転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

34話 黒豹のレパード

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私は、悠然と佇むテイマーギルドを見上げる。
建物自体が、冒険者ギルドよりも大きくて立派だ。

ここの外壁と内壁には、物理と魔法に耐性がある特殊な材料が練り込まれており、周囲の建物と比較すると、その色合いも独特だ。これは魔物の暴走を考慮してのもの、頑強に製作されているからこそ、絶対的な信頼が刻まれている。また、魔物と使役関係を結ぶ従業員全員が、この建物内で寝泊まりしており、暴走などが起きないよう、自分の担当する魔物たちのお世話を毎日実施している。私から見れば、動物園の飼育員のような存在かな。

建物内に入ると、そこは天井の高いホールとなっており、周囲にはちらほらと大きな魔物の姿が目に入る。

「おお、なんか凄い光景~」

冒険者ギルドと違い、商人らしき男性が魔物を連れ、何やら受付で話し合い、魔物だけが受付の女性の方へ行き、そのまま扉の中へと入っていった。別れ際、どちらも笑顔で手を振っていたから、良好な関係を築けていることがわかる。あれは、レンタルした魔物を返却したってことなのかな?

私が1階の光景に見惚れていると、奥にある大きな扉が突然開き、そこから人の顔をしてライオンのような体躯の魔物マンティコアと1人の青年が入ってくる。ここにいる全員がその威風堂々とした姿に見惚れ、自分たちよりも大きな魔物を従える青年に尊敬の眼差しが贈られる。

「なるほど、納得だわ。彼の方はAランク冒険者ライナルド、マンティコアを屈服させるだけの実力を持っていて当然ね」

アイリス様が言うのだから、この街でも有名な方なのだろう。ライナルドさんは受付のもとへ行き、少し話し合い、書類にサインすると、マンティコアを自分の影に入れ、周囲に笑顔を見せ、颯爽とギルドを去っていった。

「かっこいい人ですね」

あの人、何処かの俳優さんかと思えるほどの超絶美形な人で、さっきの爽やかな笑顔にしても、女性を惑わせる何かを持っている。その証拠に、1階にいる女性陣は、あの笑顔にやられているもの。

「そう? キザったらしくて、私の好みじゃないわ」
「私はドストライクです‼︎ 今でも、告白したいくらいです‼︎」
「メイリン、お勧めしないわ。街にいる女性の多くが、彼の虜なんだから。下手に付き合うと……刺されるわよ」

怖!!
アイリス様とメイリンさんでの評価が正反対なのはいいけど、アイリス様の忠告が真剣過ぎて怖いよ。メイリンさんも、顔が真っ青だ。う~ん、私も彼に話しかけないようにしよう。

私たちは受付へ行くと、受付嬢の獣人の女性が私たちに話しかけてくる。

「アイリス様、ようこそテイマーギルドへ。本日は、どのようなご用件でしょうか?」

笑顔で迎えてくれた受付嬢の獣人女性は、アイリス様のことを知っているのね。
街長の次女だから、ギルド関係の人たちは知ってて当然のかな。

「リタさん、近々学会発表で王都へ行くので、護衛をレンタルしたいの」
「もう、その時期なのですね。今回は、どんな魔物をご所望でしょうか?」

子供が学会発表と言っているのに、リタさんは少し驚いただけだ。周囲の人々も、アイリス様を見て一目置いているような印象を受ける。出掛ける前にメイリンさんから教えられた異名、【タウセントの神童アイリス】、これは事実のようだ。

「私たちに、癒しを与えるモフモフが欲しいの。それに加えて、敏捷・魔法・物理に長けたものがいいわ。ランクは、人語を話せるBランク以上」

これは、魔物の脅威ランクに合わせたものだ。強S・A・B・C・D・E・F弱の7ランクに分別されていて、Bは上から3番目に位置するから、かなり厳しい注文になるとアイリス様も言っていた。

「そうなりますと、今のところ該当魔物は1匹だけですね」
「どんな魔物かしら?」
「ブラックパンサーという種族で、名前はレパードです」

あれ? これって偶然?
私は魔物の種族と名前を呼ばれて、つい首を傾げてしまう。

「ユミル、どうかしたの?」
「いえ…後程お話しします」

パンサーもレパードも、日本語では[豹]を意味している。違いといえば、黒豹のような柄のない個体がパンサー、雪豹のような柄のある豹がレパードだ。種族がパンサー、名前がレパードって偶然なのかな?

「それじゃあリタさん、その魔物を見せてもらえませんか?」
「はい、では放牧場へと行きましょう。私がご案内します」

リタさんが私をチラッと見たけど、特に気にかけることなく、私たちを奥にある大きな扉へと案内してくれた。そこは、マンティコアと青年が出てきた場所だ。扉が開けられると、広大な草原が目の前に出現する。

「うわ~ひろ~~い」
「うふふ、あなたは初めてのお客様ですね」
「今日からアイリス様のメイド見習いとなりましたユミルと言います」

「ここには、約50体の魔物がいます。魔物たちは放し飼いとなっていますが、皆の性格は様々、人見知りの子もいますので、可愛いからと言って無闇に触れてはいけませんよ。怪我を負った場合は、自己責任となります。ご注意を」

「はい」

これも、メイリンさんから聞いている。ここテイマーギルドの魔物たちは基本放し飼いとなっている。ギルドマスターが魔物好きで、この草原一体にある全ての設備が魔物のために設計されている。故に、人が訪れ、怪我を負ったとしても、身分に関係なく、全てが自己責任となる。魔物全員がギルドマスターを崇拝しており、彼を傷つけるものは誰であろうとも敵らしい。そのため、このエリア内での会話も要注意だ。

しばらく歩いていると、前方から黒い何かがこちらへ向かってくる。

「丁度いいですね。あれがブラックパンサーのレパードです。我が国の言語を話せますので、会話には御注意を」

日本の動物園で見た黒豹そのものだ。
でも、名前詐欺じゃない?

レパードていうから、てっきり何らかの柄があるのかと思ったけど、全部が黒一色だ。偶然が重なっただけのようだ。

「リタさん、ありがとう。早速、交渉といきましょうか」
「ふむ、そちらの子供は私に用があるのか?」

おお、中々の渋いお声だ。
声の感じからして、若い豹さんじゃなさそう。
歴戦の勇者のような風格を感じる。

「ええ、私はアイリス・カルバイン、街長の次女よ」
「ブラックパンサーのレパードだ。レンタルか購入か?」

こうやって見ると毛艶も良く、パサつきも全然ないのだけど、毛が短い。もう少し長ければ、私好みのもふもふだったのに、少し残念だ。レパードは深淵ともいえる黒い瞳で、私たちの目をじっと見つめてくる。私たちの心を覗いているのか、それとも何かを探っているのかはわからないけど、そこには何故か可愛いらしさを微塵も感じさせない何かを感じる。

「レンタルよ。近日中に、王都へ行くの。その道中の護衛をお願いしたいわ。期間は…14日かな。その後は、その時に決めるわ」

このレンタルに成功すれば、この子への命令権が期間限定的にアイリス様へと移る。

「なるほど、貴族の10歳でその堂々とした振る舞い、神童と呼ぶに相応しいな」

神童という言葉を聞き、アイリス様がムッとした顔をする。

「その言葉は好きじゃない。私は神童なんかじゃない。私より優れている人物は、この世に沢山いるもの」

何だろう? アイリス様がレパードを睨んだ時、彼の方から何か奇妙なものを感じたけど気のせいかな? それに彼の見つめる眼力も、鋭さを増したような気がする。

この魔物をレンタルできるのかな?
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