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第5章 王女の学園生活
13前期の終わり
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「……同じクラスなのだし、スピカに直接言えば良いじゃない?」
アドリアスの告白に少しだけ固まった私は、ようやく復帰して言葉を返した。
「伝えるかどうかは迷ったんだが、いきなり俺が伝えたら困惑するだろう?もしスピカが迷惑だと思っていたとしても、伯爵家令嬢としては拒否できないだろうし。」
スピカには婚約者はまだいないと聞いていた。学園に通ううちに決まれば良し、決まらなければ両親が見つけると言っていたはずだ。
とはいえこの王国では公爵家というのは、貴族の最高位というだけでなく特別な意味を持つ。公爵家の嫡男であるアドリアスから、正式に申し込んでしまうと伯爵家は断れないだろう。
「人払いした状態で、スピカと話してみれば良いのではないかしら?家まで話がいかなければ…本音で話せるかもしれないわよ。」
「ああ、もちろんスピカには直接伝えたいとは思っている。ただその前に…他に意中の相手がいるのかだけでも、聞いてくれると助かる。」
アドリアスのあまりに必死なお願いに、私はため息を吐いた。
「わかったわよ。そのかわりスピカのこと大切にしなさいよ。…そういえば前までスピカのこと気にしてなかったように思うけど、きっかけはなにかあったのかしら?」
私が微笑みを浮かべて聞くと、アドリアスは目をそらした。
「いや…それはだな…」
「わたくしだって、人の恋路をとやかく言うつもりはないけど…協力させるのだから聞く権利があると思うけど?」
私がじっと見つめていると、アドリアスも観念したようで話し始めた。
「きっかけはこの前の実践演習だと思う。元々可愛いとは思っていたんだ。けれど演習で1日中近くにいて、この先も守りたいと思った。スピカのことをこの先ずっと笑顔にしたい。隣にあり続けたいと…その中で事故が起きて、スピカを失うかもしれないと思った時、怖くなった。だから後悔しないようにしようかと…」
「だったらその気持ちをスピカに伝えてあげなさいよ。…あとスピカだけどね、学園の中で婚約者を探して良いって言われているらしいわよ。この前ね、恋の話をした時は、まだ好きな相手はいなそうだったから、まだ機会はあるかもしれないわよ?」
私がそういうとアドリアスが固まる。
「……スピカに相手がいないの知っていたなら、初めから教えてくれても…」
「初めに答えていたら、色々と教えてくれなかったでしょう?…アドリアスなら信頼できるから応援してるわよ。せいぜい頑張りなさいな。」
私はそのまま修練上を後にした。
学園で婚約者を見つける人は、それなりにいたりする。アドリアスがスピカに恋していたのは、気づかなかったが私から見てもお見合いだとは思った。あとは当人たちで納得がいくようになれば良いだろう。
アドリアスの話も聞いて、私も恋をしてみたいと思う。誰かのことを好きになって、一緒に生きていたいと思う相手。
いつか…出会えるだろうかと、とりとめもなく考えながら寮の部屋に戻った。
それからしばらく時間が経って、前期が終わる。
「本日を持って王立学園の前期が終了します。長期休暇となりますが2月後、再び皆で集まれることを期待しています。では、解散。」
アイリスの挨拶をもって授業が終わるとイリーナが皆に声をかけた。
「もしよかったらマギルス領に遊びに来ない?」
イリーナの提案で来週から半月くらい、遊びに来ないかと誘われていて、皆でどうするか考えている。
「僕は公爵家の仕事の手伝いがあるから難しいかな。」
「残念ですが、私もウィスタリア領で父上の手伝いがあります。」
ブラッドとアルマクは家の仕事のため都合がつかないようだ。
他は大丈夫そうなため、私とアドリアス、カトレア、スピカは遊びに行くことになった。
「僕たちはどうしましょうか?行きたいですが…許可が降りるかどうか。」
最後にロアとロナが悩んでいる。孤児院から許可が降りるか心配らしい。
「2人とも行きたいなら行くといいわ。アリアにはわたくしからも話をするわよ?」
「…僕たちも行きたいです。」
「よし、では決まりね!」
結果的に6人で遊びに行くことになった。イリーナとカイは先に戻り、王都に居を構えていないカトレアとスピカは、1度領地に帰ってから行くことになる。
そのため、王都からは私とアドリアス、ロア、ロナの4人で行く。
学園から王都に戻ると、アドリアスと別れて3人で孤児院に向かう。
「「ただいま戻りました!」」
「ロア、ロナ、おかえりなさい!ティアも久しぶりね。」
孤児院に入るとアリアが出迎えてくれた。
「久しぶりねアリア。…2人のことなんだけど、旅行に連れて行きたいのよね。来週から半月くらいなんだけどいいかしら?」
私がアリアに言うと頷いてくれる。
「いいわよ。ティアが一緒なら尚更安心だわ。」
「了解よ。2人とも良かったわね。」
ロアとロナのことも解決した。それからは、ノアとドムも加えて皆で話をした後解散した。
そしてマギルス領へ向かう日がやって来る。
4人ということで、馬車は1台で足りる。そのため私の馬車で行くことにした。とはいえ王国の紋章入りの馬車は目立つため、王都を出てすぐの場所で合流する。
私とアドリアスは馬車に乗ったまま、少し待っているとアリアが2人を連れて来るのが見えた。
