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第13章 2度目の学園生活
14 ティア VS. ローザリンデ
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「よく今の一撃を躱しましたね……それに、この場所のことを知っているのはエスペルト王国全体を見ても数人しかいないはず。あなたは一体何者ですか?」
ローザリンデは杖を構えて警戒しながら問いかけてきた。彼女の言うとおりこの場所は前任の学園長ですら知らなかった場所だ。ラティアーナが死んだ時も私とリーファス、ローザリンデの3人しか知らなかったはずで今でも王族の一部しか知らない最重要秘密の一つになっていることだろう。事実、彼女の周りには護衛などの騎士の姿や気配は一切ない。
「……」
幸いなことに私は外套を深く被っているおかげでローザリンデに正体がバレていない。このまま無言でいれば上手くやり過ごせないだろうかと考えを巡らせているとローザリンデはため息をついて険しい顔で語りかけてきた。
「答えるつもりはありませんか?抵抗しなければ拘束のみで済ませるつもりですが……」
私は返事の代わりに先ほど3人で完成させた短剣を取り出した。
相手はローザリンデ一人だけだ。ここで戦わずに逃げることは難しくないだろうが、2度目はないだろう。だったらローザリンデを無力化して目的を果たした方がいい。
「……仕方ありませんね」
ローザリンデは諦めたように呟くと杖を構えたまま術式を展開する。いくつもの光が瞬きを見せて私の周囲に降り注ぐ。
「っ……」
魔力弾の弾幕は逃げ場がない程に広い範囲が広っていた。避ける場所などはなく、まともに防御魔術で防ごうとすれば魔力が尽きるか防御を割られるかの二択だろう。仕方がなく魔力弾で多少相殺しつつも魔術による盾で僅かに時間を稼ぎながら弾幕が薄い場所へと距離をとる。
けれど、私の動きはローザリンデに誘導されているようだった。避けた先の地面が白く凍り付き、私の身動きを縛ろうと複数の氷の蔦が絡みついてくる。
『ティア!』
『大丈夫……これくらい!』
私は炎熱属性の魔術で足元に炎の波を作り出すと、竜巻のように巻き上げて氷の蔦を焼き尽くす。連続した魔術の行使と久しぶりの身体強化のせいでかなりの疲労感が襲い掛かるが意思の力でねじ伏せる。
「これも凌ぎますか……仕方ありませんね。少し痛い目を見てもらいますよ」
ローザリンデからの攻撃は更に激しさを増す。術式が展開され彼女を中心に複数の魔術の砲台を作り上げた。それらの砲台は周囲の魔力を取り込みながら光を輝かせて、立て続けに魔力砲が襲い掛かってくる。
私は短剣に魔力を纏わせると向かい来る魔力砲を斬り裂いた。逆に魔力弾を十ほど放って壁や地面を伝うようにして牽制する。さらに魔力糸を蜘蛛の巣のようにして地面へと広げた。先ほどローザリンデが行った氷の魔術の魔力糸版といったところだ。
「これだけの技術を持っているとは驚きました……」
ローザリンデは全体を格子状に覆うような防御魔術で魔力糸を防ぐと驚いたような表情を向けてくる。強度を増す代わりに鋭さを減らしているとはいえ、それなりに圧力が掛かっているはずだ。この状態で焦った様子も見せずに私の様子を窺っているところを見るとまだまだ全力は出していなさそうだった。
「貴方が何故わたくしを拘束しようとするのか分かりませんが、何も言わずに抵抗だけをするのであれば、これ以上手加減することはできません。もう一度だけ聞きます。大人しく投降するつもりはありませんか?」
最後通牒だと言わんばかりの厳しい表情で問いかけてくる。そして、私が何も反応を示さずにいると彼女が放つ魔力が一気に膨れ上がり殺気が迸った。
これを受けてはいけないと私の直感が警告を鳴らす。
「仕方がありませんね」
ローザリンデの足元に巨大な魔術式が展開され金色の炎を生み出される。金色の炎は聖属性と炎熱属性を複合させて強化した魔力をも燃やす炎だ。それは私の魔力糸を燃やしながら部屋全体へと徐々に広がっていく。
「まずっ!?」
金色の炎は部屋全体を包み込むほどの大きさとなり部屋の中の全てを焼き尽くそう私をも包み込んだ。咄嗟に全属性の虹色の魔力を使った障壁で周りを覆うが、どうしても発動に時間がかかるため障壁の中に僅かだけ炎が入り込んだ。
「これは誤魔化せないな……」
魔力隠しの外套は外側に魔力を霧散させる効果を持っている。下級程度の物理を伴わない魔術であれば防ぐことはできるが、ローザリンデが放ったような最上級にあたるような魔術を防ぐことはできない。さらには魔力を霧散させるのは身につけている私であっても同じだ。外套に魔力を纏わせることはできないため、金色の炎が収まる頃には外套が燃え落ちてしまった。
「なっ……貴女は!?」
顔を覆っていたフードも燃え落ち私の素顔が晒された。そんな私の顔を見たローザリンデの表情は驚愕に包まれていた。
