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第二章
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手続きを終えた私たちは宿に戻ると、宿の前にはすでに準備の終えたメイカたちがいた。
「おっそーい、どこに行っていたのよ。」
眉を吊り上げ、不満げな顔をするホリアムット男爵令嬢に私は頭を下げる。
「申し訳ございません、旅に必要なものを用意していた為遅くなりました。」
「嘘でしょ?」
「何故そのように思われるのでしょうか?」
唇を尖らせているホリアムット男爵令嬢に私は本気で首を傾げる。
「だったら、何でメイカが一緒なのよ、必要ならあんた一人で行くべきでしょ?」
「……朝早くに女を一人歩かせろと言うのか?」
「そりゃ、か弱いわたしだったらよくないけど、そこの鉄仮面の女なんて問題ないでしょ?」
アルファードの言葉にホリアムット男爵令嬢はそんな事を言うものだから、後ろから怒りの感情が吹き出しているのがヒシヒシと伝わる。
「どうせ、そんな貧相な奴欲する方が頭おかしいのよ。」
「……頭がおかしくて結構だな。」
アルファードはそう言うとホリアムット男爵令嬢を睨みながら私の肩を持つ。
「お前みたいな女にこいつの良さは一生分からないさ。」
「……色々言いたいのは分かるが、その辺にしておけ。」
うんざりとしたような顔でメイカが会話に割り込む。
「えー、アル、この女規律を破っているんだよ、この女を置いて行こうよ。」
「ホリアムット男爵令嬢。」
「アル、ローズって呼んで。」
媚を売るように笑うホリアムット男爵令嬢に全員がうんざりしている。
それなのに、気づかないだなんて、凄い鋼の神経をしているのだと感心する。
「お前はこの旅の目的を理解しているのか?」
「そりゃあ、分かっていますよ、わたしが聖女として魔王を倒せばいいんですよね?」
「……。」
「それで、アルのお嫁さんにふさわしいと思ってもらえて、戻ったら結婚ですよね、きゃー、素敵、どんなドレスがいいかな。」
「……。」
一人で妄想を広げる彼女に全員が引きまくっている。
「分かっていないようだな。」
メイカの低い声にホリアムット男爵令嬢は首を傾げる。
「オレの唯一は彼女しかいない。」
「ん~?わたしですよね?」
どこまでも自分本位の事しか言わない彼女にメイカの額に青筋が浮かんでいる。
「誰が、お前だと言った?」
「ふふふ、照れないで下さいよ。」
「照れてない。」
メイカの指が腰に佩いている剣に伸びている。
「「アルファード」の唯一は「イザベラ」しかいない、何で分からないんだ、この常春女が。」
「ちょっと、アル聞き捨てならないんだけど?」
メイカの言葉にホリアムット男爵令嬢は半眼になる。
「何であんな女の名前を上げる訳、つーか、アルって実は頭が悪の?
あの女は生きていないって言っているでしょ、だから、アルはあんな女と結婚できないの。
大丈夫よ、アルにはわたしがいるだし、わたしがちゃーんと幸せにしてあげるから。」
「……。」
私たちはホリアムット男爵令嬢の言葉に絶句する。
何故彼女はそこまで自分に酔えるのだろう。
ここは現実なのに。
夢(ゲーム)の中では決してないのに、何でシナリオ通りに進むのだと信じ込んでいるのだろう。
もし、物語とかでこの先の話がそうなっていたとしても、これまでの話で確実に異なる場所があったはずなのに、何故彼女は妄信的に自分の世界を信じるのだろう。
「ありえない。」
「アル?」
「絶対にありえない、もし、彼女が生きていないというのなら、その時は――。」
メイカはそう言うとまっすぐに私を見る。
その時は、殺してくれ。
その目はそう言っていた。
私はそっと目を伏せる。
分かる気がする。
置いて行かれる立場であった私も一緒に死んでしまいたいと思った事もある、だけど、そうすれば、私を守ろうとしてくれた彼を冒涜する事になると思って、生きようとした。
でも、結局は彼を失ってから長くは生きられなかったのだけど。
だから、メイカの視線の思いは分かる気がした。
「まあ、まあ、人の目も増えてきましたし、そろそろ次の街に行きましょう。」
ツェリベ様が割り込み、そう言ってきた。
「……。」
「……。」
メイカはこれ以上冷静にホリアムット男爵令嬢に構っていられる気がしなかったのかそっぽを向き、荷物を担ぐ。
「ミナ。」
「……ええ。」
アルファードに促され、私は用意されていた自分の荷物を持つ。
「それじゃ、行こうか。」
空気が悪いまま私たちは次の街に向かって歩き出した。
私はメイカのあの目が脳裏に焼き付いてしまっていた。
「彼」はいつごろから、「私」にあんな目を向けていたのだろう、始めは虚ろだった瞳、その目はやがて光を取り戻し、いつの間にか、メイカのあの目と同じ輝きを放っていた。
本当にメイカは「彼」なのだと突きつけられる。
もし、ミナを失えば、彼は壊れてしまうだろう、そして、メイカはミナがいなければ、この生に執着をしない。
もし、この世に未練があれば、ミナを死に追いやった原因を滅する事だろう。
