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第13章 2度目の学園生活
30 合流
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「ここまで来れば敵も追ってこなそうですね」
カトレアや調査団の兵士と合流を果たしたコルネリアスたちは通路を駆け抜けて袋小路になっている小部屋に退避した。
この部屋は細めの通路の先にある部屋になっていて大型の魔物が入ってくることは不可能に近い。巨大なスケルトンのような大型の魔物が多数出現している今の状況では比較的安全な場所だった。
「それでカトレア先生はどうして調査団と一緒にいるのですか?他の先生たちは?」
部屋に入って一息つくとコルネリアスが代表して質問する。
当初の説明では調査団はいざというときに助けてくれるが、基本的には通常の通り任務を遂行しているといことだ。危険な時や緊急時には複数の教師が掛けつけてくれて調査団の人が派遣されることは最終手段に近かった。それにカトレア以外の教師がこの場にいないのはとても不自然なことだ。
「わたくし以外の教師は魔物の襲撃を受けて重傷を負いました。そのため転移魔術で怪我を負った教師たちを護送、外で待機している教師たちを代わりに内部へ派遣する……その予定でした」
「ということは怪我をした人が近くにいると?」
カトレアを始め治癒系の魔術を使える教師は何人かいる。けれど、怪我の程度によっては治癒が終わっていたとしてもすぐには動けないだろう。その場合は動ける人たちで怪我を負った人を守りながら脱出しなくてはならない。
「いえ、動けない教師たちの脱出はギリギリ間に合いました。教師の中で残っているのはわたくしだけです」
「調査団もほとんどが1階層の拠点におります。恐らくここにいる4人だけかと」
「なるほど……怪我人だけでも脱出できたのは朗報か」
話を聞いた限りでは、最悪の状況だけは避けることができていそうだった。デニードも念のため休んでいるだけであって全員が戦うことができるのは大きいだろう。
「あとは2班の子たちと合流できれば安心できそうですね。彼女たちは第2階層……この辺りのどこかにいるはずですから探せば見つかるはずですが……」
「その必要はなさそうですよ」
コルネリアスはカトレアを遮って通路の方を向きながら言葉にする。周りの人たちはコルネリアスに倣って視線を向けると、すぐにその言葉の意味が理解する。
ほんの少しした後、遠くから複数人の人影が見えたからだ。
「皆さん!無事で……?アスカルテさんとティアさんは……どうしたのですか!?」
カトレアはゆっくりと歩いてきたレジーナたちの姿を見て嬉しい声を上げたが、3人しかいないことに驚いてしまった。
2班の中で上位の実力を持ち実戦経験もあるのはアスカルテとレジーナ、ティアの3人のみ。カトレアにとっては悔しいことだが、彼女たちであれば長いこと研究や教職として生活していたカトレアよりも実戦では役に立つだろう。ましてや高火力の魔術を使えるアスカルテとティアの場合、崩落などが発生したとしてもどうとでもすることができる。2人がこの場にいないことはあり得ないことだった。
「2人はダンジョンの崩落とともに下層へ落下しましたわ。落下直後に崩落した床が修復されてしまったので、落下した先の状況は分かりません」
「下層……第3階層ですか?」
1つ下くらいであれば、ここにいる全員で助けに行くことができると希望をもって聞き返す。けれど次のレジーナの言葉で希望が潰えてしまった。
「いいえ。一瞬しか見えませんでしたが結構な深さがあったと思いますわ。少なくとも3階層くらいはあったのではないかと……姿が見えなかったので相当深いはずですわ」
「となると2人の救出へ全員で向かうのは不可能ですね……ここにいる全員で地上に脱出し、救出班を編成してから向かうか、あるいはここで救出班と脱出班に分けて別々に動くか……」
「迷宮内で勝手に動かれては困りますなぁ」
カトレアがどうするか悩んでいる時、通路の方から新たな男の声が聞こえてきた。やってきたのは壮年の男性1人と若い男性が4人。全員が調査団の紋章をつけた鎧を着ていて先頭の1人だけが外套を羽織っていた。
「レイガード侯爵……」
「常闇の大迷宮内は、我が調査団の管轄。いくら協力関係にあるとはいえ、部外者に勝手に動かれては困りますぞ?」
レイガードは不機嫌そうな表情を隠さずにカトレアに対して苦言を告げる。
「調査団長としての考えは理解できますが……アスカルテさんとティアさんは王立学園の生徒です。助けに行くかどうかは学園側が決めることです」
「それは出来ない相談ですな、オルデイン男爵夫人。王立学園の学園長から正式に来た依頼であれば従うしかないでしょう。ですが、一教師のお願いなどこちらが対応する必要はありません。あとは我々調査団に任せてください。貴方たちのことは外まで護送しますので」
エスペルト王国において役職の権限は爵位を超越することが可能だ。それこそ、たとえ平民であっても役職が上であれば貴族に命令することも可能となるくらいの権限となっていた。
