41 / 83
本編
39話 敵の狙いは何?
しおりを挟む
私はアイリス様とメイリンさんを連れて、ガルト様のいる聖域へと召喚された。今、私は聖域の森の中にいて、長のガルト様が目の前に、他のカーバンクルたちはアイリス様という貴族がいるせいもあって、遠くから様子を窺っている。本来、[召喚]は使役契約を行なっている者にだけ適応されるけど、契約者に触れてさえいれば、召喚時の魔力が触れている者にも浸透し、一緒に召喚されると踏んだのだけど上手くいったようだ。ここは安全だから、伝統魔法を解いておこう。
「ユミル、ここは何処なの? レパードと出会ってからの記憶が朧げなの」
足元がふらつき、混乱しているせいもあってか、アイリス様はずっと俯いたまま頭を抱えている。そのせいで、周囲の状況が見えていない。目の前には、カーバンクルの長ガルト様もいるのに。
まあ、アイリス様が困惑するのも無理ないよね。レパードは私たちと出会った瞬間に、スキル[チャーム]を仕掛けてきた。あの時、テイマーギルド内で大勢の人々がいたから、スキル[反射]に関しては私の身体内だけで行使していたせいもあって、私だけが無事だった。
私がここカーバンクルの聖域に至ることになった経緯を話していくと、アイリス様の顔色がどんどん悪くなっていく。それは、メイリンさんも同様だ。
「私のせいで…ユミルを巻き込んでしまったのね」
う、アイリス様が自分の失態に気づき、どんどん落ち込んでいってる。
「そこまで自分を責めないで下さい。半分は、自分の責任です」
「アイリス様、護衛の任務を果たせず申し訳ありません」
メイリンさんも責任を感じているのか、深々とアイリス様に頭を下げる。
「しっかりせんか、この馬鹿者共!! 其方は、仮にも[タウセントの神童]と呼ばれた女だろう? この程度のことでしょげるな!! 前を向け!! 次の行動を考えろ!!」
私がどう話しかけて良いのか逡巡していると、ガルト様が喝を入れてきた。俯いていたアイリス様も、自分が今何処にいるのかを再認識したのか、ガルト様の方を向く。
「あ……カーバンクルの長ガルト様、ユミルを守るために私付きのメイド見習いとなったのに、むしろ危険に晒してしまい、申し訳ありません!! 」
……意外だ。
アイリス様は貴族で負けん気も強いから、プライドも相当高いと思っていたのに、ガルト様に対して、服の汚れなどを気にせず、その場で正座して頭を地面に付け、深く謝罪している。
「カーバンクルの皆様、誠に申し訳ございません!!」
メイリン様も主人に習い、アイリス様の横に並び、同じように誠心誠意の謝罪を皆にしている。その真摯な謝罪がカーバンクルたちに伝わったのか、皆がこっちに近づいてきて、2人の顔を舐める。
「「あ」」
急に舐められたものだから、2人も驚き、顔をあげる。気づけば、大勢のカーバンクルたちが2人を囲い、顔を舐めたり、言葉をかけたりして慰めてくれている。
「ふ、どうやら其方たちの謝罪が皆に伝わったようだ。アイリスよ、もう大丈夫だな?」
「はい!!」
さっきまで自分の失態に落ち込んでいたのに、もう立ち直ってる。
う~ん、切り替えの早い女性だ。
「ユミルよ、誘拐犯2人は、【自分たちの役目はほぼ終わったようなものだ】と言ったのだな?」
「はい。あの言い方から察するに、誘拐を隠れ蓑にして、別動隊が動いていると思われます」
「そうなると、別動体が本命、誘拐が予備と考えるべきか……本命が失敗しても、アイリスという予備がいれば目的を達成できるということだろう」
敵は、アイリス様の何を狙っているのだろう? 研究が目当てなのなら、アイリス様の研究そのものを奪いたいはずだ。でも、そういったものは屋敷で厳重に保管されているから、いくら誘拐で慌ただしくても、早々部外者の侵入を許さないはずだ。
「まさか…」
どうしたのかな?
アイリス様の様子がおかしい。
「ガルト様!! 私たちを、すぐにタウセントへ戻すことは可能ですか?」
「可能だが、アイリスは何かに気付いたのか?」
アイリス様は、静かに頷く。この慌てよう、何がわかったのだろう?
