伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

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第五章

今後について

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 イーゴリの街に戻った俺たちはいつもの日々を取り戻しつつあった。ひとまず俺はギルドマスターのアランと、副ギルドマスターのミランダに頼まれたマジックバッグの作成から手をつけた。

 そしてそのついでに、俺とアベル専用の印籠型のマジックバッグを作るつもりでいる。
 俺は素材アイテムの収納、各種ポーション、各種道具を持ち運ぶため。一方のアベルは分断されたときに備えてと、アベルも遠距離攻撃が出来るようにしてもらうためである。投げナイフとか良いんじゃないかな? センスがいりそうだけど。

 さすがに一度作ったことがあるだけに、マジックバッグの作成は滞りなく進んでいった。時々マリアが工房に来ては「自分も欲しい」と言ってきたが、「無くすと困るから。あと、マリア、絶対自慢するだろ? 悪いヤツらに目を付けられたら大変だからな」と言って却下した。
 もちろん納得はしなかったが、思うところはあるらしく引き下がってくれた。

 それにしても、と前回のことを思い出した。世界を混乱させようと自称四天王の魔族が現れたのだ。俺が『ワールドマニュアル(門外不出)』で調べたところ、どうやら魔族は他にもいるらしい。

 その魔族すべてが、世界の混乱などという人族への敵対行為をするつもりなのかどうかは分からないが、用心しておくに超したことはない。西の砦が魔物に襲われたことも魔族がやったのかも知れないと言ってたしな。

 これは念のため、早めに本物の聖剣を作っておいた方が良いかも知れないな。今までは特に焦る必要はないかと思っていた。しかし魔族の存在を知ってからは、何だかせかされる気持ちになり尻がムズムズするのだ。

 そんなソワソワと落ち着かない様子をしているところにリリアがやって来た。相変わらずの女神様かのような姿に、別の意味でソワソワしてきた。
 ほんとにこれが俺の嫁なんかでいいのか? 何かの間違いないじゃないのか?

 そうとも知らず、リリアはマジックバッグの素材と格闘している俺の隣へとやって来た。そして無言で隣に座った。それと同時にむにゅっと腕に柔らかいものが押し付けられた。
 え? そんなにリリアを放置したつもりはなかったんだけど……。

「どうしたんだ、リリア? 何かあったのか?」

 リリアは首を左右に振った。そして下を向いた状態でブツブツとつぶやいた。

「何でもないけど、向こうでアベルとマリアが……」
「ああ、なるほど……」

 二人で乳繰り合ってるわけですね、分かります。そしてその場から退散すると共に、羨ましくなってこっちに来たわけですね。
 俺はすぐに作業をやめて、リリアをギュッと抱きしめた。腕の中のリリアが驚いた様子でこちらを見上げた。

「ダナイ、その、邪魔するつもりじゃなかったのよ」

 リリアが眉を下げたのが分かった。

「いいんだよ。そろそろ休憩しようかと思っていたところだ。それよりも、聞いてくれるか?」
「何かしら?」

 俺はリリアに聖剣を作り始めることを話した。リリアは俺の秘密を知っている。それに俺たちは結婚式こそ挙げてはいないが、夫婦同然の仲なのだ。気兼ねする必要はなかった。

「魔族のこと、気にしてたのね。私は構わないわよ。ダナイについて行くわ」
「そうか。ありがとう。それで、残りの素材を集めないといけないんだが……」
「オリハルコンはいいとして、「世界樹の涙」に「青い炎」ねぇ。どっちも初めて聞く名前だわ。世界樹はもう存在しないはずだけど、まだどこかあるのかしら?」

 なぬぅ、世界樹は存在しないだと!? これは誤算だ。森に住み着くエルフなら何か知っていると思ったんだけどな。青い炎はガスバーナーの炎のことだと思うんだけど、これも調べた方がいいかも知れないな。

