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4 契約結婚 ※
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イヤルが帰ってきてから、エンフィの生活は変わるかと思われたがあまり変わらなかった。
里芋事業の仕事のために領地を離れるのは相変わらずで、さらに、すっぱり魔塔や王宮と縁が切れるわけでもなく、イヤルは事あるごとに王都に向かうことになる。
とはいえ、2、3週間に1度は帰ってこれるので、エンフィは寂しさを覚えながらもそこそこ満足していた。
そんなある日、3週間ぶりに帰ってきたイヤルが、領地の報告を受けていると、ドーハンが訪れた。
「イヤル様、少々よろしいでしょうか?」
「ドーハン、君からオレに話かけるなんて珍しいな? 何かあったのか?」
「いえ、特別何かあるわけではありませんが……」
少し言いづらそうにしているドーハンを見て、イヤルは彼にソファを勧める。
常にイヤルの三歩後ろを守っているかのような、執事としての立場を貫く彼の神妙な顔を見て、込み入った話だろうと、お茶の準備を済ませるとセバスは出ていった。
「フィーノ様も、もう3つになりましたね」
「そうだなあ。ドーハンがエンフィと一緒に育ててくれているから助かっている。正直、ここにあまりいられないオレじゃなくて、ドーハンのほうになつきすぎるかなと心配していたが、オレのこともちゃんと父親として慕ってくれていて。さっきなんか、オレとキャッチボールしたいって、もじもじやってきて。ああ、オレの息子、かわいすぎんだろ」
イヤルは、毎日エンフィやフィーノに会いたい。しかしそれが叶わないからか、ずいぶん子煩悩な父親になった。フィーノの話だけで数時間はお茶いっぱいで過ごせるほど。
「はい、イヤル様に似て、とても賢く健康に育っております。で、ですね。その、ふたり目のお子様のことなんですが」
「ふたり目?」
「はい、フィーノ様が妹が欲しいと言い出しまして……。仲良くしている少年たちから妹自慢を聞き、欲しくなったようです」
「あー……だが、こればかりは授かりものだしなあ。オレとしては、ドーハンとエンフィの娘でもいいんだが。きっと、国一番かわいくてきれいな子に育つぞ」
「いえ。私は……」
イヤルが、さも当たり前のように、ふたり目の夫であるドーハンに伝えると、ドーハンが口をつぐむ。実は、このようなやり取りは初めてではない。この問いも答えも、同じことを繰り返していた。
「あのな、エンフィもだが、君も、オレにずっと気を使い続けているのは知っている。エンフィと君が契約結婚をするってその内容を聞いた時にも言ったが。いくらなんでも、後継者争いを回避したいから一生避妊するとか、何事もオレだけを優先するとか、君は、君たちは本当にそれでいいのか? ふたりの気持ちを大事にしたいからあまり口出ししたくないけどな、契約は随時変わるものだろう? そもそも、結婚に際して契約するにしても、君たちの契約はあまりにもオレに対しての配慮が過剰すぎる」
「ですが、私の子が生まれれば、いらぬ争いになるかもしれませんし……。もともと、おふたりだけという約束に、やむを得ず私が割り込んだ形でしたから」
「あー、もうその言い訳は聞き飽きた。オレがエンフィの気持ちを全て受け入れると言ったんだ。契約なんて、もう形ばかりでいいだろう? 何度も聞くがな、ドーハンは里芋事業やこの領地を乗っ取るつもりか? そうじゃないはずだ」
「それはもちろん、そうですが。周囲の考えは、思わぬ方に向かうこともありますし。私のことはお気になさらず、どうぞふたり目のお子を設けていただければ」
「あー、なら、そうする。このわからずやの頑固者め。でも、さっきのこと、しっかりエンフィと話合ってくれよ」
「かしこまりました」
うやうやしく頭を下げたドーハンの表情はわからない。イヤルは、じっと彼の頭部を見つめると立ち上がった。