「あの屋敷内には、侍従や使用人たちが沢山います。敵の手の者が既に屋敷内に潜入し、私たちの信頼を勝ち得て働いている場合、この誘拐に乗じて、研究資料を楽に盗めます。それを可能にする者が、少なくとも2人いるのです!!」
既に潜入し信頼を得ているって、それって相当前からでないと出来ないことだよ!! 敵にとって、それだけアイリス様の存在が脅威ってこと? バレたら、自分の身が破滅するのに? う~ん、それで成功したら、その人には栄光と輝かしい名誉を手に入れるってことを考慮すれば、ここまでの危険を冒す行為も納得できるかもしれないけど、私だったら、そんな犯罪行為に絶対手を染めない。
「なるほど、敵は相当なやり手のようだ。トーイには、既に連絡をとっているから、いつでもリアテイルのいる教会へ召喚可能だ。トーイとユミルに、感謝しろ。2人がいなければ、できない行為だからな」
「はい!! ユミル、お願い、力を貸して!! 私の予想が正しければ、もう手遅れかもしれないけど、それでもこれまでの研究成果を失いたくないの!!」
私の答えは、既に決まってるよ。
「もちろん、ご協力します!! 今から、トーイと通信しますね」
ここからは、迅速に行動していこう。
『トーイ』
『ユミル、無事で良かった。リアテイル様の部下キシリスが鳥となって偵察してくれたことで、今邸内でもちょっとした騒ぎになってる。君たちの使っていた貴族用馬車だけが街長の邸に戻ってきて、様子のおかしい馭者に気付薬を施し、正常に戻してから話を聞いたことで、君たちの誘拐が発覚した。現在、街内で騒ぎにならないよう、内密に君達の居場所を探ってるところさ。テイマーギルドにも連絡して、レパードを捜索してもらってる』
良かった、馭者さんは馬車と共に邸へ戻れたんだね。あとは、私たちさえ姿を見せれば、邸内での騒ぎも収まる。テイマーギルドの人たちが動いてくれているのは嬉しいけど、ケンイチロウさんもレパードもあの状況を楽しんでいたから、多分もう行方を晦ましているはずだ。
『トーイ、私たちを攫った奴らの目的は……』
私は、誘拐された出来事をトーイに伝える。
『なるほどね、アイリスの研究目当ての誘拐か。そうなると、彼女の懸念事項もわかる。今から、君たち3人をリアテイル様のいる教会へと召喚するよ?』
『うん、お願い』
「アイリス様、メイリンさん、私に触れて下さい。トーイが今から、リアテイル様のいる教会へ私たちを召喚してくれます」
誘拐から3時間経過している以上、事態は一刻の猶予もない。
教会に召喚されたら、急いでマーカスの邸へ向かおう。
「ユミル、ここは何処なの? レパードと出会ってからの記憶が朧げなの」
足元がふらつき、混乱しているせいもあってか、アイリス様はずっと俯いたまま頭を抱えている。そのせいで、周囲の状況が見えていない。目の前には、カーバンクルの長ガルト様もいるのに。
まあ、アイリス様が困惑するのも無理ないよね。レパードは私たちと出会った瞬間に、スキル[チャーム]を仕掛けてきた。あの時、テイマーギルド内で大勢の人々がいたから、スキル[反射]に関しては私の身体内だけで行使していたせいもあって、私だけが無事だった。
私がここカーバンクルの聖域に至ることになった経緯を話していくと、アイリス様の顔色がどんどん悪くなっていく。それは、メイリンさんも同様だ。
「私のせいで…ユミルを巻き込んでしまったのね」
う、アイリス様が自分の失態に気づき、どんどん落ち込んでいってる。
「そこまで自分を責めないで下さい。半分は、自分の責任です」
「アイリス様、護衛の任務を果たせず申し訳ありません」
メイリンさんも責任を感じているのか、深々とアイリス様に頭を下げる。
「しっかりせんか、この馬鹿者共!! 其方は、仮にも[タウセントの神童]と呼ばれた女だろう? この程度のことでしょげるな!! 前を向け!! 次の行動を考えろ!!」
私がどう話しかけて良いのか逡巡していると、ガルト様が喝を入れてきた。俯いていたアイリス様も、自分が今何処にいるのかを再認識したのか、ガルト様の方を向く。
「あ……カーバンクルの長ガルト様、ユミルを守るために私付きのメイド見習いとなったのに、むしろ危険に晒してしまい、申し訳ありません!! 」
……意外だ。
アイリス様は貴族で負けん気も強いから、プライドも相当高いと思っていたのに、ガルト様に対して、服の汚れなどを気にせず、その場で正座して頭を地面に付け、深く謝罪している。
「カーバンクルの皆様、誠に申し訳ございません!!」
メイリン様も主人に習い、アイリス様の横に並び、同じように誠心誠意の謝罪を皆にしている。その真摯な謝罪がカーバンクルたちに伝わったのか、皆がこっちに近づいてきて、2人の顔を舐める。
「「あ」」
急に舐められたものだから、2人も驚き、顔をあげる。気づけば、大勢のカーバンクルたちが2人を囲い、顔を舐めたり、言葉をかけたりして慰めてくれている。
「ふ、どうやら其方たちの謝罪が皆に伝わったようだ。アイリスよ、もう大丈夫だな?」
