16 / 42
第16話
しおりを挟む
一年と半年が過ぎた。
辺境に行ったトーソルドは、長期休暇で王都に帰ることがあっても、相変わらず屋敷に戻ることはなかった。
離婚の話はルイーフが今は望まないと言うため先送りにしている。
それに父ジャブリックの別れ際の言葉に憤りもあり、寄ろうと思えば寄れたのだが、トーソルドにとって帰る先はルイーフの元であった。
ルイーフは約束どおり、トーソルドが帰るのをいつも待っていてくれたから。
トーソルドの辺境行きは、アニエラにとっても好都合だった。
だからジャブリックに辺境についていくかと訊ねられたとき、とんでもないと焦って首を横に振りまくったのだ。
今さら夫婦と言われてなんとする?どうせこのまま白い結婚が三年続けば、妻申し立てによる離婚が成立する。トーソルドからたんまりと慰謝料をもらえて自由になれると割り切っていた。
アニエラの実家の子爵家は貴族としてはまあまあな歴史と豊かな財産を持つが、兄夫婦が爵位を継ぐため、嫁ぐか働きに出るしかなかった。
二択なら嫁に行くのが順当だ。6歳からトーソルド・ロイリー伯爵令息という婚約者もいたから、疑問に思うことはなかった。
婚約した年、トーソルドと湖畔にピクニックに行った記憶がある。
しかし翌年5歳上のトーソルドが学院に通い始めた頃から、毎月の茶会や外出は尽くすっぽかされるようになった。
手紙はもともと来なかった。その頃はまだアニエラが小さすぎて、字が読めなかったこともあったが、それを良いことにトーソルドは文の一通さえ寄越さなかった。
誕生日の祝いの会はジャブリックが用意したプレゼントを手に連れられて来るが、いつも面白くなさそうに不貞腐り、一人で庭に行ってしまうこともしばしば。
アニエラの両親はそんなふたりの行末を心配したが、ジャブリックから親の代からの恩をアニエラを必ず幸せにすることで返すと言われると、婚約を解消することもできなかった。
辺境に行ったトーソルドは、長期休暇で王都に帰ることがあっても、相変わらず屋敷に戻ることはなかった。
離婚の話はルイーフが今は望まないと言うため先送りにしている。
それに父ジャブリックの別れ際の言葉に憤りもあり、寄ろうと思えば寄れたのだが、トーソルドにとって帰る先はルイーフの元であった。
ルイーフは約束どおり、トーソルドが帰るのをいつも待っていてくれたから。
トーソルドの辺境行きは、アニエラにとっても好都合だった。
だからジャブリックに辺境についていくかと訊ねられたとき、とんでもないと焦って首を横に振りまくったのだ。
今さら夫婦と言われてなんとする?どうせこのまま白い結婚が三年続けば、妻申し立てによる離婚が成立する。トーソルドからたんまりと慰謝料をもらえて自由になれると割り切っていた。
アニエラの実家の子爵家は貴族としてはまあまあな歴史と豊かな財産を持つが、兄夫婦が爵位を継ぐため、嫁ぐか働きに出るしかなかった。
二択なら嫁に行くのが順当だ。6歳からトーソルド・ロイリー伯爵令息という婚約者もいたから、疑問に思うことはなかった。
婚約した年、トーソルドと湖畔にピクニックに行った記憶がある。
しかし翌年5歳上のトーソルドが学院に通い始めた頃から、毎月の茶会や外出は尽くすっぽかされるようになった。
手紙はもともと来なかった。その頃はまだアニエラが小さすぎて、字が読めなかったこともあったが、それを良いことにトーソルドは文の一通さえ寄越さなかった。
誕生日の祝いの会はジャブリックが用意したプレゼントを手に連れられて来るが、いつも面白くなさそうに不貞腐り、一人で庭に行ってしまうこともしばしば。
アニエラの両親はそんなふたりの行末を心配したが、ジャブリックから親の代からの恩をアニエラを必ず幸せにすることで返すと言われると、婚約を解消することもできなかった。
229
あなたにおすすめの小説
私から婚約者を奪うことに成功した姉が、婚約を解消されたと思っていたことに驚かされましたが、厄介なのは姉だけではなかったようです
珠宮さくら
恋愛
ジャクリーン・オールストンは、婚約していた子息がジャクリーンの姉に一目惚れしたからという理由で婚約を解消することになったのだが、そうなった原因の贈られて来たドレスを姉が欲しかったからだと思っていたが、勘違いと誤解とすれ違いがあったからのようです。
でも、それを全く認めない姉の口癖にもうんざりしていたが、それ以上にうんざりしている人がジャクリーンにはいた。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
(完)婚約破棄ですね、従姉妹とどうかお幸せに
青空一夏
恋愛
私の婚約者は従姉妹の方が好きになってしまったようなの。
仕方がないから従姉妹に譲りますわ。
どうぞ、お幸せに!
