三年間片思いしていた同級生に振られたら、年上の綺麗なお姉さんにロックオンされた話

羽瀬川ルフレ

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21話 苦難

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「送ってくれてありがとう」
「ううん、こちらこそ今日もありがとうね」
「またLINEするから。気をつけて帰ってね」
「はーい、おやすみ」
「おやすみ」

 ――ちゅ

 いつもの自然な流れで、俺は彩華さんに軽く口づけをしてから車を降りた。彼女は嬉しそうな表情で手を振ってくれてから車を運転して走り去っていった。

 俺が彩華さんの部屋に遊びに行くのはバイトが入っている日がほとんどなので、俺の自宅から彩華さんの部屋への往復は通勤を兼ねて自転車を使うことが多かった。

 でも大学帰りに直接彩華さんの部屋に寄る日は自転車ではなく、駅から徒歩で彼女の部屋に向かうため、その場合、彼女はありがたいことに毎回車で俺を自宅まで送ってくれていた。

 ちなみにあの時盗まれた自転車が戻ってくることはなく、俺は新しい自転車を購入している。でも俺は自転車泥棒に対しては怒りの感情は全く抱いていなかった。あの時、自転車を盗まれてなければ俺と彩華さんは今の関係になれていないかもしれないから。

 というか俺も車欲しくなってきたな。せめて免許は取りたい。いつも彩華さんに運転してもらってばかりでは申し訳ないから。

 彩華さんは電車が好きではないみたいで、遠出をする時も飛行機が必要なレベルの距離でなければなるべく車を使いたい人らしい。

 近い将来、一緒に旅行にも行きたいねって話になっているから、それまでに免許をとって運転を分担できるようになっておきたい。

「おかえりなさい」

 運転免許のことを考えながらボーっと歩いていた俺は、マンションの共用玄関にある応接用のソファーで俺を待っていた人物の姿を確認して、思わずため息をついた。

「まーたそうやって人の顔を見てため息をつく……」

 花音は拗ねたような顔でそんなことを言ってきたけど、その声はなぜか震えていた。

「順調そうだね。今の車、例のお姉さん?」

 ……そういうことか。

「ああ。順調だよ」
「……そう。よかったね。それにしても健気だね。車が見えなくなるまでずっと見送っちゃって」
「だろう?」

 冗談っぽく皮肉を言ってきた花音だが、その目は少し赤くなっていた。いやいや待て。まさかここで泣いたりしないよな? ここうちの実家だぞ? 夜とは言ってもいつご近所さんが通るか分かんないんだぞ? 割とマジで勘弁して?

「……私じゃダメ?」
「えっ?」
「どうしてもあの人じゃなきゃ無理なの? 私じゃダメ? ずっと私のこと好きでいてくれたじゃん。どうしてたった数か月で気持ちを切り替えちゃうの?」
「ちょ、声が大きいって」

 花音はなんとか涙はこらえていたものの、やや感情的になって俺に詰め寄ってきた。いやもう本当に勘弁してくれ……。

「前話したときはまだ付き合ってないって言ってたよね? だったら私にもまだチャンスはあるよね? 私、何したら良い? どうしたらもう一度私のこと好きになってくれるの?」
「いや待ってちょっと落ち着いて? とりあえず場所変えよう? ここはガチでヤバいから」

 そう言いながら俺はとりあえずマンションのエントランスを出ることにした。俺が出ていったら花音もたぶんついてくるだろうから。

 これ以上マンションの共用玄関で花音とのやりとりを続けて誰かに見られたり、会話を聞かれたりしたらたまったもんじゃない。というか花音がこんなに非常識なやつだとは思わなかった。

 でもマンションのエントランスから出た瞬間、俺はさらなる苦難が訪れたことを思い知らされた。

 何らかの理由で彩華さんが戻ってきたようで、俺がエントランスから出たのとちょうど同じタイミングでマンションの車寄せに彼女の車が進入してきたのである。
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