「ティア……何故貴女がここに……いや、そもそもどうしてこの場所を知っているのですか!?」
さて、顔がバレたとなれば隠し通すことはできないだろう。どちらにせよ、今までのやり取りでローザリンデを無力化できなかった以上は覚悟を決めるしかないということだ。
ローザリンデは杖を構えて警戒しながら問いかけてきた。彼女の言うとおりこの場所は前任の学園長ですら知らなかった場所だ。ラティアーナが死んだ時も私とリーファス、ローザリンデの3人しか知らなかったはずで今でも王族の一部しか知らない最重要秘密の一つになっていることだろう。事実、彼女の周りには護衛などの騎士の姿や気配は一切ない。
「……」
幸いなことに私は外套を深く被っているおかげでローザリンデに正体がバレていない。このまま無言でいれば上手くやり過ごせないだろうかと考えを巡らせているとローザリンデはため息をついて険しい顔で語りかけてきた。
「答えるつもりはありませんか?抵抗しなければ拘束のみで済ませるつもりですが……」
私は返事の代わりに先ほど3人で完成させた短剣を取り出した。
相手はローザリンデ一人だけだ。ここで戦わずに逃げることは難しくないだろうが、2度目はないだろう。だったらローザリンデを無力化して目的を果たした方がいい。
「……仕方ありませんね」
ローザリンデは諦めたように呟くと杖を構えたまま術式を展開する。いくつもの光が瞬きを見せて私の周囲に降り注ぐ。
「っ……」
魔力弾の弾幕は逃げ場がない程に広い範囲が広っていた。避ける場所などはなく、まともに防御魔術で防ごうとすれば魔力が尽きるか防御を割られるかの二択だろう。仕方がなく魔力弾で多少相殺しつつも魔術による盾で僅かに時間を稼ぎながら弾幕が薄い場所へと距離をとる。
けれど、私の動きはローザリンデに誘導されているようだった。避けた先の地面が白く凍り付き、私の身動きを縛ろうと複数の氷の蔦が絡みついてくる。
『ティア!』
『大丈夫……これくらい!』
私は炎熱属性の魔術で足元に炎の波を作り出すと、竜巻のように巻き上げて氷の蔦を焼き尽くす。連続した魔術の行使と久しぶりの身体強化のせいでかなりの疲労感が襲い掛かるが意思の力でねじ伏せる。
「これも凌ぎますか……仕方ありませんね。少し痛い目を見てもらいますよ」
ローザリンデからの攻撃は更に激しさを増す。術式が展開され彼女を中心に複数の魔術の砲台を作り上げた。それらの砲台は周囲の魔力を取り込みながら光を輝かせて、立て続けに魔力砲が襲い掛かってくる。
私は短剣に魔力を纏わせると向かい来る魔力砲を斬り裂いた。逆に魔力弾を十ほど放って壁や地面を伝うようにして牽制する。さらに魔力糸を蜘蛛の巣のようにして地面へと広げた。先ほどローザリンデが行った氷の魔術の魔力糸版といったところだ。
「これだけの技術を持っているとは驚きました……」
ローザリンデは全体を格子状に覆うような防御魔術で魔力糸を防ぐと驚いたような表情を向けてくる。強度を増す代わりに鋭さを減らしているとはいえ、それなりに圧力が掛かっているはずだ。この状態で焦った様子も見せずに私の様子を窺っているところを見るとまだまだ全力は出していなさそうだった。
「貴方が何故わたくしを拘束しようとするのか分かりませんが、何も言わずに抵抗だけをするのであれば、これ以上手加減することはできません。もう一度だけ聞きます。大人しく投降するつもりはありませんか?」
最後通牒だと言わんばかりの厳しい表情で問いかけてくる。そして、私が何も反応を示さずにいると彼女が放つ魔力が一気に膨れ上がり殺気が迸った。
これを受けてはいけないと私の直感が警告を鳴らす。
「仕方がありませんね」
ローザリンデの足元に巨大な魔術式が展開され金色の炎を生み出される。金色の炎は聖属性と炎熱属性を複合させて強化した魔力をも燃やす炎だ。それは私の魔力糸を燃やしながら部屋全体へと徐々に広がっていく。
「まずっ!?」
金色の炎は部屋全体を包み込むほどの大きさとなり部屋の中の全てを焼き尽くそう私をも包み込んだ。咄嗟に全属性の虹色の魔力を使った障壁で周りを覆うが、どうしても発動に時間がかかるため障壁の中に僅かだけ炎が入り込んだ。
「これは誤魔化せないな……」
魔力隠しの外套は外側に魔力を霧散させる効果を持っている。下級程度の物理を伴わない魔術であれば防ぐことはできるが、ローザリンデが放ったような最上級にあたるような魔術を防ぐことはできない。さらには魔力を霧散させるのは身につけている私であっても同じだ。外套に魔力を纏わせることはできないため、金色の炎が収まる頃には外套が燃え落ちてしまった。
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「ティア……何故貴女がここに……いや、そもそもどうしてこの場所を知っているのですか!?」
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