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第13章 2度目の学園生活
27 VS.巨大スケルトン
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浮遊感を感じた私はそのままどこかへの地面へ頭から叩き受けられた。上から降り注いできた瓦礫によって身体が埋もれそうになるが、その前に魔力を瞬時に放出してを瓦礫を全て吹き飛ばす。
「いたた……ここは?」
辺りを見渡すと薄暗い石レンガでできた大部屋にいるようだ。どうやら下の階層へ落とされたらしく、目の前では巨大なスケルトンが私を睨んだまま立ち上がろうとしていた。
「ティア大丈夫ですか?」
杖を構え直しているとアスカルテが近づいてくる。彼女も一緒に巻き込まれたようで制服が少しボロボロになっていた。パット見た印象では大きな怪我をしていなさそうで少し安心する。
「問題ありません。アスカルテ様は?」
スケルトンの魔力攻撃は全身に魔装を施すことで直撃は防いでいた。無傷というわけにはいかなかったが大きな怪我は負っていない。
「わたくしも大丈夫です。あとは目の前の敵をどうにかしなければいけませんね」
「私が前に出ます」
杖をしまって短剣を取り出すと同時に身体強化を行使して前に出る。
目の前にいる巨大なスケルトンは、まぁまぁ厄介な相手だ。魔術を主体に戦っても勝てるだろうが想定外なこの状況で魔力を無駄に消費するのは避けるべきだろう。
それに夜月を取り戻してから私の魂の修復は早まっている。現在であれば多少の無茶も通せるかもしれないくらいだ。
「まずはっ!」
アイリーンやマリアと一緒に入手した短剣は魔力を込めれば込めるほど強度を増す術式が刻まれている。そこに魔力を纏わせれば硬さだけで言えば高位の魔剣や聖剣に勝るとも劣らないくらいになる。
私は魔力を込めた短剣をスケルトンの肩へと振り下ろした。身体強化による膂力と跳躍した時の勢いが全て合わさった一撃はスケルトンの肩に大きな裂傷を創り出す。
「行きますよ」
そこにアスカルテの魔術が放たれた。魔力で造られた光り輝く長さ3メートルにも及ぶ大剣が2本生み出されると、アスカルテを中心に高速で回転しスケルトンの腰と胸を上下に両断した。
これは最上級魔術に該当する天星剣と呼ばれるものだ。
魔力によって構築された大剣を創り出し術者を中心に一定の範囲内を操るというもの。複雑な軌道を描くには向かないが術者を中心に外側への射出や弧を描くような軌道であれば魔力砲よりも速くすることが可能だった。
「核は……」
巨大なスケルトンも通常の個体と同じように与えた傷は徐々に塞がっていくようだった。けれど回復速度には若干の差があるらしい。アスカルテが斬った胸に近いところのほうが早く腰の部分は回復が遅い。そして最初に私が斬った肩の傷は一時的に回復が止まっているようだった。
「ここかな」
アスカルテが3つに斬った内の1つ。巨大スケルトンの腰から胸までの部位に近付いてそっと手を当てる。
回復する様子を見る限りスケルトンの核が存在する場所はこの辺りで間違いないだろう。細かい位置までは特定できなかったが、それであれば全てを破壊すればいいだけだ。
私は触れたところから一気に魔力を流した。スケルトンの身体は魔力が実体化したようなもの。スケルトンの身体を構成する魔力に同調と浸透させることができれば内部から破壊することが可能となる。
「咄嗟に核を守るなんて頭は良いみたいだけど……」
巨大スケルトンは身体を構築していた魔力を一箇所に集めたようだ。濃密な魔力に包まれた球体状の部位は、私の攻撃に耐えて大きく跳ねながら距離を取ろうとしていた。その様子はまるで危機感を感じて慌てて逃げようとしているようだった。
けれど、遅い。この場にはもう1人心強い味方がいるのだから。
「聖槍」
