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彩華ルート
34話 覚悟
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「…ん? 何? その紙」
彩華さんは俺が無言で差し出した紙を手に取ってその内容を確認した。そして大きく目を見開いた。
「……は!?」
俺はあえて余計なことは何も言わず、彩華さんが目の前の紙から読み取った情報を消化するための時間を設けることにした。
数秒後、やっと自分が目にした情報を受け入れることができたのか、彩華さんが引きつった顔で俺を問い詰めてきた。
「いや、えっと…どういうことなのかな? これ、婚姻届だよね? しかもなんか私と颯太くんの名前が書いてあるんだけど」
「彩華さん、言ってたじゃん。どうしても俺の彼女にはなれないって」
「うん、言ったよ。言ったけど……」
「だったらステップを一つ飛ばして妻になってもらうしかないかなって。だから俺、頑張って就職活動したんだよ。やっぱり結婚するとなったら安定した収入が必要じゃん?」
「そ、そう。だから頑張ってたんだ……。うん、確かにね。私、彼女になれないとは言ったけど、妻にもなれないとは言ってないもんね」
おお? 予想外の反応だな……!?
「って、なる訳ないよね?」
彩華さんは呆れたような、疲れたような表情になった。……やっぱり予想通りの反応だったか。
「結婚ってね、そう簡単にできるものじゃないの。……簡単に結婚してすぐに離婚した私が言うのも変な話だけど、でもそうなの。あとさ、どう考えても彼女になるより妻になる方がハードル高いに決まってるよね? どうして彼女にもなれないのに結婚ができると思うの?」
「そう言われると思ったよ。思ったけど……。でももう、俺にできることはこれしかなかったんだよ。俺がどれだけ本気で、どれだけ彩華さんのことを愛してるかはもう何度も伝えてきたじゃん? だから後はもう、背水の陣で何があっても退かないという覚悟を見せるしかないなと思って」
彩華さんは一つため息をついてから言葉を続けた。
「あのね、冷静になって。そしてよく考えて。私、颯太くんと十歳近く年が離れてるんだよ? しかもバツイチで、離婚の原因は自分の不倫なんだよ? どこをどう見ても、颯太くんの妻に相応しい女じゃないよね?」
「十分冷静だし、何度もよく考えたよ。でも相応しいか相応しくないかは彩華さんが一方的に決めることじゃなくない?」
「ええそうね。確かにそうかもしれない。でも颯太くんが一方的に決めることでもないよね? だったら颯太くんのご両親に私がどういう人間かをちゃんと説明したうえで判断してもらったら? 客観的に見て私が颯太くんに相応しいかどうかはそれで分かるはずだから」
「なるほど。うちの親が良いと言ったらこの話を受けてくれると?」
「いいよ…とまでは言わないけど、前向きに検討しましょう? まあ、そもそもこんな事故物件を嫁として認めてくださるご両親なんかいないと思うけどね」
残念。いいよって言い切ってはもらえなかったか。惜しいな。今のは誘導尋問だったのに。
「それはよかった。じゃあ、証人欄を見てみなよ」
「ん? 証人欄? ……えっ」
まだ細かいところまで婚姻届を読んでいなかった彩華さんは、少し眉間にしわを寄せながらも俺の指定する項目を確認した。そして驚いた表情になって、恐る恐る俺に質問をしてきた。
「ねぇ、颯太くん。えっと……、これってまさか、颯太くんのご両親のお名前だったり……する?」
「うん、彩華さんに会えるのを楽しみにしてるってさ」
俺は満面の笑みとともに、自らの素晴らしい根回しによって手に入れた結果を彩華さんに突き付けた。
実は彩華さんと年齢と、彼女がバツイチであることは親に言っているけど、彼女の離婚の理由については伝えていない。
うちの両親が彩華さんの離婚の理由まで聞いてくるとは思えないし、彩華さんも「ちゃんと離婚の原因までご両親に説明したのか」とは追及してこないだろう。
我ながら何をどこまで言うかの線引きが非常にうまくできたと思っている。
「…そっか。私と会うのを楽しみにしてくださってるんだ。そう。はは…あはは……」
すでに両親にまで根回しをしているとは思わなかったのか、明らかに動揺した様子で苦笑いを浮かべる彩華さん。
これはチャンスだ。たぶん今が難攻不落だったラスボスのコアがむき出しになった瞬間! 畳み掛けるぞ!
「大鳥居彩華さん」
「……はい」
「僕と結婚してください」
彩華さんは俺が無言で差し出した紙を手に取ってその内容を確認した。そして大きく目を見開いた。
「……は!?」
俺はあえて余計なことは何も言わず、彩華さんが目の前の紙から読み取った情報を消化するための時間を設けることにした。
数秒後、やっと自分が目にした情報を受け入れることができたのか、彩華さんが引きつった顔で俺を問い詰めてきた。
「いや、えっと…どういうことなのかな? これ、婚姻届だよね? しかもなんか私と颯太くんの名前が書いてあるんだけど」
「彩華さん、言ってたじゃん。どうしても俺の彼女にはなれないって」
「うん、言ったよ。言ったけど……」
「だったらステップを一つ飛ばして妻になってもらうしかないかなって。だから俺、頑張って就職活動したんだよ。やっぱり結婚するとなったら安定した収入が必要じゃん?」
「そ、そう。だから頑張ってたんだ……。うん、確かにね。私、彼女になれないとは言ったけど、妻にもなれないとは言ってないもんね」
おお? 予想外の反応だな……!?
「って、なる訳ないよね?」
彩華さんは呆れたような、疲れたような表情になった。……やっぱり予想通りの反応だったか。
「結婚ってね、そう簡単にできるものじゃないの。……簡単に結婚してすぐに離婚した私が言うのも変な話だけど、でもそうなの。あとさ、どう考えても彼女になるより妻になる方がハードル高いに決まってるよね? どうして彼女にもなれないのに結婚ができると思うの?」
「そう言われると思ったよ。思ったけど……。でももう、俺にできることはこれしかなかったんだよ。俺がどれだけ本気で、どれだけ彩華さんのことを愛してるかはもう何度も伝えてきたじゃん? だから後はもう、背水の陣で何があっても退かないという覚悟を見せるしかないなと思って」
彩華さんは一つため息をついてから言葉を続けた。
「あのね、冷静になって。そしてよく考えて。私、颯太くんと十歳近く年が離れてるんだよ? しかもバツイチで、離婚の原因は自分の不倫なんだよ? どこをどう見ても、颯太くんの妻に相応しい女じゃないよね?」
「十分冷静だし、何度もよく考えたよ。でも相応しいか相応しくないかは彩華さんが一方的に決めることじゃなくない?」
「ええそうね。確かにそうかもしれない。でも颯太くんが一方的に決めることでもないよね? だったら颯太くんのご両親に私がどういう人間かをちゃんと説明したうえで判断してもらったら? 客観的に見て私が颯太くんに相応しいかどうかはそれで分かるはずだから」
「なるほど。うちの親が良いと言ったらこの話を受けてくれると?」
「いいよ…とまでは言わないけど、前向きに検討しましょう? まあ、そもそもこんな事故物件を嫁として認めてくださるご両親なんかいないと思うけどね」
残念。いいよって言い切ってはもらえなかったか。惜しいな。今のは誘導尋問だったのに。
「それはよかった。じゃあ、証人欄を見てみなよ」
「ん? 証人欄? ……えっ」
まだ細かいところまで婚姻届を読んでいなかった彩華さんは、少し眉間にしわを寄せながらも俺の指定する項目を確認した。そして驚いた表情になって、恐る恐る俺に質問をしてきた。
「ねぇ、颯太くん。えっと……、これってまさか、颯太くんのご両親のお名前だったり……する?」
「うん、彩華さんに会えるのを楽しみにしてるってさ」
俺は満面の笑みとともに、自らの素晴らしい根回しによって手に入れた結果を彩華さんに突き付けた。
実は彩華さんと年齢と、彼女がバツイチであることは親に言っているけど、彼女の離婚の理由については伝えていない。
うちの両親が彩華さんの離婚の理由まで聞いてくるとは思えないし、彩華さんも「ちゃんと離婚の原因までご両親に説明したのか」とは追及してこないだろう。
我ながら何をどこまで言うかの線引きが非常にうまくできたと思っている。
「…そっか。私と会うのを楽しみにしてくださってるんだ。そう。はは…あはは……」
すでに両親にまで根回しをしているとは思わなかったのか、明らかに動揺した様子で苦笑いを浮かべる彩華さん。
これはチャンスだ。たぶん今が難攻不落だったラスボスのコアがむき出しになった瞬間! 畳み掛けるぞ!
「大鳥居彩華さん」
「……はい」
「僕と結婚してください」
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