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共通ルート
12話 権利
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「……ごめん」
「そっか、ダメ、なんだ……」
俺の言葉を聞いた花音は、いよいよ我慢できなくなったのか涙を流し始めた。
「もう、ひどいよ……。三年間も好きでいてくれたのに、どうしてたった数か月で諦めちゃうの? 早いよ。早すぎるよ……。もう少し未練を持ってくれたっていいじゃん」
俺にできることは、ただ無言で花音の言葉を聞くことだけだった。しばらくして花音の涙が止まった。
「もうなんとなく気づいてると思うけどさ。私、偶然見ちゃったんだよね。颯太が他の人と楽しそうにしてるとこ」
「やっぱりそうだったんだ」
「颯太は私が近くを通ったことに気づきもしなかったけどね。たぶんあれでしょ? 目の前の美人さんに夢中になりすぎてまわりの状況とか少しも視界に入っていませんでしたってやつ」
「……」
はい、全くもってその通りです。
「少しは否定してよ、もう。ムカつくな。……とにかく! 私は颯太が他の人に夢中になってたのがすごいショックだったの。もうね、その場で発狂しそうになっちゃったくらい」
いや、発狂って……。君、そういうキャラじゃないでしょ。
「だからね? その瞬間に私は、本当は自分も颯太のことが好きだったんだって確信したの。いや『自分も』って言ってももう颯太は私のこと好きじゃないんだろうけどさ。とにかく、たぶんあれだよ、結果的に『押してダメなら引いてみろ』みたいな形になっちゃった感じ」
「そっか……」
「こんなことになるまで自分の本当の気持ちに気づかなかった私が悪いのは分かってる。ちゃんと分かってるし、ものすごく後悔もしてる。せめて颯太に好きな人ができる前に自分の気持ちに気づいていればよかったって。本当に私はバカだなって。でも……」
そこまで言ってから、花音は何かを決意したような表情でまっすぐ俺の目を見つめてきた。
「私、諦めないから」
うーん、そっか。そう来たか。でもなぁ……。
「別に今すぐもう一度私のこと好きになってとか言わないよ? そんなのは無理だってちゃんと分かってるから。でもね、それでも私、諦めないから。どんなに時間がかかるとしても絶対に颯太のこと振り向かせて、もう一度私のこと好きになってもらうから」
「……」
「そんなの困るって言わないでよ? 颯太も三年間、ずっと私のこと好きだった訳じゃん? だから私には少なくとも三年間、颯太に付きまとう権利がある」
確かにね。それは正論かもしれない。いや、言うほど正論か……?
というかこれ、どう反応したらいいんだ? そんなことしても俺の気持ちは変わらないよって言うべき?
でもそれを言ったところで「私も数年前に似たようなことをあなたに言ったはずだけど、あなたはどうしてたっけ?」と言われて終わりだよな。
「ということで、明日からよろしくね。言っとくけど私、しつこいから。『こいつウザいな』と思うこともこれからあると思うけど、我慢してね?」
花音は口には出さなかったけど、きっと今の言葉には「私は三年間我慢したんだぞ」という意味も込められているんだろうな。
まあ、仕方ないか。ある意味自業自得? 因果応報? かもしれないし。
「私、頑張るね? 早くもう一度颯太に好きになってもらえるように」
そう言って目を細める花音の顔は俺が彼女に一目惚れした時と変わらず、とても可愛かった。可愛かったけど……。
俺はたった数か月前まであれだけ好きだった笑顔を向けられても何とも思わなくなっている自分自身にただただ驚いていた。
「そっか、ダメ、なんだ……」
俺の言葉を聞いた花音は、いよいよ我慢できなくなったのか涙を流し始めた。
「もう、ひどいよ……。三年間も好きでいてくれたのに、どうしてたった数か月で諦めちゃうの? 早いよ。早すぎるよ……。もう少し未練を持ってくれたっていいじゃん」
俺にできることは、ただ無言で花音の言葉を聞くことだけだった。しばらくして花音の涙が止まった。
「もうなんとなく気づいてると思うけどさ。私、偶然見ちゃったんだよね。颯太が他の人と楽しそうにしてるとこ」
「やっぱりそうだったんだ」
「颯太は私が近くを通ったことに気づきもしなかったけどね。たぶんあれでしょ? 目の前の美人さんに夢中になりすぎてまわりの状況とか少しも視界に入っていませんでしたってやつ」
「……」
はい、全くもってその通りです。
「少しは否定してよ、もう。ムカつくな。……とにかく! 私は颯太が他の人に夢中になってたのがすごいショックだったの。もうね、その場で発狂しそうになっちゃったくらい」
いや、発狂って……。君、そういうキャラじゃないでしょ。
「だからね? その瞬間に私は、本当は自分も颯太のことが好きだったんだって確信したの。いや『自分も』って言ってももう颯太は私のこと好きじゃないんだろうけどさ。とにかく、たぶんあれだよ、結果的に『押してダメなら引いてみろ』みたいな形になっちゃった感じ」
「そっか……」
「こんなことになるまで自分の本当の気持ちに気づかなかった私が悪いのは分かってる。ちゃんと分かってるし、ものすごく後悔もしてる。せめて颯太に好きな人ができる前に自分の気持ちに気づいていればよかったって。本当に私はバカだなって。でも……」
そこまで言ってから、花音は何かを決意したような表情でまっすぐ俺の目を見つめてきた。
「私、諦めないから」
うーん、そっか。そう来たか。でもなぁ……。
「別に今すぐもう一度私のこと好きになってとか言わないよ? そんなのは無理だってちゃんと分かってるから。でもね、それでも私、諦めないから。どんなに時間がかかるとしても絶対に颯太のこと振り向かせて、もう一度私のこと好きになってもらうから」
「……」
「そんなの困るって言わないでよ? 颯太も三年間、ずっと私のこと好きだった訳じゃん? だから私には少なくとも三年間、颯太に付きまとう権利がある」
確かにね。それは正論かもしれない。いや、言うほど正論か……?
というかこれ、どう反応したらいいんだ? そんなことしても俺の気持ちは変わらないよって言うべき?
でもそれを言ったところで「私も数年前に似たようなことをあなたに言ったはずだけど、あなたはどうしてたっけ?」と言われて終わりだよな。
「ということで、明日からよろしくね。言っとくけど私、しつこいから。『こいつウザいな』と思うこともこれからあると思うけど、我慢してね?」
花音は口には出さなかったけど、きっと今の言葉には「私は三年間我慢したんだぞ」という意味も込められているんだろうな。
まあ、仕方ないか。ある意味自業自得? 因果応報? かもしれないし。
「私、頑張るね? 早くもう一度颯太に好きになってもらえるように」
そう言って目を細める花音の顔は俺が彼女に一目惚れした時と変わらず、とても可愛かった。可愛かったけど……。
俺はたった数か月前まであれだけ好きだった笑顔を向けられても何とも思わなくなっている自分自身にただただ驚いていた。
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