アスカルテの声が聞こえると同時に聖属性の槍が巨大スケルトンの核を貫いた。核が消滅したことでスケルトンの身体は霧散し元の魔力へと還ってゆく。復活する気配がないところを見ると確実に倒せたようだ。
「なるほど。ロレアルさんの技を実戦で使うのは初めてですが想像以上ですね」
「精霊術ですか?あれは特別な言語を使いますよね?」
ロレアルが使う精霊術は桜花皇国の霊術と同じで精霊の言葉を使うものだ。エスペルト王国でも使っている大陸の共通語を使って霊術を発動させている所は見たこともない。
「ええ。わたくしも細かい原理までは理解していませんが、精霊の力を借りているというのは想像がつきます。ここにいる精霊に呼びかけるのに、わたくしたちの言葉が通じない道理はないでしょう」
エスペルト王国で使われている大陸の言語は2000年以上かけて発展してきた歴史そのもの。大陸に存在する精霊であれば通じるとアスカルテは考えたらしい。
「わたくしの場合は精霊と相性が良いということもあります。ロレアルさんのように言葉だけで魔術を発動させることは難しくても魔術の強化を行うくらいはなんとか可能です」
アスカルテの言葉に驚きを隠せなかった。
ロレアルが精霊術と呼び桜花皇国では霊術と呼ぶこれは、プレアデスからも精霊の言葉に魔力をこめて発動させる物だと教わっていた。だからアスカルテのような使い方は考えもしなかったのだ。いくつか霊術は習得しているが魔術と霊術は別々に使うものだと思い込んでいた。
「それよりも問題はこれからですよ。上にはレジーナがいますし他の先生たちもいるはずなので大丈夫だと思います。あとは、わたくしとティアが無事に戻らなければ」
「そうですね……落ちてきた穴はもう塞がっていて使えなさそうですし先に進みますか?」
アスカルテの言葉で我に返った私は天井を見上げながら呟く。
スケルトンと一緒に何階層か下に落ちたことは確かだが、落ちてきた穴はもう存在しない。常闇の大迷宮全体がそうなのかは分からないが、恐らくは床や天井などを破壊したとしても時間経過で元に戻るのだろう。
それはつまり壁を撃ち抜いて新しい道を作る手段が取りにくいと言うことでもあった。
「それしかなさそうです。全く何が起こっているのやら」
アスカルテも同じ考えのようで、私たちは他の場所へ繋がっていそうな道を求めて目の前の通路へ歩き出した。
「いたた……ここは?」
辺りを見渡すと薄暗い石レンガでできた大部屋にいるようだ。どうやら下の階層へ落とされたらしく、目の前では巨大なスケルトンが私を睨んだまま立ち上がろうとしていた。
「ティア大丈夫ですか?」
杖を構え直しているとアスカルテが近づいてくる。彼女も一緒に巻き込まれたようで制服が少しボロボロになっていた。パット見た印象では大きな怪我をしていなさそうで少し安心する。
「問題ありません。アスカルテ様は?」
スケルトンの魔力攻撃は全身に魔装を施すことで直撃は防いでいた。無傷というわけにはいかなかったが大きな怪我は負っていない。
「わたくしも大丈夫です。あとは目の前の敵をどうにかしなければいけませんね」
「私が前に出ます」
杖をしまって短剣を取り出すと同時に身体強化を行使して前に出る。
目の前にいる巨大なスケルトンは、まぁまぁ厄介な相手だ。魔術を主体に戦っても勝てるだろうが想定外なこの状況で魔力を無駄に消費するのは避けるべきだろう。
それに夜月を取り戻してから私の魂の修復は早まっている。現在であれば多少の無茶も通せるかもしれないくらいだ。
「まずはっ!」
アイリーンやマリアと一緒に入手した短剣は魔力を込めれば込めるほど強度を増す術式が刻まれている。そこに魔力を纏わせれば硬さだけで言えば高位の魔剣や聖剣に勝るとも劣らないくらいになる。
私は魔力を込めた短剣をスケルトンの肩へと振り下ろした。身体強化による膂力と跳躍した時の勢いが全て合わさった一撃はスケルトンの肩に大きな裂傷を創り出す。
「行きますよ」
そこにアスカルテの魔術が放たれた。魔力で造られた光り輝く長さ3メートルにも及ぶ大剣が2本生み出されると、アスカルテを中心に高速で回転しスケルトンの腰と胸を上下に両断した。
