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第5章 王女の学園生活
2 学園都市へ
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王立学園は王都の隣にある学園都市に存在する。この街は、王立学園を中心としてその周りに、商店などの繁華街、さらに外周に街に住む人向けの住居などがある。
また平民向けの試験合否は、試験の翌日に発表されるが、辺境から学園都市までどんなに急いでも5日はかかるためだ。
入寮が可能になるのも、このときからになる。
そんな中で私も馬車に乗って、王立学園の寮に向かっていた。護衛にはシリウスとアルキオネの2人をつけている。
最近、街を歩いていると暗殺者ではないものの、ゴロツキに襲われることが多かった。馬車での移動となると、御者と馬を護る必要があるため護衛を2人にしたわけだ。
「それにしても、最近のことを考えると学園にいる間、心配ですね…」
アルキオネが心配そうに私を見ていた。
「そうね…せめてわたくしが1人のときを狙ってくれると助かるけど。」
私はため息をつきながら呟く。
「学園にはいくつもの防御結界があるので、普段は大丈夫だと思いますが…実戦で外に出ている場合が危なそうですね。」
私の言葉にシリウスが返した。そうしているうちに寮に到着する。
「ではここで…わたくしが離れている間、離宮のことお願いね。」
「「はい。」」
馬車が帰っていくのを見送って、私も寮の中に入る。
(これが寮…綺麗なところね。)
学園には2年通うことになる。寮の部分はいくつかの建物に分かれていて、食堂など共通の建物を中心に、6棟に分かれていた。
6棟の内訳は、侯爵家以上と男爵以上、平民用の3つが男女で分かれている形だ。
部屋に荷物を置くと、帽子をかぶって外に出る。ここでは街を歩くときに、帽子程度の変装にとどめるつもりだった。学園の生徒や教員と会う可能性が高いため、変装用の魔術具でもあまり意味がないからだ。むしろ、普段の変装の方が知られたくない。
街を見て歩くと、王都に負けないくらい活気に溢れている。露店などを回っていると、見知った顔を見つけた。
「あら、イリーナじゃない。お披露目以来ね。」
私が声をかけるとイリーナが気づいた。一緒にいるもう1人の男の子が、私とイリーナの顔を交互に見比べていた。
「ラティアーナももう来ていたのね。」
「ええ。今日入寮したわ。そちらの方は?」
私が男の子の方を見ると、イリーナが紹介してくれる。
「この子はカイ。マギルス公爵家に仕えている侍女の子で、将来の騎士志望よ。一応わたくしの護衛でもあるわね。」
「は、はじめまして。カイと申します。」
イリーナの紹介に合わせて、カイがたどたどしく自己紹介した。
「はじめまして。わたくしはラティアーナです。イリーナとは、いとこにあたるわ。…それにしても、イリーナが護衛を付けるって珍しい気がする。」
王族であれば、学年の貴族が護衛役になることが多いが、他にはあまり聞かない。
「今回はお互いに利があったのよ。情勢が不安定になりつつあるから、念のために護りを固めたい公爵家の考えと、騎士を目指したいカイ。カイをわたくしの護衛とする代わりに、学園生活にかかる費用は全て公爵家が負担するわけね。」
学園にかかる費用はそれなりにある。授業料こそないものの、寮生活や実技等で必要な物資などが必要だからだ。
公爵家の侍女であれば、費用を工面できるだろうが厳しいことに変わりないだろう。
それから、少しだけ雑談をしてこの日は別れた。
一方で学園では、クラス分けと順位付けの作業に追われていた。
クラスはAからの順番で1クラス10人ずつとなり、基本的には成績順に割り振られる。
「学園長、クラス分けは決まりましたが、主席が決まりません。」
「誰が候補に上がっているんだ?」
学園長の質問に教員が答えた。
「5人です。…王女殿下も他の公爵子息も全員が満点ですよ。どうしましょう?」
教員が悩んでいると学園長が呟く。
「筆記で差をつけることは無理だから、実技の結果で決めるしかないな。実技担当の試験官を呼んでくれ。会議を開く。」
各実技の試験官とクラス分け担当の教員、学園長で話し合いが行われる。
「さて、成績の順位を決める上で上位5名が決まっていないわけだが…意見があるものはいるか?」
学園長が周りに問うと、武術担当が手を上げた。
「武術だけで見れば、ラティアーナさんとアドリアスさんが、群を抜いてますね。」
「魔術だとイリーナさんとラティアーナさんですね。どちらも違う形で優れているので、順位付けは難しいところです。」
魔術担当も実技試験の結果を言うと、感嘆の声が上がる。
「ラティアーナさんも、魔術が得意なのは驚きですね。」
「イリーナさんの場合は、発動速度、魔力制御、威力すべてが一流です。対してラティアーナさんは、発動速度で劣るものの魔力制御が凄いですね。最小の魔力で最大の結果をもたらす形です。」
最後に総合戦闘担当が意見を話す。
「総合戦闘では、ラティアーナさん、アドリアスさん、イリーナさんが優れていますが、戦闘方法が違うので優劣はつけることができません。」
アドリアスとイリーナが戦闘面で優れているのには理由があった。それは4大公爵家において、役割を違うためだ。
武術を誇り王国の剣と呼ばれるグラディウス家。
魔術を誇り王国の盾と呼ばれるマギルス家。
叡智を誇り王国の頭脳と呼ばれるスエンティア家。
情報を誇り王国の眼と呼ばれるノーティア家。
どの家でも全体的には優れているものの、各家が誇るものには一日の長がある。そのため戦闘に関しては、武術と魔術を誇る二家が抜きん出ていた。
