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「!! ~~~~~~~っ!!!!」
声にならない悲鳴が静かな場に響く。しかし、そのすべてを目の前の男に飲み込まれていく。
どれ位の時間が過ぎたのか。
上手く息が吸えず、頭がくらくらしてきて膝から力が抜けたところで、ゆっくりと唇が離れていった。
目の前の男は「ほら、取ってやったぞ」 と、いたずらが成功した少年のような満足気な顔で、ヒラヒラと振る手には一枚の葉っぱが握られていた。
「はあ、はあ……」なかなか整わない呼吸を、手で胸をおさえ、大きく息を吸ってゆっくりと整えていく。
幾分か呼吸が整ったところで、力の入らない足に力を込め、すっと立ち上がった。
そして渾身の力を込めて男の脚の間を下から蹴り上げた。
「~~~~~~~っっっ!!!!」
そして恨みの籠った目で男を睨みつけて静かに声を放つ。
「衛兵、こちらに。そこにいる第二王子アレクシス殿下が今すぐ王宮にお帰りになります。門まで連れて行きなさい」
「はっ。畏まりました」
「……っっ、えっ、は??」
衛兵と王子の声が重なる。
「申し遅れました。わたくし、聖女を務めておりますセフィリアと申します。もう二度と会うことはないと思いますが――。 さあ、連れて行って」
そういい口の端を少しつり上げ妖艶に笑った顔に、悶絶中の痛みも忘れ、しばらく見惚れてしまった。
麗しの少女の目は全く笑っていなかったが――。
***
「おかえりなさいませアレクシス王子」
薄情な侍従と近衛騎士の言葉は完全に無視し、急いで自分の部屋へと向かう。
は?? 聖女だと? この国で王と教皇の次に身分が高いのが王太子と聖女だ。しかも、最初から自分が第二王子ってわかっていてのあの態度だとしたら、なかなかのしたたかさだろ。
「ははっ」
自然と笑い声が漏れ出る。
ますますあの少女へ興味がそそられる。
あれが欲しい。何としてでも手に入れたい。
あんなにも自分に靡かず、思い通りにならないなんて初めてだ。そしてあんなにも誰かに心惹かれたことも。
女性に頭突きされたことも、
女性に大事なところを蹴り上げられたことも――。
神に喧嘩を売ることなんて別段怖くなんかない。あの美しい少女を絶対に手に入れてやる。
次なる作戦を考えることにワクワクした気持ちが止まらない。
さて、これからどうやって追い込んでやろうか。
明日からが楽しみだ。
今はせいぜい神にでも祈って待っていろ。
実に悪い顔で不穏なことを考えている主を、侍従も近衛騎士も「やれやれ、懲りない人だ」 とあきれ顔で後ろ姿を見送っていた。
***
「最近バカ息子はどんな様子だ? 令嬢たちとの噂を一切聞かなくなったが、やっと心を入れ替えたのか?」
ご自慢のモサモサの白いひげを撫でながら、右隣に控えた頭のてっぺんが薄い宰相に聞いた。
「そうですね、最近はおとなしくされているそうで。なんでも毎日神殿に出向いているとの情報も聞きましたよ」
「何?! 神殿に?! もしかして、心を改め神に祈りを捧げに行っているのか。あいつがそんなことをする日がよもや来ようとは。実に良き事ではないか」
「はい。本当に良かったです。いつもあの方が起こした問題を収めるのが本当に本当に大変で、とっても苦労しましたからね」
「う、うむ、苦労を掛けたな」
そっと光るてっぺんを見上げた。
「でもこれでやっと平和が訪れますね」
眼鏡の奥で水に濡れた光る滴が輝いていた。
もちろん、第二王子は祈りを捧げてなどいなく。
毎日毎日聖女の元を訪れては蹴り上げられているらしい。
最近では、教皇の頭に『後光が差している』と見習い巫女たちが噂していることを教皇が知り、密かに国王陛下宛に抗議文を送りつけたとか。
王子が改心するのが先か、聖女が折れるのが先か、これからの二人の行く末は神のみぞ知っている……かも知れない。
