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外伝
第64話 皆で幸せに ─王妃とテューダー─
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パッと頭を下げるテューダー。
「あの、代金の回収はできましたか?」
「うふふ。ご安心ください、出来たと聞いておりますわ。何でもお逃げになろうと馬車に乗り込むのを押さえたそうで。
その時にずいぶんとたくさん宝石をお持ちだったから、いくつかの商会でそれを回収したそうです」
ほっとしたテューダーは一度背中を丸めて体の緊張を緩ませた。
「ところでシュレンクス家は名を変えて商会を経営しているんですか?」
「いえ、貴族社会ではシュレンクスの名を使うほうがとおりは良いと思いますが、シュレンクスは母の嫁ぎ先です。商会はベレルアと申しまして、祖父は・・・平民でございましたのよ」
「えっ!ベレルア商会?それはすごい!大店ではありませんか」
テューダーが驚くのも無理はない。
国内でも三本の指に入るだろうベレルア商会は、平民であったサリーの祖父ジェイネルが腕一本で叩き上げたと有名な商会である。
ジェイネルは跡継ぎ息子に商会を委ねたが、一人娘は貧乏貴族だったシュレンクス伯爵家に嫁がせたのだ。シュレンクス伯爵家はその支援により持ち直したばかりか、ベレルア商会にがっちりと食い込んだ。
というのもジェイネルが期待し後継者として育てたサリーの叔父夫婦は、バカンスに出た先でこどもたちと馬車の事故で亡くなってしまい、後継者を失ったジェイネルは、落ち込みながらもサリーの兄でシュレンクス家の次男ベイルを養子にし、自身が亡くなるまで心血を注いで商会を率いるまでに育て上げたのだ。
「貴女のような方が婚約者だったのに、どうしてお相手は浮気などしたのでしょうね」
平民出身の母がいてもとびきりすごい金持ちの伯爵令嬢で、しかも美人なのだ。
素直な疑問が口からぽろりとこぼれた。
「あっ、すみません、失礼なことを申しました!」
ぶわっと汗が噴き出すのを感じながら、ガバッと頭を下げて謝るテューダーに、サリーはこともなげに答える。
「今となっては詳しくはわかりませんけれど、平民の血が流れているとか好みではないとか、金持ちを鼻にかけているとか仰ってましたわねえ」
「そんな!私はすっごく好みで・・・」
ハッ!
「な、何を言ってるんだ私は」
サリーは焦りまくるテューダーがとっても好ましく思え、ほんの短い時間を過ごしただけだが、王妃は当てずっぽうでテューダーを紹介したわけではないと気がついた。
テューダーもサリーを悪くない、それどころかすごくいいと思い始めている。
まず容姿がとっても好みなのだが、落ち着いているところもいいと思った。
声も涼やかで、笑う声がやさしく明るくて聞いているだけで癒やされるようなのだ。
─こんな女性にはそうは出会えないかもしれないな─
勿論アリスのことがあったばかりで、いきなり次という気持ちにはなれないのだが、あの王妃お勧めのサリーなら間違いないだろうと思えた。
なんとなく意気投合したテューダーとサリーは、決して熱い恋ではないが、こんなふんわりした仲も居心地良いものだと、成年式直前に婚約し、その半年後に結婚式を迎えた。
「テュー!おめでとう」
王太子の乳母を努めたマイラが夫人であるソグ伯爵家で行なわれる祝宴は、国王夫妻とエルロール王太子メリンダ王太子妃夫妻、カルロイド王子とメルロイド王子とそれぞれの婚約者たち、リリアンジェラ王女まで勢揃いする華やかなものだった。
エルロールとパリス王妃がとにかく喜んで、特にパリスは祝いの品だと自分の宝石をサリーにつけさせたほどである。
「早くあなたたちのこどもが見たいわね」
顔合わせの際に良かれとサプライズをやらかしたパリスは、メリンダには良い姑と言われたくて、その手のことは口にしないようにしているのだが、サリーには気安く言った。
「王妃様、それは神の思し召しでございますから。おほほはほ」
しかしプレッシャーも何のその、さらりと交わすのも腹の中を知り尽くした女官ならではか。
