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第34話
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「こんなことならアニーの望みを叶えて、ジュール様に婚約者になって下さるようお願いすればよかったわ。年上だのと気にせずに」
小さなイルメ夫人の声がジャブリックに届いて、視線を合わす。
「あの、ジュールとは我が家のジュールでしょうか?」
「え、ええ。あの子、小さな頃はジュール様に憧れておりましたのよ。トーソルド様と何かあるたびに、はるばる遠くの我が家まで足を運んで下さる優しいお方ですし、よく懐いておりましたから。
でもジュール様も婚約されると聞いておりましたし、九つ上でしたからね。さすがにジュール様に相手にされないだろうと思って、アニーの婚約者はトーソルド様だと言い含めましたの。
でもこんなことになるとわかっているなら、駄目で元々、ジュール様に嫁がせたいとお訊ねすればよかったと思ってしまいますわ」
「そんな昔のことをいまさら!もう過ぎたことだ、それよりこれからのアニーのことが大切だろう」
アンザルクが妻のお喋りを止めると、機嫌がいいとは言えない顔で、確認し終えたアニエラの財産目録をジャブリックに押し返した。
「ロイリー伯爵家は、今後もアニエラ様の後ろ盾となりお守り致します」
一度大きく裏切っているので信頼できないと言われてもしかたないが、ジャブリックはせめてもの誠意を見せようと深く腰を折って頭を下げ、ヨヌク子爵家を退出した。
「はあ、なんとか無事終えられた」
ため息をつきつつ、新たな思いつきに急いで屋敷へと馬を駆った。
「いま戻ったぞ」
ジャブリックの帰りを待っていたテューリンが迎えにでると、にっこり笑うジャブリックに成果のほどが見て取れた。
「ヨヌク子爵はなんとかお許しくださった」
「ああよかったですね」
「よかっただけじゃない、一つイイ話を聞いたんだ」
テューリンの肩を抱いて、耳元で囁く。
「え」
聞いたテューリンは呆れた目で父を見た。
「父上、まさかそんな小さな頃のこどもの言うこと真に受けてないですよね?」
「こどもだったからこその純粋な想いを持ち続けているかもしれないぞ」
「いや、だめでしょう」
「大丈夫だ、私に任せておけ」
とてつもなく楽しそうな姿に寒気しか感じないテューリンは、以前ならびしっと父を諌めていた母がいないことを思い返して不安を感じていた。
小さなイルメ夫人の声がジャブリックに届いて、視線を合わす。
「あの、ジュールとは我が家のジュールでしょうか?」
「え、ええ。あの子、小さな頃はジュール様に憧れておりましたのよ。トーソルド様と何かあるたびに、はるばる遠くの我が家まで足を運んで下さる優しいお方ですし、よく懐いておりましたから。
でもジュール様も婚約されると聞いておりましたし、九つ上でしたからね。さすがにジュール様に相手にされないだろうと思って、アニーの婚約者はトーソルド様だと言い含めましたの。
でもこんなことになるとわかっているなら、駄目で元々、ジュール様に嫁がせたいとお訊ねすればよかったと思ってしまいますわ」
「そんな昔のことをいまさら!もう過ぎたことだ、それよりこれからのアニーのことが大切だろう」
アンザルクが妻のお喋りを止めると、機嫌がいいとは言えない顔で、確認し終えたアニエラの財産目録をジャブリックに押し返した。
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「はあ、なんとか無事終えられた」
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「ヨヌク子爵はなんとかお許しくださった」
「ああよかったですね」
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「え」
聞いたテューリンは呆れた目で父を見た。
「父上、まさかそんな小さな頃のこどもの言うこと真に受けてないですよね?」
「こどもだったからこその純粋な想いを持ち続けているかもしれないぞ」
「いや、だめでしょう」
「大丈夫だ、私に任せておけ」
とてつもなく楽しそうな姿に寒気しか感じないテューリンは、以前ならびしっと父を諌めていた母がいないことを思い返して不安を感じていた。
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