声にならない悲鳴が静かな場に響く。しかし、そのすべてを目の前の男に飲み込まれていく。
どれ位の時間が過ぎたのか。
上手く息が吸えず、頭がくらくらしてきて膝から力が抜けたところで、ゆっくりと唇が離れていった。
目の前の男は「ほら、取ってやったぞ」 と、いたずらが成功した少年のような満足気な顔で、ヒラヒラと振る手には一枚の葉っぱが握られていた。
「はあ、はあ……」なかなか整わない呼吸を、手で胸をおさえ、大きく息を吸ってゆっくりと整えていく。
幾分か呼吸が整ったところで、力の入らない足に力を込め、すっと立ち上がった。
そして渾身の力を込めて男の脚の間を下から蹴り上げた。
「~~~~~~~っっっ!!!!」
そして恨みの籠った目で男を睨みつけて静かに声を放つ。
「衛兵、こちらに。そこにいる第二王子アレクシス殿下が今すぐ王宮にお帰りになります。門まで連れて行きなさい」
「はっ。畏まりました」
「……っっ、えっ、は??」
衛兵と王子の声が重なる。
「申し遅れました。わたくし、聖女を務めておりますセフィリアと申します。もう二度と会うことはないと思いますが――。 さあ、連れて行って」
そういい口の端を少しつり上げ妖艶に笑った顔に、悶絶中の痛みも忘れ、しばらく見惚れてしまった。
麗しの少女の目は全く笑っていなかったが――。
***
「おかえりなさいませアレクシス王子」
薄情な侍従と近衛騎士の言葉は完全に無視し、急いで自分の部屋へと向かう。
は?? 聖女だと? この国で王と教皇の次に身分が高いのが王太子と聖女だ。しかも、最初から自分が第二王子ってわかっていてのあの態度だとしたら、なかなかのしたたかさだろ。
「ははっ」
自然と笑い声が漏れ出る。
ますますあの少女へ興味がそそられる。
あれが欲しい。何としてでも手に入れたい。
あんなにも自分に靡かず、思い通りにならないなんて初めてだ。そしてあんなにも誰かに心惹かれたことも。
女性に頭突きされたことも、
女性に大事なところを蹴り上げられたことも――。
神に喧嘩を売ることなんて別段怖くなんかない。あの美しい少女を絶対に手に入れてやる。
次なる作戦を考えることにワクワクした気持ちが止まらない。
さて、これからどうやって追い込んでやろうか。
明日からが楽しみだ。
今はせいぜい神にでも祈って待っていろ。
実に悪い顔で不穏なことを考えている主を、侍従も近衛騎士も「やれやれ、懲りない人だ」 とあきれ顔で後ろ姿を見送っていた。
***
「最近バカ息子はどんな様子だ? 令嬢たちとの噂を一切聞かなくなったが、やっと心を入れ替えたのか?」
ご自慢のモサモサの白いひげを撫でながら、右隣に控えた頭のてっぺんが薄い宰相に聞いた。
「そうですね、最近はおとなしくされているそうで。なんでも毎日神殿に出向いているとの情報も聞きましたよ」
「何?! 神殿に?! もしかして、心を改め神に祈りを捧げに行っているのか。あいつがそんなことをする日がよもや来ようとは。実に良き事ではないか」
「はい。本当に良かったです。いつもあの方が起こした問題を収めるのが本当に本当に大変で、とっても苦労しましたからね」
「う、うむ、苦労を掛けたな」
そっと光るてっぺんを見上げた。
「でもこれでやっと平和が訪れますね」
眼鏡の奥で水に濡れた光る滴が輝いていた。
もちろん、第二王子は祈りを捧げてなどいなく。
毎日毎日聖女の元を訪れては蹴り上げられているらしい。
最近では、教皇の頭に『後光が差している』と見習い巫女たちが噂していることを教皇が知り、密かに国王陛下宛に抗議文を送りつけたとか。
王子が改心するのが先か、聖女が折れるのが先か、これからの二人の行く末は神のみぞ知っている……かも知れない。
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