「アリアにロアとロナもおはよう。2人とも乗っていいわよ。」
「「おはようございます。お邪魔しますね…」」
ロアとロナが対面に座って準備が整う。
アリアに別れを告げてマギルス領に向けて出発した。
アドリアスの告白に少しだけ固まった私は、ようやく復帰して言葉を返した。
「伝えるかどうかは迷ったんだが、いきなり俺が伝えたら困惑するだろう?もしスピカが迷惑だと思っていたとしても、伯爵家令嬢としては拒否できないだろうし。」
スピカには婚約者はまだいないと聞いていた。学園に通ううちに決まれば良し、決まらなければ両親が見つけると言っていたはずだ。
とはいえこの王国では公爵家というのは、貴族の最高位というだけでなく特別な意味を持つ。公爵家の嫡男であるアドリアスから、正式に申し込んでしまうと伯爵家は断れないだろう。
「人払いした状態で、スピカと話してみれば良いのではないかしら?家まで話がいかなければ…本音で話せるかもしれないわよ。」
「ああ、もちろんスピカには直接伝えたいとは思っている。ただその前に…他に意中の相手がいるのかだけでも、聞いてくれると助かる。」
アドリアスのあまりに必死なお願いに、私はため息を吐いた。
「わかったわよ。そのかわりスピカのこと大切にしなさいよ。…そういえば前までスピカのこと気にしてなかったように思うけど、きっかけはなにかあったのかしら?」
私が微笑みを浮かべて聞くと、アドリアスは目をそらした。
「いや…それはだな…」
「わたくしだって、人の恋路をとやかく言うつもりはないけど…協力させるのだから聞く権利があると思うけど?」
私がじっと見つめていると、アドリアスも観念したようで話し始めた。
「きっかけはこの前の実践演習だと思う。元々可愛いとは思っていたんだ。けれど演習で1日中近くにいて、この先も守りたいと思った。スピカのことをこの先ずっと笑顔にしたい。隣にあり続けたいと…その中で事故が起きて、スピカを失うかもしれないと思った時、怖くなった。だから後悔しないようにしようかと…」
「だったらその気持ちをスピカに伝えてあげなさいよ。…あとスピカだけどね、学園の中で婚約者を探して良いって言われているらしいわよ。この前ね、恋の話をした時は、まだ好きな相手はいなそうだったから、まだ機会はあるかもしれないわよ?」
私がそういうとアドリアスが固まる。
「……スピカに相手がいないの知っていたなら、初めから教えてくれても…」
「初めに答えていたら、色々と教えてくれなかったでしょう?…アドリアスなら信頼できるから応援してるわよ。せいぜい頑張りなさいな。」
私はそのまま修練上を後にした。
学園で婚約者を見つける人は、それなりにいたりする。アドリアスがスピカに恋していたのは、気づかなかったが私から見てもお見合いだとは思った。あとは当人たちで納得がいくようになれば良いだろう。
アドリアスの話も聞いて、私も恋をしてみたいと思う。誰かのことを好きになって、一緒に生きていたいと思う相手。
いつか…出会えるだろうかと、とりとめもなく考えながら寮の部屋に戻った。
それからしばらく時間が経って、前期が終わる。
「本日を持って王立学園の前期が終了します。長期休暇となりますが2月後、再び皆で集まれることを期待しています。では、解散。」
アイリスの挨拶をもって授業が終わるとイリーナが皆に声をかけた。
「もしよかったらマギルス領に遊びに来ない?」
イリーナの提案で来週から半月くらい、遊びに来ないかと誘われていて、皆でどうするか考えている。
「僕は公爵家の仕事の手伝いがあるから難しいかな。」
「残念ですが、私もウィスタリア領で父上の手伝いがあります。」
ブラッドとアルマクは家の仕事のため都合がつかないようだ。
他は大丈夫そうなため、私とアドリアス、カトレア、スピカは遊びに行くことになった。
「僕たちはどうしましょうか?行きたいですが…許可が降りるかどうか。」
最後にロアとロナが悩んでいる。孤児院から許可が降りるか心配らしい。
「2人とも行きたいなら行くといいわ。アリアにはわたくしからも話をするわよ?」
「…僕たちも行きたいです。」
「よし、では決まりね!」
結果的に6人で遊びに行くことになった。イリーナとカイは先に戻り、王都に居を構えていないカトレアとスピカは、1度領地に帰ってから行くことになる。
そのため、王都からは私とアドリアス、ロア、ロナの4人で行く。
学園から王都に戻ると、アドリアスと別れて3人で孤児院に向かう。
「「ただいま戻りました!」」
「ロア、ロナ、おかえりなさい!ティアも久しぶりね。」
孤児院に入るとアリアが出迎えてくれた。
「久しぶりねアリア。…2人のことなんだけど、旅行に連れて行きたいのよね。来週から半月くらいなんだけどいいかしら?」
私がアリアに言うと頷いてくれる。
「いいわよ。ティアが一緒なら尚更安心だわ。」
「了解よ。2人とも良かったわね。」
ロアとロナのことも解決した。それからは、ノアとドムも加えて皆で話をした後解散した。
そしてマギルス領へ向かう日がやって来る。
4人ということで、馬車は1台で足りる。そのため私の馬車で行くことにした。とはいえ王国の紋章入りの馬車は目立つため、王都を出てすぐの場所で合流する。
私とアドリアスは馬車に乗ったまま、少し待っているとアリアが2人を連れて来るのが見えた。
「アリアにロアとロナもおはよう。2人とも乗っていいわよ。」
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