そうならないように私はひそかに祈る。
どうか、この旅路の先に悲しみがありませんように。
「おっそーい、どこに行っていたのよ。」
眉を吊り上げ、不満げな顔をするホリアムット男爵令嬢に私は頭を下げる。
「申し訳ございません、旅に必要なものを用意していた為遅くなりました。」
「嘘でしょ?」
「何故そのように思われるのでしょうか?」
唇を尖らせているホリアムット男爵令嬢に私は本気で首を傾げる。
「だったら、何でメイカが一緒なのよ、必要ならあんた一人で行くべきでしょ?」
「……朝早くに女を一人歩かせろと言うのか?」
「そりゃ、か弱いわたしだったらよくないけど、そこの鉄仮面の女なんて問題ないでしょ?」
アルファードの言葉にホリアムット男爵令嬢はそんな事を言うものだから、後ろから怒りの感情が吹き出しているのがヒシヒシと伝わる。
「どうせ、そんな貧相な奴欲する方が頭おかしいのよ。」
「……頭がおかしくて結構だな。」
アルファードはそう言うとホリアムット男爵令嬢を睨みながら私の肩を持つ。
「お前みたいな女にこいつの良さは一生分からないさ。」
「……色々言いたいのは分かるが、その辺にしておけ。」
うんざりとしたような顔でメイカが会話に割り込む。
「えー、アル、この女規律を破っているんだよ、この女を置いて行こうよ。」
「ホリアムット男爵令嬢。」
「アル、ローズって呼んで。」
媚を売るように笑うホリアムット男爵令嬢に全員がうんざりしている。
それなのに、気づかないだなんて、凄い鋼の神経をしているのだと感心する。
「お前はこの旅の目的を理解しているのか?」
「そりゃあ、分かっていますよ、わたしが聖女として魔王を倒せばいいんですよね?」
「……。」
「それで、アルのお嫁さんにふさわしいと思ってもらえて、戻ったら結婚ですよね、きゃー、素敵、どんなドレスがいいかな。」
「……。」
一人で妄想を広げる彼女に全員が引きまくっている。
「分かっていないようだな。」
メイカの低い声にホリアムット男爵令嬢は首を傾げる。
「オレの唯一は彼女しかいない。」
「ん~?わたしですよね?」
どこまでも自分本位の事しか言わない彼女にメイカの額に青筋が浮かんでいる。
「誰が、お前だと言った?」
「ふふふ、照れないで下さいよ。」
「照れてない。」
メイカの指が腰に佩いている剣に伸びている。
「「アルファード」の唯一は「イザベラ」しかいない、何で分からないんだ、この常春女が。」
「ちょっと、アル聞き捨てならないんだけど?」
メイカの言葉にホリアムット男爵令嬢は半眼になる。
「何であんな女の名前を上げる訳、つーか、アルって実は頭が悪の?
あの女は生きていないって言っているでしょ、だから、アルはあんな女と結婚できないの。
大丈夫よ、アルにはわたしがいるだし、わたしがちゃーんと幸せにしてあげるから。」
「……。」
私たちはホリアムット男爵令嬢の言葉に絶句する。
何故彼女はそこまで自分に酔えるのだろう。
ここは現実なのに。
夢(ゲーム)の中では決してないのに、何でシナリオ通りに進むのだと信じ込んでいるのだろう。
もし、物語とかでこの先の話がそうなっていたとしても、これまでの話で確実に異なる場所があったはずなのに、何故彼女は妄信的に自分の世界を信じるのだろう。
「ありえない。」
「アル?」
「絶対にありえない、もし、彼女が生きていないというのなら、その時は――。」
メイカはそう言うとまっすぐに私を見る。
その時は、殺してくれ。
その目はそう言っていた。
私はそっと目を伏せる。
分かる気がする。
置いて行かれる立場であった私も一緒に死んでしまいたいと思った事もある、だけど、そうすれば、私を守ろうとしてくれた彼を冒涜する事になると思って、生きようとした。
でも、結局は彼を失ってから長くは生きられなかったのだけど。
だから、メイカの視線の思いは分かる気がした。
「まあ、まあ、人の目も増えてきましたし、そろそろ次の街に行きましょう。」
ツェリベ様が割り込み、そう言ってきた。
「……。」
「……。」
メイカはこれ以上冷静にホリアムット男爵令嬢に構っていられる気がしなかったのかそっぽを向き、荷物を担ぐ。
「ミナ。」
「……ええ。」
アルファードに促され、私は用意されていた自分の荷物を持つ。
「それじゃ、行こうか。」
空気が悪いまま私たちは次の街に向かって歩き出した。
私はメイカのあの目が脳裏に焼き付いてしまっていた。
「彼」はいつごろから、「私」にあんな目を向けていたのだろう、始めは虚ろだった瞳、その目はやがて光を取り戻し、いつの間にか、メイカのあの目と同じ輝きを放っていた。
本当にメイカは「彼」なのだと突きつけられる。
もし、ミナを失えば、彼は壊れてしまうだろう、そして、メイカはミナがいなければ、この生に執着をしない。
もし、この世に未練があれば、ミナを死に追いやった原因を滅する事だろう。
そうならないように私はひそかに祈る。
どうか、この旅路の先に悲しみがありませんように。
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