記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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5話 冒険者たちとの遭遇

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3人の男性冒険者たちが、私たちに剣を向けたせいで、ハティスは私の前に移動して、警戒の唸り声を上げる。

「何故人間の女の子が、こんな深部にいるんだ?」
「あの時のブラックフェンリルが、あの子を守ってるぞ。まさか、魔族か?」
「いや、俺たちの看破で反応しないから、正真正銘人間の女の子だ」

3人の中でも、ハティスの目は、黒髪で25歳くらいの男性をずっと警戒してる。もしかして、この人がお母さんの仇?

「まさか…高さ50メートルもある峠道近辺から投げ飛ばされた?」
「ネルヘン樹海だからこそ…ありうる。木々がクッションになって奇跡的に助かったのかもしれない」

私のような人が、以前にもいたの? 
ふと、黒髪の男性と目が合う。
ハティスが襲いかかる前に、私から話しかけてみよう。

「あなたが、この子の母親を殺した人ですか?」
「な!?」

全員が、一斉に剣を向けてきた。やっぱり、この人がそうなんだ。

「君は、何者だ?」

そう言われても、私も自分が誰なのかわからない。私の情報を与えたら、ハティスを見逃してくれるかな?

「私には、ここに至るまでの記憶がありません。目が覚めてステータスを見たら、自分の名前がユイとなっていて、魔力量が0、体力が10、スキルが1個だけありました。備考欄を見たら、[強奪されし者]っていう称号があって、強奪率92.5%となっていました」

3人全員が絶句して、私を見る。
全部、本当のことなの! お願い、信じて!

「儀式魔法による強奪…君は、その生存者か?」
「それなら、ネルヘン樹海に捨てられたのも頷けるが…」
「ああ。この状況下で、そんな嘘をつくとは思えないしな」

今のうちに、ハティスのことも言っておこう。

「ステータスを見て絶望している時に、怪我を負ったこの子と出会いました。自分が誰なのかもわからず不安で怖かったけど、この子がずっと寄り添ってくれていたから、冷静になれた。スキルを使って、この子の怪我を治したら仲良くなったので、従魔契約を結びました。この子の名前は、ハティスです」

私の話を信じてくれたのか、黒髪の男性が剣を鞘に収めて、跪いてハティスを見つめる。さっきまで、刺々しい何かを出していたけど、今は穏やかな…何処か悲しげな瞳でハティスを見てる。

「君がハティスかい?」
「そうだよ! どうして、お母さんを殺したんだ!」

3人は、互いに顔を見合わせてから頷く。
ハティスの方は唸り声をあげながら、必死に自分を自制してる。

「間違いなく、それは我が国の共用語だ。私の名前はロイド、冒険者のランクはS。私は、ハティスの母親を殺した。これは、紛れもない事実だ。彼女は…魔物の自我を失わせる病気『魔石狂い』に侵されていた。君にも、心当たりがあるはずだ。突然、暴力を振るわれなかったか?」

自我を失う病気『魔石狂い』? 
心当たりがあるのか、ハティスは唸り声を止める。

「やっぱり…病気だったのか。僕…お母さんから暴力を受けてた。2週間くらい前から、暴力が始まったんだ。初めは日に1回程度だったけど、それがどんどん増加していった。僕がどれだけやめてよと叫んでも、お母さんは暴力を振い続け、その後は必ず悲しい顔で僕に謝罪するんだ。あの時、何かに苦しんでた。その証拠に、お母さんの魔力が毎日変化して荒れ狂っていたもん」

ハティスが言ってた気になることって、これなんだね。

「それが、『魔石狂い』の特徴だ。あの時、ハティスの母親は私と戦いながら苦しんでいた。ほんの少し自我を取り戻した時、私にこう言ったんだ。《殺して。もう、子供に暴力を振るいたくない。子供を殺したくないの。もう、自我を保てない、心が限界なの。お願い、殺して》とね。知能の高い魔物があの病気に侵されてしまうと、救う術がない。だから、私は……その願いを叶えた。事情があったとはいえ、殺したのは事実。ハティス、すまない」

子供のハティスに、頭を下げている。
ロイドさんの謝罪は、本物だ。

「許すよ。お母さんを…あの苦しみから解放させてくれたもん」

言葉では納得しているように思えるけど、身体を震わせ、必死に歯をくいしばってる。お母さんがこの人に殺されたのも事実、ハティスは今何に対して怒ってるの?

「僕が…僕がもっと強く賢かったら…お母さんを救えていたかもしれないのに」

もしかして、自分の弱さに怒ってるの? ロイドさんたちも何とも言えない悲しげな表情を浮かべる。このままだと、ハティスはずっとお母さんのことを引きずって生きていくことになる。

「ハティス、起きた事は変えられないけど、前を向いて歩いていこう。あなたのお母さんだって、悔やみ続ける貴方を見たくない。きっと、《強くて立派なフェンリルになってね》と天国で祈り、貴方を見守っているはずだから」

ハティスは私の言葉で何かを思い出したのか、ハッとなって顔を上げる。

「そうだ…お母さん、《かつて、私には夢があったの。それは、神様の加護を持つホワイトフェンリルになること。でも、お母さんは盟約を守れなかった。ハティスが強く気高い存在になりたいのなら、大地を守護するホワイトフェンリルを目指しなさい》て言ってた」

神様の加護を持つホワイトフェンリル? 
魔物なのに、神様の加護って貰えるものなの? 

「決めたよ、ユイ。僕は、お母さんの夢を引き継いで、大地を守護する強く気高き存在ホワイトフェンリルを目指す!」

新たな目標を見つけたことで、悲しみが消え失せ、強い光が目に宿ってる。ハティスがホワイトフェンリルを目指すのなら、私はそのお手伝いをしたい。

「ロイドさん、ホワイトフェンリルって存在するんですか?」

ハティスも気になるのか、ロイドさんをじっと凝視する。

「世界に数体いると言われているが、真実かは不明だ。ホワイトフェンリルへの進化、長く生きた母親がそう言っているのなら、何らかの条件をクリアすれば進化できると思う」

ロイドさんの話を聞き、ハティスは素直に頷く。

「ユイと一緒に冒険しながら、進化条件を探す!」
「うん、私も協力するよ」

現世の記憶が一生戻らないのなら、諦めていた料理人を目指したい。大人になったら色んなところに行って、自分の調理した料理で、みんなを笑顔にさせたい。

「わかった。私が君たちの後見人になり、街での生活を支えよう」

後見人?

「ロイド、知り合ったばかりで、それはまずいんじゃないか?」
「ユイが、他の子供や冒険者に妬まれるぞ」

あ、思い出した! 
後見人って、生活を保護・支援してくれる人のことだ。

「無論、それは承知している。後見人と言っても、他人からバレないよう行うつもりだ。安く寝泊まりでき、料理の美味い宿屋を紹介したり、週2回開催している冒険者ギルドでの新人教育訓練に参加させ、そこに私も指導者として介入させてもらうだけだ」

「なるほど、それなら問題ないか」
「だな」

「あ…あの…皆さん、よろしくお願いします!」

心強い3人の冒険者とハティス、これだけ心強い仲間がいれば、樹海から抜け出ることもできるよね? もし、抜け出ることができれば、私は死の運命からあらがうことに成功したと言えるんだよね?
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