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本編
21話 今、直面している危機的事態
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私とトーイが教会内へ入ると、その中は神秘的な雰囲気に覆われている。なんというか、この中にいると、心が落ち着く。奥には、女神像が安置されていて、中央の祭壇に誰かが立っている。
「この感覚は……やっぱり、精霊ってリアテイル様のこと?」
「トーイ、当たりです。私はフェニックス族の長リアテイル、120年ぶりくらいかしら?」
祭壇にいる緋色に輝く女性は、トーイのことを知っている。
120年ぶりなのに、その記憶を覚えているのがすごい。
「ギンガ、キシリス、ドーズの3人がいるからもしかしたらとは思いましたけど、どうしてあなたがここにいるのですか?」
緋色の長髪と瞳、美しく神々しいのだけど、どこか弱々しく儚げに感じるのは何故?
「2人ともこちらへ来てちょうだい。私はこの子を守るために、聖域を出て、ここへ来たのよ」
私たちが祭壇に到着すると、そこには綺麗な揺り籠があり、中には私の両手に乗せられるくらいの半透明な小鳥が眠っている。
この子から感じる力が、とても儚く弱々しい。
「私の子供、ラピスよ」
「今でも消えそうな程に小さい力…それに…魂が…ない。どうして…」
トーイの顔は真っ青で、すぐにこの小鳥さんの容体を察したようだけど、そこまで酷い状態なの? 魂がないと言っていたけど、どういうこと?
「今から1年3ヶ月前、私はこの子を産んだわ。でも、魂が入っていなかった。このままだと死んでしまうと思い、私は自分の魔力を、この子に注ぐことで、これまで生命を繋いできた。でも、住む環境が合わないせいで、身体が少しずつ小さくなっていき、死へと傾いていった。このままだと消滅すると思い、私はこの子を連れて、急ぎ精霊王様に謁見を求め、原因を探ってもらったの」
原因…まさかカーバンクルのように、人間が絡んでいるのかな?
「どうやら私のもとへくる途中で、色んな出口を見たらしく、そっちに意識を移している時に、自分の行く道を外れていることに気づかず、迷子になったそうよ。そして、今もこの世界のどこかで身体を求め彷徨っている。存在があまりにも希薄すぎて、精霊王様ですら感知できないほどなの」
人間が関わってなくてよかったけど、まさか好奇心に負けてフラフラしちゃっているせいで、道を踏み外すだなんて。全ての精霊は好奇心旺盛とカーバンクルたちから聞いいていたけど、生まれ変わる直前でもそうなんだね。
トーイも呆れているのか、言葉を失っているよ。
「今のこの子は、生と死の両方を併せ持つ不安定な存在よ。だからこそ、私はフェニックスっとなって、その身体に適した環境を必死に探したわ。そして、この国の上空を飛翔している時、強力な瘴気とそれを覆う結界を見つけたから、ここへ急行したの。そこには神官だけでなく、聖女もいて、結界内で瘴気を全て浄化したところだった」
トマス爺の言った[その後に問題が起きた]というのは、この事か。
「私はこの地に降り立ち、人化して聖女に事情を聞いたわ。この街で起きた出来事に関しては気の毒に思うけど、今の生と死の両方を併せ持つこの環境は、私とラピスにとって最適だった。だから、私は自分の事情を打ち明け、結界を現在まで維持させてもらっているの。この地に来たことで、この子の不安定だった心音も穏やかになり、うなされることなく眠るようになったわ。そこに母としての私の力を分け与えることで、これまで生きてこられたの」
力を分け与える、だからリアテイル様は、少しやつれた顔をしているんだ。
「ここを開発されるわけにはいかないから、聖女を通じて、この地の街長や領主の許可ももらっているわ。ただ、聖女に私の子供を診てもらったのだけど、解決の糸口すらも見つからなかった。彼女も謝罪して、ここの結界をより強固にしてもらい、空間を更に安定させてもらったわ」
なるほど、そういった裏事情が隠されていたのか。
精霊様の存在を地区外の人たちに気取られたら、大騒ぎになっちゃうから、あえて聖女様でも討伐できない悪霊(クズ領主)が棲みついているという設定にしたんだね。
スラム地区の状況を理解できたけど、時間が経過すればするほど、街の住民たちが不審感を持つと思う。この問題を解決させるには、揺籠の中で眠っているラピスちゃんの身体に、魂を注入すればいい。そのためには、この世界の何処かで漂っている彼女を見つけ出さないといけないわけか。
「側近たちから、トーイの名を聞いた時は私も驚きました。およそ100年もの間、カーバンクル族全員が自分の聖域に閉じこもり連絡手段を断ち、私たち精霊すらも拒絶したのですから」
精霊フェニックス族の長リアテイル様も、カーバンクルの抱えていた事情を知らないのか。トーイたちも自分たちの命が懸っているのだから、他の精霊に何も告げられないよね。
「ここにいるユミルのおかげです。彼女は転生者で、神が彼女の前世とその知識に興味を持ち、伝統魔法というオリジナル魔法を与えました。僕の推測ですが、日本の伝統に準える魔法を作成できれば、あなたの望みでもあるラピス様を見つけ出せるかもしれません」
スキル[プログラム]があるから、伝統に似せた魔法を作成することは可能だと思う。この場合なら、日本のあの伝統が相応しい。
「ユミル、私はあなたのような存在を待ち侘びていました。この世界の魔法体系では、存在の希薄な魂の居所を掴めません。精霊王様であっても、私の身体から感じる波長と記憶を覗き見ることで、状況を知り得ただけに終わりました。あなたの魔法で、私の子供の魂を探してくれませんか?」
私は、魂を呼び寄せる伝統を知っている。でも、特定人物を呼び出すためには、スキル[プログラム]だけでなく、トーイとリアテイル様の力も必要だ。3人で力を合わせて、ラピスちゃんを見つけ出そう。
「この感覚は……やっぱり、精霊ってリアテイル様のこと?」
「トーイ、当たりです。私はフェニックス族の長リアテイル、120年ぶりくらいかしら?」
祭壇にいる緋色に輝く女性は、トーイのことを知っている。
120年ぶりなのに、その記憶を覚えているのがすごい。
「ギンガ、キシリス、ドーズの3人がいるからもしかしたらとは思いましたけど、どうしてあなたがここにいるのですか?」
緋色の長髪と瞳、美しく神々しいのだけど、どこか弱々しく儚げに感じるのは何故?
