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第13章 2度目の学園生活
31 レイガード侯爵への提案
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「確かに調査団の全権はレイガード侯爵にある。だが調査団は王国直属の組織。私が干渉したとしても問題ないだろう?」
「ですが……いくら王太子殿下であっても調査団に対して直接命令を下すのは越権行為が過ぎますぞ!?」
レイガードは顔色を悪くしながらも反論した。王族が相手ということでカトレアに対する態度よりは控えめだが、それでも常闇の大迷宮に干渉されることは許せないらしい。
だが、コルネリアスは期待通りの返答だと笑みを崩さなかった。
「私とてそれくらいは弁えているつもりだ。今回のアスカルテとティアの救出は王立学園から選んだ者で行う。少なくとも今現在において、調査団に何かを依頼しない……カトレア先生もそれでよろしいですか?」
「そうですね……ここにいる生徒の脱出に関しては協力を頂きたいですが、2人の救出に関しては学園内で行います。それでどうでしょうか?」
「そうですなぁ……王太子殿下やカトレア男爵夫人の責で独断で行うというのであれば構いませんよ」
コルネリアスとカトレアの2人が揃って強く問いかけると、レイガードは少し逡巡してから答えたのだった。
その後、カトレアは王立学園の生徒を2つに分けることにした。
まず怪我などを負ったアイリーンやデニードと心身を喪失しているマリアを中心にカイラスが護衛として調査団と共に地上へ脱出するグループ。
そして、カトレアとコルネリアス、レジーナ、イザークによる救出グループだ。
「カイラス。これは教師としてではなく個人的なお願いです。皆さんのこと、よろしくお願いしますね……」
別れ際にカトレアは囁くような声でカイラスに告げた。
調査団と共に脱出するメンバーの中に王立学園の大人は誰もいない。そのような状況で色々なものから守ることができるのはカイラスくらいだろうという確信がカトレアにはあった。
「わかっています。今いる面々の中で私が最も得意でしょうし」
カイラスもカトレアが言わんとしていることは理解していると笑みを浮かべて小声で返事をした。
「では我々は、このまま地上を目指します……脱出した後は然るべき報告を上げたのちに救出班を編成して向かいますので、しばしお待ちください。聖女と名高いアスカルテ様を見捨てるわけにはいきませんからな」
「よろしくお願いします。では後ほど」
カトレアはレイガードの言葉に内心で苛立ちを覚えつつも表情に出さないように気をつけて返事をした。
一方その頃。
ティアとアスカルテは常闇の大迷宮の地下深くを彷徨い続けていた。
数分に1回の頻度で出現する魔物を倒しつつも地上を目指して歩き続ける。けれど、上へと続く階段は一向に見つかる気配がなかった。
「ティア?どうしました?」
「なんでもないですよ」
ふと王鍵が開いた気配がして見上げているとアスカルテが心配そうに見つめてくる。私は慌てて大丈夫だと言葉にするとアスカルテはホッと胸を撫で下ろした。
そんな意外と過保護なアスカルテの様子に苦笑しつつも私は王鍵について考える。
魔力ではなく魂で繋いでいる王鍵であっても魔術通信と同様に王鍵の魔術具に対して魔力が通らない場所では使うことができない。それは魔力の原理そのものだ。
『プレアデス……』
『…………』
魂で繋がっているはずのプレアデスに対して念話が繋がらないことからも間違いはないだろう。
だが私が王鍵との接続を認識し近くで王鍵を開いたということは、この場所からでも王鍵と魔力が繋がる道があるということ。外に対して繋がらないということは考えることができるのは内側だ。
常闇の大迷宮はどこかで龍脈と繋がっている場所があるのかもしれない。
「また行き止まりですか……」
そのような事を考えながら歩いていると袋小路になっている部屋に辿り着いた。
この階層に着いてから何度も繰り返されてきた光景に思わず悪態をつきたくなる。
壁を叩いてみても何も反応はない。念のため解析の魔術を行使しても魔力を遮る効果のある壁だということしか分からない。
「壁の向こうに何もなさそうですし戻るしかなさそうですね」
「ええ。戻りましょうか」
身を翻そうとした瞬間だった。部屋全体に結界が張られる感覚とともに魔力の流れが悪くなって全身を不快感が覆う。同時にふわっと浮いたかのように感じて足元の感覚が消え失せた。
「えっ!?」
「っ!?」
思わず周囲を見渡すが光が消えていて、どこか真っ暗闇の中にいるようだった。
「アスカルテ様!」
近くに感じていた気配が消えて慌てて名前を呼ぶ。けれど、返事が帰ってくることはなかった。
この感覚は空間の揺らぎによるものだろう。空間の揺らぎ方からして私とアスカルテの転移先は、それほど遠くはないはずだ。
「わっ……」
