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50話 将来性のある子供たち
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ルティナたちと合流後、アランさんがマクレミーサを叱責すると、彼女は全てを諦観した表情で全てを話すと吐露した。
「マクレミーサ、両手を揃えて私の正面に出せ!!」
ジェイコブ神官はそんな彼女を見てもまだ信じられないのか、頑丈な手錠を用いて彼女の両手を拘束させ、魔法を出しにくくさせる。手錠には頑丈で細長く3メートル程の縄が付けられていて、その先には片手用の手錠があり、それを自分の左腕に装着させる。これは、容疑者を逃さないための配慮だろう。
帰還準備を終えたのか、彼はルティナとリノアを優しげな目で見る。
「ルティナ、リノア……我々神殿側が君たちに行った非道な仕打ち、本当にすまなかった。私自身、直接関わっていないとはいえ、そもそも私がもっと手早く客との打ち合わせを終わらせ、ここへ駆けつけていれば、あんな悲劇も起こらなかった。私も、この罪を受け入れ、いかなる罰も受ける所存だ」
そう言うと、彼は2人の子供たちに、謝罪としてのお辞儀を深々と行う。
へえ、この人はマクレミーサと違い、自分の罪を認め、罰を受ける覚悟があるようだ。まだ、光精霊も周囲にいるはずだから、何か罰を考えるかもしれないな。
「ジェイコブ先生、あなたは光や聖魔法を使えているから大丈夫だけど、ルティナに追放処分を下した神官様たちは、もう手遅れかもしれない」
「手遅れ? まさか……」
「そ…マクレミーサ同様、光精霊様が何らかの処分を下しているかと」
「そんな…会議に出席された方々の中には、司教様もいる。光精霊様は、彼らにも罰を与えたというのか?」
「私の予想だと、この国にいない聖女様たちだって、何らかの影響を受けていると思う。マクレミーサは、それだけのことをしたもの。私とルティナが許したとしても、精霊様はきっと許さない」
ジェイコブ神官の真後ろに位置する空間が、微かに明滅する。恐らく、光精霊がリノアの言葉に反応し、何かを思いついったってところか。
「ヒライデン伯爵、我々は急ぎここで起きた事の全て神殿にいるルオゾール司教へ報告いたします。そして、一刻も早く精霊様への謝罪の準備を」
「そうしろ。あとで、私も行く(謝罪を入れたところで、もう手遅れだろう。なんせ、光の愛子を冤罪で追放したなど、前代未聞の出来事だ。精霊は、そんな身勝手な奴らを許さない)」
ジェイコブ神官とマクレミーサはゆっくりと僕たちにお辞儀し、この敷地を離れていった。そうして、周囲が4人だけの世界となる。
「お兄ちゃん、この人が本当に父親なの? 聞いていた内容と、何か違うよ?」
あの2人がいなくなった途端、本人の目の前で、いきなりそこを追求してくるか。子供だからこそ、許される発言だと思いたい。
「うん、厳しい言葉だったけど、何処か優しさもあった」
やっぱり、ルティナもリノアも、感性が鋭い。
第三者的な立場で物事を見ていたからこそ、違和感に気づけたのかな。
「将来性のある子供達じゃないか」
父親の声で言われているせいか、なんかこそばゆいな。
「でしょ」
僕たちは、軽く微笑む。
そこから、僕はこのタルパ襲撃事件の真相を2人に話す。邸内で何が起き、どんな結末になったのかも全て。
「それじゃあ、お兄ちゃんの父親は死んだの?」
「ああ、魂は間違いなく死んだよ」
「リョウトさん、何故2人の戦いを止めなかったの?」
「僕に止める権限などない。アランさんの家族は、僕の父や祖父母に殺されたのだから。ただ、少しの後悔はあるかな。全ての真相を知った上で考えれば、[止める]という選択肢が最善だったかもしれないね。物語じゃないんだから、事件を最良の結末で迎え終えることなんて、そうそうできることじゃない。ただ、君らは僕のような選択をとらないようにね。君らの心は善良で、綺麗だ。こんな結末を迎えたら、きっと後悔の念に押し潰されるだろうから」
「お兄ちゃんは、なんでそれを平然とした顔で言えるの?」
「そうだよ」
「これまでに、色々とあったからね。僕の心は壊れかかっているのさ」
ルティナ、リノア、アランさん、三人三様、それぞれが僕のことで何かを考えている。
[これまでのこと]、これは前世も含まれている。僕の心は、前世にとった選択のせいで、後悔の念に何度も苛まされた。僕が何も言わなければ、家族に捨てられなかったし、孤児院だって崩壊しなかっただろうから。僕の選択で、多くの人々の人生を狂わせてしまい、多くの人々から恨みの言葉を聞かされた。家族がいなくなったから、僕は友を求めた。でも、その友から何度も裏切られたせいで、僕の心は壊れたのかもしれない。
「さあ、宿屋へ帰ろう。今日の冒険は、これでおしまい。宿屋でゆっくり休もう」
「お兄ちゃん、私は絶対に裏切らないからね!!」
「私も、裏切らない!!」
この子たちなりに、励ましてくれているのかな。
「すまない。私の立場上、そういった言葉を言えない。だが、君が悩み、大きな選択をする時は、必ず相談してほしい。私なりに考え、君のためになる助言を与えたい」
アランさんも、きちんと言葉を選んで励ましてくれている。
