26 / 45
共通ルート
25話 次のステップ
しおりを挟む
時が過ぎるのはあっという間だった。季節はもう冬になっていた。ちなみに彩華さんは四季の中で自分が生まれた季節でもある冬が一番好きらしい。
この数か月で俺と彩華さんが一緒に過ごす時間はさらに長くなり、もはや半同棲に近い状態になっていた。
そして俺に社会人の「彼女」がいることは大学の友人がみんな知っているだけではなく、バイト先の店長、そして俺の家族にまでしっかり認識されるようになった。
ちなみにその全員が俺たちの関係は恋人同士だと勘違いしている。そしてバイト先の店長に直接そうなのかと聞かれた時、彩華さんはそれを否定したり訂正したりしなかった。
でも残念ながら俺たちの関係は今も「期間限定のパートナー」のままだった。そして俺は、箱根旅行の時に振られてからは彩華さんに交際を迫ること自体をやめていた。
……若干心が折れてしまったというか、また告白しても断られるのが目に見えているから諦めちゃってるというか。
でもある日、家族全員で食事をしていて母から「彼女ができたのか」と質問された時は見栄を張ったのか、それとも自分の願望を言っただけなのか自分でも分からないけど「できた」と断言しちゃったんだよね。
そして彼女はどんな人かと聞かれて「バイト先の常連客だった年上の社会人」と具体的に答えただけじゃなく、「早く彼女に相応しい男になるために自立したい、就職活動が終わったら一人暮らしか、場合によっては彼女との同棲をはじめようと思っている」と聞かれてもいないことまでペラペラ喋ってしまった。
俺の言葉に両親だけじゃなく、普段は俺に毒舌な姉までしみじみと息子&弟の成長を喜んでくれた。そしてそこまで真剣に将来を考えている相手ならぜひ家族にも紹介してほしいと言われてしまった。
……で、できない。そもそも彩華さんは俺の「彼女」ではない訳なんだし。なんか家族に嘘をついているようで罪悪感が半端ない。いや「嘘をついているよう」ではなくて、普通に嘘ついてるか。
「あのさ、たぶん彩華さんが好きじゃない質問してもいい?」
「ええ……? 好きじゃないってことを知ってるんだったらしないでほしいんだけど……。でもどうしても聞きたいから今こうやって切り出したんだよね?」
「うん」
「わかった。いいよ」
ある日のピロートーク中。未だに「正式な交際」に進展できそうにないことにまたしてもしびれを切らした俺は、勇気を出して彩華さんにある質問をぶつけてみることにした。
「今、俺がまた『彼女になって』って言ってもたぶん断るんだよね?」
「……うん、ごめん」
「いいよいいよ。なんとなくそうだろうなとは思ってた。だから大丈夫。本題はここからだから」
「今のが『質問』じゃなかったんだ?」
「違うよ。まあ、結局『質問』も似たような内容にはなっちゃうけど」
「……?」
「えっとさ、彩華さんはさ」
「うん」
「俺が何をどうしたら俺の彼女になってくれるの? こうすれば彩華さんの気持ちが変わるかもしれないとか、こんな状況になったら考えられるかもしれないとか。なんでもいいからさ。なんか方法ない?」
「……」
次の瞬間、二人の間には気まずい沈黙が訪れた。その沈黙はしばらく続き……
「今の関係はそんなにいや?」
答えを探していたのか、それとも言葉を選んでいたのかしばらく黙り込んでいた彩華さんがやっと発してくれた言葉は、俺への逆質問だった。
「いやじゃないよ。いやではない。彩華さんと一緒にいられるだけで十分嬉しいし、幸せだから。でもやっぱり……」
「……やっぱり?」
「俺、彩華さんのことが好きだから。心から愛してるから。一生彩華さんと一緒にいたいって本気で思ってるから。だから今の関係をこのまま続けるんじゃなくて、ちゃんと次のステップに進みたい」
俺の口から出てきた言葉は、自分でも驚くほどストレートなものだった。きっと後から自分のセリフを思い出して恥ずかしさに悶絶しちゃうと思うけど、別にかまわない。ちゃんと言わなきゃ伝わらないこともあるし。
「そっかぁ……」
俺の言葉を聞いた彩華さんの表情は、嬉しさと恥ずかしさ、そして困惑と申し訳なさが入り交ざった複雑なものに変わっていた。
「……ありがとうね。私とのことをそこまで真剣に考えてくれて。本当にありがとう」
うーん、雰囲気からして次の言葉は「でも……」なのかもしれないな。
「でも……」
ほらやっぱり。
「ちょっと今はどう答えたら良いか分からない。どんな状況になったら自分が颯太くんの気持ちを受け入れられるようになるのかも正直よく分からない」
「……そっかぁ」
「でも……」
あれ? もう一回「でも」が入った?
