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第13章 2度目の学園生活
6 新しい縁
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王立学園の入学試験の結果は、試験を受けた翌日に学園都市や王都を始めとした各都市にて発表された。そこにはクラス分けも張り出されていて入学する前からクラスメイトとなる人も知ることができた。
私は試験結果を確認した後、荷物の準備をさくっと終わらせてから王立学園へと向かった。王女だった頃と違い学園の手続きは全て私一人で行なう必要がある。ただの平民であれば学園からの知らせなども届かないため昔以上に余裕を持って動いた方が良いと考えたからだ。
そして、王都を経った日の夕方頃に王立学園に到着することができた。
「新しく入学するティアと申します」
「ティアさん……はい。新入生の方ですね。少々お待ちください」
門のところで少し待っていると職員の人が大きめのカバンのような物を持ってきた。
「こちらは学生証や寮の鍵など学園生活で必要なものが入ってます。もしも無くした場合は費用がかかりますので注意してください。部屋番号は鍵を見れば分かると思います」
「ありがとうございます」
私はお礼を告げて鍵に書かれている部屋へと向かった。その部屋は6棟の中で1番奥にある平民用の寮内の3階にある相部屋だった。
平民用の寮では半数以上が2人用の相部屋になっていて王立学園に多額の寄付をしていれば個室を利用することが可能でもある。
私も隠密行動しやすい個室を使うことはできたが、孤児で平民出身の少女が大金を寄付するのもおかしいだろうと相部屋を選んだ。どちらにせよ寮の門限などはないため外出は自由だ。理由さえ用意しておけば幾らでもやりようがある。
鍵を開けて部屋の中に入り壁の近くに荷物を置いて全体を見渡す。部屋の造りは、そこそこお金がかかるような宿屋の一室のようだった。クローゼットとベットが2つずつ設置してあって浴室なども魔術具も完備されている。流石に貴族用の寮に比べれば質素だが生活するには十分すぎる質がある。
「カバンの中は……前とあまり変わらないみたいね」
渡されたカバンの中には教科書や規則などが書かれた本一式と試験結果が入っていた。パラパラと高速で捲りながら内容にも目を通すが少し変わったくらいで大きな変更はないらしい。
「試験結果も……狙いどおりかな?」
第6席という試験結果はある程度狙ったものだった。筆記試験では満点に近い点数を取り、実技試験でも基礎点の満点と加点を少し取る。
コルネリアスやアスカルテのように王族や公爵家の子息令嬢であれば筆記実技共に満点を取ると信じていたからだ。
夕食までは時間があるため、もらった本などに目を通して過ごしていると扉の外から人の気配を感じた。少しするとコンコンとノックする音が聞こえてきて「開けて大丈夫ですか?」と可愛らしい声が聞こえてくる。
「大丈夫ですよ」
扉がゆっくりと開かれると、そこには茶色の髪を肩くらいまで伸ばした少女がいた。質素なデザインであっても質が良い服や持ち物を身につけている所から察するに裕福な家の出なのだろう。手にはキャリーケースのような大きなカバンを持っていて相当な大荷物だ。
「相部屋の方……ですよね?はじめまして。私はサチと言います」
サチと名乗った少女は人懐っこい友好的な笑みを浮かべて挨拶をしてきた。
「はじめまして。私はティアです。これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いします。それから……できれば敬語はやめませんか?せっかくこうして同室になれたのですし仲良くなりたいです」
初対面ではあるが私の直感が彼女のことを良い人間だと告げている。それに彼女とは同級生として同室の者として少なくとも2年間は親密な付き合いになるわけだ。折角こうして出会った縁は大事にしておきたいし、願うことなら王立学園を卒業しても良き関係を長く築いていきたいと思った。
「そうで……そうだね。じゃあティアも私のことはサチって呼んで欲しい、かな」
「わかった。よろしくねサチ……とりあえず荷物を整理するの手伝おうか?」
「ありがとう。思ったよりも大荷物になっちゃったから助かるわ」
サチは感謝を告げつつも苦笑を浮かべていた。詳しく話を聞いてみると、どうやら両親から色々と荷物を持っていくように言われたらしく気がついた時には当初の予定の数倍の量になっていたらしい。
サチの荷物には、衣服だけでなくお茶を淹れるようなポットやカップなどの雑貨類、お湯を出すような魔術具など幅広く仕舞ってあった。これらの品は私も使っていいということで共用の棚に並べていく。
「結構本格的な器具だね。茶葉もたくさんあるってことは紅茶好きなの?」
「その辺りはお母様が持っていきなさいってね。ほら、この学園はお貴族様も通うじゃない?噂ではお茶会を開くこともあるっていうから失礼のないようにって。まぁ私の家は新興の商会だからね。これを機会に繋がりを増やしてきなさいっていうのもあると思うけど」
サチが持ってきた茶葉はアッサム系のものででエスペルト王国や西方連合国家群をはじめとした様々な国のものだった。銘柄だけで見れば最高級ではないものの質はかなり良く高位貴族に出しても問題ない品だった。実際にこれらの産地のお茶は王城や王宮でも使っていたほどだ。
「へぇ……サチの家はどういう商会なの?」
サチは新興の商会と言っているが荷物の質を見ればそれなりに裕福だと分かる。少なくとも下手な男爵家よりも資金力がありそうだ。
「フルーク商会といって生活用の魔術具を取り扱っている商会かな。魔術具の作成も行っていて、これとかはうちの商会で作った物なの」
「……かなり良いものよね、これ」
「使わずに分かるなんて流石ね」
魔術具を手に取って作動しない程度の微弱な魔力を流すと見た目以上に精微な造りをしていることがよく分かる。よほど実力がある職人が作っているのだろう。
私たちは魔術具を壊さないように注意しながらも黙々と片付けを続けていった。
そして、入寮から数日が経った。
私とサチは学園都市を散策をするなどして親睦を深めていき、王立学園の入学式がやってきた。
私は試験結果を確認した後、荷物の準備をさくっと終わらせてから王立学園へと向かった。王女だった頃と違い学園の手続きは全て私一人で行なう必要がある。ただの平民であれば学園からの知らせなども届かないため昔以上に余裕を持って動いた方が良いと考えたからだ。
そして、王都を経った日の夕方頃に王立学園に到着することができた。
「新しく入学するティアと申します」
「ティアさん……はい。新入生の方ですね。少々お待ちください」
門のところで少し待っていると職員の人が大きめのカバンのような物を持ってきた。
「こちらは学生証や寮の鍵など学園生活で必要なものが入ってます。もしも無くした場合は費用がかかりますので注意してください。部屋番号は鍵を見れば分かると思います」
「ありがとうございます」
私はお礼を告げて鍵に書かれている部屋へと向かった。その部屋は6棟の中で1番奥にある平民用の寮内の3階にある相部屋だった。
平民用の寮では半数以上が2人用の相部屋になっていて王立学園に多額の寄付をしていれば個室を利用することが可能でもある。
私も隠密行動しやすい個室を使うことはできたが、孤児で平民出身の少女が大金を寄付するのもおかしいだろうと相部屋を選んだ。どちらにせよ寮の門限などはないため外出は自由だ。理由さえ用意しておけば幾らでもやりようがある。
鍵を開けて部屋の中に入り壁の近くに荷物を置いて全体を見渡す。部屋の造りは、そこそこお金がかかるような宿屋の一室のようだった。クローゼットとベットが2つずつ設置してあって浴室なども魔術具も完備されている。流石に貴族用の寮に比べれば質素だが生活するには十分すぎる質がある。
「カバンの中は……前とあまり変わらないみたいね」
渡されたカバンの中には教科書や規則などが書かれた本一式と試験結果が入っていた。パラパラと高速で捲りながら内容にも目を通すが少し変わったくらいで大きな変更はないらしい。
「試験結果も……狙いどおりかな?」
第6席という試験結果はある程度狙ったものだった。筆記試験では満点に近い点数を取り、実技試験でも基礎点の満点と加点を少し取る。
コルネリアスやアスカルテのように王族や公爵家の子息令嬢であれば筆記実技共に満点を取ると信じていたからだ。
夕食までは時間があるため、もらった本などに目を通して過ごしていると扉の外から人の気配を感じた。少しするとコンコンとノックする音が聞こえてきて「開けて大丈夫ですか?」と可愛らしい声が聞こえてくる。
「大丈夫ですよ」
扉がゆっくりと開かれると、そこには茶色の髪を肩くらいまで伸ばした少女がいた。質素なデザインであっても質が良い服や持ち物を身につけている所から察するに裕福な家の出なのだろう。手にはキャリーケースのような大きなカバンを持っていて相当な大荷物だ。
「相部屋の方……ですよね?はじめまして。私はサチと言います」
サチと名乗った少女は人懐っこい友好的な笑みを浮かべて挨拶をしてきた。
「はじめまして。私はティアです。これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いします。それから……できれば敬語はやめませんか?せっかくこうして同室になれたのですし仲良くなりたいです」
初対面ではあるが私の直感が彼女のことを良い人間だと告げている。それに彼女とは同級生として同室の者として少なくとも2年間は親密な付き合いになるわけだ。折角こうして出会った縁は大事にしておきたいし、願うことなら王立学園を卒業しても良き関係を長く築いていきたいと思った。
「そうで……そうだね。じゃあティアも私のことはサチって呼んで欲しい、かな」
「わかった。よろしくねサチ……とりあえず荷物を整理するの手伝おうか?」
「ありがとう。思ったよりも大荷物になっちゃったから助かるわ」
サチは感謝を告げつつも苦笑を浮かべていた。詳しく話を聞いてみると、どうやら両親から色々と荷物を持っていくように言われたらしく気がついた時には当初の予定の数倍の量になっていたらしい。
サチの荷物には、衣服だけでなくお茶を淹れるようなポットやカップなどの雑貨類、お湯を出すような魔術具など幅広く仕舞ってあった。これらの品は私も使っていいということで共用の棚に並べていく。
「結構本格的な器具だね。茶葉もたくさんあるってことは紅茶好きなの?」
「その辺りはお母様が持っていきなさいってね。ほら、この学園はお貴族様も通うじゃない?噂ではお茶会を開くこともあるっていうから失礼のないようにって。まぁ私の家は新興の商会だからね。これを機会に繋がりを増やしてきなさいっていうのもあると思うけど」
サチが持ってきた茶葉はアッサム系のものででエスペルト王国や西方連合国家群をはじめとした様々な国のものだった。銘柄だけで見れば最高級ではないものの質はかなり良く高位貴族に出しても問題ない品だった。実際にこれらの産地のお茶は王城や王宮でも使っていたほどだ。
「へぇ……サチの家はどういう商会なの?」
サチは新興の商会と言っているが荷物の質を見ればそれなりに裕福だと分かる。少なくとも下手な男爵家よりも資金力がありそうだ。
「フルーク商会といって生活用の魔術具を取り扱っている商会かな。魔術具の作成も行っていて、これとかはうちの商会で作った物なの」
「……かなり良いものよね、これ」
「使わずに分かるなんて流石ね」
魔術具を手に取って作動しない程度の微弱な魔力を流すと見た目以上に精微な造りをしていることがよく分かる。よほど実力がある職人が作っているのだろう。
私たちは魔術具を壊さないように注意しながらも黙々と片付けを続けていった。
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私とサチは学園都市を散策をするなどして親睦を深めていき、王立学園の入学式がやってきた。
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