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第13章 2度目の学園生活
23 常闇の大迷宮
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「ここがダンジョンなのですか?普通の洞窟にしか見えないですけど……」
マリアは不思議そうに言葉にした。
ここは森の中にある岩場近くには少し崖のようになっている場所だ。僅かに水が流れる小さな滝の近くに存在する幅10メートル、高さ5メートルくらいの大きな穴。どうみても天然の洞窟にしか見えない光景だった。
「洞窟の中にダンジョンへ通じる大穴が空いているのよ。ダンジョン常闇の大迷宮は数年前に洞窟内部が崩落した際に発見された古代遺跡。未発見地区は危険が大きくてお父様でさえ苦戦したみたいよ」
レジーナの話では殺意溢れる罠が多数設置されているだけでなく、ダンジョン内の高濃度の魔力によって変異した魔物たちが跋扈しているそうだ。調査が済んでいる上層の罠は既に解除され魔物も間引かれているそうだが、6階層より深い場所では一部未発見区域が存在して危険な場所もあるらしい。
現在調査中の11階層にもなると罠だけでなく魔物が強すぎるせいで立ち入ることも難しいそうだ。
「私たち……無事に帰れるでしょうか……」
「大丈夫じゃないかしら。演習で向かう3階層であれば調査が終わっていているもの」
「レジーナの言う通り必要以上に不安になる必要はないと思いますよ。わたくしたちが実力をきちんと発揮できれば無事に帰ることができると思います。それに、いざというときは先生たちや調査団の人たちが助けてくれますし、当然わたくしも助けますから」
「そうですわね。わたくしも戦いは苦手だけれど対魔物用の準備はしているわ。時間稼ぎは任せなさいな」
アスカルテとレジーナは、不安そうにしているマリアやアイリーンを元気付けようと言葉を尽くした。
「「ありがとうございます」」
二人が嬉しそうに感謝を告げると少しだけ照れくさそうにアスカルテは「では行きましょうか」と洞窟の中へ向けて歩き出した。
「あらあら」
アスカルテの珍しい表情にレジーナは面白そうに微笑んでいた。王立学園ではあまり一緒にいる所を二人だが家同士の繋がりが強いこともあって昔からの付き合いらしい。
二人を見ているとラティアーナにとってのアドリアスやイリーナのような関係に近いのかもしれないと懐かしい気持ちになった。
洞窟の中は周りが一切見えないほど真っ暗だった。元々森の中が薄暗かったのも影響して外からの光はあまり届かず、光を放つ水晶も存在していない。
「アイリーンさんとマリアさんは交互に光源の魔術をお願いします。敵が寄ってくる可能性はありますが歩きやすい明るさでいいですよ」
「わかりました。まずはわたくしが……」
アイリーンが手の平に魔術の光を灯すと辺り一帯を照らした。暗闇の中にいるとは思えないほどの明るさで、足元だけではなく洞窟の壁や道の奥など大分遠くまで見渡すことができる。
「ありがとうございます。夜になるまでにもう少しだけ進んでおきたいですね」
「そうですわね。付近に魔物はいないようですし集まってくる前に迷宮の中に入りたいですわ」
支給品の中には時計の魔術具もあった。軍で使われているものよりも安価な物ではあるが半刻きざみで時間を把握できる便利な物だ。洞窟のような閉鎖環境では必需品に近いものでもあった。
私とアスカルテで索敵や位置の把握を、アイリーンとマリアが灯りや魔物除けの魔術でサポートを、レジーナは殿を務めながら歩いてきた道に標をつけていくなど役割分担しながら歩き続けること半刻ほど。
「入口みたいですね」
目の前に石造りの建造物が目に入る。近くには門のようになっている場所には見張りの兵士が立っていて、ここが常闇の大迷宮へ繋がる大穴がある場所のようだ。
