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41話 ユイ、強奪者たちと和解する
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あれから1時間半ほど経過したところで、ユリネア、ガイさん、ロイドさんがリリザハット駅へと向かった。ハートニック公爵夫妻の乗る列車の到着時刻が近づいてきたこともあるけど、いきなり私と対面したら、絶対にパニックになるとガイさんが断言したので、『ユリネア様が主導となって、今の状況を夫妻に伝えておきます』と私たちに言ってから出て行っちゃった。ロイドさんは、夫妻と2人の監視も兼ねて同行している。
「そろそろ話し合いも終わり、こっちに戻ってくる頃合かしら? どんな結果に至るのやら」
「ブライトさん、ユリネアって王都に戻るんですか?」
「リオン、いきなりどうしたのよ」
何か考えているようだけど、リオンは何を言いたいのかな?
「ユリネアの住まいは王都だから、ブライトさんやロイドさんの立場上協力関係を築けても、今のままだと通信による助言しか打つ手がないなと思って」
そっか、住まい自体が違うのだから、どうやって守っていくかが問題だよ。ユリネアがここに滞在するのか、もしくは私たちが王都へ行くのか、どっちがいいのかな?
「ちゃんと考えているのね。一応、これだけは言っておくわ。最悪の場合、ユイやリオン、ウィステ嬢やセリーナ様だって危険に晒されるかもしれないってことわかってる?」
相手は公爵家に手を出す輩だから、私たちを利用して、ユリネアに何かするかもしれないってことか。
「そんな事は、百も承知さ。俺たちに何か出来る事があるのなら手助けしたい」
リオン、ちゃんと先のことを考えて発言していたんだね。
「私も同意見なのです!リオンが役立つかはともかく、私は戦闘、ユイはスキルでユリネアのお手伝いするのです!」
「お前な、一言余計なんだよ」
「事実を言ったまでです」
あはは、ウィステも協力的で良かった。でも、公爵様がどんな判断を下すのか、状況はそれ次第で一変する。
「みんな、協力的ね。ユイ……あなたは、心の整理がついているの? 公爵夫妻を恨んでいないのかしら?」
このタイミングでのブライトさんの質問、何か引っ掛かりを感じるけど、正直に答えよう。
「恨んでいません。少しだけ話し合い、心が一つになったことでわかったことがあります。アリエスは両親の愛に飢えていたけど、それを完全に諦めていました。ユリネアと知り合って以降、公爵夫妻はそんな自分に対して、いつも笑顔で愛情を向けてくれて、まるで娘のように優しく接してくれた。だから、恩返しがしたかった。別荘での事件を聞いた時も、3人が再び笑顔になってもらえるよう、内心死に物狂いで異変を探した。強奪の件も、きちんと言ってくれれば全てを受け入れたのにと言ってました」
私が言い切ると、部屋の外から物音が聞こえた。そして、誰かの啜り泣く声が聞こえてくる。扉が少し開いていて、そこに啜り泣く大人の女性とユリネア、涙ぐむ男性がいた。
「アリエス、ごめんなさい、ごめんなさい。愚かで自分勝手な私たちを許して」
ユリネアのお母さんかな? 私のところに駆けてきて、優しく抱きしめてくれると、ずっと私に謝罪してくる。あれ? この温もり…知っている気がする。
「ユイ、あなた…涙が…」
ブライトさんに指摘されると、私はいつの間にか泣いていることに気づく。
「え? あれ…なんで…かな? 涙が止まらない…何でだろう…この温もりを知っているような…私の中にいるアリエスが…『ロベルト様、アレッサ様、ユリネア、笑顔になって』と…」
私の口から知らない人の名前が溢れると、ユリネアと見知らぬ男性も驚き、私のもとにやってくる。この男性の温もりも知っている気がする。
「すまない、こんな愚かな行為をした私たちを許してくれるのか?」
どうして、涙が止まらないの?
私はずっと…ずっと…あの時に感じた温もりを求めていたの?
あの時?