「全体的に見て順位を決めましょうか。」
学園長の言葉に、再び話し合いをするのだった。
また平民向けの試験合否は、試験の翌日に発表されるが、辺境から学園都市までどんなに急いでも5日はかかるためだ。
入寮が可能になるのも、このときからになる。
そんな中で私も馬車に乗って、王立学園の寮に向かっていた。護衛にはシリウスとアルキオネの2人をつけている。
最近、街を歩いていると暗殺者ではないものの、ゴロツキに襲われることが多かった。馬車での移動となると、御者と馬を護る必要があるため護衛を2人にしたわけだ。
「それにしても、最近のことを考えると学園にいる間、心配ですね…」
アルキオネが心配そうに私を見ていた。
「そうね…せめてわたくしが1人のときを狙ってくれると助かるけど。」
私はため息をつきながら呟く。
「学園にはいくつもの防御結界があるので、普段は大丈夫だと思いますが…実戦で外に出ている場合が危なそうですね。」
私の言葉にシリウスが返した。そうしているうちに寮に到着する。
「ではここで…わたくしが離れている間、離宮のことお願いね。」
「「はい。」」
馬車が帰っていくのを見送って、私も寮の中に入る。
(これが寮…綺麗なところね。)
学園には2年通うことになる。寮の部分はいくつかの建物に分かれていて、食堂など共通の建物を中心に、6棟に分かれていた。
6棟の内訳は、侯爵家以上と男爵以上、平民用の3つが男女で分かれている形だ。
部屋に荷物を置くと、帽子をかぶって外に出る。ここでは街を歩くときに、帽子程度の変装にとどめるつもりだった。学園の生徒や教員と会う可能性が高いため、変装用の魔術具でもあまり意味がないからだ。むしろ、普段の変装の方が知られたくない。
街を見て歩くと、王都に負けないくらい活気に溢れている。露店などを回っていると、見知った顔を見つけた。
「あら、イリーナじゃない。お披露目以来ね。」
私が声をかけるとイリーナが気づいた。一緒にいるもう1人の男の子が、私とイリーナの顔を交互に見比べていた。
「ラティアーナももう来ていたのね。」
「ええ。今日入寮したわ。そちらの方は?」
私が男の子の方を見ると、イリーナが紹介してくれる。
「この子はカイ。マギルス公爵家に仕えている侍女の子で、将来の騎士志望よ。一応わたくしの護衛でもあるわね。」
「は、はじめまして。カイと申します。」
イリーナの紹介に合わせて、カイがたどたどしく自己紹介した。
「はじめまして。わたくしはラティアーナです。イリーナとは、いとこにあたるわ。…それにしても、イリーナが護衛を付けるって珍しい気がする。」
王族であれば、学年の貴族が護衛役になることが多いが、他にはあまり聞かない。
「今回はお互いに利があったのよ。情勢が不安定になりつつあるから、念のために護りを固めたい公爵家の考えと、騎士を目指したいカイ。カイをわたくしの護衛とする代わりに、学園生活にかかる費用は全て公爵家が負担するわけね。」
学園にかかる費用はそれなりにある。授業料こそないものの、寮生活や実技等で必要な物資などが必要だからだ。
公爵家の侍女であれば、費用を工面できるだろうが厳しいことに変わりないだろう。
それから、少しだけ雑談をしてこの日は別れた。
一方で学園では、クラス分けと順位付けの作業に追われていた。
クラスはAからの順番で1クラス10人ずつとなり、基本的には成績順に割り振られる。
「学園長、クラス分けは決まりましたが、主席が決まりません。」
「誰が候補に上がっているんだ?」
学園長の質問に教員が答えた。
「5人です。…王女殿下も他の公爵子息も全員が満点ですよ。どうしましょう?」
教員が悩んでいると学園長が呟く。
「筆記で差をつけることは無理だから、実技の結果で決めるしかないな。実技担当の試験官を呼んでくれ。会議を開く。」
各実技の試験官とクラス分け担当の教員、学園長で話し合いが行われる。
「さて、成績の順位を決める上で上位5名が決まっていないわけだが…意見があるものはいるか?」
学園長が周りに問うと、武術担当が手を上げた。
「武術だけで見れば、ラティアーナさんとアドリアスさんが、群を抜いてますね。」
「魔術だとイリーナさんとラティアーナさんですね。どちらも違う形で優れているので、順位付けは難しいところです。」
魔術担当も実技試験の結果を言うと、感嘆の声が上がる。
「ラティアーナさんも、魔術が得意なのは驚きですね。」
「イリーナさんの場合は、発動速度、魔力制御、威力すべてが一流です。対してラティアーナさんは、発動速度で劣るものの魔力制御が凄いですね。最小の魔力で最大の結果をもたらす形です。」
最後に総合戦闘担当が意見を話す。
「総合戦闘では、ラティアーナさん、アドリアスさん、イリーナさんが優れていますが、戦闘方法が違うので優劣はつけることができません。」
アドリアスとイリーナが戦闘面で優れているのには理由があった。それは4大公爵家において、役割を違うためだ。
武術を誇り王国の剣と呼ばれるグラディウス家。
魔術を誇り王国の盾と呼ばれるマギルス家。
叡智を誇り王国の頭脳と呼ばれるスエンティア家。
情報を誇り王国の眼と呼ばれるノーティア家。
どの家でも全体的には優れているものの、各家が誇るものには一日の長がある。そのため戦闘に関しては、武術と魔術を誇る二家が抜きん出ていた。
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学園長の言葉に、再び話し合いをするのだった。
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