ざまぁ。中世ヨーロッパ風の異世界。中性ヨーロッパの文明とは違う点が(例えば現代的な文明の機器など)でてくるかもしれません。ゆるふわ設定ご都合主義。
(完結)お姉様、私を捨てるの?
青空一夏
恋愛
大好きなお姉様の為に貴族学園に行かず奉公に出た私。なのに、お姉様は・・・・・・
中世ヨーロッパ風の異世界ですがここは貴族学園の上に上級学園があり、そこに行かなければ女官や文官になれない世界です。現代で言うところの大学のようなもので、文官や女官は○○省で働くキャリア官僚のようなものと考えてください。日本的な価値観も混ざった異世界の姉妹のお話。番の話も混じったショートショート。※獣人の貴族もいますがどちらかというと人間より下に見られている世界観です。
(完結)元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・エメリーン編
青空一夏
恋愛
「元お義姉様に麗しの王太子殿下を取られたけれど・・・・・・」の続編。エメリーンの物語です。
以前の☆小説で活躍したガマちゃんズ(☆「お姉様を選んだ婚約者に乾杯」に出演)が出てきます。おとぎ話風かもしれません。
※ガマちゃんズのご説明
ガマガエル王様は、その昔ロセ伯爵家当主から命を助けてもらったことがあります。それを大変感謝したガマガエル王様は、一族にロセ伯爵家を守ることを命じます。それ以来、ガマガエルは何代にもわたりロセ伯爵家を守ってきました。
このお話しの時点では、前の☆小説のヒロイン、アドリアーナの次男エアルヴァンがロセ伯爵になり、失恋による傷心を癒やす為に、バディド王国の別荘にやって来たという設定になります。長男クロディウスは母方のロセ侯爵を継ぎ、長女クラウディアはムーンフェア国の王太子妃になっていますが、この物語では出てきません(多分)
前の作品を知っていらっしゃる方は是非、読んでいない方もこの機会に是非、お読み頂けると嬉しいです。
国の名前は新たに設定し直します。ロセ伯爵家の国をムーンフェア王国。リトラー侯爵家の国をバディド王国とします。
ムーンフェア国のエアルヴァン・ロセ伯爵がエメリーンの恋のお相手になります。
※現代的言葉遣いです。時代考証ありません。異世界ヨーロッパ風です。
(完)婚約破棄ですか? なぜ関係のない貴女がそれを言うのですか? それからそこの貴方は私の婚約者ではありません。
青空一夏
恋愛
グレイスは大商人リッチモンド家の娘である。アシュリー・バラノ侯爵はグレイスよりずっと年上で熊のように大きな体に顎髭が風格を添える騎士団長様。ベースはこの二人の恋物語です。
アシュリー・バラノ侯爵領は3年前から作物の不作続きで農民はすっかり疲弊していた。領民思いのアシュリー・バラノ侯爵の為にお金を融通したのがグレイスの父親である。ところがお金の返済日にアシュリー・バラノ侯爵は満額返せなかった。そこで娘の好みのタイプを知っていた父親はアシュリー・バラノ侯爵にある提案をするのだった。それはグレイスを妻に迎えることだった。
年上のアシュリー・バラノ侯爵のようなタイプが大好きなグレイスはこの婚約話をとても喜んだ。ところがその三日後のこと、一人の若い女性が怒鳴り込んできたのだ。
「あなたね? 私の愛おしい殿方を横からさらっていったのは・・・・・・婚約破棄です!」
そうしてさらには見知らぬ若者までやって来てグレイスに婚約破棄を告げるのだった。
ざまぁするつもりもないのにざまぁになってしまうコメディー。中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。途中からざまぁというより更生物語になってしまいました。
異なった登場人物視点から物語が展開していくスタイルです。
(完)契約結婚から始まる初恋
青空一夏
恋愛
よくあるタイプのお話です。
ヒロインはカイリン・ブランストーン男爵令嬢。彼女は姉とは差別されて育てられていた。姉のメーガンは溺愛されて、カイリンはメイドのような仕事までさせられており、同じ姉妹でありながら全く愛されていなかった。
ブランストーン男爵家はメーガンや母モナの散財で借金だらけ。父親のバリントンまで高級ワインを買いあさる趣味があった。その借金の為に売られるように結婚をさせられた相手は、女嫌いで有名な男性だった。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。異世界ですが現代社会的な文明器機が出てくる場合があるかもしれません。
※ショートショートの予定ですが、変更する場合もあります。
その令嬢は、実家との縁を切ってもらいたい
キョウキョウ
恋愛
シャルダン公爵家の令嬢アメリは、学園の卒業記念パーティーの最中にバルトロメ王子から一方的に婚約破棄を宣告される。
妹のアーレラをイジメたと、覚えのない罪を着せられて。
そして、婚約破棄だけでなく公爵家からも追放されてしまう。
だけどそれは、彼女の求めた展開だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる