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第2章 王女兼冒険者の世界を巡る旅
7 森での戦い、全てをかけた一撃
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馬車で移動中、私たちは4人で話していた。
「ティアちゃんは短剣使いなのよね?」
「今まではそうでした。依頼していた刀が完成してので今回は状況次第です。3人は武器は使わないんですか?」
「アリアは使わないな、俺はナックル、ドムは短剣を持ってる。普段は遠距離で戦うことが多いが今回は長期戦になるから俺とドムも前に出るさ。」
「そうだね。僕とノアくんでアリアさんを守らないとね。いざというときに、回復魔術使ってほしいし」
「私も簡単な魔術なら使えます。ただ...魔力量の関係で連発できないので近接主体で行きますね。」
こうして話していくとお互いのことがわかっていく。
アリアは15歳で孤児院を纏めていて黒髪を伸ばした優しいお姉さん、ノアは12歳でヤンチャな雰囲気を持つお兄さん、ドムは11歳で大人しい感じのお兄さんだ。
最近、教会からの支援も少なくなっていて、食費を稼ぐために頑張っているらしい。
教会にある孤児院は、基本的に教会の収入や募金から成り立っている。教会の収入も怪我人の治療が主となっているため、安定しないかもしれない。
目的地に着いたので、私たちの担当区域に移動する。森の中のある程度の範囲に各パーティーが展開していて、近づいてくる魔物を討伐する。通過した魔物は後続のパーティーや軍に任せるため深追いはしない。
しばらく待っていると魔物の群れが見えてくる。
アリアを中心に前にノア、左前に私、右前にドムという布陣で戦う。アリアが全体を見て指示をだし、ノアは雷を纏わせてナックルで殴る。私は刀で切り捨て、ドムが近づいた魔物を短剣で切りつつ魔弾で牽制する。
(新しい刀はいいわね...それにしてもアリアさんの支援も流石だし、あとの2人も魔術主体って聞いてたけどきちんと戦えるじゃない。)
ノアとドムも危なげなく魔物を倒していく。怪我を負うことなく4人は戦い続け、しばらく経った頃、戦闘に参加するパーティを総入れ替え、私たちは安全な場所まで下がる。退避が完了すると4人は一息つく。
「流石に数が多いわね。私たちのところはゴブリンが多かったけどアークやオーガの群れだと厳しいかもね。」
アリアの言葉にノアとドムも同意していた。
「想定通りなら次の私たちの番で終わりよね?ただ...なんとなくだけど...嫌な感じね...」
私の言葉になんともいえない表情をする3人。
休憩が終わり、前衛と待機するパーティーを入れ替える。
再び魔物の相手をしていると突如前の方から悲鳴が上がった。
前を見るとオーガの群れが迫っていて、その後ろに地竜がいる。けれど、地竜の様子がおかしかった。
話では岩と同じ色をしていて、硬い分動きが遅くて3メートルくらいの大きさのはずたけど...そこにいたのは真っ黒で10メートルくらいの竜だった。
「「「つっ!?」」」
過去に討伐経験のあるアリア、ノア、ドムの3人が驚きのあまり絶句している。
オーガの群れは私たちの隣にいたパーティーを襲い始める。両パーティとも驚いているものの辛うじて反応し、大怪我を負うのは避けていた。そして地竜は口を開け...私たちの視界は黒で染まる。
ぎりぎりのところでノアがアリアを、私がドムを抱えて回避する。さっきまでいたところを見ると一面が更地になっていた。
「ブレスか!?あれはなんだ!あんな地竜なんて見たことがねぇぞ!?」
ノアが目を見開いて絶叫する。アリアとドムは放心している。
恐らくあの竜が今回の原因だろう。ただ、感じる圧が今まで見た魔物とは比較にならない。
そして地竜とまた目が合う...
(このままじゃ...固まっているところを狙われる!まずは一旦冷静になるための隙を作らなきゃ!)
私は魔力を身体強化に充てる。今までの倍近く流したことで成人済みの男性騎士よりも早い速度で地竜に近付く。振り下ろられる手をすれ違うように回避して、私は刀を振り抜く。
爆発したような音がして、私の体に衝撃が走った。
(移動速度と全体重乗せてっ!?振り抜く直前に刀に魔力を纏わせてるのに全く通らないなんて!?)
すると地竜が回転し尻尾を叩きつけてくるので、痺れた体に鞭を打って大きく後ろに跳躍した。
アリアたちの近くに戻ると呆然と呟いた言葉が聞こえる。
「うそ...あれは邪気?でも...ありえない、こんなことって...」
「アリアっ!?あれが何か知ってるの!?」
私の言葉に正気を取り戻したらしいアリアは答えてくれた。
「前に一度だけ見たことがあるの!その時は魔力が変質しただけで姿形は変わらなかったけど...あの地竜が纏ってるのは恐らく邪気!魔力が強い怒りや憎しみで変質したものなの...闇属性に近いけど...」
「対処法は!?」
「闇と同じで聖属性は効くらしいけど...竜の防御を突破しないと意味ないわ!?」
(魔力は残り約半分...このまま時間稼ぎをして、高ランクパーティーが助けにくるのを待つ選択肢もあるけど...間に合わなかったら手がなくなる。だったらっ!)
「ねぇ3人とも...一瞬でいいから隙を作ることできるっ?」
「俺たち3人が全魔力を込めればできるだろうけど...その後戦えなくなるぞ!?」
「大丈夫!隙さえ作ってくれれば...地竜は私が倒すっ!」
私の言葉に3人は顔を見合わせ...うなずいた。
3人はそれぞれ魔術を発動させる。
アリアは聖属性の巨大な柱を、ノアは巨大な雷を、ドムは魔力でできた巨大な弾丸をそれぞれ突進してきた地竜にぶつけた。
3人の全力は流石に堪えるようで...地竜は後ろに吹き飛ばされる。けれど外殻が傷ついた程度で大きなダメージにはならない。
(3人が信じてくれたんだから私も応えなきゃね...
収束魔術展開...身体強化全開、跳躍、魔装っ!)
私がやることは、無謀だけど単純なこと。空気中の魔力を魔術でなく、身体に取り込む。取り込んだ魔力ごと魔力を循環させて身体強化を最大で行使する。踏み込む瞬間、足の裏に加速系の魔術を行使して...その勢いのまま抜刀し魔装を行使する。刀に纏わせる魔力は、聖属性に変換するおまけ付きだ。
私の全てをかけた一閃は、地竜を上下に両断した。
長かった戦いに終止符が打たれたのだ...
「ティアちゃんは短剣使いなのよね?」
「今まではそうでした。依頼していた刀が完成してので今回は状況次第です。3人は武器は使わないんですか?」
「アリアは使わないな、俺はナックル、ドムは短剣を持ってる。普段は遠距離で戦うことが多いが今回は長期戦になるから俺とドムも前に出るさ。」
「そうだね。僕とノアくんでアリアさんを守らないとね。いざというときに、回復魔術使ってほしいし」
「私も簡単な魔術なら使えます。ただ...魔力量の関係で連発できないので近接主体で行きますね。」
こうして話していくとお互いのことがわかっていく。
アリアは15歳で孤児院を纏めていて黒髪を伸ばした優しいお姉さん、ノアは12歳でヤンチャな雰囲気を持つお兄さん、ドムは11歳で大人しい感じのお兄さんだ。
最近、教会からの支援も少なくなっていて、食費を稼ぐために頑張っているらしい。
教会にある孤児院は、基本的に教会の収入や募金から成り立っている。教会の収入も怪我人の治療が主となっているため、安定しないかもしれない。
目的地に着いたので、私たちの担当区域に移動する。森の中のある程度の範囲に各パーティーが展開していて、近づいてくる魔物を討伐する。通過した魔物は後続のパーティーや軍に任せるため深追いはしない。
しばらく待っていると魔物の群れが見えてくる。
アリアを中心に前にノア、左前に私、右前にドムという布陣で戦う。アリアが全体を見て指示をだし、ノアは雷を纏わせてナックルで殴る。私は刀で切り捨て、ドムが近づいた魔物を短剣で切りつつ魔弾で牽制する。
(新しい刀はいいわね...それにしてもアリアさんの支援も流石だし、あとの2人も魔術主体って聞いてたけどきちんと戦えるじゃない。)
ノアとドムも危なげなく魔物を倒していく。怪我を負うことなく4人は戦い続け、しばらく経った頃、戦闘に参加するパーティを総入れ替え、私たちは安全な場所まで下がる。退避が完了すると4人は一息つく。