ましてや侯爵家ともなれば一般的な家族の中の頂点となる存在。
カトレアはレイガードの正論に反論することはできなかった。
「であれば私の責任で2人を探させてもらおう。生徒としてではなく王太子として……な」
コルネリアスが不適な笑みを浮かべるとレイガードは思わず顔を顰めた。
カトレアや調査団の兵士と合流を果たしたコルネリアスたちは通路を駆け抜けて袋小路になっている小部屋に退避した。
この部屋は細めの通路の先にある部屋になっていて大型の魔物が入ってくることは不可能に近い。巨大なスケルトンのような大型の魔物が多数出現している今の状況では比較的安全な場所だった。
「それでカトレア先生はどうして調査団と一緒にいるのですか?他の先生たちは?」
部屋に入って一息つくとコルネリアスが代表して質問する。
当初の説明では調査団はいざというときに助けてくれるが、基本的には通常の通り任務を遂行しているといことだ。危険な時や緊急時には複数の教師が掛けつけてくれて調査団の人が派遣されることは最終手段に近かった。それにカトレア以外の教師がこの場にいないのはとても不自然なことだ。
「わたくし以外の教師は魔物の襲撃を受けて重傷を負いました。そのため転移魔術で怪我を負った教師たちを護送、外で待機している教師たちを代わりに内部へ派遣する……その予定でした」
「ということは怪我をした人が近くにいると?」
カトレアを始め治癒系の魔術を使える教師は何人かいる。けれど、怪我の程度によっては治癒が終わっていたとしてもすぐには動けないだろう。その場合は動ける人たちで怪我を負った人を守りながら脱出しなくてはならない。
「いえ、動けない教師たちの脱出はギリギリ間に合いました。教師の中で残っているのはわたくしだけです」
「調査団もほとんどが1階層の拠点におります。恐らくここにいる4人だけかと」
「なるほど……怪我人だけでも脱出できたのは朗報か」
話を聞いた限りでは、最悪の状況だけは避けることができていそうだった。デニードも念のため休んでいるだけであって全員が戦うことができるのは大きいだろう。
「あとは2班の子たちと合流できれば安心できそうですね。彼女たちは第2階層……この辺りのどこかにいるはずですから探せば見つかるはずですが……」
「その必要はなさそうですよ」
コルネリアスはカトレアを遮って通路の方を向きながら言葉にする。周りの人たちはコルネリアスに倣って視線を向けると、すぐにその言葉の意味が理解する。
ほんの少しした後、遠くから複数人の人影が見えたからだ。
「皆さん!無事で……?アスカルテさんとティアさんは……どうしたのですか!?」
カトレアはゆっくりと歩いてきたレジーナたちの姿を見て嬉しい声を上げたが、3人しかいないことに驚いてしまった。
2班の中で上位の実力を持ち実戦経験もあるのはアスカルテとレジーナ、ティアの3人のみ。カトレアにとっては悔しいことだが、彼女たちであれば長いこと研究や教職として生活していたカトレアよりも実戦では役に立つだろう。ましてや高火力の魔術を使えるアスカルテとティアの場合、崩落などが発生したとしてもどうとでもすることができる。2人がこの場にいないことはあり得ないことだった。
「2人はダンジョンの崩落とともに下層へ落下しましたわ。落下直後に崩落した床が修復されてしまったので、落下した先の状況は分かりません」
「下層……第3階層ですか?」
1つ下くらいであれば、ここにいる全員で助けに行くことができると希望をもって聞き返す。けれど次のレジーナの言葉で希望が潰えてしまった。
「いいえ。一瞬しか見えませんでしたが結構な深さがあったと思いますわ。少なくとも3階層くらいはあったのではないかと……姿が見えなかったので相当深いはずですわ」
「となると2人の救出へ全員で向かうのは不可能ですね……ここにいる全員で地上に脱出し、救出班を編成してから向かうか、あるいはここで救出班と脱出班に分けて別々に動くか……」
「迷宮内で勝手に動かれては困りますなぁ」
カトレアがどうするか悩んでいる時、通路の方から新たな男の声が聞こえてきた。やってきたのは壮年の男性1人と若い男性が4人。全員が調査団の紋章をつけた鎧を着ていて先頭の1人だけが外套を羽織っていた。
「レイガード侯爵……」
「常闇の大迷宮内は、我が調査団の管轄。いくら協力関係にあるとはいえ、部外者に勝手に動かれては困りますぞ?」
レイガードは不機嫌そうな表情を隠さずにカトレアに対して苦言を告げる。
「調査団長としての考えは理解できますが……アスカルテさんとティアさんは王立学園の生徒です。助けに行くかどうかは学園側が決めることです」
「それは出来ない相談ですな、オルデイン男爵夫人。王立学園の学園長から正式に来た依頼であれば従うしかないでしょう。ですが、一教師のお願いなどこちらが対応する必要はありません。あとは我々調査団に任せてください。貴方たちのことは外まで護送しますので」
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