ここは調査団の詰所のような役割にもなっているようでダンジョンと洞窟を管理する門でもあるらしい。
調査団の兵士の案内で大穴に設置されている階段をゆっくりと降りて門を潜り抜けると、ついに常闇の大迷宮に辿り着いた。
「ここが常闇の大迷宮……思ったよりも明るいのですね」
「お城みたいで洞窟よりも歩きやすそう……」
アイリーンとマリアはイメージしていた場所とあまりにも違っていたようで驚いた様子を見せていた。
目の前には石造りのレンガで作られた半円形の広場があって5方向を目掛けて広い道が広がっている。壁には所々魔術具の灯りが灯されているようだ。
「……どうして常闇と呼ばれているのでしょうか?地下だからという理由だけではないのですよね?」
私が知る限りでも王都の地下に廃墟となっている地下都市が存在する。光が入らないというのが理由とは思えなかった。
「このダンジョンには光を奪う罠が設置されていたそうです。複雑な迷路のなかで光や視覚を奪ったうえで魔物が襲い掛かってくるダンジョン……それが常闇の大迷宮と名づけられた所以のようですよ」
「……視覚を奪う罠って考えただけでも恐ろしいですね」
五感に干渉すること自体は闇属性の魔術を使えば可能ではある。けれど滅多に使い手がおらず対抗できる人も限られてくるだろう。
知れば知るほど殺意に溢れたダンジョンに感じていると、不意に気配が近づいてくる気がした。始めて感じる類のものだが、何となく嫌な感じがする気配だ。
「敵のようですね。アイリーンさんは障壁の準備、マリアさんは浄化魔術の準備を……レジーナは念のため二人の護衛をお願いします。ティア……」
「いつでも大丈夫……あれは人型の骨?」
気配の正体は骸骨のような魔物だ。カタカタと音を響かせながらゆらゆら近づいてくる姿は少し不気味に見えた。
「あれはスケルトン……魔力が物質化した骸骨ですね。核を狙うのが一番かと」
どうやらダンジョンの中にはスケルトンのような魔力で身体を構成する魔物が多く出るらしい。
私は「わかりました」と返事をすると同時にアスカルテに合わせて聖属性の魔力を放つのだった。
マリアは不思議そうに言葉にした。
ここは森の中にある岩場近くには少し崖のようになっている場所だ。僅かに水が流れる小さな滝の近くに存在する幅10メートル、高さ5メートルくらいの大きな穴。どうみても天然の洞窟にしか見えない光景だった。
「洞窟の中にダンジョンへ通じる大穴が空いているのよ。ダンジョン常闇の大迷宮は数年前に洞窟内部が崩落した際に発見された古代遺跡。未発見地区は危険が大きくてお父様でさえ苦戦したみたいよ」
レジーナの話では殺意溢れる罠が多数設置されているだけでなく、ダンジョン内の高濃度の魔力によって変異した魔物たちが跋扈しているそうだ。調査が済んでいる上層の罠は既に解除され魔物も間引かれているそうだが、6階層より深い場所では一部未発見区域が存在して危険な場所もあるらしい。
現在調査中の11階層にもなると罠だけでなく魔物が強すぎるせいで立ち入ることも難しいそうだ。
「私たち……無事に帰れるでしょうか……」
「大丈夫じゃないかしら。演習で向かう3階層であれば調査が終わっていているもの」
「レジーナの言う通り必要以上に不安になる必要はないと思いますよ。わたくしたちが実力をきちんと発揮できれば無事に帰ることができると思います。それに、いざというときは先生たちや調査団の人たちが助けてくれますし、当然わたくしも助けますから」
「そうですわね。わたくしも戦いは苦手だけれど対魔物用の準備はしているわ。時間稼ぎは任せなさいな」
アスカルテとレジーナは、不安そうにしているマリアやアイリーンを元気付けようと言葉を尽くした。
「「ありがとうございます」」