「本当に、世話のやける……」
イヤルとしては、彼が思うように、自分もドーハンとエンフィとの間にできた子供も分け隔てなく育てる覚悟が出来ている。というよりも、愛する人の子であるし、信頼する相手の血の繋がった子だ。愛することはあっても、疎んだりするわけがない。
彼らの子がもしも産まれたら、男の子ならばフィーノの片腕として領地か事業を任せるだろうし、女の子ならきちんとした男の元に嫁に──出したくはないが──どこに出してもおかしくない程の女性に育てる自信があった。
この話をすると、どうしてもムカムカする。立ち上がったその足で、エンフィの元に向かった。フィーノは、今は友達と遊ぶのに夢中で夕方まで帰ってこない。
「イヤル? どうしたの?」
本来ならば、イヤルは仕事中でエンフィのところに来る時間ではない。その彼が突然きたことで、目を丸くしつつも、嬉しそうに頬を染めて近づく彼女をそっと抱きしめた。
「エンフィ、フィーノのおねだりに応えてあげようか」
「え? あ……ん、いきなり……。くすぐったいわ」
イヤルは、エンフィの言葉に応えず、彼女の白い首筋に吸い付く。白い肌に、イヤルがつけた赤い印が生まれていった。
「妹になるかどうかは、神のみぞ知るが……」
「イヤル、まだ、明るいのに……ん……。フィーノが帰ってきたら……」
「まだまだ帰ってこないさ。エンフィ、後ろを向いて」
いつもよりも強引に力強く腰を持たれ、エンフィは軽々反転させられた。そして、ひらりとしたスカートの裾を、さっとたくし上げられる。
サイドが紐の下着のクロッチ部分を指で横にずらされ、まだ濡れ始めたばかりの足の付け根が露わになった。明るい陽射しが窓から入る部屋は、夜とは違いその場所がくっきり見える。
大きな手が、細い腰に当てられる。エンフィは、イヤルに全てを見られていると思うと、今すぐどこかに隠れたいような羞恥でどうにかなりそうだった。彼の熱く欲のはらんだ視線から、少しでも逃れようと腰をくねらせる。だがその行動は、イヤルの雄をますます刺激し誘うだけだった。
里芋事業の仕事のために領地を離れるのは相変わらずで、さらに、すっぱり魔塔や王宮と縁が切れるわけでもなく、イヤルは事あるごとに王都に向かうことになる。
とはいえ、2、3週間に1度は帰ってこれるので、エンフィは寂しさを覚えながらもそこそこ満足していた。
そんなある日、3週間ぶりに帰ってきたイヤルが、領地の報告を受けていると、ドーハンが訪れた。
「イヤル様、少々よろしいでしょうか?」
「ドーハン、君からオレに話かけるなんて珍しいな? 何かあったのか?」
「いえ、特別何かあるわけではありませんが……」
少し言いづらそうにしているドーハンを見て、イヤルは彼にソファを勧める。
常にイヤルの三歩後ろを守っているかのような、執事としての立場を貫く彼の神妙な顔を見て、込み入った話だろうと、お茶の準備を済ませるとセバスは出ていった。
「フィーノ様も、もう3つになりましたね」
「そうだなあ。ドーハンがエンフィと一緒に育ててくれているから助かっている。正直、ここにあまりいられないオレじゃなくて、ドーハンのほうになつきすぎるかなと心配していたが、オレのこともちゃんと父親として慕ってくれていて。さっきなんか、オレとキャッチボールしたいって、もじもじやってきて。ああ、オレの息子、かわいすぎんだろ」
イヤルは、毎日エンフィやフィーノに会いたい。しかしそれが叶わないからか、ずいぶん子煩悩な父親になった。フィーノの話だけで数時間はお茶いっぱいで過ごせるほど。
「はい、イヤル様に似て、とても賢く健康に育っております。で、ですね。その、ふたり目のお子様のことなんですが」
「ふたり目?」
「はい、フィーノ様が妹が欲しいと言い出しまして……。仲良くしている少年たちから妹自慢を聞き、欲しくなったようです」
