転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護

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本編

52話 やっぱり、アイリス様は負けず嫌いだ

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周囲が妙に騒がしくなっていると思えば、避難していた人々の多くが、いつの間にか戻って来ている。クザン・ワイナリー伯爵様の言い訳を聞いていたことで、皆が伯爵様に対して、批難の目を向けている。

「そうそう、最後に一つだけ伯爵様に質問があります。今世間に出回っている私の噂、【あの神童アイリスがポーションの研究に失敗、今年開催される学会では、捏造されたものを発表するだろう】なんです。ポーションの研究で失敗なのに、何故劣化版エリクサーだと断定したのですか? そんな噂、ありませんよ?」

「な! ……ポ、ポーションの最高峰がエリクサーだ。ここまで素晴らしい実績を積み上げてきた君だから、エリクサーだと思っただけに過ぎん!」

「エリクサーと劣化版エリクサーで、全然違いますけど? まさか、私の家にスパイを潜入させていたとか?」

アイリス様が意地悪な目つきで、ワイナリー伯爵様を見ている。
何を企んでいるの?

「五月蝿い! 私の勝手な思い込みだ!」

「ふふ、まあいいです。警備の方々も来られたようですね。周囲には、私から事情を説明しておきます。貴方が調合をミスって、患者の腕を触手に変化させて、会場の一部を破壊したと」

「な、貴様!!」

7人の騎士たちが出入り口からゾロゾロと入ってきて、こっちに駆けてくる。

「ワイナリー伯爵様、会場に設けられている詰所で詳しいお話をお願い致します。ご存知かと思われますが、真偽を見極める魔道具を用意しているので、我々に嘘は通用しません」

「真偽魔道具だと!? 待て、私は…おい、放せ!」

2人の騎士たちが、伯爵様に手錠をかけて、強引に連行していく。
残りの5人は、現場検証を行うようだ。

「アイリス~~~許さん! 貴様だけは、絶対に許さんぞ~~~」
「意味がわかりませ~~ん。私、何かしましたか~~」
「この屈辱、絶対に忘れん!」
「善意で原因を教えただけです~。それの何処が、屈辱なんですか~。私に何をしたのか、されたのか、騎士様たちに嘘偽りなく話してくださいね~~」

《何をしたのか》《何をされたのか》?
あ、そうか!

聴衆者や騎士様たちにとって、アイリス様は善意で事故の原因を教えたのだから、ワイナリー伯爵様から感謝されるのならともかく、ここまで激怒する意味がわからないよね。尋問の際、必ず何故激怒したのか問われるだろうから、伯爵様はとぼけるしかないけど、真偽を見極める魔道具があるから、それも出来ないんだ。

つまり、ワイナリー伯爵様は、真実を話さない限り、尋問から逃れる術がない。アイリス様は、暴走事故が起きた時から、こうなるよう仕向けていたのか。

「アイリス~私はこの屈辱を忘れんからな~~」

最後に盛大な一言を溢し、クザン・ワイナリー伯爵様は姿を消した。騎士さんやここにいる聴衆者の人々も、アイリス様とワイナリー伯爵様との間に、何らかの確執があると思っただろう。

「アイリス、貴方という子は…」

マーカス様も、アイリス様の仕出かしたことに呆れている。

「お父様、申し訳ありません。私、泣き寝入りだけは、絶対に嫌なんです。後に、騎士様たちにも全てを明かしますが、ワイナリー伯爵が上手くかわす可能性もあります。場合によっては不問とされ、裁かれない可能性もありますので、今この場で暴走事故を利用して、私と同じ屈辱を奴に与えました」

やっぱり、アイリス様は負けず嫌いだ。研究資料の盗難に関しては、泣き寝入りするしかないと思っていたけど、犯人がわかった途端、まさかこんな形で相手に屈辱を与えるとは。

「まあ、いいでしょう。今日中に学会発表が再開されることはないでしょうから、トーイはユミルを連れて、先にホテルへ戻っていなさい。我々は、現場検証や事情聴取を受けてから戻ります」

「はい、もう何も起こらないと思いますけど、マーカス様たちもお気をつけて」

マーカス様に言われ、私はトーイと一緒に再度喧騒になりつつある会場を離れ、通路に出る。このまま建物を出てホテルへ戻っていいのか、一抹の不安を感じてしまい、私は遠くなりつつある会場の出入り口となる扉を見る。