何だろう…何処かの家で、私を抱きしめて御礼を告げる2人の顔が見える。
心の奥底から、何かが込み上げてくる。
これを言葉に、お願いと切実に訴えてくる。
私は抱きしめられながら、その言葉を紡ぐ。
「許し…ます…から…笑顔に…なって。ロベルト様、アレッサ様、オーウェン様、ユリネア…みんな…仲良し。大好きなユリネアを…守りたい…だから…笑顔に…」
これが、アリエスの願いなんだ。
半端惚けながら言葉を言った途端、3人が一斉に私を見る。
「「アリエス!?」」
「アリエス…ありがとう…ありがとう。ハートニック公爵家は、生涯アリエスの…ユイの後ろ盾となり、君や娘を悪しき者から守り抜くことを誓おう」
今、本当の意味で、私とアリエスが1つになった気がする。
アリエス、私と一緒に生きていこうね。
○○○
私たちはギルドの会議室にて、ハートニック公爵家当主ロベルト様と奥様のアレッサ様、執事のガイさんを加えて話し合う。ここに来る前、ガイさんが順を追って自分の知る範囲内でここでの出来事を夫妻に告げ、ユリネアは真実を知った後に起きた出来事を話したことで、2人は私の置かれた状況を全て把握してくれた。と言っても、ハティス、ブライトさんとロイドさん以外のメンバーは、私が前世持ちで神様との会談のことを知らないんだよね。だから、奇跡的な巡り合わせで生き残れたと思っている。その後、さっきの私の発言を聞いて、自分たちの思いを吐露してくれたんだ。あの言葉を聞いたことで、ロイドさん、ブライトさん、セリーナ様の護衛であるエミリアさんも、公爵家への警戒を解いてくれている。
全員が席に着いたことで、ブライトさんが話し出す。
「ロベルト様、アレッサ様、改めて聞きますけど、私たちと協力関係を築きませんか? 私はギルドマスター、ロイドは領主でランクS冒険者、互いの関係性を考慮すれば、犯人を突き止めることも可能だと思いますけど?」
「その提案は我々としても嬉しいが、それではこの街も危険に晒される。別荘で起きたような事件が誘発されるかもしれない」
「はっきり言いますけど、ユリネア嬢の留まる場所全てで、そういった事が今後起こると思いますよ。それを恐れるのであれば、彼女をこの街に滞在させ、私たちに守らせればいい。私とロイドがアンテナを広げて、悪意を蹴散らしますから、貴方方は犯人の捜索に全力を尽くして下さい」
なるほど、それならユリネア自身も悪意に備えられるよね。両親と離れ離れになるけど、私やセリーナ様たちと一緒にいられるから寂しさも薄れると思う。
「それは…願ってもないことだが…」
「あなた、ブライト様の提案を受けましょう」
「何を…」
「誘拐犯がユイを知ってしまった以上、今後狙われる危険性があります。2人を1箇所に集めて、守りを固めるべきです」
「そう…だな。それが最善か。ブライト、ロイド。ユリネアとユイのことをお願いしてもいいだろうか?」
2人とも、ユリネアと私のことを第一に考えてくれている。
何だか、本当の両親みたいだ。
「任せてくださいな。必ず、守ってみせますとも」
「お任せを。悪意をばら撒く連中がいれば、私が全て成敗します。ユリネア嬢の滞在期間についてはどうしましょう?」
そっか、ずっと一緒にいられるわけじゃないんだ。
「来年、学園へ入学することを考慮すれば、滞在期間は最長8ヶ月」
「8ヶ月…なるほど、入学試験ですか。立場上、必ず受験し、好成績を残さないといけませんからね」
受験……私、この世界の学校について何一つ知らない。年齢的に、中学受験のようなものかな?
「ユリネア、長期間私たちと会えなくなるが大丈夫か?」
「お父様、問題ありません。お兄様だって、去年から隣国に留学して、1人で勉学に励んでいますから。私だって、この街で勉強を重ねていき、首席を勝ち取ってみせます!」
お兄様? もしかして、さっき呟いたオーウェン様のことかな? う~ん、アリエスの残滓と1つになれても、お兄さんの顔が全然浮かんでこない。
「親としては頼もしい発言だが、少し寂しくなるな。ユイ、ユリネアをよろしく頼む」
「こちらこそ、宜しくです!」
ロベルトさんが微笑むと、懐から財布を取り出して、カードのようなものを私に差し出す。
「ロベルト様、これって何ですか?」
手のひらサイズのカードで、家紋のような紋章が刻まれている。
「これは【後援者カード】、君の後ろにはハートニック公爵家がいることを示すものだよ。貴族関係でトラブルが起きた時、これを見せなさい。大抵のことは、それだけで解決する」
凄! もしもの時の切り札として、大切に保管しておこう。
「ありがとうございます! 大切に使いますね。ユリネア、これから宜しくね!」
「こちらこそ、宜しく」
私たちは笑顔を浮かべ、握手を交わす。
そこから話しを進めていくと、ユリネアはロイドさんの家で暮らし、受験勉強を重ねていき、その間に公爵様たちは犯人たちの行方を捜索する方針になった。
不安要素も残っているけど、私自身の件が無事に解決して良かったよ。
「そろそろ話し合いも終わり、こっちに戻ってくる頃合かしら? どんな結果に至るのやら」
「ブライトさん、ユリネアって王都に戻るんですか?」
「リオン、いきなりどうしたのよ」
何か考えているようだけど、リオンは何を言いたいのかな?
