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12話 光精霊のお導き
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どうせなら、魔王のように振る舞ってみるか。
「我の問いに答えろ。貴様の職業と名前は?」
「暗殺者…マルケス」
なるほど、質問に該当する言葉しか答えないわけか。
「貴様の主人の名は?」
「我が主人は…マクレミーサ・ファーレン侯爵令嬢」
「目的は何だ?」
「ルティナの抹殺…その遺体を森の中に遺棄し、魔物の餌として生きていた痕跡を全て抹消すること」
こいつの雇い主は、どれだけ残酷な行為を行うとしているのか理解しているのか? いや、子供を殺したことで精神のタガが外れ、自分の為す行為を正義と思い込んでいるのかもしれない。
「お兄ちゃん、こいつ酷くない!?」
「酷いのは、この男の主マクレミーサだよ。余程、君のことが邪魔のようだね」
僕と同じ15歳と聞いているけど、愛し子のルティナに罪を着せた以上、奴は巫女としての器を失ったな。
「2時間後に目覚めた時、目の前に大きな麻布袋がある。中身は、ルティナの遺体だ。貴様は中身を確認せず担ぎ、武器を持たないまま、その日のうちに王都を出て、徒歩で帰らぬの森の奥地へと向かい、それを投棄しろ。そこで任務達成、貴様は魔物の餌となれ。タルパになっても、何も抱えることなく成仏しろ」
「了解」
これで、命令の上書きが完了された。
ここから10km程離れた場所に、帰らずの森がある。理由は不明だけど、あそこは一度入ると、人の方向感覚を惑わせるらしい。そこで死ねば、マクレミーサ側から見れば、放った刺客が帰ってこないことから、ただの行方不明扱いとなる。袋だけを森に放置し、そのまま彼女のもとへ帰還させ、任務達成を報告したとしても、僕らが普通に外を彷徨いていれば、それが誤りであると認識され、すぐに別の刺客が放たれる。
あえて報告させず、行方不明にした方が多少の時間を稼げる。
目撃情報もあるから、ある程度の混乱をあちら側にもたらせるはずだ。
「お兄ちゃん、その命令って…」
この世界は、地球以上に残酷だ。
今のうちに、世の中の厳しさを教えておこう。
「ルティナ、優しいだけじゃあ、この世界を生きていけない。時には、こういった非情さも必要になる。これまでこういった汚いことは、大人たちがやっていたんだ。いつか、君自身が人と戦う時が必ず来る。その時は、ためらうな」
「でも…この人にも親や家族が…」
「それは、皆同じだ。こういった行為は僕も極力控えたいけど、こいつの任務は、君を殺すこと。ここで逃しても、また追ってくる。今回、汚い役目は、僕が全て背負おうけど、君はそれに目を背けるな」
「わかった……ありがとう、お兄ちゃん」
ルティナは、真剣に聞き入れてくれている。今すぐには受け入れられないだろうけど、大人になる15歳までには、彼女も色々と経験するはずだ。今のうちに、知っておいた方がいい。
さて、最後の仕上げだ。
「先程の命令以外のここでの記憶を抹消すること」
「了解」
あとは、ちゃんと言われた事を遂行出来るかだけど、こればかりは待つしかない。掌握している以上、何か起きたらステータスに表示されるだろう。
「これが…ギフト[加工]の能力なんだね。この人よりお兄ちゃんの方が断然怖いけど、そこにほのぼのとした気楽感を感じさせるのは何でかな?」
「そこは、その人の持つ人柄が関係しているんだよ。僕とこいつとでは、放っている雰囲気が全然違うからね」
「なるほど。そういえば、私たちの生存がマクレミーサに知られたら、別の殺し屋が来るんじゃない?」
「ルティナが生きている限り、奴は必ず何か仕掛けてくる。どう行動するかは、タルパになったリノアを助け出してから考えよう」
僕がリノア救出を訴えると、ルティナの表情がぱあっと急に明るくなる。
「凄い、凄い!! 光精霊様の言った通りだ。お兄ちゃんに任せれば、事態はすぐに改善されるって言ってたけど、本当にそうなりそう!!」
「光精霊?」
「うん!! 神殿を追い出された後、お兄ちゃんのいる宿屋に行こうと思ったけど、途中で道に迷ったの。そうしたら、光精霊様が空からやって来て、『可哀想なルティナ、私がリョウトのもとへ導いてあげる。あの人に任せれば、あなたの置かれている状況をすぐに改善してくれるわ。マクレミーサに関しては、状況を観察して、タイミングを見計らい罰を与えるから、あなたは自分のことだけを考えて生きなさい』って言ってくれたの」
光精霊が、ルティナを僕のもとへ導いてくれたのか。
精霊たちは、僕と女神様の繋がりを知っているな。
「『自分のことを考えて生きろ』…か。君はタルパになったリノアと再会したら、何を望むのかな?」
「え…私は……」
しばらく熟考すると、ルティナは何かを決意したのか、僕を見る。
「私はリノアを成仏させたい!!」
うん、良い答えだ。
親友の死を引きずらずに、自分で前へと踏み出せている。
「偉いね。僕も、君の意見に賛成だ」
僕はルティナの頭を撫でると、彼女はえへへと微笑む。
破門されたことによる憎しみも、少しは薄れたかな。