「ユミル、どうしたの?」
「トーイ、伯爵様の護衛2人、あの男性たちがアイリス様を裏切った2人組とは思えないの。もし、この状況を何処かで見ていたら、主人の名誉を守るために、監視カメラの映像記録を盗むか、破壊するんじゃないかなと思って」

あの伯爵様、プライドがすっごく高そうに見えるし、去り際の言葉が強烈だった。アイリス様に、全ての罪を着せるよう捏造しそうで怖いんだよね。

「ユミル、賢いね。でも、杞憂だと思うよ。真偽を見極める魔道具の性能は、僕でも知っているくらい優秀だ。あの伯爵も、観念すると思うけど?」

確かに、あそこまで追い込む状況を作り上げれば、破壊工作なんかしようものなら、益々怪しまれると思う。でも、相手は伯爵貴族で老獪な老人、真実を上手く誤魔化して、ある程度の時間を稼いでいる間に、誰かが裏工作を働き、罪をアイリス様に擦りつけそうな気がしてならない。

私の考え過ぎかな?

「怪しい人物がいないか、監視映像を見れる監視室付近に行っていいかな?」
「いいよ。君が納得するまで、付き合うよ。怪しまれないよう、ここからは反射を利用して、姿を皆に見えないよう調整して進もう。もし、騎士に見つかったら、道に迷ったとでも言っておこう」

「うん!」

監視室の場所を会場の誰かに聞いたら怪しまれる可能性もあるのではと思い、トーイに助けてもらい、その場所を目指し歩いていると、人混みがどんどん少なくなっていき、遂に誰もいなくなる。

「怖…あれだけ賑やかだったのに、誰もいないよ」
「ここは、会場スタッフしか通らない通路だから……」

トーイが右手人差し指を挙げ、それを口元に近づけて、《し~》と私に合図する。耳を澄ませると、あの直角の曲がり角の先から、2人の女性の声が聞こえてきた。

「どうする? 命令で舞台袖の監視映像を、調薬時から観察するよう言われていたけど、あんな展開聞いてないって」

「わ~ってるよ。あのジジイ、研究データや材料類を根こそぎ盗んで優越感に浸っていたせいで、肝心な箇所で調製ミスを犯して、あんな暴走事故を引き起こすとはね。おまけに、アイリスに原因を指摘された上に、良いように振り回されて、プライドをズタボロにされ、怒りのままいらんことを口走りやがった。騎士たちも怪しんでいるから、真偽魔道具の影響で、洗いざらい暴露するかもな」

もしかして、アイリス様の言ってた2人組って、この人たちのこと?

「それ、やばいって!! そろそろ、抜けた方がいいんじゃない?」
「ああいった老獪な老人はな、意外に執念深くて、全てを失った後が怖いんだ。引き際を誤ると、私たちもとばっちりを食う」

「アイリスの責任にするのなら、監視映像の破壊も手だけど?」
「それはダメ。ジジイの証言次第で、自分で自分の首を絞めることになる」
「じゃあ、どうすりゃいいのよ!!」
「1つ、手がある」
「マジで!? どんな手、どんな手よ!!」

なんか、どんどん危険な匂いが漂ってきているような? 小声で話し合っているのか、そこから先の内容が聞こえなくなる。反射を利用すれば聞こえるかもだけど、周囲に誰もいないから、今の私の制御力だと危険だ。

「あったまいい~! まずは、アイリスの洗脳だね! 私はトイレで待ち伏せるから、上手く誘導してね」

洗脳!?
そんなの絶対に駄目!! 

「任せろ…てことで、そろそろ出てこい。そこの直角のところで、聞き耳立てている奴ら」

う、バレてる!?

トーイを見ると驚いている素振りもないので、相手側が私たちの存在を察知しているとわかっているみたい。

「トーイ」

私は急に不安になってきたので、彼女を見る。

「仕方ない、私たちで倒そう。あっちにとっては、想定外の相手だろうから、どうやって倒すかが懸念事項かな」

どういう意味? 
あの2人は、私たちの存在を察知しているのに想定外なの?
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