「2人ともこちらへ来てちょうだい。私はこの子を守るために、聖域を出て、ここへ来たのよ」
私たちが祭壇に到着すると、そこには綺麗な揺り籠があり、中には私の両手に乗せられるくらいの半透明な小鳥が眠っている。
この子から感じる力が、とても儚く弱々しい。
「私の子供、ラピスよ」
「今でも消えそうな程に小さい力…それに…魂が…ない。どうして…」
トーイの顔は真っ青で、すぐにこの小鳥さんの容体を察したようだけど、そこまで酷い状態なの? 魂がないと言っていたけど、どういうこと?
「今から1年3ヶ月前、私はこの子を産んだわ。でも、魂が入っていなかった。このままだと死んでしまうと思い、私は自分の魔力を、この子に注ぐことで、これまで生命を繋いできた。でも、住む環境が合わないせいで、身体が少しずつ小さくなっていき、死へと傾いていった。このままだと消滅すると思い、私はこの子を連れて、急ぎ精霊王様に謁見を求め、原因を探ってもらったの」
原因…まさかカーバンクルのように、人間が絡んでいるのかな?
「どうやら私のもとへくる途中で、色んな出口を見たらしく、そっちに意識を移している時に、自分の行く道を外れていることに気づかず、迷子になったそうよ。そして、今もこの世界のどこかで身体を求め彷徨っている。存在があまりにも希薄すぎて、精霊王様ですら感知できないほどなの」
人間が関わってなくてよかったけど、まさか好奇心に負けてフラフラしちゃっているせいで、道を踏み外すだなんて。全ての精霊は好奇心旺盛とカーバンクルたちから聞いいていたけど、生まれ変わる直前でもそうなんだね。
トーイも呆れているのか、言葉を失っているよ。
「今のこの子は、生と死の両方を併せ持つ不安定な存在よ。だからこそ、私はフェニックスっとなって、その身体に適した環境を必死に探したわ。そして、この国の上空を飛翔している時、強力な瘴気とそれを覆う結界を見つけたから、ここへ急行したの。そこには神官だけでなく、聖女もいて、結界内で瘴気を全て浄化したところだった」
トマス爺の言った[その後に問題が起きた]というのは、この事か。
「私はこの地に降り立ち、人化して聖女に事情を聞いたわ。この街で起きた出来事に関しては気の毒に思うけど、今の生と死の両方を併せ持つこの環境は、私とラピスにとって最適だった。だから、私は自分の事情を打ち明け、結界を現在まで維持させてもらっているの。この地に来たことで、この子の不安定だった心音も穏やかになり、うなされることなく眠るようになったわ。そこに母としての私の力を分け与えることで、これまで生きてこられたの」
力を分け与える、だからリアテイル様は、少しやつれた顔をしているんだ。
「ここを開発されるわけにはいかないから、聖女を通じて、この地の街長や領主の許可ももらっているわ。ただ、聖女に私の子供を診てもらったのだけど、解決の糸口すらも見つからなかった。彼女も謝罪して、ここの結界をより強固にしてもらい、空間を更に安定させてもらったわ」
なるほど、そういった裏事情が隠されていたのか。
精霊様の存在を地区外の人たちに気取られたら、大騒ぎになっちゃうから、あえて聖女様でも討伐できない悪霊(クズ領主)が棲みついているという設定にしたんだね。
スラム地区の状況を理解できたけど、時間が経過すればするほど、街の住民たちが不審感を持つと思う。この問題を解決させるには、揺籠の中で眠っているラピスちゃんの身体に、魂を注入すればいい。そのためには、この世界の何処かで漂っている彼女を見つけ出さないといけないわけか。
「側近たちから、トーイの名を聞いた時は私も驚きました。およそ100年もの間、カーバンクル族全員が自分の聖域に閉じこもり連絡手段を断ち、私たち精霊すらも拒絶したのですから」
精霊フェニックス族の長リアテイル様も、カーバンクルの抱えていた事情を知らないのか。トーイたちも自分たちの命が懸っているのだから、他の精霊に何も告げられないよね。
「ここにいるユミルのおかげです。彼女は転生者で、神が彼女の前世とその知識に興味を持ち、伝統魔法というオリジナル魔法を与えました。僕の推測ですが、日本の伝統に準える魔法を作成できれば、あなたの望みでもあるラピス様を見つけ出せるかもしれません」
スキル[プログラム]があるから、伝統に似せた魔法を作成することは可能だと思う。この場合なら、日本のあの伝統が相応しい。
「ユミル、私はあなたのような存在を待ち侘びていました。この世界の魔法体系では、存在の希薄な魂の居所を掴めません。精霊王様であっても、私の身体から感じる波長と記憶を覗き見ることで、状況を知り得ただけに終わりました。あなたの魔法で、私の子供の魂を探してくれませんか?」
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