あとは、ゴミの集積置場から小さなゴミ25kgくらいを麻布袋の中に集めて、気絶している暗殺者の目の前に置いてから、僕らも邸へ向かおう。
「我の問いに答えろ。貴様の職業と名前は?」
「暗殺者…マルケス」
なるほど、質問に該当する言葉しか答えないわけか。
「貴様の主人の名は?」
「我が主人は…マクレミーサ・ファーレン侯爵令嬢」
「目的は何だ?」
「ルティナの抹殺…その遺体を森の中に遺棄し、魔物の餌として生きていた痕跡を全て抹消すること」
こいつの雇い主は、どれだけ残酷な行為を行うとしているのか理解しているのか? いや、子供を殺したことで精神のタガが外れ、自分の為す行為を正義と思い込んでいるのかもしれない。
「お兄ちゃん、こいつ酷くない!?」
「酷いのは、この男の主マクレミーサだよ。余程、君のことが邪魔のようだね」
僕と同じ15歳と聞いているけど、愛し子のルティナに罪を着せた以上、奴は巫女としての器を失ったな。
「2時間後に目覚めた時、目の前に大きな麻布袋がある。中身は、ルティナの遺体だ。貴様は中身を確認せず担ぎ、武器を持たないまま、その日のうちに王都を出て、徒歩で帰らぬの森の奥地へと向かい、それを投棄しろ。そこで任務達成、貴様は魔物の餌となれ。タルパになっても、何も抱えることなく成仏しろ」
「了解」
これで、命令の上書きが完了された。
ここから10km程離れた場所に、帰らずの森がある。理由は不明だけど、あそこは一度入ると、人の方向感覚を惑わせるらしい。そこで死ねば、マクレミーサ側から見れば、放った刺客が帰ってこないことから、ただの行方不明扱いとなる。袋だけを森に放置し、そのまま彼女のもとへ帰還させ、任務達成を報告したとしても、僕らが普通に外を彷徨いていれば、それが誤りであると認識され、すぐに別の刺客が放たれる。
あえて報告させず、行方不明にした方が多少の時間を稼げる。
目撃情報もあるから、ある程度の混乱をあちら側にもたらせるはずだ。
「お兄ちゃん、その命令って…」
この世界は、地球以上に残酷だ。
今のうちに、世の中の厳しさを教えておこう。
「ルティナ、優しいだけじゃあ、この世界を生きていけない。時には、こういった非情さも必要になる。これまでこういった汚いことは、大人たちがやっていたんだ。いつか、君自身が人と戦う時が必ず来る。その時は、ためらうな」
「でも…この人にも親や家族が…」
「それは、皆同じだ。こういった行為は僕も極力控えたいけど、こいつの任務は、君を殺すこと。ここで逃しても、また追ってくる。今回、汚い役目は、僕が全て背負おうけど、君はそれに目を背けるな」
「わかった……ありがとう、お兄ちゃん」
ルティナは、真剣に聞き入れてくれている。今すぐには受け入れられないだろうけど、大人になる15歳までには、彼女も色々と経験するはずだ。今のうちに、知っておいた方がいい。
さて、最後の仕上げだ。
「先程の命令以外のここでの記憶を抹消すること」
「了解」
あとは、ちゃんと言われた事を遂行出来るかだけど、こればかりは待つしかない。掌握している以上、何か起きたらステータスに表示されるだろう。
「これが…ギフト[加工]の能力なんだね。この人よりお兄ちゃんの方が断然怖いけど、そこにほのぼのとした気楽感を感じさせるのは何でかな?」
「そこは、その人の持つ人柄が関係しているんだよ。僕とこいつとでは、放っている雰囲気が全然違うからね」
「なるほど。そういえば、私たちの生存がマクレミーサに知られたら、別の殺し屋が来るんじゃない?」
「ルティナが生きている限り、奴は必ず何か仕掛けてくる。どう行動するかは、タルパになったリノアを助け出してから考えよう」
僕がリノア救出を訴えると、ルティナの表情がぱあっと急に明るくなる。
「凄い、凄い!! 光精霊様の言った通りだ。お兄ちゃんに任せれば、事態はすぐに改善されるって言ってたけど、本当にそうなりそう!!」
「光精霊?」
「うん!! 神殿を追い出された後、お兄ちゃんのいる宿屋に行こうと思ったけど、途中で道に迷ったの。そうしたら、光精霊様が空からやって来て、『可哀想なルティナ、私がリョウトのもとへ導いてあげる。あの人に任せれば、あなたの置かれている状況をすぐに改善してくれるわ。マクレミーサに関しては、状況を観察して、タイミングを見計らい罰を与えるから、あなたは自分のことだけを考えて生きなさい』って言ってくれたの」
光精霊が、ルティナを僕のもとへ導いてくれたのか。
精霊たちは、僕と女神様の繋がりを知っているな。
「『自分のことを考えて生きろ』…か。君はタルパになったリノアと再会したら、何を望むのかな?」
「え…私は……」
しばらく熟考すると、ルティナは何かを決意したのか、僕を見る。
「私はリノアを成仏させたい!!」
うん、良い答えだ。
親友の死を引きずらずに、自分で前へと踏み出せている。
「偉いね。僕も、君の意見に賛成だ」
僕はルティナの頭を撫でると、彼女はえへへと微笑む。
破門されたことによる憎しみも、少しは薄れたかな。
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