王女の夢見た世界への旅路

ライ

文字の大きさ
112 / 494
第5章 王女の学園生活

13前期の終わり

しおりを挟む
「……同じクラスなのだし、スピカに直接言えば良いじゃない?」

 アドリアスの告白に少しだけ固まった私は、ようやく復帰して言葉を返した。

「伝えるかどうかは迷ったんだが、いきなり俺が伝えたら困惑するだろう?もしスピカが迷惑だと思っていたとしても、伯爵家令嬢としては拒否できないだろうし。」

 スピカには婚約者はまだいないと聞いていた。学園に通ううちに決まれば良し、決まらなければ両親が見つけると言っていたはずだ。
 とはいえこの王国では公爵家というのは、貴族の最高位というだけでなく特別な意味を持つ。公爵家の嫡男であるアドリアスから、正式に申し込んでしまうと伯爵家は断れないだろう。

「人払いした状態で、スピカと話してみれば良いのではないかしら?家まで話がいかなければ…本音で話せるかもしれないわよ。」

「ああ、もちろんスピカには直接伝えたいとは思っている。ただその前に…他に意中の相手がいるのかだけでも、聞いてくれると助かる。」

 アドリアスのあまりに必死なお願いに、私はため息を吐いた。

「わかったわよ。そのかわりスピカのこと大切にしなさいよ。…そういえば前までスピカのこと気にしてなかったように思うけど、きっかけはなにかあったのかしら?」
 私が微笑みを浮かべて聞くと、アドリアスは目をそらした。

「いや…それはだな…」

「わたくしだって、人の恋路をとやかく言うつもりはないけど…協力させるのだから聞く権利があると思うけど?」

 私がじっと見つめていると、アドリアスも観念したようで話し始めた。

「きっかけはこの前の実践演習だと思う。元々可愛いとは思っていたんだ。けれど演習で1日中近くにいて、この先も守りたいと思った。スピカのことをこの先ずっと笑顔にしたい。隣にあり続けたいと…その中で事故が起きて、スピカを失うかもしれないと思った時、怖くなった。だから後悔しないようにしようかと…」

「だったらその気持ちをスピカに伝えてあげなさいよ。…あとスピカだけどね、学園の中で婚約者を探して良いって言われているらしいわよ。この前ね、恋の話をした時は、まだ好きな相手はいなそうだったから、まだ機会はあるかもしれないわよ?」

 私がそういうとアドリアスが固まる。

「……スピカに相手がいないの知っていたなら、初めから教えてくれても…」

「初めに答えていたら、色々と教えてくれなかったでしょう?…アドリアスなら信頼できるから応援してるわよ。せいぜい頑張りなさいな。」

 私はそのまま修練上を後にした。

 学園で婚約者を見つける人は、それなりにいたりする。アドリアスがスピカに恋していたのは、気づかなかったが私から見てもお見合いだとは思った。あとは当人たちで納得がいくようになれば良いだろう。

 アドリアスの話も聞いて、私も恋をしてみたいと思う。誰かのことを好きになって、一緒に生きていたいと思う相手。
 いつか…出会えるだろうかと、とりとめもなく考えながら寮の部屋に戻った。



 それからしばらく時間が経って、前期が終わる。

「本日を持って王立学園の前期が終了します。長期休暇となりますが2月後、再び皆で集まれることを期待しています。では、解散。」

 アイリスの挨拶をもって授業が終わるとイリーナが皆に声をかけた。

「もしよかったらマギルス領に遊びに来ない?」

 イリーナの提案で来週から半月くらい、遊びに来ないかと誘われていて、皆でどうするか考えている。

「僕は公爵家の仕事の手伝いがあるから難しいかな。」

「残念ですが、私もウィスタリア領で父上の手伝いがあります。」

 ブラッドとアルマクは家の仕事のため都合がつかないようだ。
 他は大丈夫そうなため、私とアドリアス、カトレア、スピカは遊びに行くことになった。

「僕たちはどうしましょうか?行きたいですが…許可が降りるかどうか。」

 最後にロアとロナが悩んでいる。孤児院から許可が降りるか心配らしい。

「2人とも行きたいなら行くといいわ。アリアにはわたくしからも話をするわよ?」

「…僕たちも行きたいです。」

「よし、では決まりね!」

 結果的に6人で遊びに行くことになった。イリーナとカイは先に戻り、王都に居を構えていないカトレアとスピカは、1度領地に帰ってから行くことになる。
 そのため、王都からは私とアドリアス、ロア、ロナの4人で行く。

 学園から王都に戻ると、アドリアスと別れて3人で孤児院に向かう。

「「ただいま戻りました!」」

「ロア、ロナ、おかえりなさい!ティアも久しぶりね。」

 孤児院に入るとアリアが出迎えてくれた。

「久しぶりねアリア。…2人のことなんだけど、旅行に連れて行きたいのよね。来週から半月くらいなんだけどいいかしら?」

 私がアリアに言うと頷いてくれる。

「いいわよ。ティアが一緒なら尚更安心だわ。」

「了解よ。2人とも良かったわね。」

 ロアとロナのことも解決した。それからは、ノアとドムも加えて皆で話をした後解散した。



 そしてマギルス領へ向かう日がやって来る。
 4人ということで、馬車は1台で足りる。そのため私の馬車で行くことにした。とはいえ王国の紋章入りの馬車は目立つため、王都を出てすぐの場所で合流する。
 私とアドリアスは馬車に乗ったまま、少し待っているとアリアが2人を連れて来るのが見えた。

「アリアにロアとロナもおはよう。2人とも乗っていいわよ。」

「「おはようございます。お邪魔しますね…」」

 ロアとロナが対面に座って準備が整う。

 アリアに別れを告げてマギルス領に向けて出発した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

生贄公爵と蛇の王

荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
 妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。 「お願いします、私と結婚してください!」 「はあ?」  幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。  そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。  しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

処理中です...