「流石に数が多いわね。私たちのところはゴブリンが多かったけどアークやオーガの群れだと厳しいかもね。」
アリアの言葉にノアとドムも同意していた。
「想定通りなら次の私たちの番で終わりよね?ただ...なんとなくだけど...嫌な感じね...」
私の言葉になんともいえない表情をする3人。
休憩が終わり、前衛と待機するパーティーを入れ替える。
再び魔物の相手をしていると突如前の方から悲鳴が上がった。
前を見るとオーガの群れが迫っていて、その後ろに地竜がいる。けれど、地竜の様子がおかしかった。
話では岩と同じ色をしていて、硬い分動きが遅くて3メートルくらいの大きさのはずたけど...そこにいたのは真っ黒で10メートルくらいの竜だった。
「「「つっ!?」」」
過去に討伐経験のあるアリア、ノア、ドムの3人が驚きのあまり絶句している。
オーガの群れは私たちの隣にいたパーティーを襲い始める。両パーティとも驚いているものの辛うじて反応し、大怪我を負うのは避けていた。そして地竜は口を開け...私たちの視界は黒で染まる。
ぎりぎりのところでノアがアリアを、私がドムを抱えて回避する。さっきまでいたところを見ると一面が更地になっていた。
「ブレスか!?あれはなんだ!あんな地竜なんて見たことがねぇぞ!?」
ノアが目を見開いて絶叫する。アリアとドムは放心している。
恐らくあの竜が今回の原因だろう。ただ、感じる圧が今まで見た魔物とは比較にならない。
そして地竜とまた目が合う...
(このままじゃ...固まっているところを狙われる!まずは一旦冷静になるための隙を作らなきゃ!)
私は魔力を身体強化に充てる。今までの倍近く流したことで成人済みの男性騎士よりも早い速度で地竜に近付く。振り下ろられる手をすれ違うように回避して、私は刀を振り抜く。
爆発したような音がして、私の体に衝撃が走った。
(移動速度と全体重乗せてっ!?振り抜く直前に刀に魔力を纏わせてるのに全く通らないなんて!?)
すると地竜が回転し尻尾を叩きつけてくるので、痺れた体に鞭を打って大きく後ろに跳躍した。
アリアたちの近くに戻ると呆然と呟いた言葉が聞こえる。
「うそ...あれは邪気?でも...ありえない、こんなことって...」
「アリアっ!?あれが何か知ってるの!?」
私の言葉に正気を取り戻したらしいアリアは答えてくれた。
「前に一度だけ見たことがあるの!その時は魔力が変質しただけで姿形は変わらなかったけど...あの地竜が纏ってるのは恐らく邪気!魔力が強い怒りや憎しみで変質したものなの...闇属性に近いけど...」
「対処法は!?」
「闇と同じで聖属性は効くらしいけど...竜の防御を突破しないと意味ないわ!?」
(魔力は残り約半分...このまま時間稼ぎをして、高ランクパーティーが助けにくるのを待つ選択肢もあるけど...間に合わなかったら手がなくなる。だったらっ!)
「ねぇ3人とも...一瞬でいいから隙を作ることできるっ?」
「俺たち3人が全魔力を込めればできるだろうけど...その後戦えなくなるぞ!?」
「大丈夫!隙さえ作ってくれれば...地竜は私が倒すっ!」
私の言葉に3人は顔を見合わせ...うなずいた。
3人はそれぞれ魔術を発動させる。
アリアは聖属性の巨大な柱を、ノアは巨大な雷を、ドムは魔力でできた巨大な弾丸をそれぞれ突進してきた地竜にぶつけた。
3人の全力は流石に堪えるようで...地竜は後ろに吹き飛ばされる。けれど外殻が傷ついた程度で大きなダメージにはならない。
(3人が信じてくれたんだから私も応えなきゃね...
収束魔術展開...身体強化全開、跳躍、魔装っ!)
私がやることは、無謀だけど単純なこと。空気中の魔力を魔術でなく、身体に取り込む。取り込んだ魔力ごと魔力を循環させて身体強化を最大で行使する。踏み込む瞬間、足の裏に加速系の魔術を行使して...その勢いのまま抜刀し魔装を行使する。刀に纏わせる魔力は、聖属性に変換するおまけ付きだ。
私の全てをかけた一閃は、地竜を上下に両断した。
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