転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護

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19話 優斗の憂い

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『光希、夜遅くにごめん。私の善行ポイント、208ポイントになったの』
『お姉ちゃん、もう200ポイントも貯まったの!』

フリードを従魔にしたその日の夜、寝る前に再度ステータスを見たら、208ポイントになっていたので慌てて、詳細を見ると…。

ポイント交換《魂魄薬》
- 50
契約破棄からの猫又の救出     
+200
子猫猫又の懐柔
+50

正直、懐柔した覚えはないのだけど、一応そうなるよね。私は慌てて異世界交流を始めて、光希に状況を伝えていく。

『なるほど、猫ちゃんの救出とお父さんのあげた猫用缶詰とキャットフードによる懐柔で200超えとは。私の方は地道に善行を稼いでいるから、まだ62ポイントしかない。こっちの世界では、動物や人助けなんて早々出来ないよ』

それは、こっちでも同じです。今回は、偶然出会った事で起きた出来事だからね。

『ああ、早く画像での交流を始めたいよ~~』

『光希、こっちからの送信は可能になったから、今から私、フリード、ルウリ、ベイツさんの画像を送るね』

ふふふ、こんな事もあろうかと、タブレットのカメラを使い、家の中限定で、みんなの写真をかなりの枚数撮っておいたのだ。

『そっか! こっちは無理でも、お姉ちゃんからは送れるんだから、みんなの姿をこの目で確認できるんだ!』

『そうだよ。ちょっと、待っててね~~~』
『いつまでも待つよ!』

まだ、文字での交流なのに、光希のテンションがこっちにまで伝わってくる。

まずは、《静止画転送》をポイント交換して、転送方法に関しては…ふむふむ…操作方法は日本のものと同じだから、簡単にできるね。

最初に送るのは、私・ベイツさん・ルウリ・フリードの写っている家族写真、これは外せないよね。

ほい、送信っと。
どんどん、送っていくよ~~~。

光希たちのリアクションが、こちら側から見れないのが残念だ。


○○○  視点:優斗


さて、これで全ての課題を終わらせたな。

『表情のあるお姉ちゃん、可愛い~』
「うお!?」

あぶね~。

椅子にもたれて背伸びしていたら、隣の部屋から急に光希の声が聞こえてきたぞ。もしかして、姉さんの方からの送信が可能になったのか? 

隣の部屋の前へ行き、ノックをしてから中へと入ると、光希が笑顔でタブレットをこっちに向ける。

「お兄ちゃん、お姉ちゃんの今の家族だって」

そこには、交流相手として表示されていた女の子がとびきりの笑顔で、カメラ越しにピースサインしており、横には30歳くらいの男性がやや固い笑顔で、こちらを見ている。

この人がランクSのベイツさんか。
うん、第一印象は合格だ。

流石に動画がないこともあって、写真だけでは、どんな人柄なのか伝わってこないが、姉さんがこの笑顔を見せるのなら、今は幸せなのだろう。

「なるほど、光希の言いたいことがわかる。表情があると、女の子の印象が全然違うな」

「でしょでしょ! こっちの青白い鳥さんがルウリ、小さな黒い子猫が猫又で、今日仲間になったばかりのフリードだって」

ということは、この何処か神々しさのある青白い鳥が前世のルリルリか。

前世と同じ鳥に転生、自身で望んだことなのか不明だが、姉さんの傍にいてくれるのは、こちらとしても心強く頼もしい限りだ。

姉さんに抱っこされている黒い子猫又の名前は、フリードか。

交流内容を読んだ限り、かなり位の高い猫が人間の欲望に巻き込まれて、強さがリセットされ窮地に陥ってたところを、姉さんの特典で助けて、そのまま仲間入りとなったわけか。

「なるほど、異世界の方が善行を稼ぎやすいようだ」

「どういうこと?」

「異世界には、スキルと魔法がある。特に、回復魔法があれば、人助けもしやすい。アニマルセラピーで魔物を助けて善行を稼ぎ、少ない消費で何らかの特典を購入して、更なる人助けをしていけば、多大な善行ポイントも貰えるってことさ」

「なんか、ずるくない? 日本だと、人助けのような事、早々出来ないのに」

「おいおい、別に競争しているわけじゃないだろ?」
「あ、そっか」

ただ、光希が心理的に焦ってしまう気持ちもわかる。

姉さんの善行ポイントは、《8》。
光希の善行ポイントは、《62》。

今は問題なくても、このまま姉さんが効率よくポイントを集めていけば、近い将来、あまり宜しくない展開になるかもしれない。

なんとか、光希に伝わることなく、姉さんに忠告を入れたいところだが、現状では不可能だな。

こちらも、光希自身がポイントを効率よく稼ぐ方法を見つけないといけない。

なら…アレを試してみるか。

「光希。善行というのは、動物や人々から感謝されることを指す。だからこそ、家や町内会の手伝いといったことをやっているわけだが、それだとペースも遅い。俺に、姉さんたちを驚かせるいい考えがある。上手くいくかは光希次第、どうする?」

そう言うと、光希はニヤッと笑う。

「やるよ! そういう時のお兄ちゃんの考えって、私やお父さん、お母さんだと、絶対に思いつかない案だもん!」

「了解だ」

光希に今後の善行の稼ぎ方を話していくと、余程面白かったのか、俺に抱きついてきた。

実行するのは光希自身なんだが、そのために必要な道具を揃えるのは、俺の役目だ。

貯金もバイトでかなり貯まっているし、姉さんと光希の交流を持続させたいのであれば、金の消費なんて問題じゃない。

問題は成功するかどうか……いや、弱気はダメだ。

俺たちの力で、必ず成功させるんだ。上手くいけば、光希は人として大きく成長できるのだから。
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