「いろいろ考えてみるね。颯太くんのこととか自分自身のこと、そして今後のことも」
考えてくれるんだ!? やった!! うん、もちろんそれでいい。今はそれだけでもいい。ちゃんと考えてくれるだけありがたい。少し前までは「考えてみる」というステップもなく、一刀両断されていた訳だからね。
これで少しだけ前進できたはず。本当に小さい一歩かもしれないけど、それでもちゃんと前には進めたはず。
「ありがとう」
俺は心からの感謝と愛情をこめて、彩華さんをぎゅっと抱きしめた。
この数か月で俺と彩華さんが一緒に過ごす時間はさらに長くなり、もはや半同棲に近い状態になっていた。
そして俺に社会人の「彼女」がいることは大学の友人がみんな知っているだけではなく、バイト先の店長、そして俺の家族にまでしっかり認識されるようになった。
ちなみにその全員が俺たちの関係は恋人同士だと勘違いしている。そしてバイト先の店長に直接そうなのかと聞かれた時、彩華さんはそれを否定したり訂正したりしなかった。
でも残念ながら俺たちの関係は今も「期間限定のパートナー」のままだった。そして俺は、箱根旅行の時に振られてからは彩華さんに交際を迫ること自体をやめていた。
……若干心が折れてしまったというか、また告白しても断られるのが目に見えているから諦めちゃってるというか。
でもある日、家族全員で食事をしていて母から「彼女ができたのか」と質問された時は見栄を張ったのか、それとも自分の願望を言っただけなのか自分でも分からないけど「できた」と断言しちゃったんだよね。
そして彼女はどんな人かと聞かれて「バイト先の常連客だった年上の社会人」と具体的に答えただけじゃなく、「早く彼女に相応しい男になるために自立したい、就職活動が終わったら一人暮らしか、場合によっては彼女との同棲をはじめようと思っている」と聞かれてもいないことまでペラペラ喋ってしまった。
俺の言葉に両親だけじゃなく、普段は俺に毒舌な姉までしみじみと息子&弟の成長を喜んでくれた。そしてそこまで真剣に将来を考えている相手ならぜひ家族にも紹介してほしいと言われてしまった。
……で、できない。そもそも彩華さんは俺の「彼女」ではない訳なんだし。なんか家族に嘘をついているようで罪悪感が半端ない。いや「嘘をついているよう」ではなくて、普通に嘘ついてるか。
「あのさ、たぶん彩華さんが好きじゃない質問してもいい?」
「ええ……? 好きじゃないってことを知ってるんだったらしないでほしいんだけど……。でもどうしても聞きたいから今こうやって切り出したんだよね?」
「うん」
「わかった。いいよ」
ある日のピロートーク中。未だに「正式な交際」に進展できそうにないことにまたしてもしびれを切らした俺は、勇気を出して彩華さんにある質問をぶつけてみることにした。
「今、俺がまた『彼女になって』って言ってもたぶん断るんだよね?」
「……うん、ごめん」
「いいよいいよ。なんとなくそうだろうなとは思ってた。だから大丈夫。本題はここからだから」
「今のが『質問』じゃなかったんだ?」
「違うよ。まあ、結局『質問』も似たような内容にはなっちゃうけど」
「……?」
「えっとさ、彩華さんはさ」
「うん」
「俺が何をどうしたら俺の彼女になってくれるの? こうすれば彩華さんの気持ちが変わるかもしれないとか、こんな状況になったら考えられるかもしれないとか。なんでもいいからさ。なんか方法ない?」
「……」
次の瞬間、二人の間には気まずい沈黙が訪れた。その沈黙はしばらく続き……
「今の関係はそんなにいや?」
答えを探していたのか、それとも言葉を選んでいたのかしばらく黙り込んでいた彩華さんがやっと発してくれた言葉は、俺への逆質問だった。
「いやじゃないよ。いやではない。彩華さんと一緒にいられるだけで十分嬉しいし、幸せだから。でもやっぱり……」
「……やっぱり?」
「俺、彩華さんのことが好きだから。心から愛してるから。一生彩華さんと一緒にいたいって本気で思ってるから。だから今の関係をこのまま続けるんじゃなくて、ちゃんと次のステップに進みたい」
俺の口から出てきた言葉は、自分でも驚くほどストレートなものだった。きっと後から自分のセリフを思い出して恥ずかしさに悶絶しちゃうと思うけど、別にかまわない。ちゃんと言わなきゃ伝わらないこともあるし。
「そっかぁ……」
俺の言葉を聞いた彩華さんの表情は、嬉しさと恥ずかしさ、そして困惑と申し訳なさが入り交ざった複雑なものに変わっていた。
「……ありがとうね。私とのことをそこまで真剣に考えてくれて。本当にありがとう」
うーん、雰囲気からして次の言葉は「でも……」なのかもしれないな。
「でも……」
ほらやっぱり。
「ちょっと今はどう答えたら良いか分からない。どんな状況になったら自分が颯太くんの気持ちを受け入れられるようになるのかも正直よく分からない」
「……そっかぁ」
「でも……」
あれ? もう一回「でも」が入った?
「いろいろ考えてみるね。颯太くんのこととか自分自身のこと、そして今後のことも」
考えてくれるんだ!? やった!! うん、もちろんそれでいい。今はそれだけでもいい。ちゃんと考えてくれるだけありがたい。少し前までは「考えてみる」というステップもなく、一刀両断されていた訳だからね。
これで少しだけ前進できたはず。本当に小さい一歩かもしれないけど、それでもちゃんと前には進めたはず。
「ありがとう」
俺は心からの感謝と愛情をこめて、彩華さんをぎゅっと抱きしめた。
10
あなたにおすすめの小説
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編7が完結しました!(2026.1.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
彼氏がヤンデレてることに気付いたのでデッドエンド回避します
八
恋愛
ヤンデレ乙女ゲー主人公に転生した女の子が好かれたいやら殺されたくないやらでわたわたする話。基本ほのぼのしてます。食べてばっかり。
なろうに別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたものなので今と芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
一部加筆修正しています。
2025/9/9完結しました。ありがとうございました。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる