隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?

プル・メープル

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第41話 入るな危険のその先へ

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 レーンに到着すると、靴を履き替えてから順番に球を選びに行く。
 唯斗ゆいとはどれが最適なのか分からないからと、適当に8と書かれたやつを選んできた。
 花音かのんでも7、瑞希みずきは10を持ってきていたから、もしかすると軽いのを選んだのかもしれない。
 交換しに行こうか迷ったものの、投げてみてからにしようと思い直し、全員が準備できたのを確認してボーリングを始めた。

 そして、1ゲーム目が終わった時。唯斗はスコアを確認して、瑞希の言っていた『悲惨なこと』の意味をようやく理解したのである。

「あぅぅ……ピンが倒せないです……」
「……」

 画面に表示されているのは、0か1、それとGガーターのみで、最終的なスコアも花音が5、唯斗が4。どう見ても悲惨そのものである。

「帰ろうかな」
「待て待て! すぐに諦めるなよ」

 瑞希は立ち去ろうとするところを引き止め、『次のゲーム』と書かれたボタンを押すと、唯斗の腕を引いてレーンへと連れていく。
 そしてボールを持たせると、投げ方を文字通り手取り足取り教えてくれた。

小田原おだわらは体の芯がしっかりしてないんだ。姿勢さえ真っ直ぐにすれば、ボールも思った方に転がるぞ」

 唯斗はそのアドバイスにウンウンと頷くと、言われたことを思い出しながらボールを投げてみる。
 すると、驚いたことにボールは1番ピンと3番ピンの間にぶつかり、全てのピンが綺麗に倒れた。

「おおっ! 唯斗さんすごいです!」
「さすが男の子ね~♪」
「おめ」

 イマイチ自分が倒したという実感が湧かない唯斗だったが、彼は瑞希の顔をじっと見つめると、とりあえず「ありがとう」と頭を下げておいた。

「そんな改まるなよ、照れるだろ」

 むず痒そうに後ろ頭をかいた彼女は、「私もやります!」と意気込む花音の方へと視線を向ける。
 「狙うはストライクです!」と全倒し予告をした彼女は、しっかりと穴に指を入れてから歩き始める。
 そしてライン少し手前で手を大きく後ろに振り、その勢いでボールを前へと────────。

「……へ?」

 ──────投げられなかった。
 勢いを意識しすぎたせいで、ボールから指を離すのを忘れた彼女は、その重さにつられて体ごとラインを超えてしまったのだ。
 そして思いっきりレーンの中で転ぶと、同時に手から離れて転がっていったボールがコツンとピンに触れる。
 当たりどころがよかったのか、倒れたピンは他のピンを倒し、瞬く間に全ピンが倒れてしまった。

「た、助けてください!た、立てないです!」

 しかし、オイルの塗られたレーンでじたばたしている花音に、そんなことを気にする余裕はない。立ち上がろうと手をついても、ツルッと滑って転んでしまっていた。

「うう……私、ここでお腹すいて死ぬんですか?」

 大袈裟な妄想をして泣きそうになる花音の元へ、風花ふうかが呼びに行ってくれた店員さんがようやく到着する。
 彼女はレーン脇を歩いてきた店員さんに抱えられるようにして連れ戻されると、さすがに気の毒だったのか「次は気をつけるように」と軽めに怒られた。

「カノ、ちゃんと離さないと危ないだろ?」
「ご、ごめんなさい……」
「ほら、汚れた服の換えだ。トイレで着替えてこい」
「はいです!」

 彼女は袋を受け取ると、トコトコとトイレのある方へと走っていく。その背中を眺めながら、瑞希は小さくため息をついた。
 そんな横顔を唯斗が見つめているのに気がついて、彼女は苦笑いを浮かべる。

「花音はどこにいってもなにかやらかすからな。いつも着替えを用意してるんだ」
「優しいんだね」
「ほっとけないだけだよ」

 瑞希はそう言って優しい表情を見せると、スコア表を操作してGガーターと書かれた直近のフレームを、ストライクのマークに書き換えた。

「随分とトリッキーなストライクだね」
「おう、情状酌量ってところだな」
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