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本編
40話 アイリスの受難
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私たちはガルト様にお礼を言ってから、トーイのいる場所へと召喚された。リアテイル様はすぐに私たちの事情を察してくれたけど、赤ちゃんのラピスだけはアイリス様に対して、『ユミルを巻き込むまないでよ!! 何のために、そっちに行かせてると思ってるんだよ!!』とぷんぷん怒っていた。
ラピスは私のことを第一に考えているから、研究に関しても興味ゼロのため、彼女のことを嫌ってしまったようだ。アイリス様も赤ちゃん相手に気難しい話も出来ないため、頻繁にペコペコと頭を下げている。赤ちゃんだからこそ、魔力暴走も起きやすいため、下手に機嫌を損ねると危険なので、その分応対も難しい。
現在、リアテイル様の側近たちは、カーバンクルたちと共に、タウセントの街に潜むあの貴族に関わる一味を捜索中だから、ラピスのことはリアテイル様とトーイに任せて、私たち3人はマーカス様たちのおられる邸へと急ぎ走り出す。
私は走りながら、アイリス様の抱えている懸念事項を少しだけ聞いた。彼女は2年前、『固定概念からの脱却:ポーションと果実の関係性』というタイトルで論文を雑誌に投稿し、それが見事承認された。その後、その論文が国内で著しく評価されたことで学会に招待され、講演発表を行なった。彼女は、その場で新規開発したポーションを出席者たちにタダで配り、これまで激まずだったポーションを爽やかでフルーティーな味わいのあるものへと変化させ、効能を2倍に引き上げ、新型ポーションの値段設定も従来品より20%も引き下げることが可能になった。
本来、こういったものはレシピを明かさず、特許をとって一つの商会から売り出せばいいのだけど、国内だけでなく、いずれは世界中のポーションを変えてしまう可能性が非常に大きいこともあって、当時のアイリス様はマーカス様と相談したことで、その学会にてレシピを公表した。彼女は自分の利益よりも、新型ポーションの普及を選んだ。
この行為が国内中の人々に評価され、[タウセントの神童]と呼ばれるようになったのだけど、今後1人だけで研究を進めていくのはかなり困難な立場になったので、彼女をフォローする2人の人材を新たに邸で採用した。2人は現在18歳の女性で、アイリス様にとって最も信頼の置ける人物、そして最も研究資料を盗み出すことが可能な人物たちと言える。研究場所は1階にある私室の地下にあるようで、その地下にある部屋へと通じる扉の鍵に関しては、アイリス様、助手の2人、専属メイドのメイリンさんの4人しか持っていない。
それを聞いたことで、彼女の懸念事項を全て理解した。2人のうち、どちらかが裏切り者になっていた場合、最悪な結果が起こる。
手遅れになってないことを祈るしかない。
○○○
邸の正門前に到着すると、アイリス様の姉ティアナ様が中庭付近にいた。ティアナ様もすぐに私たちに気づき、驚きながらもこちらへ駆けてくる。
「お姉様!!」
「アイリス、ユミル、メイリン、無事だったのね!!」
「お姉様、ルミナスとレサリアの2人は何処にいますか?」
「え、突然どうしたの?」
誘拐されたことを全部飛ばして、自分の知りたいことだけをストレートに質問している。ティアナ様が、戸惑って当然だよ。
「答えてください。私の研究に関わることなんです!!」
鬼気迫る表情で詰問するせいで、ティアナ様もたじろぐ。
「さ…さあ? あなたたちの誘拐の件もあって、私は2人を昼以降見ていないわ」
その言葉を聞いた瞬間、アイリス様とメイリンさんはティアナ様を放って、邸へと入るべく全力で走る。
「え、ちょ…ちょっとどうしたのよ、2人とも!!」
昼以降、2人を見ていないって……まさか…。
「ユミル、あなたたちは誘拐されていたのよね?」
「はい、テイマーギルドで契約したブラックパンサーのレパードの手により、間違いなく誘拐されました。詳細を省き、簡易的に報告しますね。この誘拐行為自体が、本命の敵から目を背けさせるための足止めなんです」
「誘拐が足止めですって?」
怪訝な表情を浮かべるティアナ様。
「それって…まあいいわ。とにかく、2人を追うわよ。あの慌てようは普通じゃない」
「はい」
私もティアナ様と共に邸へ入ると、中は少し慌ただしい動きを見せていた。アメリア様の突然の帰還で、侍従やメイドたちが動揺しており、その後の対処をどうするべきか逡巡しているようだ。そんな中、ティアナ様はその場にいる人たちに的確な命令を与え、皆の動揺を鎮ませ、アイリス様の向かった場所を聞いた。彼女は、自分の部屋へと一目散に向かったようだ。私たちも急ぎ向かうとしたところで、憎しみと悲しみが入り混じっかのような慟哭ともいえる叫びが屋敷中に響いた。声そのものに、魔力を感じる。
「このとんでもない叫び声、アイリス? 魔力も混じっているということは、相当な何かがあったのね、急ぐわよ」
「はい!!」
アイリス様の部屋は1階の端にあり、そこへ入ると、壁に設置されている本棚が二つに分かれていて、奥には地下へと通じる階段があった。ティアナ様と私は、急いで階段を降りていくと、開けっぱなしの扉の少し奥で、メイリンさんがアイリス様を抱きしめていた。部屋へと入ると、そこは……明るい空っぽの空間だった。
「何も…ない?」
え、おかしくない?
ここで研究していたんだよね?
あるのは、周囲を明るく照らす照明だけ?
