記憶喪失となった転生少女は神から貰った『料理道』で異世界ライフを満喫したい

犬社護

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15話 最後まで見届けるには?

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どうしよう。
2人を救う方法はある。
ボーナス特典の《完全治癒》を使えばいい。

でも、冷静になって考えたら、この世界にスキルや魔法なんてないのだから、ボーナス特典の力で病気を一瞬で完治させたら、絶対注目を浴びてしまう。それこそ、奇跡と呼ばれるかもしれない。《完全治癒》を使わず、注目を浴びずに病気を治す手段を考えないといけない。

『遙子さん。私ね、いっぱい頑張ったおかげで、神様からご褒美をもらったの。それを、今ここで使わせてもらうね』

『唯ちゃん、何をする気なの?』

今は、この《体力回復》を使おう。
2人には、圭吾さんと優奈の結婚式を最後まで見届けて欲しいもん。

リオンとハティスは、『スキルや魔法の効果はイメージが決め手となる』とよく言っているから、体力回復をタップして、2人の身体を目的のレベルまで回復できるよう、強くイメージすればいい。遙子さんは、車椅子を1人で動かせないけど、意識もはっきりとあって、酸素吸入器を外しても会話できるレベルまで。お父さんは立ったままでも、結婚式という長時間のイベントに身体が耐えられるまで。

消費ポイントは、遙子さんが480、お父さんが80。

遙子さんの余命が1ヶ月のせいか、お父さんの6倍も消費するんだ。でも、こうやって表示されるってことは、そこまで回復可能ってことだよ!

よし、体力回復、発動!

『身体が…軽くなっていく』

よかった、見た目に変化がないから発動していないのかと思った。

【定着率が12から19に増加しました】

もしかして、この世界に干渉すればする程、定着率が増加していく仕組みなのかな?このまま家族のもとに行って実体化して話し合いたいけど、それってありえない事象だから、絶対一気に上がると思う。それに、私自身が家族の温もりを感じてしまうと、別れたくないと思っちゃうかもしれない。そうなったら、最悪気づかないうちに80%を超えている可能性だってある。

結婚式なんだから、最後まで見届けたい気持ちもあるけど、100年間も彷徨うことになったら、優奈たちが悲しむ。

『唯ちゃん、何をしたの?』
『遙子さんとお父さんの体力を、少しだけ回復させました』
『体力を回復? そんな魔法みたいな…でも、身体が軽いわ』

『遙子さんもお父さんも、まだこっちに来ちゃダメです。みんなには幸せになってもらいたいから、今からプレゼントを準備してきます』

『プレゼント? 唯ちゃん、先にあなたの両親や優奈と会ってあげて』

私の事情を話せないから、上手く誤魔化そう。

『そうしたいところなんですが、それをやっちゃうと、結婚式を最後まで見届けできないと思います』

『何か、事情があるのね』

『はい。今はここから離れますね。騒がせたくないので、ここで起きたことは秘密にして下さい』

『わかったわ。唯ちゃん、ありがとう』

これ以上定着率を上げたくないから、私は遙子さんに笑顔を見せて、部屋をすり抜ける。私だって、今すぐにでも家族と話し合いたいけど、結婚式の進行を狂わせるわけにはいかない。

それに、私がここに来た痕跡を残しておきたい。たしか、結婚式ってアルバムを制作する為のビデオ撮影もしているんだよね。

「ふふふ、良いこと思いついちゃった」

上手くいけば、定着率の増加を最小限に抑えつつ、皆の記憶に残るはずだ。この閃きを実現させるには、私の味方になってくれる私と面識のない人を見つけないとね。それと、ボーナス特典からお父さんと遙子さんの病気をゆっくりと確実に快方へと導かせ、医者にも怪しまれない[何か]も探し出そう。


○○○  視点《竜胆優奈》


私は小学校高学年の頃から根暗な子供になってしまい、友達も皆離れていった。 原因は姉の死。

あの時、私と姉が先に歩いて、両親が少し後方から私たちを見守ってくれていた。赤信号で止まり、青信号になったのを確認して、私が先に踏み出し、横断歩道を渡ろうとすると、1台の車が赤信号で止まらず、そのままこっちに突っ切ろうとしていた。私は怖くなって動けず、ぶつかると思った時、突然背中を押されて、振り向くとそこにお姉ちゃんがいた。お姉ちゃんは私に笑顔を見せて、そのまま車に撥ねられた。何が起きたのか理解できなかった。お父さんがお姉ちゃんを、お母さんが私のもとへ駆けつけてきた。

あの事故だけは、今でもはっきりと覚えている。優しかったお姉ちゃんは、棺の中で静かに眠り、2度と目覚めることはなかった。

あの日以降、私は塞ぎ込んでしまい、人との関わりが怖くなってしまった。転機が訪れたのは中2の夏、お父さんの転勤で新天地へ引っ越しすることになり、お隣さんへのご挨拶へ行った時、そこで初めて圭吾君と出会った。

初めこそ、彼と話し合う時もおどおどしていたけど、隣同士で一緒に登下校を繰り返すうちに仲良くなっていき、スマホに記録していた姉とのツーショット写真を見せたことがキッカケで、事故の件を話し、『私のせいで誰かを悲しませるんじゃないかと思い、人と関わるのが怖くなってしまったの』と打ち明けたら、彼に怒られた。

「それじゃあ、駄目だよ。死ぬ間際、君のお姉さんは笑顔だったんだろ? それって、私の分まで幸せになってねと君に言いたかったんだ。人との接触を怖がる君の気持ちもわかるけど、お姉さんの想いを無駄にしちゃいけない」

そう言われて、私は自分の事ばかり考えて、姉の気持ちを蔑ろにしていたことに気づいた。私は圭吾君にお礼を言い、父と母に謝罪して、これからは姉の分まで楽しく生きると誓った。

あのアドバイス以降、私は圭吾を好きになり、中3の終わりに告白したことで、私たちは恋人関係となり、同じ高校と大学に通い、幸せな学校生活を築けていたけど、1年前に不幸が訪れる。

圭吾のお母さんが健診で子宮癌とわかり、幾つかの臓器に転移していることもわかった。そして遅れて2ヶ月後に私の父も肺癌と判明し、2人とも放射線治療や抗癌剤治療手術を受けることになったけど、病気の進行を遅らせるだけで、2人の健康は日に日に少しずつ悪化していき、私とお母さん、圭吾と圭吾のお父さんは、医者から余命を宣告された。

その日以降、圭吾は思い悩むようになり、そこから1ヶ月ほど経過した時、急に私の部屋を訪れた。何を言われるのかと身構えていたら、『今は指輪を用意できないけど、優奈を必ず幸せにしてみせる! 俺と結婚してくれ! 母が死ぬ前に、俺たちの結婚式を見せてあげたい』とプロポーズされた。状況が状況だったし、父にも私のウェディングドレス姿を見せてあげたいと思い、すぐに了承した。

そこから慌ただしく充実した毎日が続き、ようやくこの日が訪れる。お父さんとお義母さんの体調が心配だったけど、さっき見た限り、何故か顔色も良くなっていたから一安心。

このチャペルの扉を開けることで、私たちの結婚式が始まる。
お父さん、花嫁となった私のエスコート、頼んだからね。
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