転生夫婦~乙女ゲーム編~

弥生 桜香

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第二章

59

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 こういう時のこの人は本当にすごいと思う。
 その声は思わず耳を傾けてしまう。
 堂々と話す姿は目を離せない。
 本当の中に少しの嘘を混ぜ、順序を入れ替えたりして、ほんの僅かこちらに非があるように思わせながらも、そうせざるを得ない風を装う。
 人はそのそうせざるかを考えるだろう。
 そして、苛立ちを隠せない一人の男に行きつくだろう。
 自分がやってきた事が首を絞めている。
 男はその事に気づいているのだろうか?
 ……あの様子だと気づいていないだろう。

「さて、正体を隠してしまった事は謝罪をいたしましょう、しかし、ここまでの話しの中で皆様はどう思いましたでしょうか?」

 まるで演者のような彼に私は思わず笑いそうになる。
 一つの石をこの場に落とす。
 疑問、疑惑、憶測という波紋が広がっていく。
 さて、どうなるでしょう。
 ただでさえ独断で、しかも、自分勝手にふるまっていた男と、自分の命を守る為に姿と立場を入れ替わっていた彼。
 どちらが、観衆受けするか?
 それは後者だろう。
 しかも、彼はそれを狙って演説していた。
 もう、決まりだ。
 チェックメイト。
 多分、私と彼は同じ事を思っただろう。

「……どう思いましたか?父上?」

 彼はずっと物陰からこちらを伺っていたこの国の王に問いかける。
 王はため息を零し、姿を見せる。

「いつから気づいていた。」
「最初からです。」

 王の言葉に彼の言葉と私の心の声が一致する。
 はじめから気づいていた、王がこの茶番を見て自分の子たちの行動を見て、彼ら彼女らの資質を見ていたのだ。
 このままいけば目の前の男が次の王となる、しかし、それだと不安があったのだろう。
 だから、誰がどう行動するのか見ていた。
 結局男の暴挙を止める者は誰もいなかった。
 もし、男の思惑通り、自分たちを処刑してもこの王は止めなかっただろう。
 それで、臣下たちの心が離れていったとしても、それはそれだと思っていそうだ。
 何を考えているのか分からない、いや、分かりたくない。
 この国ははっきり言って腐っている。
 一部を除く貴族は自分の名や財に固執し、周りを見ていない。
 昔は確かにこの国は強く、敵はなかった。
 しかし、今はどうだろう。
 魔族によってこの国の守備に他国は疑問を抱く事だろう、さらに、魔王を倒した王子は先ほどまでは死んだと思われた。
 彼と同等の偉業をなす者はいるだろうか?
 私の実家は辛うじてできなくはない、しかし、戦争になれば別だ。
 一騎当千できる人材などいない。
 そうなれば、この国は他国から手を出してはいけない王者か老いた王者へと早変わりする。
 王はそれを悟っていた、だから、今回の事態を治めた者を王へと考えたのだろう。
 自分にはその力量がないのを知っているから。
 本当にはた迷惑な話だ。

「ふざけるなっ!」

 私がぼんやりしている間に誰かがブチ切れたようだ。

「あり得ない、あり得ない、何でこいつなんだっ!」

 唾を飛ばしながら叫ぶ男はアルファードを指さす。
 どうやら話が進んで男を怒らせたようだ。
 ちらりと見上げれば平然としたけど、内心げんなりした彼の姿があった。
 ああ、これはもう逃げられませんか。
 ダミーの死体を作れば平民として何処か他国に逃げる事も出来るだろうが、ここに返ってきた時点でその線は水から消した。
 まあ、何とかなるだろう。

「父上が決めたんだし、異論はない。」
「そうですよ、アルファードお兄さまならばこの国を正してくれましょう。」

 男を除く彼の兄妹が王に賛同している。

「どうだ。」

 その言葉は確認を取っているように聞こえるが、実質脅しと変わらないだろう。

「二つ、約束……いや書面で残してほしい。」
「何だ。」
「一つ、妻は彼女だけだ。」

 そう言うと彼は私の肩を抱く。

「他の女などいらない。」
「まあ。最近までのらりくらりと婚約を拒んでいたからな。」
「余計な事を言わない。」

 彼の言葉に思わず彼の兄はそう言い、妹が足を踏んで兄を黙らせる。

「しかし。」
「自分に子が出来なかった場合、そこの二人の子が継げばいいだろう、問題はないはずだ。」
「……分かった。」
「二つ目、自分が王になっている間、誰も指図をするな。」
「それは。」
「それが条件だ、俺はお前たちの都合のいい王になる気はない。」

 彼は口角を上げ笑う。

「でも、まあ、この国を潰す気も、民を疲弊させるつもりはない、だが、私腹を肥やし、他人を蹴落とす者はどうなるかは保証する気はないがな。」
「……分かった。」

 こうして賢王として千年経っても名を残す王が誕生した、勿論その隣には同じくらいかそれ以上に賢く優しい王妃が寄り添うのだが、それはこの身が朽ちてからの歴史書に記されるのだが、私たちには関係のない事だった。
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