「嘘!? ありえない!! 私も、アイリスと共にここへ何度か入ったことがあるからわかるわ。あれだけあった研究資料が……根刮ぎ無くなってる。それだけじゃない……机・椅子・棚・研究器具…何もかもが全部消えてる…こんなことって…」
恐れていたことが現実になった。
【昼以降、2人を見ていない】
ということは、アイリス様の助手と呼べるべき存在どちらもが、彼女を裏切ったんだ。ここにある全てのものを、根刮ぎ盗んだんだ。
ラピスは私のことを第一に考えているから、研究に関しても興味ゼロのため、彼女のことを嫌ってしまったようだ。アイリス様も赤ちゃん相手に気難しい話も出来ないため、頻繁にペコペコと頭を下げている。赤ちゃんだからこそ、魔力暴走も起きやすいため、下手に機嫌を損ねると危険なので、その分応対も難しい。
現在、リアテイル様の側近たちは、カーバンクルたちと共に、タウセントの街に潜むあの貴族に関わる一味を捜索中だから、ラピスのことはリアテイル様とトーイに任せて、私たち3人はマーカス様たちのおられる邸へと急ぎ走り出す。
私は走りながら、アイリス様の抱えている懸念事項を少しだけ聞いた。彼女は2年前、『固定概念からの脱却:ポーションと果実の関係性』というタイトルで論文を雑誌に投稿し、それが見事承認された。その後、その論文が国内で著しく評価されたことで学会に招待され、講演発表を行なった。彼女は、その場で新規開発したポーションを出席者たちにタダで配り、これまで激まずだったポーションを爽やかでフルーティーな味わいのあるものへと変化させ、効能を2倍に引き上げ、新型ポーションの値段設定も従来品より20%も引き下げることが可能になった。
本来、こういったものはレシピを明かさず、特許をとって一つの商会から売り出せばいいのだけど、国内だけでなく、いずれは世界中のポーションを変えてしまう可能性が非常に大きいこともあって、当時のアイリス様はマーカス様と相談したことで、その学会にてレシピを公表した。彼女は自分の利益よりも、新型ポーションの普及を選んだ。
この行為が国内中の人々に評価され、[タウセントの神童]と呼ばれるようになったのだけど、今後1人だけで研究を進めていくのはかなり困難な立場になったので、彼女をフォローする2人の人材を新たに邸で採用した。2人は現在18歳の女性で、アイリス様にとって最も信頼の置ける人物、そして最も研究資料を盗み出すことが可能な人物たちと言える。研究場所は1階にある私室の地下にあるようで、その地下にある部屋へと通じる扉の鍵に関しては、アイリス様、助手の2人、専属メイドのメイリンさんの4人しか持っていない。
それを聞いたことで、彼女の懸念事項を全て理解した。2人のうち、どちらかが裏切り者になっていた場合、最悪な結果が起こる。
手遅れになってないことを祈るしかない。
○○○
邸の正門前に到着すると、アイリス様の姉ティアナ様が中庭付近にいた。ティアナ様もすぐに私たちに気づき、驚きながらもこちらへ駆けてくる。
「お姉様!!」
「アイリス、ユミル、メイリン、無事だったのね!!」
「お姉様、ルミナスとレサリアの2人は何処にいますか?」
「え、突然どうしたの?」
誘拐されたことを全部飛ばして、自分の知りたいことだけをストレートに質問している。ティアナ様が、戸惑って当然だよ。
「答えてください。私の研究に関わることなんです!!」
鬼気迫る表情で詰問するせいで、ティアナ様もたじろぐ。
「さ…さあ? あなたたちの誘拐の件もあって、私は2人を昼以降見ていないわ」
その言葉を聞いた瞬間、アイリス様とメイリンさんはティアナ様を放って、邸へと入るべく全力で走る。
「え、ちょ…ちょっとどうしたのよ、2人とも!!」
昼以降、2人を見ていないって……まさか…。
「ユミル、あなたたちは誘拐されていたのよね?」
「はい、テイマーギルドで契約したブラックパンサーのレパードの手により、間違いなく誘拐されました。詳細を省き、簡易的に報告しますね。この誘拐行為自体が、本命の敵から目を背けさせるための足止めなんです」
「誘拐が足止めですって?」
怪訝な表情を浮かべるティアナ様。
「それって…まあいいわ。とにかく、2人を追うわよ。あの慌てようは普通じゃない」
「はい」
私もティアナ様と共に邸へ入ると、中は少し慌ただしい動きを見せていた。アメリア様の突然の帰還で、侍従やメイドたちが動揺しており、その後の対処をどうするべきか逡巡しているようだ。そんな中、ティアナ様はその場にいる人たちに的確な命令を与え、皆の動揺を鎮ませ、アイリス様の向かった場所を聞いた。彼女は、自分の部屋へと一目散に向かったようだ。私たちも急ぎ向かうとしたところで、憎しみと悲しみが入り混じっかのような慟哭ともいえる叫びが屋敷中に響いた。声そのものに、魔力を感じる。
「このとんでもない叫び声、アイリス? 魔力も混じっているということは、相当な何かがあったのね、急ぐわよ」
「はい!!」
アイリス様の部屋は1階の端にあり、そこへ入ると、壁に設置されている本棚が二つに分かれていて、奥には地下へと通じる階段があった。ティアナ様と私は、急いで階段を降りていくと、開けっぱなしの扉の少し奥で、メイリンさんがアイリス様を抱きしめていた。部屋へと入ると、そこは……明るい空っぽの空間だった。
「何も…ない?」
え、おかしくない?
ここで研究していたんだよね?
あるのは、周囲を明るく照らす照明だけ?
「嘘!? ありえない!! 私も、アイリスと共にここへ何度か入ったことがあるからわかるわ。あれだけあった研究資料が……根刮ぎ無くなってる。それだけじゃない……机・椅子・棚・研究器具…何もかもが全部消えてる…こんなことって…」
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