「なかなかやるわね」
マイラは王妃を前にしても臆さないサリーの立ち居振る舞いや言動が気に入り、ソグ伯爵家も安泰だとニヤニヤが止まらない。
「とっても幸せそうですわね」
メリンダが楽しそうに囁くと、エルロールは
「私のほうがテューよりずぅっと幸せだ!何しろメリを妻にできたのだからな」
と囁き返していた。
のちにパリス王妃からメリンダ妃付きに配置換えされたサリーは、義母マイラと同じようにメリンダのこどもたちの乳母を努めながら、ソグ伯爵家の跡継ぎの男子ふたりを生み育てる。
国王となったエルロールの手足となって駆け回るテューダーと、メリンダの陰日向となり支え続けるサリーの夫妻は、エルロールが王太子となった第一王子ランスロットに王位を譲って離宮に引っ込むと自分たちも爵位を嫡男に譲り、侍女侍従として付いていくことに決めた。
「なあテュー!何もそこまでしなくとも、これからはサリーと二人の生活を楽しめばいいと思うぞ」
テューダーの申し出に呆れたようなエルロールが言うと、メリンダも頷いたが。
「何をそんな水くさいことを!エルが退位したらガーネット宮の池で釣りでもしながら暮らそうと言ったじゃないか」
「それは!おまえ何年、いや何十年前のことを言っているんだよ」
「つい三十年ほどのことだろう」
「つい三十年って、すごい前じゃないか それ!」
引く気がないテューダーと、夫を応援しているサリーは、長く連れ添ったお陰ですっかり似た者夫婦である。
「しかたないなあ、じゃあテューとサリーの部屋も作っておいてやろう」
エルロールは退位した国王など煩がられるだけだと、迅速に、しかしひっそり離宮に引っ込むつもりだったが、そんなわけでガーネット宮は気心の知れた幼馴染みが仕える居心地のよいものとなり、役目を終えた前国王夫妻と侍従たちは些細なことにも笑い転げながら過ごした。
みんなで幸せに、幸せに。
=============================
テューダー編最終話となります。
このあとは貴族の子、孤児院の子の話が続く予定です。よろしくお願い致します。
「あの、代金の回収はできましたか?」
「うふふ。ご安心ください、出来たと聞いておりますわ。何でもお逃げになろうと馬車に乗り込むのを押さえたそうで。
その時にずいぶんとたくさん宝石をお持ちだったから、いくつかの商会でそれを回収したそうです」
ほっとしたテューダーは一度背中を丸めて体の緊張を緩ませた。
「ところでシュレンクス家は名を変えて商会を経営しているんですか?」
「いえ、貴族社会ではシュレンクスの名を使うほうがとおりは良いと思いますが、シュレンクスは母の嫁ぎ先です。商会はベレルアと申しまして、祖父は・・・平民でございましたのよ」
「えっ!ベレルア商会?それはすごい!大店ではありませんか」
テューダーが驚くのも無理はない。
国内でも三本の指に入るだろうベレルア商会は、平民であったサリーの祖父ジェイネルが腕一本で叩き上げたと有名な商会である。
ジェイネルは跡継ぎ息子に商会を委ねたが、一人娘は貧乏貴族だったシュレンクス伯爵家に嫁がせたのだ。シュレンクス伯爵家はその支援により持ち直したばかりか、ベレルア商会にがっちりと食い込んだ。
というのもジェイネルが期待し後継者として育てたサリーの叔父夫婦は、バカンスに出た先でこどもたちと馬車の事故で亡くなってしまい、後継者を失ったジェイネルは、落ち込みながらもサリーの兄でシュレンクス家の次男ベイルを養子にし、自身が亡くなるまで心血を注いで商会を率いるまでに育て上げたのだ。
「貴女のような方が婚約者だったのに、どうしてお相手は浮気などしたのでしょうね」
平民出身の母がいてもとびきりすごい金持ちの伯爵令嬢で、しかも美人なのだ。
素直な疑問が口からぽろりとこぼれた。
「あっ、すみません、失礼なことを申しました!」
ぶわっと汗が噴き出すのを感じながら、ガバッと頭を下げて謝るテューダーに、サリーはこともなげに答える。
「今となっては詳しくはわかりませんけれど、平民の血が流れているとか好みではないとか、金持ちを鼻にかけているとか仰ってましたわねえ」
「そんな!私はすっごく好みで・・・」
ハッ!
「な、何を言ってるんだ私は」
サリーは焦りまくるテューダーがとっても好ましく思え、ほんの短い時間を過ごしただけだが、王妃は当てずっぽうでテューダーを紹介したわけではないと気がついた。
テューダーもサリーを悪くない、それどころかすごくいいと思い始めている。
まず容姿がとっても好みなのだが、落ち着いているところもいいと思った。
声も涼やかで、笑う声がやさしく明るくて聞いているだけで癒やされるようなのだ。
─こんな女性にはそうは出会えないかもしれないな─
勿論アリスのことがあったばかりで、いきなり次という気持ちにはなれないのだが、あの王妃お勧めのサリーなら間違いないだろうと思えた。
なんとなく意気投合したテューダーとサリーは、決して熱い恋ではないが、こんなふんわりした仲も居心地良いものだと、成年式直前に婚約し、その半年後に結婚式を迎えた。
「テュー!おめでとう」
王太子の乳母を努めたマイラが夫人であるソグ伯爵家で行なわれる祝宴は、国王夫妻とエルロール王太子メリンダ王太子妃夫妻、カルロイド王子とメルロイド王子とそれぞれの婚約者たち、リリアンジェラ王女まで勢揃いする華やかなものだった。
エルロールとパリス王妃がとにかく喜んで、特にパリスは祝いの品だと自分の宝石をサリーにつけさせたほどである。
「早くあなたたちのこどもが見たいわね」
顔合わせの際に良かれとサプライズをやらかしたパリスは、メリンダには良い姑と言われたくて、その手のことは口にしないようにしているのだが、サリーには気安く言った。
「王妃様、それは神の思し召しでございますから。おほほはほ」
しかしプレッシャーも何のその、さらりと交わすのも腹の中を知り尽くした女官ならではか。
「なかなかやるわね」
マイラは王妃を前にしても臆さないサリーの立ち居振る舞いや言動が気に入り、ソグ伯爵家も安泰だとニヤニヤが止まらない。
「とっても幸せそうですわね」
メリンダが楽しそうに囁くと、エルロールは
「私のほうがテューよりずぅっと幸せだ!何しろメリを妻にできたのだからな」
と囁き返していた。
のちにパリス王妃からメリンダ妃付きに配置換えされたサリーは、義母マイラと同じようにメリンダのこどもたちの乳母を努めながら、ソグ伯爵家の跡継ぎの男子ふたりを生み育てる。
国王となったエルロールの手足となって駆け回るテューダーと、メリンダの陰日向となり支え続けるサリーの夫妻は、エルロールが王太子となった第一王子ランスロットに王位を譲って離宮に引っ込むと自分たちも爵位を嫡男に譲り、侍女侍従として付いていくことに決めた。
「なあテュー!何もそこまでしなくとも、これからはサリーと二人の生活を楽しめばいいと思うぞ」
テューダーの申し出に呆れたようなエルロールが言うと、メリンダも頷いたが。
「何をそんな水くさいことを!エルが退位したらガーネット宮の池で釣りでもしながら暮らそうと言ったじゃないか」
「それは!おまえ何年、いや何十年前のことを言っているんだよ」
「つい三十年ほどのことだろう」
「つい三十年って、すごい前じゃないか それ!」
引く気がないテューダーと、夫を応援しているサリーは、長く連れ添ったお陰ですっかり似た者夫婦である。
「しかたないなあ、じゃあテューとサリーの部屋も作っておいてやろう」
エルロールは退位した国王など煩がられるだけだと、迅速に、しかしひっそり離宮に引っ込むつもりだったが、そんなわけでガーネット宮は気心の知れた幼馴染みが仕える居心地のよいものとなり、役目を終えた前国王夫妻と侍従たちは些細なことにも笑い転げながら過ごした。
みんなで幸せに、幸せに。
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テューダー編最終話となります。
このあとは貴族の子、孤児院の子の話が続く予定です。よろしくお願い致します。
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