完結(R18 詰んだ。2番目の夫を迎えたら、資金0で放り出されました。

にじくす まさしよ

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3 フィーノの寝顔

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 難航するかと思われたロイエの逮捕は、あっけなく幕を閉じた。ルドメテは、彼女の逮捕に貢献したこともあり、報奨金と刑期の短縮という褒美をもらったが、その内容に激怒する。

「ふざけんな。こんなの詐欺じゃねぇか」
「本物の詐欺師に、詐欺と言われるなど心外だな。いいか? こちらとしては約束通りの報奨金を渡したし、刑期だって短くしたじゃないか。最初に内容を細かく確認をしなかった被害者が悪い。お前たちの言い分と同じ常套手段だろう?」
「だからって、金はその日の昼食代ほどで、こどもの小遣いにもなりゃしねぇ。刑期だって、半年の短縮ぅ? 僕の残りの刑期は、18年なんだぞ。他の奴らと違って人を殺めてないし、これでも多いくらいだってのに」
「当初から、この件に関しての褒美は、ロイエの関係者にはそのようになっていた。お前が見た、一年遊んで暮らせるほどの報奨金を貰えるのは、お前たちとは無関係の善良な一市民に対してだ。犯罪を犯した者が、どうして彼らと同等の褒美がもらえると思ったんだ。文句があるようなら、こちらとしては今渡した目録を返してもらうだけだ」
「くそ……。それでも王都の役人かよ……。誰が返すって言った? 貰うもんは貰う。こんなことなら、まだ使い道がありそうな、あのおばあさんと逃げときゃ良かったぜ」

 ルドメテと話す役人が、彼が持つ目録を取り上げようとすると、小遣い程度の報奨金でもないよりはマシだとそれを阻止した。
 結局、もらった金は、ロイエを裏切った彼への報復として、かつての部下たちに盗られ、一味の裏切り者としていじめられながら、長い刑期を過ごすこととなった。
   
 イヤルは、ロイエ関連の騒動にやっとピリオドを打つことができた。領地の人々も、エンフィやドーハンたちのおかげで、すっかり以前以上の生活を笑顔で過ごすことができている。

 実は、彼の上司である魔塔の長が、イヤルを手放したがらなかった。だが、英雄イヤルの長年の貢献と、いつまでも妻子と離れ離れにするなどおかしいという世論に押され、彼が領地に帰る日には非常に名残り惜しそうに手を握った。

「お世話になりました。長自ら里芋事業の支援もいただき、感謝しております。しかも、息子のために、魔塔に保管されているアーティファクトも贈ってくださり、妻たちも喜んでおりました。今後も、一大事があれば馳せ参じます」
「なに、こちらこそイヤル殿には十分すぎるほど働いてもらったからの。この度は、貴族どもの浅知恵で迷惑をかけられたが……」
「中には私利私欲のためにしか動かない貴族もいますから。でも、これを期に、当分は彼らのような貴族たちもおかしな考えを持たないでしょうね」
「だといいんだが」 

 イヤルの真面目すぎるほどの生真面目さと、勤勉さは、周囲の隙あらばサボろうとする魔法使いたちにとってはありがた迷惑だった。しかし、そんな彼らも、まっすぐで何事にも真剣に取り組む彼個人を気に入ったようだ。

「また、いつでも遊びに来いよー」
「ああ、領地にも来てくれ」
「次は、優しい女神のようだという噂の奥方もつれて来い」
「それは断る。エンフィを見るやつが多くなれば、虫も多くなるからな」

 イヤルは魔法使いたちに惜しまれながら領地に戻った。

 彼が戻った時、フィーノはゆりかごで眠っていた。側には、聖母のように清らかな笑みでゆりかごを揺らすエンフィがいる。

「エンフィ、ただいま。やっと終わったよ」
「え? きゃあ」

 フィーノを起こさないように、そっと近づくと、エンフィがびっくりして飛び上がった。

「んむぅっ?」

 エンフィの声に反応したのか、フィーノがむにゃむにゃ口元を動かす。

「シー」
「シー」

 せっかく寝たばかりのフィーノを起こしかけ、ふたりは同時に人差し指を口元に当てた。

 むずがゆがったフィーノが、むにゃむにゃ何かを喋ったあと、すやすや眠りにつくとほっとして、ふたりは微笑み合う。

 フィーノを起こさないように、小さな声で話を続けた。

「はあ、イヤルったら、いきなりでびっくりしたわ」
「ごめんごめん。フィーノを起こしちゃうところだったね」
「ふふふ、大丈夫そうよ。それよりも、やっと終わったって?」
「そうなんだ。やっと、これでお役御免だ。といっても有事の際は行かなきゃいけないけどね」

 イヤルは、ロイエとルドメテの最後をエンフィに伝えた。エンフィは、そのことを聞き、複雑そうに眉をハの字にする。

「イヤル……本当に、本当にお疲れ様でした」

 彼らに振り回され、その後も一番働くことになったイヤルに掛ける言葉が見つからない。エンフィは、彼の胸に、そっと額を付ける。

「イヤル、本当に、お疲れ様」
「うん。エンフィも、お疲れ様」

 一生で一度だと思えるほどの愛しさは、これでもう何度めだろうか。ふたりは、胸がはちきれんばかりの互いの想いを乗せて唇を触れ合わせたのである。
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