これは最上級魔術に該当する天星剣と呼ばれるものだ。
魔力によって構築された大剣を創り出し術者を中心に一定の範囲内を操るというもの。複雑な軌道を描くには向かないが術者を中心に外側への射出や弧を描くような軌道であれば魔力砲よりも速くすることが可能だった。
「核は……」
巨大なスケルトンも通常の個体と同じように与えた傷は徐々に塞がっていくようだった。けれど回復速度には若干の差があるらしい。アスカルテが斬った胸に近いところのほうが早く腰の部分は回復が遅い。そして最初に私が斬った肩の傷は一時的に回復が止まっているようだった。
「ここかな」
アスカルテが3つに斬った内の1つ。巨大スケルトンの腰から胸までの部位に近付いてそっと手を当てる。
回復する様子を見る限りスケルトンの核が存在する場所はこの辺りで間違いないだろう。細かい位置までは特定できなかったが、それであれば全てを破壊すればいいだけだ。
私は触れたところから一気に魔力を流した。スケルトンの身体は魔力が実体化したようなもの。スケルトンの身体を構成する魔力に同調と浸透させることができれば内部から破壊することが可能となる。
「咄嗟に核を守るなんて頭は良いみたいだけど……」
巨大スケルトンは身体を構築していた魔力を一箇所に集めたようだ。濃密な魔力に包まれた球体状の部位は、私の攻撃に耐えて大きく跳ねながら距離を取ろうとしていた。その様子はまるで危機感を感じて慌てて逃げようとしているようだった。
けれど、遅い。この場にはもう1人心強い味方がいるのだから。
「聖槍」
アスカルテの声が聞こえると同時に聖属性の槍が巨大スケルトンの核を貫いた。核が消滅したことでスケルトンの身体は霧散し元の魔力へと還ってゆく。復活する気配がないところを見ると確実に倒せたようだ。
「なるほど。ロレアルさんの技を実戦で使うのは初めてですが想像以上ですね」
「精霊術ですか?あれは特別な言語を使いますよね?」
ロレアルが使う精霊術は桜花皇国の霊術と同じで精霊の言葉を使うものだ。エスペルト王国でも使っている大陸の共通語を使って霊術を発動させている所は見たこともない。
「ええ。わたくしも細かい原理までは理解していませんが、精霊の力を借りているというのは想像がつきます。ここにいる精霊に呼びかけるのに、わたくしたちの言葉が通じない道理はないでしょう」
エスペルト王国で使われている大陸の言語は2000年以上かけて発展してきた歴史そのもの。大陸に存在する精霊であれば通じるとアスカルテは考えたらしい。
「わたくしの場合は精霊と相性が良いということもあります。ロレアルさんのように言葉だけで魔術を発動させることは難しくても魔術の強化を行うくらいはなんとか可能です」
アスカルテの言葉に驚きを隠せなかった。
ロレアルが精霊術と呼び桜花皇国では霊術と呼ぶこれは、プレアデスからも精霊の言葉に魔力をこめて発動させる物だと教わっていた。だからアスカルテのような使い方は考えもしなかったのだ。いくつか霊術は習得しているが魔術と霊術は別々に使うものだと思い込んでいた。
「それよりも問題はこれからですよ。上にはレジーナがいますし他の先生たちもいるはずなので大丈夫だと思います。あとは、わたくしとティアが無事に戻らなければ」
「そうですね……落ちてきた穴はもう塞がっていて使えなさそうですし先に進みますか?」
アスカルテの言葉で我に返った私は天井を見上げながら呟く。
スケルトンと一緒に何階層か下に落ちたことは確かだが、落ちてきた穴はもう存在しない。常闇の大迷宮全体がそうなのかは分からないが、恐らくは床や天井などを破壊したとしても時間経過で元に戻るのだろう。
それはつまり壁を撃ち抜いて新しい道を作る手段が取りにくいと言うことでもあった。
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