「はい!!」
さっきまで自分の失態に落ち込んでいたのに、もう立ち直ってる。
う~ん、切り替えの早い女性だ。
「ユミルよ、誘拐犯2人は、【自分たちの役目はほぼ終わったようなものだ】と言ったのだな?」
「はい。あの言い方から察するに、誘拐を隠れ蓑にして、別動隊が動いていると思われます」
「そうなると、別動体が本命、誘拐が予備と考えるべきか……本命が失敗しても、アイリスという予備がいれば目的を達成できるということだろう」
敵は、アイリス様の何を狙っているのだろう? 研究が目当てなのなら、アイリス様の研究そのものを奪いたいはずだ。でも、そういったものは屋敷で厳重に保管されているから、いくら誘拐で慌ただしくても、早々部外者の侵入を許さないはずだ。
「まさか…」
どうしたのかな?
アイリス様の様子がおかしい。
「ガルト様!! 私たちを、すぐにタウセントへ戻すことは可能ですか?」
「可能だが、アイリスは何かに気付いたのか?」
アイリス様は、静かに頷く。この慌てよう、何がわかったのだろう?
「あの屋敷内には、侍従や使用人たちが沢山います。敵の手の者が既に屋敷内に潜入し、私たちの信頼を勝ち得て働いている場合、この誘拐に乗じて、研究資料を楽に盗めます。それを可能にする者が、少なくとも2人いるのです!!」
既に潜入し信頼を得ているって、それって相当前からでないと出来ないことだよ!! 敵にとって、それだけアイリス様の存在が脅威ってこと? バレたら、自分の身が破滅するのに? う~ん、それで成功したら、その人には栄光と輝かしい名誉を手に入れるってことを考慮すれば、ここまでの危険を冒す行為も納得できるかもしれないけど、私だったら、そんな犯罪行為に絶対手を染めない。
「なるほど、敵は相当なやり手のようだ。トーイには、既に連絡をとっているから、いつでもリアテイルのいる教会へ召喚可能だ。トーイとユミルに、感謝しろ。2人がいなければ、できない行為だからな」
「はい!! ユミル、お願い、力を貸して!! 私の予想が正しければ、もう手遅れかもしれないけど、それでもこれまでの研究成果を失いたくないの!!」
私の答えは、既に決まってるよ。
「もちろん、ご協力します!! 今から、トーイと通信しますね」
ここからは、迅速に行動していこう。
『トーイ』
『ユミル、無事で良かった。リアテイル様の部下キシリスが鳥となって偵察してくれたことで、今邸内でもちょっとした騒ぎになってる。君たちの使っていた貴族用馬車だけが街長の邸に戻ってきて、様子のおかしい馭者に気付薬を施し、正常に戻してから話を聞いたことで、君たちの誘拐が発覚した。現在、街内で騒ぎにならないよう、内密に君達の居場所を探ってるところさ。テイマーギルドにも連絡して、レパードを捜索してもらってる』
良かった、馭者さんは馬車と共に邸へ戻れたんだね。あとは、私たちさえ姿を見せれば、邸内での騒ぎも収まる。テイマーギルドの人たちが動いてくれているのは嬉しいけど、ケンイチロウさんもレパードもあの状況を楽しんでいたから、多分もう行方を晦ましているはずだ。
『トーイ、私たちを攫った奴らの目的は……』
私は、誘拐された出来事をトーイに伝える。
『なるほどね、アイリスの研究目当ての誘拐か。そうなると、彼女の懸念事項もわかる。今から、君たち3人をリアテイル様のいる教会へと召喚するよ?』
『うん、お願い』
「アイリス様、メイリンさん、私に触れて下さい。トーイが今から、リアテイル様のいる教会へ私たちを召喚してくれます」
誘拐から3時間経過している以上、事態は一刻の猶予もない。
教会に召喚されたら、急いでマーカスの邸へ向かおう。
214
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
おばさん冒険者、職場復帰する
神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。
子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。
ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。
さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。
生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。
-----
剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。
一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。
-----
※小説家になろう様にも掲載中。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる