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外伝 リリアンジェラ
可愛いらしい王女はニヤリと笑う13 ─リリアンジェラ─
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「リリ、何を言ったんだ?あんまりやり過ぎるなよ」
声が小さくなって、途中から何を言ったのか聞こえなくなったが、青褪めた令嬢の様子から、妹が脅したらしいとエルロールにもわかった。
「いやあね、お兄様ってば。いじめたりはしておりませんことよ。私の正直な気持ちを正確にお伝えしただけですわ。それをどう受け止めるか。後ろ暗いことがあれば恐ろしくも感じるでしょうけれど、なければ私の考えすぎと笑い飛ばせるようなことですのよ。逃げたということはそういうことですわ」
おほほほほと、扇を口元に当てた王女の目は悪そうにニヤリとする。
「そうそうエル兄様、一侯爵如きに舐められては未来の施政者として相応しいと言えませんわよ。私もカル兄様もメル兄様も、エル兄様に王太子になって頂きたいと心から思っているのですから、精進なさいませ」
四歳下の妹からの、斜め上からの言葉に呆気にとられつつも、妹の言う事ももっともだと素直に頷く。
リリアンジェラはそういう素直な兄が好きだったが、頼りないとも感じていた。
メンジャー侯爵家のセラを正面から叩いたあと、リリアンジェラの目につく令嬢は潮が引くように消え失せた。
まあそうだろう、あの強気なセラを王女が叩き潰したと聞いたら、目立ちたい令嬢がいるわけがない。
「小蝿はいなくなったけど、蝶も消えたわね」
上手い言い方をするものだとカテナは感じていた。
─侯爵令嬢をコバエだなんて─
ぷふっと笑いをこぼすカテナに対してイルスラは厳しめだ。
「だからやり過ぎないよう申しましたのに!他のエルロール殿下の婚約者候補まで渋っているらしいではありませんか」
「ちょっと薬が効きすぎただけよ。どうせあの令嬢が大袈裟に私に苛められたとか言って歩いているに違いないわ」
リリアンジェラは特に調べたわけでもなかったが、正しいことを口にしていた。
セラは執念深く、相手が王女であるにも関わらず身の程を弁えずに、理不尽な目に合わされたとあちこちで話して歩いた。
王女は先手を打たれたのだ。
恋愛小説を読むたびに、ざまぁされるなんて詰めが甘いと思っていたというのに。
─ざまぁというほどじゃないけど、二度目はないわよリリ!─
この失敗を二度は繰り返さないと自分に言い聞かせる。
勿論噂を広めただろうセラとその周囲を、このまま済ませてやるつもりはない。
─必ずお返ししてやるわ─
カテナを呼び、相談がてらふたりで庭を散歩するとイルスラもすこし離れてついてくる。
「カティ、ねえセラ嬢について何か噂を聞いたことないかしら」
「何かって何ですか?」
「しっ!イルスラに聞かれたら怒られるから小さな声で話して」
怖いものなしに思われているリリアンジェラだが、イルスラと母パリスに叱られるのは弱い。
それなら叱られるようなことをしなければいいのだが、セラをこのままにするのは王女の沽券に関わる。止めることはできなかった。
声が小さくなって、途中から何を言ったのか聞こえなくなったが、青褪めた令嬢の様子から、妹が脅したらしいとエルロールにもわかった。
「いやあね、お兄様ってば。いじめたりはしておりませんことよ。私の正直な気持ちを正確にお伝えしただけですわ。それをどう受け止めるか。後ろ暗いことがあれば恐ろしくも感じるでしょうけれど、なければ私の考えすぎと笑い飛ばせるようなことですのよ。逃げたということはそういうことですわ」
おほほほほと、扇を口元に当てた王女の目は悪そうにニヤリとする。
「そうそうエル兄様、一侯爵如きに舐められては未来の施政者として相応しいと言えませんわよ。私もカル兄様もメル兄様も、エル兄様に王太子になって頂きたいと心から思っているのですから、精進なさいませ」
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リリアンジェラはそういう素直な兄が好きだったが、頼りないとも感じていた。
メンジャー侯爵家のセラを正面から叩いたあと、リリアンジェラの目につく令嬢は潮が引くように消え失せた。
まあそうだろう、あの強気なセラを王女が叩き潰したと聞いたら、目立ちたい令嬢がいるわけがない。
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上手い言い方をするものだとカテナは感じていた。
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「だからやり過ぎないよう申しましたのに!他のエルロール殿下の婚約者候補まで渋っているらしいではありませんか」
「ちょっと薬が効きすぎただけよ。どうせあの令嬢が大袈裟に私に苛められたとか言って歩いているに違いないわ」
リリアンジェラは特に調べたわけでもなかったが、正しいことを口にしていた。
セラは執念深く、相手が王女であるにも関わらず身の程を弁えずに、理不尽な目に合わされたとあちこちで話して歩いた。
王女は先手を打たれたのだ。
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─必ずお返ししてやるわ─
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