スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

文字の大きさ
42 / 730

第42話 その依頼に相応しいのは

しおりを挟む

「あ、名乗り忘れて……いました。シェリー=ポンフリームと言います」


 女の子の名前は見た目を裏切らずに可愛いらしいのだった。

 知り合いの女の子って、ギルドの職員さん達以外だとエリーちゃんしか知らないから……なんか新鮮。エリーちゃんは、どっちかと言うとスタイリッシュなイメージだから。


「ありがとうございます。僕は店主のケントと言います」

「は、はい。えっ……と、ここのパンって、全部ポーション……なんですか?」

「ええ。基本的に全部は」

「す……すごい!」


 キョロキョロ見て回る仕草も大変可愛らしい。

 少し前に来てくれたトラディスさん達もだけど、やましい気持ちが特にない純粋な厚意は本当に嬉しいや。これはきちんとした態度で、僕も接客しなくちゃ。


「ありがとうございます。で、シェリーさんはどんなポーションをお求めで?」

「…………笑わないでくれますか?」

「と言いますと?」

「…………私の、コンプレックスなんです」


 またぎゅっ、と杖の持ち手を掴む。癖なのかな? その後に、ゆっくりと長いため息を吐いた。


「コンプレックスですか?」

「…………私、適性職業は『魔法使い』なのに。魔力量があんまりないんです」

「魔力量……」


 まだこの世界の仕組みについては……イケメン神様からは、魔法と剣の世界以外じゃポーションとかの回復薬不足とまでしか聞いていない。

 個々の症状とか、地球にいた頃とどれだけ違うのかは……カウルやラティストを含めて、ファンタジー要素しか思っていない部分はあっても。

 ちゃんと今、僕はこの世界で生きているんだから……そのことには向き合わなくちゃ。


「魔物とかの戦闘が出来なくもないんですが……魔力がすぐに尽きてしまうんです。だから……ほとんど体術などで戦闘をするので、そろそろ転職を考えてはいたんですが」

「出来れば、魔法使いとして続けたいと?」

「はい! ギルドで噂は聞いています! 美味しくて、効果の強いパンだと」

「魔力回復……ですか」


 たしか、そんなパンが幾つかあった気がする。

 ラティストに目配せして、手分けして棚のラベルと睨めっこしていると……ラティストの方が先に見つけてくれた。


「こちらのフルーツサンドだ」


 そのフルーツサンドは、ホイップクリームとカスタードクリームたっぷりにして……ちょっとした簡易冷蔵庫に入れてあるのものだ。オークションで報酬はたっぷりいただいたので、この設備も魔導具だけど奮発したんだよね?


「フルーツ……サンド、ですか?」


 シェリーさんには、聞いたことがない食べ物だから首を傾げていた。


「はい。フルーツ……果物以外にクリームをたっぷり使ったサンドイッチだと思ってください」

「え……甘いサンドイッチ??」

「ひと口食べれば病みつきですよ。甘いものはお好きですか?」

「だ、大好きです!」


 このフルーツサンドの効果は……定番の傷回復はもちろんだけど、魔力を『高』まで回復とあった。多分だけど……シェリーさんの役には立つはず。


「魔力の回復にはお役に立つと思いますし、他のポーションとしての効能もあります。是非、戦闘以外でもお役立てください」

「はい! その……金貨、何枚なら」

「いいえ? 銀貨もいりません。銅貨の……500ダイスで」

「え!? そんな安く!?」

「亜空間収納を全部の人が持っているわけではないですし、魔法の鞄も同じく。薬でも食べ物のですからね? 一番いい状態で口にして欲しいんです」


 まだ開店して……二、三日程度だけど。その宣伝がうまくいっているのかほとんど売れ残りはない。

 売れ残っても、カウルやラティストは人間じゃないからペロンと食べてくれるけど。
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る

ムーン
ファンタジー
完結しました! 魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。 無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。 そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。 能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。 滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。 悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。 悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。 狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。 やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。

剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!! 神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!? これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

転生美女は元おばあちゃん!同じ世界の愛し子に転生した孫を守る為、エルフ姉妹ともふもふたちと冒険者になります!《『転生初日に~』スピンオフ》

ひより のどか
ファンタジー
目が覚めたら知らない世界に。しかもここはこの世界の神様達がいる天界らしい。そこで驚くべき話を聞かされる。 私は前の世界で孫を守って死に、この世界に転生したが、ある事情で長いこと眠っていたこと。 そして、可愛い孫も、なんと隣人までもがこの世界に転生し、今は地上で暮らしていること。 早く孫たちの元へ行きたいが、そうもいかない事情が⋯ 私は孫を守るため、孫に会うまでに強くなることを決意する。 『待っていて私のかわいい子⋯必ず、強くなって会いに行くから』 そのために私は⋯ 『地上に降りて冒険者になる!』 これは転生して若返ったおばあちゃんが、可愛い孫を今度こそ守るため、冒険者になって活躍するお話⋯ ☆。.:*・゜☆。.:*・゜ こちらは『転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました。もふもふとも家族になります!』の可愛いくまの編みぐるみ、おばあちゃんこと凛さんの、天界にいる本体が主人公! が、こちらだけでも楽しんでいただけるように頑張ります。『転生初日に~』共々、よろしくお願いいたします。 また、全くの別のお話『小さな小さな花うさぎさん達に誘われて』というお話も始めました。 こちらも、よろしくお願いします。 *8/11より、なろう様、カクヨム様、ノベルアップ、ツギクルさんでも投稿始めました。アルファポリスさんが先行です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

八ツ色物語〜失われたヴァイス属性魔法を駆使して平和を掴み取ってみせる!〜

君影 ルナ
ファンタジー
7色のいずれかの属性魔法を持って生まれてくることが常識である世界『ブント』で唯一属性を持たず生まれてきた主人公、深山 エンレイ。そんな彼女が引き取られたのは、この世界でも有数の白花家だった。 エンレイを引き取った主、ツユクサから「他の誰にもない属性魔法を持つ」と言われたエンレイは、周りに助けられながらも成長していく。 そしてその仲間と共に人間共通の敵、ガイストを殲滅し、その後の世界平和を目指して活躍することになる。 ──── ※あまりにも転生逆行要素が出てくるまでに時間がかかりそうなので、タグはその時に追加します。 ※カクヨム、なろう、ノベプラにも重複投稿しています。

処理中です...