「ユリネアの住まいは王都だから、ブライトさんやロイドさんの立場上協力関係を築けても、今のままだと通信による助言しか打つ手がないなと思って」
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「ちゃんと考えているのね。一応、これだけは言っておくわ。最悪の場合、ユイやリオン、ウィステ嬢やセリーナ様だって危険に晒されるかもしれないってことわかってる?」
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「そんな事は、百も承知さ。俺たちに何か出来る事があるのなら手助けしたい」
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「私も同意見なのです!リオンが役立つかはともかく、私は戦闘、ユイはスキルでユリネアのお手伝いするのです!」
「お前な、一言余計なんだよ」
「事実を言ったまでです」
あはは、ウィステも協力的で良かった。でも、公爵様がどんな判断を下すのか、状況はそれ次第で一変する。
「みんな、協力的ね。ユイ……あなたは、心の整理がついているの? 公爵夫妻を恨んでいないのかしら?」
このタイミングでのブライトさんの質問、何か引っ掛かりを感じるけど、正直に答えよう。
「恨んでいません。少しだけ話し合い、心が一つになったことでわかったことがあります。アリエスは両親の愛に飢えていたけど、それを完全に諦めていました。ユリネアと知り合って以降、公爵夫妻はそんな自分に対して、いつも笑顔で愛情を向けてくれて、まるで娘のように優しく接してくれた。だから、恩返しがしたかった。別荘での事件を聞いた時も、3人が再び笑顔になってもらえるよう、内心死に物狂いで異変を探した。強奪の件も、きちんと言ってくれれば全てを受け入れたのにと言ってました」
私が言い切ると、部屋の外から物音が聞こえた。そして、誰かの啜り泣く声が聞こえてくる。扉が少し開いていて、そこに啜り泣く大人の女性とユリネア、涙ぐむ男性がいた。
「アリエス、ごめんなさい、ごめんなさい。愚かで自分勝手な私たちを許して」
ユリネアのお母さんかな? 私のところに駆けてきて、優しく抱きしめてくれると、ずっと私に謝罪してくる。あれ? この温もり…知っている気がする。
「ユイ、あなた…涙が…」
ブライトさんに指摘されると、私はいつの間にか泣いていることに気づく。
「え? あれ…なんで…かな? 涙が止まらない…何でだろう…この温もりを知っているような…私の中にいるアリエスが…『ロベルト様、アレッサ様、ユリネア、笑顔になって』と…」
私の口から知らない人の名前が溢れると、ユリネアと見知らぬ男性も驚き、私のもとにやってくる。この男性の温もりも知っている気がする。
「すまない、こんな愚かな行為をした私たちを許してくれるのか?」
どうして、涙が止まらないの?
私はずっと…ずっと…あの時に感じた温もりを求めていたの?
あの時?