二人が嬉しそうに感謝を告げると少しだけ照れくさそうにアスカルテは「では行きましょうか」と洞窟の中へ向けて歩き出した。
「あらあら」
アスカルテの珍しい表情にレジーナは面白そうに微笑んでいた。王立学園ではあまり一緒にいる所を二人だが家同士の繋がりが強いこともあって昔からの付き合いらしい。
二人を見ているとラティアーナにとってのアドリアスやイリーナのような関係に近いのかもしれないと懐かしい気持ちになった。
洞窟の中は周りが一切見えないほど真っ暗だった。元々森の中が薄暗かったのも影響して外からの光はあまり届かず、光を放つ水晶も存在していない。
「アイリーンさんとマリアさんは交互に光源の魔術をお願いします。敵が寄ってくる可能性はありますが歩きやすい明るさでいいですよ」
「わかりました。まずはわたくしが……」
アイリーンが手の平に魔術の光を灯すと辺り一帯を照らした。暗闇の中にいるとは思えないほどの明るさで、足元だけではなく洞窟の壁や道の奥など大分遠くまで見渡すことができる。
「ありがとうございます。夜になるまでにもう少しだけ進んでおきたいですね」
「そうですわね。付近に魔物はいないようですし集まってくる前に迷宮の中に入りたいですわ」
支給品の中には時計の魔術具もあった。軍で使われているものよりも安価な物ではあるが半刻きざみで時間を把握できる便利な物だ。洞窟のような閉鎖環境では必需品に近いものでもあった。
私とアスカルテで索敵や位置の把握を、アイリーンとマリアが灯りや魔物除けの魔術でサポートを、レジーナは殿を務めながら歩いてきた道に標をつけていくなど役割分担しながら歩き続けること半刻ほど。
「入口みたいですね」
目の前に石造りの建造物が目に入る。近くには門のようになっている場所には見張りの兵士が立っていて、ここが常闇の大迷宮へ繋がる大穴がある場所のようだ。
ここは調査団の詰所のような役割にもなっているようでダンジョンと洞窟を管理する門でもあるらしい。
調査団の兵士の案内で大穴に設置されている階段をゆっくりと降りて門を潜り抜けると、ついに常闇の大迷宮に辿り着いた。
「ここが常闇の大迷宮……思ったよりも明るいのですね」
「お城みたいで洞窟よりも歩きやすそう……」
アイリーンとマリアはイメージしていた場所とあまりにも違っていたようで驚いた様子を見せていた。
目の前には石造りのレンガで作られた半円形の広場があって5方向を目掛けて広い道が広がっている。壁には所々魔術具の灯りが灯されているようだ。
「……どうして常闇と呼ばれているのでしょうか?地下だからという理由だけではないのですよね?」
私が知る限りでも王都の地下に廃墟となっている地下都市が存在する。光が入らないというのが理由とは思えなかった。
「このダンジョンには光を奪う罠が設置されていたそうです。複雑な迷路のなかで光や視覚を奪ったうえで魔物が襲い掛かってくるダンジョン……それが常闇の大迷宮と名づけられた所以のようですよ」
「……視覚を奪う罠って考えただけでも恐ろしいですね」
五感に干渉すること自体は闇属性の魔術を使えば可能ではある。けれど滅多に使い手がおらず対抗できる人も限られてくるだろう。
知れば知るほど殺意に溢れたダンジョンに感じていると、不意に気配が近づいてくる気がした。始めて感じる類のものだが、何となく嫌な感じがする気配だ。
「敵のようですね。アイリーンさんは障壁の準備、マリアさんは浄化魔術の準備を……レジーナは念のため二人の護衛をお願いします。ティア……」
「いつでも大丈夫……あれは人型の骨?」
気配の正体は骸骨のような魔物だ。カタカタと音を響かせながらゆらゆら近づいてくる姿は少し不気味に見えた。
「あれはスケルトン……魔力が物質化した骸骨ですね。核を狙うのが一番かと」
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