶ月前、遠く離れた東の国にいる主人の仲間が3人訪ねてきた。

元々、法術師は、東の国の森や山に棲む妖鬼(ヨウキ)という魔物の脅威から対抗するために作られた職業で、大きな組織の下で動いているけど、フリードの主人はその組織に属していない。

今回、凶悪な妖鬼が東の国で誕生し、かなりの味方が殺されてしまい、法術師の人口が大きく減ってしまったので、3人の仲間たちは、組織に属さない法術師の中でも、その妖鬼に対抗できる者を、組織に勧誘しているという。

その話を聞いたフリードの御主人様は、妖鬼を倒すまでの間だけ組織に入ることを承諾し、自身の力を示すため、皆でランクAのダンジョンに入った。

ここまで話を聞いた時点で、特におかしな点はなかったけど、そのダンジョンで何か起きたのかな?

『あの法術師共、やってくれましたよ』
「そこで、何か起きたんだね」

『ええ。あの3人は、ランクAのダンジョンで私たちの力を見て感嘆していました。そうして、互いの力を認め合ったところで、私と仲間の1人を先に帰らせました』

「え? なんで?」

『御主人単独の力を知りたいと言ったのですよ。まあ、奴らの言う事も一理ありましたので、私は納得し帰還したのですが、その選択が全ての過ちなのです』

「過ち?」

『ええ、私は仲間と共に御主人の帰還を宿屋で待ちましたが、ある時、急に胸が疼く衝撃を受けました。急いでステータスを見たら、私たちの契約にヒビが入り、それが壊れつつあったのです』

「もしかして、ご主人様が?」

『ええ。主人の命が危機に陥っている事を知り、私は急いでダンジョンに戻ろうと思ったのですが、仲間2人だけが帰ってきたのです。私は激怒して、奴らに問いただしました。どうやら帰還する直前にトラップを踏んでしまい、全員が分断され、やむなく帰還の道を選んだそうです。…そして、契約の鎖にヒビが入り、壊れかけていると言うことは…御主人がダンジョン内で致命傷を受けたと言うことを指す。つまり、今召喚されたとしても、助けられないと言うことです』

それって、もう手遅れってこと?
そんな……。

『私は愕然とし、その場から動けませんでした。奴らはそんな私を見て、償いの意味を込めて、自分たちの従魔にならないかと誘ってきたのです』

まあ、そこは自然な流れだよね。

『流石の私も、すぐに答えられませんので、落ち着くまでの時間が欲しいことを訴えようとした時、御主人が腹に風穴を開けながら、宿に帰還したのです』

腹に風穴って……何故その状態で動けるのか疑問だけど、そんな状態で帰還したということは、その人を突き動かす何かがあるってことだ。
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