空間転移の独特な感覚が消えても視界は真っ暗なままだった。すると、急に頭から落ちていく感覚になり全身を風が流れていく。
体感でほんの数秒くらいだろうか。
全身に大きな衝撃がはしると同時にゴトッと変な音がして息が詰まった。
「ですが……いくら王太子殿下であっても調査団に対して直接命令を下すのは越権行為が過ぎますぞ!?」
レイガードは顔色を悪くしながらも反論した。王族が相手ということでカトレアに対する態度よりは控えめだが、それでも常闇の大迷宮に干渉されることは許せないらしい。
だが、コルネリアスは期待通りの返答だと笑みを崩さなかった。
「私とてそれくらいは弁えているつもりだ。今回のアスカルテとティアの救出は王立学園から選んだ者で行う。少なくとも今現在において、調査団に何かを依頼しない……カトレア先生もそれでよろしいですか?」
「そうですね……ここにいる生徒の脱出に関しては協力を頂きたいですが、2人の救出に関しては学園内で行います。それでどうでしょうか?」
「そうですなぁ……王太子殿下やカトレア男爵夫人の責で独断で行うというのであれば構いませんよ」
コルネリアスとカトレアの2人が揃って強く問いかけると、レイガードは少し逡巡してから答えたのだった。
その後、カトレアは王立学園の生徒を2つに分けることにした。
まず怪我などを負ったアイリーンやデニードと心身を喪失しているマリアを中心にカイラスが護衛として調査団と共に地上へ脱出するグループ。
そして、カトレアとコルネリアス、レジーナ、イザークによる救出グループだ。
「カイラス。これは教師としてではなく個人的なお願いです。皆さんのこと、よろしくお願いしますね……」
別れ際にカトレアは囁くような声でカイラスに告げた。
調査団と共に脱出するメンバーの中に王立学園の大人は誰もいない。そのような状況で色々なものから守ることができるのはカイラスくらいだろうという確信がカトレアにはあった。
「わかっています。今いる面々の中で私が最も得意でしょうし」
カイラスもカトレアが言わんとしていることは理解していると笑みを浮かべて小声で返事をした。
「では我々は、このまま地上を目指します……脱出した後は然るべき報告を上げたのちに救出班を編成して向かいますので、しばしお待ちください。聖女と名高いアスカルテ様を見捨てるわけにはいきませんからな」
「よろしくお願いします。では後ほど」
カトレアはレイガードの言葉に内心で苛立ちを覚えつつも表情に出さないように気をつけて返事をした。
一方その頃。
ティアとアスカルテは常闇の大迷宮の地下深くを彷徨い続けていた。
数分に1回の頻度で出現する魔物を倒しつつも地上を目指して歩き続ける。けれど、上へと続く階段は一向に見つかる気配がなかった。
「ティア?どうしました?」
「なんでもないですよ」
ふと王鍵が開いた気配がして見上げているとアスカルテが心配そうに見つめてくる。私は慌てて大丈夫だと言葉にするとアスカルテはホッと胸を撫で下ろした。
そんな意外と過保護なアスカルテの様子に苦笑しつつも私は王鍵について考える。
魔力ではなく魂で繋いでいる王鍵であっても魔術通信と同様に王鍵の魔術具に対して魔力が通らない場所では使うことができない。それは魔力の原理そのものだ。
『プレアデス……』
『…………』
魂で繋がっているはずのプレアデスに対して念話が繋がらないことからも間違いはないだろう。
だが私が王鍵との接続を認識し近くで王鍵を開いたということは、この場所からでも王鍵と魔力が繋がる道があるということ。外に対して繋がらないということは考えることができるのは内側だ。
常闇の大迷宮はどこかで龍脈と繋がっている場所があるのかもしれない。
「また行き止まりですか……」
そのような事を考えながら歩いていると袋小路になっている部屋に辿り着いた。
この階層に着いてから何度も繰り返されてきた光景に思わず悪態をつきたくなる。
壁を叩いてみても何も反応はない。念のため解析の魔術を行使しても魔力を遮る効果のある壁だということしか分からない。
「壁の向こうに何もなさそうですし戻るしかなさそうですね」
「ええ。戻りましょうか」
身を翻そうとした瞬間だった。部屋全体に結界が張られる感覚とともに魔力の流れが悪くなって全身を不快感が覆う。同時にふわっと浮いたかのように感じて足元の感覚が消え失せた。
「えっ!?」
「っ!?」
思わず周囲を見渡すが光が消えていて、どこか真っ暗闇の中にいるようだった。
「アスカルテ様!」
近くに感じていた気配が消えて慌てて名前を呼ぶ。けれど、返事が帰ってくることはなかった。
この感覚は空間の揺らぎによるものだろう。空間の揺らぎ方からして私とアスカルテの転移先は、それほど遠くはないはずだ。
「わっ……」
空間転移の独特な感覚が消えても視界は真っ暗なままだった。すると、急に頭から落ちていく感覚になり全身を風が流れていく。
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