「あー……だが、こればかりは授かりものだしなあ。オレとしては、ドーハンとエンフィの娘でもいいんだが。きっと、国一番かわいくてきれいな子に育つぞ」
「いえ。私は……」
イヤルが、さも当たり前のように、ふたり目の夫であるドーハンに伝えると、ドーハンが口をつぐむ。実は、このようなやり取りは初めてではない。この問いも答えも、同じことを繰り返していた。
「あのな、エンフィもだが、君も、オレにずっと気を使い続けているのは知っている。エンフィと君が契約結婚をするってその内容を聞いた時にも言ったが。いくらなんでも、後継者争いを回避したいから一生避妊するとか、何事もオレだけを優先するとか、君は、君たちは本当にそれでいいのか? ふたりの気持ちを大事にしたいからあまり口出ししたくないけどな、契約は随時変わるものだろう? そもそも、結婚に際して契約するにしても、君たちの契約はあまりにもオレに対しての配慮が過剰すぎる」
「ですが、私の子が生まれれば、いらぬ争いになるかもしれませんし……。もともと、おふたりだけという約束に、やむを得ず私が割り込んだ形でしたから」
「あー、もうその言い訳は聞き飽きた。オレがエンフィの気持ちを全て受け入れると言ったんだ。契約なんて、もう形ばかりでいいだろう? 何度も聞くがな、ドーハンは里芋事業やこの領地を乗っ取るつもりか? そうじゃないはずだ」
「それはもちろん、そうですが。周囲の考えは、思わぬ方に向かうこともありますし。私のことはお気になさらず、どうぞふたり目のお子を設けていただければ」
「あー、なら、そうする。このわからずやの頑固者め。でも、さっきのこと、しっかりエンフィと話合ってくれよ」
「かしこまりました」
うやうやしく頭を下げたドーハンの表情はわからない。イヤルは、じっと彼の頭部を見つめると立ち上がった。
「本当に、世話のやける……」
イヤルとしては、彼が思うように、自分もドーハンとエンフィとの間にできた子供も分け隔てなく育てる覚悟が出来ている。というよりも、愛する人の子であるし、信頼する相手の血の繋がった子だ。愛することはあっても、疎んだりするわけがない。
彼らの子がもしも産まれたら、男の子ならばフィーノの片腕として領地か事業を任せるだろうし、女の子ならきちんとした男の元に嫁に──出したくはないが──どこに出してもおかしくない程の女性に育てる自信があった。
この話をすると、どうしてもムカムカする。立ち上がったその足で、エンフィの元に向かった。フィーノは、今は友達と遊ぶのに夢中で夕方まで帰ってこない。
「イヤル? どうしたの?」
本来ならば、イヤルは仕事中でエンフィのところに来る時間ではない。その彼が突然きたことで、目を丸くしつつも、嬉しそうに頬を染めて近づく彼女をそっと抱きしめた。
「エンフィ、フィーノのおねだりに応えてあげようか」
「え? あ……ん、いきなり……。くすぐったいわ」
イヤルは、エンフィの言葉に応えず、彼女の白い首筋に吸い付く。白い肌に、イヤルがつけた赤い印が生まれていった。
「妹になるかどうかは、神のみぞ知るが……」
「イヤル、まだ、明るいのに……ん……。フィーノが帰ってきたら……」
「まだまだ帰ってこないさ。エンフィ、後ろを向いて」
いつもよりも強引に力強く腰を持たれ、エンフィは軽々反転させられた。そして、ひらりとしたスカートの裾を、さっとたくし上げられる。
サイドが紐の下着のクロッチ部分を指で横にずらされ、まだ濡れ始めたばかりの足の付け根が露わになった。明るい陽射しが窓から入る部屋は、夜とは違いその場所がくっきり見える。
大きな手が、細い腰に当てられる。エンフィは、イヤルに全てを見られていると思うと、今すぐどこかに隠れたいような羞恥でどうにかなりそうだった。彼の熱く欲のはらんだ視線から、少しでも逃れようと腰をくねらせる。だがその行動は、イヤルの雄をますます刺激し誘うだけだった。
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