【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる

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第3章 

第56話 トローザーと影

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 ユートリー死去を知ったトローザーはミイヤに知られないよう、使用人としてセルとは別の影を入り込ませようとしたが、ソイスト家から空きがないと言われ、困っていた。セルが辞めるのだから欠員があるはずなのに。
しかもそのセルと連絡が取れなくなってしまったのだ。


 ─まったく何をやっているんだ!まさかバレた?いや、それならミイヤも無事では済まないだろう。何かのトラブルだろうか?仕方ない、影は侯爵家の天井裏に忍び込ませるしかないか・・・、ついでにセルの探索も命じておこう─

 ミイヤをユートリー殺人の犯人として捕まえさせ、ナイジェルスに対する謀殺の罪もミイヤとソイスト侯爵家連座で負わせたかった。しかし王子の謀殺を15歳のミイヤが主導するのはずいぶん強引で無理があると、流石にトローザーもわかっていた。
だからこそ、連絡がつかなくなったセルにソイスト侯爵家の関与を匂わせる細工を指示し、セルを離脱させたら、ミイヤに勘付かれないよう別の影を潜入させて、いつでも口を封じることができるようにと考えていたのだが。

 ただトローザーは影を持つのは王家だけではないと知らなかった。王子の婚約者を出せるほどの家門なら可能なのだと。
 ソイスト侯爵家の暗部も組織立っており、影は一人二人ではない。
 むしろ、国王から数名の影を与えてもらったトローザーより、自分で必要だと思う予算と人を投入できる分、ソイスト侯爵家のほうが充実していたのだ。



「マーカス様!侵入者を発見しましたが、如何致しましょうか」
「捕縛は可能か?」
「はい、もちろんです。相手はひとりですしすぐにでも」
「ひとり?それはまた見縊みくびられたものだな」
「まったくでございますな」

 マーカスは思案した。
すぐに捕まえてしまってはトローザー王子が警戒するだろう。

「暫くは監視を。鼠はどこに潜んでいるのだ?」
「ミイヤ様の部屋の天井に」

 ソイスト侯爵家の各部屋の天井裏は、忍び込みやすく、監視しやすく作られていた。暗部の者たちは壁裏や床下を使って、室内や侵入者を監視したり、護衛したりできる。
壁裏や床下への入口は大変にわかりにくく、何重にも仕掛けが施されているが、天井裏は態とわかりやすく入れる仕掛けになっていた。

「そうか。我が屋敷に鼠が入り込むというのは、私が当主になって以来初めてだから、丁重にもてなしてやるがいい」
「畏まりました」





 影からの報告が城のトローザーに届くと、その報告にニヤリとした。

「ほお、棺の中を見たのか?」
「はい、かなり痩せて窶れておりましたが、ユートリー嬢でございました。ソイスト家では死因がはっきりしないから感染する病だと困るなどと言って、棺の蓋を早々に閉めておりまして、蓋ががっちりと打ち付けられていたのを確認しました」
「ははは、何だそれは。ソイスト家の医者はあれが毒によるものだと最後まで見破れなかったのか!とんだヤブを抱えていたものだ。では警戒などもされていないのではないか」
「はい、拍子抜けするほどに。早々に墓地に埋葬を終えて、今はただ泣き暮らしているという感じです」

 影の男がもっと慎重であれば、屋敷の屋根の高さと部屋の天井、自分が忍ぶ天井裏の高さなどからもっと隠されたスペースがあることに気づいたかもしれない。
 自分が隠れている天井裏には隠し鏡が仕込まれ、それが壁裏や床下から潜望鏡のように覗かれているなどとはまったく気づいていなかった。

 うまうまと誘い込まれて節穴は自分たちなのだが、もちろんそんなことは知る由もなかった。
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