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第32話
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「なんか、すごいメイドですね」
「そ、そうなんだ!わかってくれるか?あのメイド一人を付けられて、食事も満足に食べられていないんだよ」
この機会にとトーソルドは少し大袈裟に話して、ジョリスの同情を買おうとする。
「そうですか?それはお気の毒に。しかしその割に顔色もいいですし、窶れたようにも見えないのは何故でしょうね」
じろりと睨みつけるような視線を送るジョリスは、トーソルドの思惑どおりには動かなかった。
「それで、お呼びになった理由は本当に同級生に会いたくなったからですか?」
「あ、あ、あ。あの、ジョリスの目から見て、あのメイドは酷いだろう?だが私から言っても改善されないのは本当の話なんだ。父や兄を呼ぶよう頼んでもなしの礫で。私は危険な国境警備に当たり、名誉の負傷を負った騎士なんだ!この状況は不当じゃないかと・・・君から家族に進言してもらえないだろうか」
ジョリスはうんともすんとも言わず、何か考えているようだ。
「あのジョリス、もう一つ頼みたいことがある」
視線が動き、目があった。
「ルイーフを覚えているか?」
「ああ。トーソルド様の不貞の相手と噂だった」
「え」
「なあ、ルド。いい加減にしろよ」
昔のように、愛称呼びをしたかと思うと、ジョリスはテーブルをドンと叩いた。
「おまえは家同士の定めた婚約者を蔑ろにし続け、婚姻したあともずっとあの女のところに入り浸っていたそうじゃないか!俺たちは皆、不貞はやめろと再三に渡り忠告したはずだ」
「や、だが私は嫌だと」
「おまえなどと結婚しなければならなかったアニエラ様も、さぞお嫌だっただろうよ。今のおまえを見るとな、気の毒とは少しも思えないんだよ。知っているか?自業自得という言葉を」
フンと鼻を鳴らす。
「あの、ジョリス」
ふーっと息を吐くとジョリスは言い放った。
「私はメーラー子爵だ。騎士爵の君の頼み事を聞く必要があるのかね?そもそも自分がしたことの一つでも真剣に反省しておれば、恥ずかしくてそんなこと頼めないだろう。まったく呆れるな。君との縁はこれにて切らせてもらう。二度と連絡は寄越さないでもらいたい!」
ジョリスは言いがかりのように爵位を持ち出して、昔馴染みを切って捨てた。
「そんな」
言いかけたトーソルドに忘れ物でもしたかのように、振り向いたジョリスが言い残したのは。
「ああ、あのガサツで無礼なメイドは、今の君に相応しいと思うぞ」
はははと笑いながら部屋から出て行くのを見て、トーソルドは怒り任せにティーカップを投げつけた。
「そ、そうなんだ!わかってくれるか?あのメイド一人を付けられて、食事も満足に食べられていないんだよ」
この機会にとトーソルドは少し大袈裟に話して、ジョリスの同情を買おうとする。
「そうですか?それはお気の毒に。しかしその割に顔色もいいですし、窶れたようにも見えないのは何故でしょうね」
じろりと睨みつけるような視線を送るジョリスは、トーソルドの思惑どおりには動かなかった。
「それで、お呼びになった理由は本当に同級生に会いたくなったからですか?」
「あ、あ、あ。あの、ジョリスの目から見て、あのメイドは酷いだろう?だが私から言っても改善されないのは本当の話なんだ。父や兄を呼ぶよう頼んでもなしの礫で。私は危険な国境警備に当たり、名誉の負傷を負った騎士なんだ!この状況は不当じゃないかと・・・君から家族に進言してもらえないだろうか」
ジョリスはうんともすんとも言わず、何か考えているようだ。
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「ルイーフを覚えているか?」
「ああ。トーソルド様の不貞の相手と噂だった」
「え」
「なあ、ルド。いい加減にしろよ」
昔のように、愛称呼びをしたかと思うと、ジョリスはテーブルをドンと叩いた。
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「や、だが私は嫌だと」
「おまえなどと結婚しなければならなかったアニエラ様も、さぞお嫌だっただろうよ。今のおまえを見るとな、気の毒とは少しも思えないんだよ。知っているか?自業自得という言葉を」
フンと鼻を鳴らす。
「あの、ジョリス」
ふーっと息を吐くとジョリスは言い放った。
「私はメーラー子爵だ。騎士爵の君の頼み事を聞く必要があるのかね?そもそも自分がしたことの一つでも真剣に反省しておれば、恥ずかしくてそんなこと頼めないだろう。まったく呆れるな。君との縁はこれにて切らせてもらう。二度と連絡は寄越さないでもらいたい!」
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「そんな」
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