何だろう…何処かの家で、私を抱きしめて御礼を告げる2人の顔が見える。
心の奥底から、何かが込み上げてくる。
これを言葉に、お願いと切実に訴えてくる。
私は抱きしめられながら、その言葉を紡ぐ。
「許し…ます…から…笑顔に…なって。ロベルト様、アレッサ様、オーウェン様、ユリネア…みんな…仲良し。大好きなユリネアを…守りたい…だから…笑顔に…」
これが、アリエスの願いなんだ。
半端惚けながら言葉を言った途端、3人が一斉に私を見る。
「「アリエス!?」」
「アリエス…ありがとう…ありがとう。ハートニック公爵家は、生涯アリエスの…ユイの後ろ盾となり、君や娘を悪しき者から守り抜くことを誓おう」
今、本当の意味で、私とアリエスが1つになった気がする。
アリエス、私と一緒に生きていこうね。
○○○
私たちはギルドの会議室にて、ハートニック公爵家当主ロベルト様と奥様のアレッサ様、執事のガイさんを加えて話し合う。ここに来る前、ガイさんが順を追って自分の知る範囲内でここでの出来事を夫妻に告げ、ユリネアは真実を知った後に起きた出来事を話したことで、2人は私の置かれた状況を全て把握してくれた。と言っても、ハティス、ブライトさんとロイドさん以外のメンバーは、私が前世持ちで神様との会談のことを知らないんだよね。だから、奇跡的な巡り合わせで生き残れたと思っている。その後、さっきの私の発言を聞いて、自分たちの思いを吐露してくれたんだ。あの言葉を聞いたことで、ロイドさん、ブライトさん、セリーナ様の護衛であるエミリアさんも、公爵家への警戒を解いてくれている。
全員が席に着いたことで、ブライトさんが話し出す。
「ロベルト様、アレッサ様、改めて聞きますけど、私たちと協力関係を築きませんか? 私はギルドマスター、ロイドは領主でランクS冒険者、互いの関係性を考慮すれば、犯人を突き止めることも可能だと思いますけど?」
「その提案は我々としても嬉しいが、それではこの街も危険に晒される。別荘で起きたような事件が誘発されるかもしれない」
「はっきり言いますけど、ユリネア嬢の留まる場所全てで、そういった事が今後起こると思いますよ。それを恐れるのであれば、彼女をこの街に滞在させ、私たちに守らせればいい。私とロイドがアンテナを広げて、悪意を蹴散らしますから、貴方方は犯人の捜索に全力を尽くして下さい」
なるほど、それならユリネア自身も悪意に備えられるよね。両親と離れ離れになるけど、私やセリーナ様たちと一緒にいられるから寂しさも薄れると思う。
「それは…願ってもないことだが…」
「あなた、ブライト様の提案を受けましょう」
「何を…」
「誘拐犯がユイを知ってしまった以上、今後狙われる危険性があります。2人を1箇所に集めて、守りを固めるべきです」
「そう…だな。それが最善か。ブライト、ロイド。ユリネアとユイのことをお願いしてもいいだろうか?」
2人とも、ユリネアと私のことを第一に考えてくれている。
何だか、本当の両親みたいだ。
「任せてくださいな。必ず、守ってみせますとも」
「お任せを。悪意をばら撒く連中がいれば、私が全て成敗します。ユリネア嬢の滞在期間についてはどうしましょう?」
そっか、ずっと一緒にいられるわけじゃないんだ。
「来年、学園へ入学することを考慮すれば、滞在期間は最長8ヶ月」
「8ヶ月…なるほど、入学試験ですか。立場上、必ず受験し、好成績を残さないといけませんからね」
受験……私、この世界の学校について何一つ知らない。年齢的に、中学受験のようなものかな?
「ユリネア、長期間私たちと会えなくなるが大丈夫か?」
「お父様、問題ありません。お兄様だって、去年から隣国に留学して、1人で勉学に励んでいますから。私だって、この街で勉強を重ねていき、首席を勝ち取ってみせます!」
お兄様? もしかして、さっき呟いたオーウェン様のことかな? う~ん、アリエスの残滓と1つになれても、お兄さんの顔が全然浮かんでこない。
「親としては頼もしい発言だが、少し寂しくなるな。ユイ、ユリネアをよろしく頼む」
「こちらこそ、宜しくです!」
ロベルトさんが微笑むと、懐から財布を取り出して、カードのようなものを私に差し出す。
「ロベルト様、これって何ですか?」
手のひらサイズのカードで、家紋のような紋章が刻まれている。
「これは【後援者カード】、君の後ろにはハートニック公爵家がいることを示すものだよ。貴族関係でトラブルが起きた時、これを見せなさい。大抵のことは、それだけで解決する」
凄! もしもの時の切り札として、大切に保管しておこう。
「ありがとうございます! 大切に使いますね。ユリネア、これから宜しくね!」
「こちらこそ、宜しく」
私たちは笑顔を浮かべ、握手を交わす。
そこから話しを進めていくと、ユリネアはロイドさんの家で暮らし、受験勉強を重ねていき、その間に公爵様たちは犯人たちの行方を捜索する方針になった。
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