「3人とも、ありがとう」
僕は3人に御礼を言い、皆で敷地から出て行った。
「マクレミーサ、両手を揃えて私の正面に出せ!!」
ジェイコブ神官はそんな彼女を見てもまだ信じられないのか、頑丈な手錠を用いて彼女の両手を拘束させ、魔法を出しにくくさせる。手錠には頑丈で細長く3メートル程の縄が付けられていて、その先には片手用の手錠があり、それを自分の左腕に装着させる。これは、容疑者を逃さないための配慮だろう。
帰還準備を終えたのか、彼はルティナとリノアを優しげな目で見る。
「ルティナ、リノア……我々神殿側が君たちに行った非道な仕打ち、本当にすまなかった。私自身、直接関わっていないとはいえ、そもそも私がもっと手早く客との打ち合わせを終わらせ、ここへ駆けつけていれば、あんな悲劇も起こらなかった。私も、この罪を受け入れ、いかなる罰も受ける所存だ」
そう言うと、彼は2人の子供たちに、謝罪としてのお辞儀を深々と行う。
へえ、この人はマクレミーサと違い、自分の罪を認め、罰を受ける覚悟があるようだ。まだ、光精霊も周囲にいるはずだから、何か罰を考えるかもしれないな。
「ジェイコブ先生、あなたは光や聖魔法を使えているから大丈夫だけど、ルティナに追放処分を下した神官様たちは、もう手遅れかもしれない」
「手遅れ? まさか……」
「そ…マクレミーサ同様、光精霊様が何らかの処分を下しているかと」
「そんな…会議に出席された方々の中には、司教様もいる。光精霊様は、彼らにも罰を与えたというのか?」
「私の予想だと、この国にいない聖女様たちだって、何らかの影響を受けていると思う。マクレミーサは、それだけのことをしたもの。私とルティナが許したとしても、精霊様はきっと許さない」
ジェイコブ神官の真後ろに位置する空間が、微かに明滅する。恐らく、光精霊がリノアの言葉に反応し、何かを思いついったってところか。
「ヒライデン伯爵、我々は急ぎここで起きた事の全て神殿にいるルオゾール司教へ報告いたします。そして、一刻も早く精霊様への謝罪の準備を」
「そうしろ。あとで、私も行く(謝罪を入れたところで、もう手遅れだろう。なんせ、光の愛子を冤罪で追放したなど、前代未聞の出来事だ。精霊は、そんな身勝手な奴らを許さない)」
ジェイコブ神官とマクレミーサはゆっくりと僕たちにお辞儀し、この敷地を離れていった。そうして、周囲が4人だけの世界となる。
「お兄ちゃん、この人が本当に父親なの? 聞いていた内容と、何か違うよ?」
あの2人がいなくなった途端、本人の目の前で、いきなりそこを追求してくるか。子供だからこそ、許される発言だと思いたい。
「うん、厳しい言葉だったけど、何処か優しさもあった」
やっぱり、ルティナもリノアも、感性が鋭い。
第三者的な立場で物事を見ていたからこそ、違和感に気づけたのかな。
「将来性のある子供達じゃないか」
父親の声で言われているせいか、なんかこそばゆいな。
「でしょ」
僕たちは、軽く微笑む。
そこから、僕はこのタルパ襲撃事件の真相を2人に話す。邸内で何が起き、どんな結末になったのかも全て。
「それじゃあ、お兄ちゃんの父親は死んだの?」
「ああ、魂は間違いなく死んだよ」
「リョウトさん、何故2人の戦いを止めなかったの?」
「僕に止める権限などない。アランさんの家族は、僕の父や祖父母に殺されたのだから。ただ、少しの後悔はあるかな。全ての真相を知った上で考えれば、[止める]という選択肢が最善だったかもしれないね。物語じゃないんだから、事件を最良の結末で迎え終えることなんて、そうそうできることじゃない。ただ、君らは僕のような選択をとらないようにね。君らの心は善良で、綺麗だ。こんな結末を迎えたら、きっと後悔の念に押し潰されるだろうから」
「お兄ちゃんは、なんでそれを平然とした顔で言えるの?」
「そうだよ」
「これまでに、色々とあったからね。僕の心は壊れかかっているのさ」
ルティナ、リノア、アランさん、三人三様、それぞれが僕のことで何かを考えている。
[これまでのこと]、これは前世も含まれている。僕の心は、前世にとった選択のせいで、後悔の念に何度も苛まされた。僕が何も言わなければ、家族に捨てられなかったし、孤児院だって崩壊しなかっただろうから。僕の選択で、多くの人々の人生を狂わせてしまい、多くの人々から恨みの言葉を聞かされた。家族がいなくなったから、僕は友を求めた。でも、その友から何度も裏切られたせいで、僕の心は壊れたのかもしれない。
「さあ、宿屋へ帰ろう。今日の冒険は、これでおしまい。宿屋でゆっくり休もう」
「お兄ちゃん、私は絶対に裏切らないからね!!」
「私も、裏切らない!!」
この子たちなりに、励ましてくれているのかな。
「すまない。私の立場上、そういった言葉を言えない。だが、君が悩み、大きな選択をする時は、必ず相談してほしい。私なりに考え、君のためになる助言を与えたい」
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「3人とも、ありがとう」
僕は3人に御礼を言い、皆で敷地から出て行った。
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