「リリアでも知らないのか。それじゃ、ちょっと調べてみようかな」

 俺は『ワールドマニュアル(門外不出)』で情報検索をかけた。うーん、これは。

「世界樹は存在しているらしい。ただし、この大陸じゃなくてここから南の大陸にあるらしい」
「南? 南には島は存在しないって聞いたことあるけど」

 リリアが首をひねった。そうなのか。だが未発見の島くらいはあるかも知れない。未発見の島を探すなら船を手に入れて海に出るしかないな。うーん。

「それで、世界樹のところに行けば手に入るのかしら?」
「そうなんじゃないのか? 世界樹が流した涙って出てるぞ?」
「世界樹って泣くの?」
「泣かないのか?」

 二人で顔を見合わせた。うーん、サッパリ分からん。
 青い炎は……。

「青い炎はエルダートレントを燃やすらしい」
「エルダートレントォ……?」

 リリアが嫌そうな顔をした。どうしたリリア。美人が台無しだぞ。何か嫌な思い出でもあるのか? 何だか聞くのが怖いぞ。だが聞くしかないな。

「どんなもの何だ?」
「ものと言うか、モンスターの一種ね。トレントは動く木のモンスターよ。トレントの中でも飛び抜けて長生きした個体がエルダートレントになるっていう話を聞いたことがあるわ」

 なるほど、エルダートレントはモンスターなのか。だから嫌そうな顔をしたのかな? エルダートレントの素材を使って木炭でも作るのだろう。それなら、ひょっとすればどこかに売っているかも知れないな。今度探してみよう。

「どれも一筋縄では手に入らないってことか。そう考えると、逆鱗と緑の宝玉が手に入ったのはラッキーだったな」

 探す手間が省けた、とリリアに笑いかけると、何やら複雑そうな顔をしてた。

「本当にラッキーだったのかしら? もしかして、そうなるように運命づけられていたとかは……」

 心配性だな、リリアは。

「それならそれでラッキーだろう? 向こうからこちらに寄ってくるなら、わざわざ探しに行く必要がないからな」

 ガッハッハと笑った。それを見たリリアは考えるのがバカバカしくなったのか、小さなため息をつくと表情を緩めた。そして俺の上へと乗っかってきたのであった。
 リリアって、見かけによらず積極的だよな。それとも俺がヘタレなだけなのか。


 翌日、ギルドにマジックバッグを届けるついでに話を聞きに来た。

「アラン、これが例のブツだ」

 さも何でもないかのように、ヒョイとバッグを二つ投げた。それを慌てて両手で受け取るアラン。その顔は苦笑いだ。

「ずいぶんと早かったな。だが助かる。報酬はちゃんと用意してあるからあとで受け取ってくれ。それなりの金額になるからな。他にも力になれることがあるなら何でも言ってくれ」
「それは助かる。アラン、この国の南には何があるんだ? 海の向こうには何もないのか?」

 俺の質問に首をひねったアラン。何でそんなことを聞くのか、という表情をしている。

「南の海の向こうには何もないという話だ。世界の果てがあるだけらしい」

 有名な話なのか、知らないのかとでも言いたそうに片方の眉を上げた。

「世界の果てには何があるんだ?」

 アランは顎に手を当てて考え始めた。リリアは何も言わずに静かに答えを待っている。ややあってアランが答えた。

「俺も直接行ったことがないので正確なことは分からんが、どこまで行っても海が続いているらしい」

 それって単に海が広いだけじゃないんですかね? この世界の形がどうなっているが分からないが、まさか世界の果てが断崖絶壁になっていることはないだろう。きっと地球みたいに球体をしているはずだ。でなけりゃいつか海水がなるなるはずだからな。

「そうか。つまらないことを聞いてすまなかったな」
「どうしたダナイ? 海を渡ってどこかに行くつもりなのか?」
「いいや、単に気になっただけだよ」

 そう言ってごまかした。
 確実に言えることは、南に未発見の島があってもおかしくないこと。どこまでも海が広がっているということは、船での長期航海を想定する必要があることだ。
 いやそれよりも、引き受けてくれる船があるのかが問題か。最悪の場合、船を自作する必要があるな。さてどうするか。
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