【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる

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 静養にとセリアズ公爵、そしてエンダライン侯爵が子どもたちに用意した時間の残りを、アレクシオスはパルティアと行き来しながら過ごすようなっていた。

 二人で湖畔にリラックスチェアを置き、あるときはそれぞれに本を読んだり、またどちらの食事が美味いかと痴話喧嘩をしてみたり。
 そしてパルティアがエルシドで過ごすのもあと少しという頃。

「アレクシオス様、思いついたことがあるの。聞いてご意見くださる?
この地は人があたたかく、私たちのように心に傷を負った者が休むのにぴったりでしょう?ここに心休めるような宿泊施設を建てて、気軽に静養できるような場所を作ろうかと考えているのだけど」

 貴族と言えど、静養に出るのは支度が大変だ。別邸のあるところなら良いが、そうでなければ。そう今回のパルティアのようにコテージを借りる場合は、あらゆる物を持ち込まねばならず、結果六台もの馬車を連ねる結果になった。
 パルティアは自分を、そしてアレクシオスを癒やしたこの地で、観光よりもっと心穏やかに過ごすことが必要な人が手軽に来られてゆっくり休める施設を、オートリアスの父から受け取った慰謝料で建てて、親しくなった平民の娘たちに仕事を与えるのはどうかと考え始めていた。

「なるほど。確かに彼女たちになら、安心して任せられるな」
「ね。貴族向けの静養施設、その時はアレクシオス様もお客様・・・っていうのかしら?ご紹介くださるかしら」
「ああ、もちろんだ!パルティア様は、転んでもタダでは起きないな」

 くすりと笑いをこぼしたアレクシオスだが、パルティアがエルシドで身につけた逞しさを眩しく思っていた。

「私も慰謝料をもらうことになる・・・出資してもいいかな」
「本当に?それなら安心して広い土地を買い求められますわね」

 残す数日の滞在で、二人は土地を探し始めた。もちろんレイクビューでなければならない。自分たちがしてきたように湖畔の朝焼けや夕暮れを見ながらゆったり過ごせる場所、広い湖のまわりを歩くうちにようやく見つけ出した土地を即決で購入した。

「思ったよりかなりお安かったですわね!」

 パルティアたちが住む王都と比べたら土地ははるかに安いのだが、そこには初めて気がついた。

「その分建物に金をかけられる」
「ええ!贅沢よりシンプルで、心や疲れを癒やすための部屋づくりやお風呂にお金をかけたいわ。あ、リネンは良いものを使わなくてはだめね。あとはお料理!」

 パルティアの頭の中に、自分を癒やしたこの地の素晴らしい食べ物が次次と思い浮かぶ。

「それを全部取り入れた建物だと、土地がいくらお安くてもやっぱり私の予算では足りないかもしれないわ」
「ああ、そこは私が出そう」

 アレクシオスが、パルティアをやさしく見つめていることに気づいたニーナである。
 ふたりはいつも仲間だ同志だとお互いを呼び合っているが、共同出資の仕事を始めるのはさらに仲が深まり、とても良いことだとエルシドでパルティアを囲む使用人たちはあたたかく見守っていた。
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